「チコおいでー」
ご主人の悠太がわたしを呼ぶ。
わたしは尻尾をブンブン振って、中学校から帰ったばかりの悠太に飛びつく。
(ご主人さまとお散歩だぁ)
わたしは、悠太の周りをグルグル廻って、興奮の絶頂なのだ。
「まったく、チコは甘えん坊だなあ」
悠太はわたしの頭をよしよしとなでてくれた。至福の一時。
わたしは、飼い犬。まだまだ生まれて10ヶ月ぐらいの甘え盛り。
大好きなご主人と散歩をするのが日課なのだ。
悠太は、わたしのロープを引っ張って、いざお散歩へ。
「おっと、お散歩セットを忘れてるよ」
悠太は、一旦家に戻る。
そう、お散歩セットを忘れちゃあわたしの楽しみが、半減する。
悠太はしばらくすると、一抱えはある風呂折敷包みを持ってきた。
これがわたしのお散歩セット。
わたしの尻尾は自慢じゃないが、ふっさりとしていてくるりと丸くなっている。
耳はちょっと垂れているのがチャームポイント。
人は雑種とか呼ぶけど、このくらいがかわいいと思うんだ。
途中、ご近所の森山さんのジョンに会う。
(ジョン、いいだろう。これからジョンには出来ない事をするんだよ)
自慢気なわたしをジョンはマヌケな顔で見ていた。
空は青く、白い雲が気持ちよさそうに浮かんでいる。
人気のない神社にやってきた。鎮守の森が静けさを守る。
ここに来ると、わたしは尻尾を一層ぶんぶんと振る。
悠太は「わかったわかった」と、わたしをやんわりとたしなめ物陰に隠れ、風呂敷を広げる。中には、女子中学生の制服と靴が入っている。
「チコはしょうがないなあ」
わたしは二本足で立ち上がると同時に、わたしの毛が見る見るうちに引っ込み
白い肌が露になる。わたしは、真っ裸の女子中学生に変身した。
「もう、じっと見ないでよお…」
そう。わたしは、犬から人間へと変身が出来るのだ。しかし、耳と尻尾だけはそのままのイヌミミ少女だ。
その秘密を知ったのはいつの頃だろう。悠太と一緒に暮らしてる時には既に、このことは気付いていた気がする。
難しい言葉で言うと、脳内のアドレナリンがどうのこうの…って悠太が言うけど、わたしにはそういう難しい事はよく分からない。
以前よりちょっぴりオトナになって、わたしの意志で変身できるようになったけど、前は突然道端で変身して、裸の小学生が現れたって騒ぎになったんだっけ。
それ以降、女の子の服を持ち歩きながらわたしと散歩をするようになったんだ。
もう、悠太の前だけで変身できるようになったけど、悠太でも裸を見られるのは、やっぱり恥ずかしいな。悠太に見張りを頼んで、わたしは人間の女子中学生へと着替えをする。
「お待たせ。ふふふ」
どっからどう見ても、人間の女の子だぞ。この瞬間が一番楽しい。
くるりと回ると、スカートがひらりと一緒に回る。悠太ったら、少しドキドキしたかなあ。
わたしはイヌミミをピクピクさせて悠太に呼びかける。
「一緒に歩こっ」
わたしは、悠太と一緒に手をつないで歩く。知らない人が見たらデートみたいだな。
二本足で歩くって事はなんて快感なんだろう。両手も使えるしね。
こうやって、悠太の腕を掴んだり出来る。
「くっつくなよお」
へへへ。悠太も嬉しいくせに。
「もっと、引っ付こうよお」
なんと言っても、人間の言葉が使えるのが一番の魅力。
他の犬からとの優越感がたまらない。ほら、横を通ったチワワはこんな言葉使えないだろ。
他の犬がみんなバカに見えてきたぞ。もう、ずっと人間のままでもいいかなあ。
「チコはすぐ尻尾に出るな」
ブンブンと動くわたしの尻尾を見て、悠太が呆れて笑っている。
「おい!悠太じゃネエか?」
親しげに近寄るガキが現れた。悠太の悪友らしい。
「ふーん。お前、彼女とかいたんだ」
「別にそうじゃないよ…」
しげしげとソイツはわたしを見つめる。気持ち悪いな。
「アハハ、お前、動物耳のコスプレさせるのが趣味だったんだ?!」
悪友は腹を抱えて笑っていた。
良く分からないけど、ムカツク。何も言い返さない悠太にもムカツク。
「いてててててててて!!」
不意を着いて、わたしはクソガキの右手に思いっきり噛み付いてやった。
「うー!わん!わん!」
しまった、獣の血が沸いてしまった。しかし、既にクソガキのお尻にわたしは牙を剥いていた。
「悠太のぶぁーか!!」
クソガキは尻尾を捲いて逃げていった。尻尾なんか生えてないけど。
わたしは、悠太をシャツの裾を引っ張りながら吠えた。
「悠太が何も言い返さないからだよ!」
飼い主が飼い犬に叱られた。
