「はあああーーーーっ!!」  
凛とした声とともに、魔力を帯びた剣が振り下ろされた。  
鋼の如き装甲をものともせず、魔蟲の頭部をズタズタに切り裂く。  
余波は円状に広がっていき、周囲の蟲をも吹き飛ばした。  
残された魔蟲の胴体はしばらくの間もがいていたが、その動きは次第に  
弱弱しくなっていき、ピクリとも動かなくなった。  
 
やがて土埃が収まると、魔蟲のそばに女剣士の姿が確認できた。  
淡い金色の髪をポニーテールに縛り、身にまとう軽防具は魔力を帯びた宝石で  
装飾されている。  
彼女の名はリーシャ、人々を守る剣士ギルドに属する魔法剣士である。  
この日も魔物退治の依頼を受け、洞窟に潜む蟲の殲滅を行っていた。  
 
先ほどリーシャが倒した魔蟲こそ、蟲を生み出す女王にあたる蟲だろう。  
兵隊格の蟲は生殖能力を持たない。親玉を失った巣は、やがて消滅するはずだ。  
これで近隣の村の被害も無くなる――しかし、一つ腑に落ちない点があった。  
 
(おかしいわね。情報では、魔物は蟲だけではなかったはず)  
 
洞窟の奥は、大きな空洞になっていた。リーシャは壁に沿って歩きながら、  
おかしなところが無いか入念に調べる。  
記憶が正しければ、ギルドの情報ではオーガ(下級の鬼人)や  
トロル(下級の獣人)の目撃報告もあったはずだ。  
通達された魔物の巣はこの洞窟だけだったのだが、洞窟内には蟲しか  
潜んでいなかった。  
近隣の村から攫われたはずの村人の姿も見当たらない。  
 
おそらく、ギルドが把握出来ていない巣が付近にあるはずだ。  
 
(……ここで考えていても仕方ないわ、ひとまずギルドへ報告して、  
 判断を仰ぐのが良策ね)  
 
わずかな間思考し、そう結論づける。リーシャは洞窟の出口へ向かおうとした。  
 
「――ッ!?」  
 
リーシャは、咄嗟に飛びずさりながら剣を構える。  
今まで感じたことの無い強い邪気が、突如洞窟の奥から放たれてきのだ。  
魔蟲の死骸の向こうに、何か現れたのだろうか。  
隠し通路などは見当たらなかったというのに……。  
 
邪気の主は、ゆっくりと姿を現した。筋骨隆々とした体は、歴戦の戦士を連想させる。  
高貴そうな鎧を纏っており、剥き出しの腕は暗い灰色の毛に覆われている。  
そして彼の頭部は狼と虎の中間のような、言いようの無い獣の形をしていた。  
血のように赤い瞳は荒々しく輝きながらも、高い知性を感じさせる。  
 
「下級の蟲とはいえ、女一人相手に壊滅とは……少々人間を侮っていたようだな」  
 
蟲の腹を撫で、男の表情がわずかな憂いを帯びた。  
リーシャは刃に魔力を込めつつ、相手との間合いを計る。  
発せられる邪気、忽然と現れたことからも、下級の魔物でないことは確かだ。  
 
(こいつは、獣人? いえ……上級の獣人でも、こんな邪気を持っているなんて  
 聞いたことが無いわ……)  
 
リーシャの困惑を読み取ったかのように、獣人はニヤリと笑みを浮かべる。  
 
「そこらの獣人と同じにされるのは不本意だな。  
 確か、昔の人間どもは俺を『魔人』と呼んでいたが」  
 
リーシャは戦慄した。  
魔人とは、全ての魔物を統率し、魔物の起源とされる種族である。  
魔人についての記録はほとんど残っておらず、その能力も、姿さえも知られていない。  
そのような相手が目の前にいるという事実は、リーシャを驚愕させるには  
充分だった。  
 
リーシャは、剣に込めていた魔力を解き放った。  
逃走することにのみ専念すれば、逃れることが出来たかもしれない。  
彼女の持つ魔法の才能を知らなければ、魔人はリーシャを捕らえようとは  
考えなかったかもしれない。  
「魔人が攻撃に気を取られている隙に洞窟を脱出する」というリーシャの作戦は、  
最悪の結果を招いてしまうことになる。  
 
