「今年で俺らも二十歳かぁ」
「長いようで短かったわねー」
「これからは酒も堂々と飲める」
「まぁ今までも飲んでたけどね」
「煙草も吸える」
「まぁ吸う気はないかな」
「……あと何があったっけ」
「税金を納めたりとか?」
「……夢のない話だな」
「そうね」
「あー、そういやもう少しで就活とかしないといけないんだよな」
「先輩とかも大変みたいよ、色々説明会行ったり」
「仕事とかするのは、もっと大変なんだろうな」
「今だけだろうからね、こんなに時間があるの」
「そのうち自立して家も出ないといけないしな」
「会社が近場ならしばらくは家にいてもいいと思うけどね」
「そういうものか?」
「そういうものよ」
「社会人になったら、身を固めろー、なんて親に言われたりするのかね」
「さぁね、少なくともアンタの親は言いそうだけど」
「あり得るから怖い。お前のところはそういうのないの?」
「わからない。でも昔から私の好きにさせてくれたし」
「あぁ、そういやそうか。確かにし」
「……そうなのか?」
「今のところは。一人のほうが楽だと思うし」
「無難だけど夢がないな」
「ま、これから出会いがあれば別かもしれないけどね」
「なら、さ。こうしないか?」
「何を」
「もし30歳までにお互い結婚してなかったら、いっそのこと俺らで結婚するとか」
「……?」
「ほら、俺らって昔からずっと一緒だったわけだし。
余るようなら売れ残り同士でくっつくのも悪くないんじゃないか?」
「……私は結婚する気ないって言ったけど?」
「あ。」
「人の話はちゃんと聞きなさいよね」
「……ま、まぁ、厳密な約束じゃないしな。聞き流してくれても構わないけどな」
「……それ、プロポーズとしては最悪」
「ん、何か言ったか?」
「何でもない」
「で、どうだ。乗るか?」
「……30歳でいいの?」
「は?」
「30歳って言ったらけっこう周りの目が厳しいと思うんだけど」
「でも、最近は晩婚化も進んでるらしいしなぁ」
「私はともかく、アンタのとこは大変じゃないの?」
「あ」
「またそれ?ちゃんと考えて発言しなさいよね」
「……あー、じゃあ25歳とかどうだ?」
「それならいいんじゃない?父さんと母さんもそれくらいだし」
「えらく即決したな」
「こういうことはグダグダ考えても仕方ないわよ」
「さっきと言ってることがちがうぞ」
「うるさい。だいたい、結婚するって決めたわけじゃないんだからね」
「お互いが余れば、だからな」
「それに、これからだってしばらくは顔合わせることになるんだしね」
「大学まで一緒じゃ、嫌でもな」
「ま、そういうわけだから」
「あぁ」
「「これからも、よろしく」」