悠太と土手沿いの河川敷を歩く。
ジョギングしている女の子に目が行く悠太。
「ねえ!悠太!」
悠太の腕をぐいぐいと引っ張る。しかし、所詮は中学男子。悠太は鼻の下を伸ばしていた。
「さあ、帰ろっか。ちゃんと着替えて、犬に戻るんだぞ」
始めに着替えた神社に戻ってきた。しかし、わたしはさっきのことが気に掛かる。
犬の恩は三年忘れないが、恨みも三年続くぞ。
嫉妬にかられたわたしは、悠太の腕を引っ張り、外からは死角になっている鎮守の森に連れ込む。
さあ、ちょっとムカついたので、悠太を問い詰めてやるぞ。
「悠太さあ。女の子とか好きなの?」
「うーん。嫌いじゃないよ」
「嫌いじゃないって事は、大好きなんだ」
「大好き、って程じゃないけど…」
うちのご主人様は優柔不断だ。悠太が犬だったら、群れの最下位になっちゃうな。
「ねえ、悠太の男らしいところ、見たいなあ」
「なにそれ」
わたしはいきなり、悠太に抱きついた。
「ちょ、ちょっと!!チコ!」
わたしの甘い香りにクラクラしたのか、獣の匂いに恐れをなしたのか悠太は明らかに動揺していた。
もはや、わたしは悠太の飼い犬ではないな。
「へへへ。ご主人様、わたしは獣だよ」
人間って、確かキスするんだっけ…。悠太が深夜見ているテレビでよくやってたぞ。
確か、こうゆう風に…。
ちゅ
犬と人間がキスしちゃったよ。もう一度してみよう。
ちゅ
悠太、嬉しいんだか悲しいんだかわからない顔をしている。
もう、このままわたしのものにしてしまえ。ごめんね、ご主人様。
わたしは悠太を思いっきり押し倒した。
悠太のズボンをずり下ろすと、勢いよく悠太のオスが立っていた。
そのまま、パンツを下ろす。へえ、人間のって意外とかわいいんだなあ。
「ねえ…。なんだか、熱くなってるんだけど…」
「???」
「わかる?」
わたしは、悠太の手をスカートの中に手繰り寄せ、パンツの上から濡れてきたわたしの部分を触らせた。
「おい…!」
悠太は急いで手を引っ込めたが、指先は淡いピンク色に光っていた。
ぱくっ!
思わず、わたしは悠太の指を舐める。わたしの牙で甘噛みすると、悠太は「あんっ」って鳴いた。
「悠太も舐めたい?」
スカートを捲り、わたしの純白のパンツを見せる。悠太がどぎまぎしているのは初めて見た。
すこし、膝歩きで悠太の顔面の上にわたしのメスを近づけ、パンツの上から舐めるように命令した。
悠太の唾液と、わたしの淡い蜜のおかげで悠太の顔は光っていた。
「ん…、くうん」
わたしの体も火照ってきたぞ。
「ねえ、入れていい?」
「はあ。はぁ…」
「いいなら、良いって答えなさい!」
ふふふ。ちょっと気持ち良いな。
パンツをずり下ろし、制服を着たまま悠太のオスをわたしの膣に入れる。
オスの上に乗っかって、交尾をするのは気持ちいいな。
こんな事、犬のままじゃ出来ないし。
「くうん!くうん!」
腰を上下に揺さぶると同時に、わたしの声が響く。
あまりの気持ちよさに思わず犬語がでちゃう。人間の言葉の方がマヌケだな。
「ああ。いっちゃうよお…」
悠太が涙目で訴える。
わたしの膣の中で、熱いものを感じた。悠太は少し恥ずかしげな顔をしている。
わたしが腰を上げて、悠太のオスを抜くと、白いミルクがだらりとこぼれた。
「もう、きれいにしなきゃだめでしょ」
わたしはミルクに犯された使用済みのオスにキスをして、ペロペロと舐め揚げる。
出し足りなかったのか、二発目がぴゅっと出てわたしの頬を汚した。
いつの間にか、わたしは元の犬の姿に戻っていた。
そして、悠太は女子中生の制服を脇に、下半身を丸裸にして、うずくまっていた。
(はやく、かえろうよ)
人間の言葉が使えなくなったわたしは、悠太のまわりをうろうろしていた。
この日以降、悠太はわたしを散歩に連れて行ってくれなくなった。
「チコともう、散歩はしたくないよ!!」
悠太と母親がごねているのが聞こえる。理由を聞いても悠太が何も話さないのだ。
結局、母親がわたしの散歩当番になった。
本当は悠太と散歩したいのに…ちぇっ、つまんないの。
(悠太が何も言い返さないからだよ…)
わたしには百合(しかも熟女の)趣味もないので、人間に変身する事はなかった。
あーあ。また、人間になって、悠太といろいろ楽しい事したいなあ。
あの日の出来事は、一日限りの淡い思い出だったのかなあ。
そっか!!外でしたのがまずかった。今度は家の中でしよう!
家に帰るのが楽しみになったぞ。
おしまい。