リーシャの放った魔力は、剣を振り下ろした軌道に沿って斬撃の光を生み出し、  
一直線に魔人へと向かっていく。  
 
「無駄だッ!」  
 
リーシャの放った斬撃と魔人の邪気がぶつかり、衝撃で洞窟が大きく揺れた。  
せめぎあいはほんの一瞬、強力な邪気はリーシャの魔力を巻き込んで、巨大な渦を  
巻き起こした。  
 
「きゃああっ!?」  
 
魔力の渦は際限なく膨張していき、それはリーシャを、魔人をも襲う。  
一瞬の出来事に、リーシャは咄嗟に魔力で防御壁を作り出すことしか出来なかった。  
壁に激しく叩きつけられ、彼女は意識を失った。  
 
渦が消えると、ぐったりと横たわるリーシャと、現れた位置に佇んだままの魔人が  
残されていた。  
魔蟲の巨体はばらばらに引き裂かれたのだろう、足の一節さえも残っていない。  
 
「クックックック……フハハハハハハハハ!!!」  
 
魔人は肩を震わせ、震えはやがて哄笑へと変わった。  
心底嬉しそうに目を細め、向かい側に倒れているリーシャを見下ろす。  
 
「訂正しよう、お前のことは『侮りすぎていた』ようだ」  
 
魔人の左腕は、手首から肘にかけてを切り裂かれていた。  
リーシャの攻撃は邪気による防御を貫き、ダメージを与えていたのだ。  
 
「これは思わぬ収穫だ、気紛れに辺境に出向いた甲斐があったな。  
 ……至上の魔力、我が城でじっくり味わうとしよう」  
 
リーシャと彼女の剣を担ぎ、魔人は暗黒の球体を作り出す。  
魔人の姿は闇の中へ飲み込まれ、誰もいなくなった洞窟だけがそこに残された。  
 
「う――――……こ、ここは?」  
目を覚ますと、そこには薄暗い闇が広がっていた。  
全身が酷く痛む。闇の中では何かが蠢いているようだが、判然としない。  
意識がはっきりするに従い、周囲の音が耳に入ってきた。  
多くの魔物の気配と、獣のような息遣い。そして、辺りに響く嬌声。  
状況が把握できず、リーシャは眉をひそめた。  
嬌声の主は全て女性のようだ。しかし魔物がうろついている暗闇に、それは  
あまりにも場違いだ。  
 
辺りの様子を探ろうとしたが、手足が動かせないことに気付く。  
肌から伝わる感覚を探っていくと、粘性の高い何かの上に仰向けになり、  
手足を沈めたような格好にされていることがわかった。装備は全て取り去られている。  
両腕に力を込めてみたが、ほとんど動かせない。  
魔力をかなり消耗しているため、炎魔法で焼き払う手も使えなさそうだ。  
 
「ようやくお目覚めかな?」  
 
脱出方法を思案していると、闇の向こうからあの魔人の声が響いた。  
 
「最悪よ。私をどうするつもりなの」  
 
リーシャは、闇の奥から現れた魔人をキッと睨みつける。  
 
「勇ましいな、実に嬲り甲斐がありそうだ。  
 自分がどんな状況に置かれているか、しっかりと確かめるがいい」  
 
低い笑いを漏らすと、魔人は魔力の光を作り出す。  
光は魔人の手を離れ、天井から部屋全体を照らした。  
 
「な、何なの、これは……!?」  
 
リーシャを捕えていた粘液は、巨大なスライムだった。彼女の身長の3倍ほどだろうか、  
ここまで大きなスライムはギルドの文献でも見たことが無い。  
それ以上にリーシャを驚愕させたのは、目の前に広がる光景だった。  
 
どこかの城の一室だろうか、周囲は石で作られた壁に囲まれている。  
かなりの広さがあり、天井は背を反らすほど高い。巨大な広間のそこかしこで、  
人間の女性が魔物に犯され、喘いでいた。  
 
「はあ、あぁあ……!」  
「お願いぃ、もっと、もっと欲しいのぉ……」  
「あふっ、ひぃんっ」  
 
ある者は壁から生えた植物のツタやスライムによって拘束され、またある者は魔獣に  
犯されている。  
彼女達はみな快楽に溺れ、表情は蕩けきっていた。既に孕まされているのか、  
腹部が膨らんでいる者もいる。  
 
「苗床だよ。一から魔物を作るのは少々手がかかるのでな。  
 繁殖用の魔物を作り、人間のメスの生殖器を用いれば、効率良く生産できるというわけだ」  
 
リーシャは各地の支部で聞いたある異変を思いだし、愕然とした。  
 
今までは、繁殖可能な種族である蟲の発生が報告のほとんどを占めていた。  
しかし、ここ数ヶ月にかけて発生報告の数が増加し、それに伴って蟲以外の  
魔物の発生割合が増えつつある。  
この異変は、人手不足のギルドにとって悩みの種の一つとなっていた。  
 
