私の祖母が入院した。数年前から悪化していた白内障の治療のためだ。
手術は無事に終わって、後は検査やらで退院するだけになった。
それまで私と弟の琴哉は風邪をひいていてお見舞いにいけなかったので、
退院前に行こうということになった。
市内の病院まではバスで20分ほど、以前祖父が入院した時も両親に連れられて
行ったことがあるので特に問題はなかった。
受付の女の人に病室を尋ねると、
「三上さんね?三上さんは……518号室だったわよね?」
と後ろにいた看護師さんに確かめた。
「そうですけど、今は検査中ですよ。」
「そっか。どうする?検査終わるまで待ってる?ちょっと時間かかるから待合室か今丁度三上さんの病室
空いてるからそこで待っててもいいよ。」
待合室は人が結構多いし、琴哉が騒いだりすると迷惑になるだろう。
「ありがとうございます。じゃあ病室で待ちます。」
「そう。たぶん2時間くらいで終わるから。」
げ。そんなにか。まあ仕方ないか。
私と琴哉は祖母の病室に着いた。琴哉はしばらくは珍しそうに見回っていたが
あきたのか私にじゃれついてきた。少々うざったい。
でも同年代の男子に比べればかわいいものだ。最近なぜかからかわれたりすることが多くなった。
この時期の男の子というのはそれはそれは子供っぽく思える。
違うのは三つだけなのだがこの年頃は本当に小さな年齢差でも
大きく感じるものだ。私もこんなに子供だった時があるなんて信じられない。
でも琴哉とこんな風に過ごすのも久しぶりかもしれない。中学に入ってからは
勉強やら部活やらの時間が増えたせいで琴哉といる時間も減ったし。
琴哉も今みたいに私に素直じゃなくなっていつか生意気な事や下品なことばかり言うように
なるんだろうか。それもいやだな。そんなことを考えていたらなんだか無性に
琴哉にかまいたくなった。ああ、こんなだからブラコンと呼ばれたりするのかもしれない。
とつらつら考えていると不意に琴哉がわきをくすぐってきた。無防備だった私は
すぐに笑ってしまった。体をよじって逃げる。琴哉はまだ手を伸ばしてくる。
私はその両手をつかんで動きを封じた。琴哉はくすくすわらっている。
せっかく私が相手してやろうと思ったのにこいつめ。何かしかえししてやろうと思ったが手は
あいにく塞がっている。
くすぐったくてこの状態でもやり返せることといったら……
ひらめいた私がしたことは琴哉の耳を噛むことだった。
そういえば琴哉は耳が弱かったっけと思い出したのは琴哉が変な声をあげてからだった。
謝りながら静止を懇願してきたがなんだか面白くなってきたので続けることにした。
琴哉は暴れたが強く噛んでひるんだ隙に放さないようにしっかり両手を背中に回す。
女の力といえど三つ下の男の子。これでもう逃がさない。
その後は強弱をつけて琴哉の耳の感触を楽しんだりそれから舐めまわして味わったり
髪の匂いを嗅いでみたりして琴哉の反応を楽しんだ。
結局やめたのは何も喋らなくなってぐったりしてからである。
これはちょっとやりすぎたか。冷静になると自分がしてたことは
かなり恥ずかしかった。まあ誰も見てないしいいや。
とそこで当初の目的を思い出した。そうだ祖母のお見舞いに来たのだった。
それからしばらくして検査を終えた祖母が帰ってきた。挨拶を済ませ、
検査の結果を聞くと何も問題はないそうで、明日にでも退院していいとの事だった。
よかった。それからこちらの近況やらを聞かれなんだかんだ話すうちにと時間が過ぎて
夕方になったので帰ることにした。最後に祖母にお礼を言われ、私達も元気でね、
と返してお見舞いは終わった。
帰ってからはしばらく琴哉は私にさんざん遊ばれたことを思い出しては赤くなっていた。
このせいで変なことに目覚めなければいいのだけど。
という私も半泣きになって頬を赤くした琴哉をみてかわいいと思ってしまった。
これはひょっとしたらまずいのかもしれない。これからは気をつけることにしよう