「ブぐっ、んむブぅっ……」
辺りに、獣じみているがどこか切なげな声が響く。
屋内だが床はなく土が剥き出しで、ところどころに藁が敷き詰められているだけ。
木造の壁とスペースを仕切る衝立からなるシンプルな造りからして、牧場か厩舎のようだ。
ただ、普通の牧場とは飼育しているものが少し異なるようであったが。
「……ほら、もっとしっかり舌を使え」
飼育員か調教師らしき男が動物に声をかける。
汚れても構わない類の作業着のようなものを着ている。
左胸に付けられた名札には名前は無く、登録されたIDなのか、バーコードと>>456という数字が記録されていた。
しかし彼が今行っている調教は、一般に動物に施されるようなものとは趣を別にしていた。
下の作業着と下着を脱いで、露になったモノを家畜に咥えさせているのだ。
「むごっ……ブぐぅ……」
大きなそれを口に含まされているその家畜の姿も通常のものとは違った。
全体的には豚のようであるが、骨格はむしろ二足歩行の人間に近い。
地面に膝をついた姿勢をして、指の代わりにヒヅメが付いたような両腕で男の腰にしがみつき、男のそれをしゃぶっている。
人間の女のそれを更に大きくしたような乳房が両の胸で揺れ、
その先端には小型モーターで振動を発する類の小さな性玩具が一つずつ、医療用に使われるような布テープで固定されていた。
「……んブゥッ!?」
振動パターンがランダムに変化するよう設定されているのか、
急に振動が強くなったり振動の仕方が変わったりするたびに二足の豚はびくっと体を強張らせる。
男性の象徴を口に入れるのにそれなりの嫌悪や羞恥はあるのか、目に涙を浮かべてはいるが、
その反面、体は激しく興奮もしているようで、荒い息で大きな鼻を鳴らし続けていた。
「何を自分だけ気持ちよくなろうとしてるんだ? メスブタが。……口の方がおろそかになってるぞ?」
男は両手で豚の頭を固定したまま、その親指と人差し指で、豚の大きな耳をくりくりとつまむように弄んだ。
魔術めいた紋様とも呪文ともつかない文字と、識別用の「>>457」という数字の刻まれた薄い金属性の耳タグが揺れる。
「んブゥ!ぐブ……ッ!」
性感帯の一つである耳を刺激されて悶える豚。
……と言っても、既に「彼」……あるいは「彼女」は、
もはや全身の中で「性感帯」と言えない部分を探す方が難しいような体に作り変えられていたのだが……。
「ふん……濡らしているのか? 淫売。誰が勝手に発情して良いと言った? いやらしいブタめ」
男の言葉通り、下腹部はぐっしょりと湿っていたが、
豚は、許可が無ければ自分で慰めることもできないように調教を重ねられていた。
股間に手を伸ばそうとしても、体に刻み込まれた記憶が自分の意思すら拒絶して動きを食い止める。
やり場の無い欲求から腰を軽く振っても、小さな尻尾が揺れる程度だ。
今の彼女にできることは、屈辱で耳まで真っ赤にしつつも、
せめて一秒でも早く許しを貰おうと、舌を激しく動かすことくらいしかない。
「……っ!」
何の予告もなく、男は豚の口内に熱く苦い液体を溢れさせた。
豚は雄の味と匂いが口の中一杯に広がる悦びを感じ……
「むごっ……ブ!? んブぐゥー……ッ!!!」
いつの間にか自分が男のそれをしゃぶる事を「悦び」と感じていた、という、そのことを認識してしまった瞬間、
自分の中で何かが瓦解していく感覚と裏腹に、豚の全身に快感が走った。
ぷちゅっ、ぴゅっ、と、秘所から愛液が潮を吹く。
「……ふぅん……無理矢理しゃぶらされて濡らして、感じて、軽くイってしまったのか? 変態だな。
恥ずかしいのが好きなのか。まったくとんでもないマゾブタだな、そら」
男は軽く蹴り上げるような動きで、豚の秘所に爪先を突き入れる。
「ブギひっ!!」
たまらず口を離して仰向けに背中から地面に倒れこむ豚。口内に残っていた精液が溢れて桃色の顔を白く汚す。
「しばらく前までは、人間の男に戻りたいからと、言うことを嫌々聞いていたんじゃなかったか?
今じゃすっかり淫乱なメスブタになって……本当に戻りたいとまだ思っているのか?
姿だけ戻ったところで逆に辛いんじゃないか? なあ、メスブタ?」
「ブぃいいっ! ブ、ブゥウウウッ! ブギィイイイ!!」
発情による充血のせいで少しぷっくりと膨らんている大陰唇を踏みつけ、足の裏でぐりぐりと責め立てる。
屈辱の極みだが、豚は悶えて鳴くことしかできない。
「……ん、『ブタ』と言われて感じているのか? いやはや、やっぱりマゾだな。マゾブタ。
そんなに恥ずかしいのが好きならいくらでも呼んでやろう。
ほら、メスブタ。マゾブタ。発情したメスブタ。交尾したくてしょうがない性欲に溺れた淫乱な変態マゾブタ」
否定したいが、鳴き声しか出ない上に、「ブタ」と言われるたびにびくんびくんと快楽に震える肉体が、
男の言葉をこれ以上なく肯定してしまっていた。
「ああもう、メスブタな上に変態マゾだなんて、おまえは真っ当な豚以下だな。
マゾな豚なんていないだろう? 普通」
男は足を退けて、小屋の中を仕切る衝立の一つに近付いた。小さな戸のように開閉できるようになっている。
「だから本来おまえには勿体無いんだが……せめて豚の仔を孕んで役に立て。
卑しい卑しいお前からすればよっぽど尊い雄豚様の子種だ。失礼の無いようにな」
そう言って開けた戸の陰から、大きな雄豚が何体も雌豚の元に殺到した。
彼女とは違い四足歩行のいたって普通な豚だ。
倒れたままの雌豚は、逃れようと思う間もなく雄豚に取り囲まれ、
無数の舌が、胸を、臍を、首を、耳を、腿を、股を……全身を這う感触と、
大きな鼻を満たす雄豚の香りによって、自分自身ですら抵抗することのできない発情状態の高みへと追い詰められる。
「ああ、わかってるとは思うが……豚と交尾したら、もう人間になんて一生戻れないから」
「ブヒイイイイイィィィィ!!!!?」
豚達を尻目にその場を後にする男の背後から、悲鳴のような響きの大きな鳴き声が上がったが……
その鳴き声に甘い響きが混じり始め、耐えられなくなった雌豚が自ら四つん這いになり雄を受け入れるのに
そう時間はかからなかった……。
おわり。