最近の異常とも思える魔物の発生頻度が、「苗床」のせいだとしたら。  
既に繁殖能力を持つ魔物が進出しており、人間達が気付かないだけで、多くの女性が  
魔物を孕まされているとしたら。  
人類にとって大きな脅威となるであろうことは想像に難くない。  
 
背中に密着しているスライムが大きく震える。  
悲鳴をあげる間もなく、リーシャは磔のような格好にされた。  
これでよく見えるだろう?と、魔人はリーシャの顔を覗き込む。  
 
「人間どもの調教は奴らに任せているところだが、お前は特別に俺が仕込んでやる。  
 せいぜい心の準備をしておくことだな」  
 
そう言い残し、魔人の姿は掻き消えた。  
 
 
 
捕らえられてから一体どれだけの時間が経ったのか。  
広間では、おぞましく淫らな宴が続いている。  
 
時折、攫われてきた女達が広間へと運び込まれてくる。中には幼い少女も混じっていた。  
彼女達の体はすぐに拘束され、新しいメスの臭いを嗅ぎつけた魔物が種付けにかかる。  
スライムの粘液か、或いは口に含まされた花の蜜に媚薬成分でも含まれているらしく、  
魔物の巨大な男根が割れ目に突き入れられると、女達の悲鳴は例外なく喘ぎへと変わっていく。  
 
どんなに拒絶の言葉を吐いていても、彼女らの秘部は愛液を止め処なく垂らし、  
男根が引き抜かれると次の挿入を待ち侘びるようにヒクヒクと動く。  
次第に拒絶の意思は消えていき、やがて魔物との性交を楽しみ始める。  
生殖器が充分に発達していないと判断された者は、まだ幼い割れ目に  
媚薬を塗り付けられ、精液の変わりに蟲の卵が注ぎ込まれる。  
 
一人、また一人と新たなメスが生まれ、再び広間は嬌声に満たされた。  
 
「あ、いやあ! 動いちゃ駄目ぇ……!」  
 
近くでスライムの愛撫を受けていた女性が一際大きく喘ぎ出した。  
スライムは拘束をゆるめ、女性は床に仰向けに横たわる格好になる。  
 
秘部から羊水が漏れ、しばらくすると獣人の頭が現れた。体がつかえたのか、  
幼体の獣人は入り口でもがき、甲高い産声をあげた。  
一匹の蟲が声に反応して近づき、女性の足を広げさせる。  
蟲は巨大な顎で獣人の首のあたりをくわえた。加減しているらしく、獣人が苦しがる  
様子は無い。  
 
「はあ、……ぁぁあああん!!」  
 
獣人の体がズルリと引き抜かれる。出産さえも快楽へ導く行為となっているのか、  
女性は大きく達した。  
蟲は前肢でへその緒を切ると、生まれたての獣人を広間の一角へ運んでゆく。  
その先には、やはり女性達が拘束されていた。植物が深く差し込まれた秘部からは、  
黄色がかった液体が太ももを伝って流れ落ちる。  
彼女らは魔物を孕んでいない代わりに、乳房が異様に膨らんでいた。  
幼体と思しき魔獣や蟲が取り付き、母乳を吸っていた。  
 
先ほど獣人を産んだ女性は既に壁に拘束されていた。植物が汗ばんだ肌を這う。  
植物の先端は丸く膨らんでおり、まだ閉じきっていない秘部にゆっくりと侵入を開始した。  
女性は出産で消耗していたが、植物が膣内に潜り込むと快楽に身をよがらせる。  
植物の蜜には、排卵を促す作用がある。  
三日も経てば彼女は新たな生命を宿していることだろう。  
 
魔物を産み落とす者。  
蟲の孵卵器として使われる者。  
母乳を与えるだけの道具と化した者。  
広間は、まるで魔物を生産する工場であるかのような錯覚さえ覚える。  
 
吐き気すら覚えるような行為が絶えず行われていたが、それらに反応する余裕は  
リーシャには無かった。  
リーシャもまた、体を縛るスライムによって犯されていた。  
子を宿すための大切な部分ではなく、排泄のための穴を。  
 
「う、ぐっ……」  
 
大腸内を埋め尽くしたスライムは、定期的にぶるぶると振動し、熱を持った液体を  
リーシャの体内へと注いでくる。  
何も口にしていないに関わらず空腹を覚えないのは、スライムが分泌している  
液体の作用らしい。  
排泄物も、全てスライムが吸収していく。  
 
周りの女性らのように、媚薬の類に侵されてはいない。しかし、そのために  
常時圧迫されている下腹部が不快感を伝えてくる。  
 
「ん、あぁっ……」  
 
胸にもスライムが薄く張り付き、小さな突起を中心に嬲るようなマッサージを  
加えられている。  
時折乳首を吸い上げられるような快感が走り、リーシャの意識を揺さぶった。  
秘部も侵入こそされていないが、密着しているスライムが入り口を舐めるように  
上下運動を繰り返している。  
 
よがり狂う女性達の姿を見せられ、スライムの攻めを受け続けている状況は  
生殺しという表現すら生温い。  
それでも、リーシャは絶望していなかった。  
 
(負けてはダメ! 何としても抜け出さないと……)  
 
捕らわれている女性達を助けることは無理だろう。だが、せめてこの異常事態を  
ギルドに知らせなければならないのだ。  
戦士として養われた強靭な精神と使命感が、リーシャを支えていた。  
 
リーシャの決意を他所に、異変はゆっくりと進みつつあった。  
 
リーシャは、自分の体に違和感が生まれつつあることに気付いた。  
スライムは相変わらず愛撫を与え続けている。  
乳房の付け根から頂点に向かって絞り上げていく動き。  
胸から生まれる快感が、次第に大きくなる。  
 
(い、一体何なの?)  
 
動揺するリーシャの意識を他所に、胸の快感は成長を続けていき……。  
それが頂点に達した瞬間、両の乳首は白い液体を吐き出した。  
 
「あああああああっ!」  
 
それまで味わったことも無い快楽が、リーシャを大きく仰け反らせた。  
絶頂から一旦戻ってきたものの、胸には先ほどの余韻が焼きついている。  
スライムに侵され続けた副作用か、リーシャの乳房は母乳を生産していたのだ。  
タイミングを計ったように、スライムがマッサージを再開する。  
 
「だ、ダメ、やめて!」  
 
愛撫から逃れようと抵抗するが、かえって乳首を擦り付ける形になってしまう。  
スライムの愛撫は、それまでのマッサージから搾乳する動きへ移行しつつあった。  
 
「お愉しみのようだな、女剣士どの」  
 
快感にかすむ意識を、魔人の声が現実へ引き戻した。  
リーシャの姿をニヤニヤと眺めている。  
魔人が手をかざすと、リーシャの胸を覆っていたスライムはさっと退いた。  
乳房を下から持ち上げ、つんと上向いた乳首を口に含む。  
 
「ふぁ……」  
 
体が敏感になっているのか、リーシャは母乳を吐き出した時よりも強い快感を感じていた。  
剥き出しの肌を甘噛みし、大きな舌で先端を舐る。  
リーシャの表情が蕩けていく様を上目遣いに確認すると、魔人は乳首の周囲ごと  
吸い上げた。先ほどよりも多量の母乳が分泌され、更なる快感の波が押し寄せる。  
スライムの愛撫とはまた違った感覚が、リーシャの意識を翻弄する。  
 
無意識のうちに胸を大きく突き出し、リーシャの体は搾乳の快感を欲していた。  
気持ち良い。このまま、ずっと味わっていたい。  
 
「もう片方も吸ってほしいか?」  
 
魔人が優しい声でささやく。欲しいと言いかけた寸前で、リーシャの理性は  
押しとどまった。  
嘲るように低い笑いを漏らすと、魔人はもう一方の乳房にも口をつける。  
再び襲い来る快感に押し流されぬよう、必死の思いで耐える。  
二度目の搾乳は、快楽に浸っていた時間が一瞬に思えるほど長く感じられた。  
魔人が離れる頃には、リーシャは肩で息をするほど疲労していた。  
 
「ククク、ここまで耐えきった女は始めてだぞ。  
 その精神力に免じて、お前にチャンスを与えてやろう」  
 
パチン、と指を鳴らすと、リーシャを捕らえていたスライムは一瞬にして  
壁の中へと消えた。  
代わりに植物のツルが延び、手首と足首に絡みつく。少し力を込めれば  
ほどけそうなものだが、魔人は何を企んでいるかわからない。  
 
広間の一角には、出入り口として使われている空間の裂け目がある。  
魔人が再び指を鳴らす。すると、裂け目とリーシャを繋ぐ線の真ん中辺りに、  
見覚えのある剣が現れた。  
見間違えるはずが無い、リーシャが愛用していた剣だ。  
 
「あの剣をとって、見事ここから逃げおおせることが出来れば、特別に  
 見逃してやろう。  
 俺は手を出さん。代わりに魔物どもが妨害するだろうがな。」  
 
強者の慈悲とでも言うつもりなのか。  
リーシャが剣に手をのばそうとすると、植物が手足をきつく締め上げる。  
 
「舐められたものね。後悔することになっても知らないわよ?」  
 
リーシャの強気も、この状態では虚勢にしか映らない。  
魔人は鼻で笑うとリーシャに背を向けた。  
 
「せいぜい、悔いの無いように足掻くがいい」  
 
魔人は定期的にリーシャの元を訪れるようになった。  
乳房をやわやわと弄び、母乳を吸い、体毛に覆われた手で全身を撫で回す。  
だが、彼女の秘部には指一本触れようとはしない。  
まるでリーシャから求めてくるのを待っているかのようだ。  
 
新たな攻めにも屈することなく、リーシャは脱出の機会をうかがっていた。  
スライムの分泌液のせいか魔力はほとんど戻っておらず、植物を  
焼き払うのは不可能。力ずくで引きちぎるのも困難だろう。  
 
「剣さえ掴めれば……」  
 
リーシャの剣には特殊な紋が刻まれており、それは自ら魔力を生み出す力を持つ。  
出入り口を固めている蟲を一掃するだけの魔力は溜まっているはずだった。  
 
自由になる時間も既に把握している。  
魔人が現れ、彼女を愛撫している間だけは、植物の拘束が解けるのだ。  
ほんの僅かな間だが、その一瞬を突くしかない。  
 
チャンスは一度だけ、失敗は許されない。  
リーシャは出来る限り体力を温存し、隙が出来る時をじっと待っていた。  
 
 
 
魔人は、苗床の広間に足を踏み入れた。  
周りの嬌声など聞こえていないかのように、女剣士の元へまっすぐに  
進んでいく。  
彼女はいつもと同じように縛られたまま床に横たわっている。  
魔人が手振りで命じると、植物は静かにリーシャから離れた。  
跪いて体を抱えようとした瞬間、女剣士は素早く飛び起きた。  
 
リーシャは魔人の脇をすり抜けて、投げ出された剣めがけ一直線に走る。  
布切れを取り払い、剣を握る。柄の感触は追い詰められていた精神に  
かすかな安堵をもたらした。  
頭を高く上げ戦闘態勢に入る蟲に向かって、リーシャは剣を振り下ろした。  
出口はもうすぐそこまで近づいている。  
 
「――――えっ!?」  
 
魔力の斬撃を放つはずの剣は、持ち主の気合にまったく反応しなかった。  
攻撃は蟲の外骨格に阻まれ、リーシャは後ろに跳ね飛ばされ、その弾みで剣も  
手から離れてしまう。  
 
蟲は瞬く間に肉迫し、細い糸を足に吹きかけた。  
混乱するリーシャの視界に、魔人の足が映る。  
 
「邪気の満ちたこの部屋で、無事でいられると思っていたのか?」  
 
残念だったな。リーシャの体を抱え、魔人は短く言い放つ。  
 
リーシャの体は、本人も気付かないうちに邪気に侵食されていたのだ。  
きっかけはスライムが注ぎ続けていた分泌液。それはリーシャを生かすと同時に、  
体の内側から邪気への耐性を弱めていた。  
邪気によって穢れた体は魔力を行使する力を失ってしまう。  
もはや、リーシャに戦う力は残っていない。  
 
全ては魔人の計算のうち。あの提案も、わざと自由になる隙を与えたのも、  
女剣士により大きな絶望を叩きつける為の準備でしかなかったのだ。  
魔人に告げられた事実を、リーシャは受け入れざるを得なかった。  
 
 
 
リーシャは城の最奥部に位置する部屋へ連れて行かれた。  
貴族のものと見紛うほど豪華なベッドが中央に座しており、魔人はリーシャを  
ベッドの中心に横たえた。力無く項垂れたまま、リーシャは動かない。  
 
衣服を脱ぎ捨ると魔人は背中に覆いかぶさり、いきり立った男根を  
腰にこすりつける。  
それだけの刺激で、リーシャの体は大きくわなないた。  
 
「全身が邪気に満たされているのがわかるだろう?  
 お前は既に墜ちてしまっているのだ。逃れる術は無いのだよ」  
「いや、いやあああああっ!!!」  
 
リーシャは涙を流して絶叫する。魔人の哄笑が重なった。  
 
「そんな体で、今更何を拒む必要がある」  
 
細い腰を抱え、男根の先端をあてがう。長い間放置されていた秘部は、  
結合を求めてぐっしょりと濡れていた。  
覚悟する時間も与えず、魔人は一気に突き入れた。  
 
「んはああああああああああああああああああっ!!」  
 
魔人はリーシャを激しく犯す。あまりの勢いに、彼女の上半身がガクガクと  
揺さぶられる。足は突っ張ったまま、小刻みに痙攣を繰り返していた。  
 
暴力的なセックス。だがリーシャの体は快楽だけを感じていた。  
魔人が動くたびに先走りの液と愛液がこぼれ、ベッドを湿らせる。  
 
「いやあああああああ!! ぬいて、抜いてええええ!!!!」  
 
強すぎる刺激に、リーシャは頭を振り必死に拒絶する。  
だが、言葉と裏腹に肉体は快楽を求め、腰は魔人の男根を深くまで導こうと  
動いている。  
魔人はピストン運動を中断し、正上位に体位を変えた。  
快楽の波が引き、深いところで脈打つ熱と魔人の視線が、リーシャの意識を  
支配する。  
 
「身も心も魂も、全てを闇に委ねるのだ。そうすれば楽になる……」  
 
悪魔の誘惑に、リーシャの理性がゆっくりと溶かされる。  
長い時をかけて築かれてきた誇りが、どうでも良くなって行く。  
こんなに気持ちいいのに、私は何故拒んでいるのだろう?  
もっと満たされたい。ずっと抱かれていたい。  
 
彼女の思考に応えるように、最奥までくわえこんだ男根が膨らむ。  
ああ、もう戻れない――そんな思いが脳裏を過ぎった。  
 
邪気を含んだ大量の精液が、胎内に勢い良く吐き出された。  
嬌声を搾り出そうとする喉を魔人の口付けが塞いだ。  
口からも邪気が流れ込み、リーシャはより高いところへ押し上げられていく。  
吸収し切れなかった精液が結合部から溢れ出した。  
 
全身を充足感が満たし、絶頂の余韻に腰を震わせる。  
魔人の腕に抱かれたまま、リーシャの意識は落ちていった。  
 
「ぅんっ、はあっ」  
 
長い時間をかけ、リーシャは身も心も作り変えられていった。  
大人の手でも包みきれぬほど成長した乳房に、くびれを強調する腰のライン。  
ほどけた髪は乳房に張り付き、まるで淫靡な胸当てのようだ。  
絶妙な具合に脂肪のついた下半身、その茂みの奥では、肉欲を求める秘部が  
愛液を垂らし続けている。  
 
細い首には、彼女の防具を加工して作られた首輪がつけられている。  
魔人が隷属の証として与えたものだ。  
 
リーシャは自らの母乳を主に捧げるべく、夢中になって乳房を揉んでいた。  
乳首に張り付いたイソギンチャク状の触手が、母乳を横の水差しへ運んでいく。  
 
腰布だけをまとった魔人が現れると、リーシャは手の動きを中断し、  
膝を抱えて秘部を見せ付けるように両足を開いた。  
魔人は満足げに笑みを浮かべると、すぐさまリーシャとの性交を始める。  
 
前戯も、体を狂わせる蜜も必要ない。  
リーシャにとっては、魔人の邪気こそが最高の媚薬なのだ。  
 
「ああ、魔人様ぁ……はやく、早く種付けしてくださいませ……」  
 
魔人との情事は毎夜かかさず行われていた。にも関わらず、リーシャに  
妊娠の兆しは全く現れていない。  
徹底的な調教と改造を施された体は、排卵のタイミングさえも掌握されて  
しまっていた。  
 
「そう急くな。お前が完全な闇の眷属へと生まれ変わった暁には、俺の子を  
 好きなだけ産むがいい。  
 それまでの間、存分に可愛がってやる」  
 
魔人の言葉に、リーシャは嬉しそうに微笑む。  
老いることのない体で、永遠に愛してもらえるのだ。  
闇に堕ちることも、今の彼女にとっては最高の至福。  
 
凛々しい魔法剣士の面影は、もうどこにも残っていない。  
首輪の中心にはめられた宝石だけが、かつてと変わらない色で輝き続けていた。  
 
 

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