「ウチは元々そういう店だから。遠慮しないで好きなだけやって大丈夫よ」
と女は言った。
お触り許可どころか、本番まで、それもゴム無しの中出しまでOKだという。
特殊な避妊処理を施してあるから大丈夫、と女は説明したが、
勝者の特権とは言えそこまで美味い話があるのかと疑わしく思う。
わざと妊娠して莫大な慰謝料をせしめようという認知詐欺のようなものなのでは……。
と、不安を顔に表していたら、
「私たちは自らの意思でこの人の要望に従うものであり、意に反する強要は一切ありません」
と明記した念書まで用意された。マジかよ。
「緊張しないで大丈夫ですよ〜」
「そんなに固くならないで……」
「でもこの立派なところは硬くしてくれると嬉しいですぅ」
「貴方は勝ったんだから、私たちを好きにしていいのよ?」
「『御主人様』とお呼びいたしましょうか?それとも『王様』?
『飼い主様』とメスブ……いえ雌犬、なプレイでも構わないんですのよ……?」
裸体を晒し、俺を至近距離で囲んでいる十数人もの女の子達は、一人ひとりがそれぞれ
一緒に酒を飲んでお喋りするだけの仕事でも十分に稼げそうな美人揃いだった。
健康的な肉付きの良い子が多く、笑いかけるたびに豊満なバストが揺れる。
俺はかなり大きなサイズのベッドの中央で、両足を前に投げ出すように座っていたが、
両隣に座る子の胸がそれぞれ俺の両腕に押し付けられ、
後ろから俺の肩にしなだれかかるもう1人の娘の弾力を後頭部に感じる。
高そうな強い酒をじゃんじゃん注がれたこともあり、
色っぽい艶やかな甘い香りに囲まれて頭がくらくらしてくる。
興奮しすぎて逆に何も出来ずにいる俺より、むしろ女の子たちの方が積極的だった。
下腹部を布地の上から撫でさするだけでは飽き足らず、俺の服を脱がし始める。
「わぁ……おっきい♪」
サイズに関してのその発言はひょっとしたらお世辞なのかも知れないが、
心底嬉しそうに言った一人がうっとりとした表情を浮かべて、露になったそれを躊躇い無く口に含んだ。
「うぉ……おおっ」
凄く上手い。可愛い顔と裏腹に、食いしん坊の動物がエサにむしゃぶりつくように、舌がねっとりと絡みつく。
こんなんじゃすぐにでも出してしまいそうだ。
「ちょっと、いきなりがっつくんじゃないわよ。もう終わらせちゃう気?
もっとゆっくり楽しんでもらわないと……」
「ブはっ……んブふぅ……ごめんなさぁい……」
他の娘に引き離されて口による奉仕は中断される。
妙に鼻息が荒いな。頑張って口を動かしすぎて呼吸を忘れてたのか?
「ふふっ、しっかり硬くなったみたいですね。じゃあ、私が……」
さっきの娘の口の中でギンギンになり、表面を唾液で濡らした俺のモノの上に、
それを導き入れるように別の女の子が俺と向かい合わせの姿勢で腰を下ろそうとする。
特殊プレイを命令したり前戯を楽しんだりという風情も無く、
本来こちらにあるはずの主導権を握られてしまっているような感じだが、
もうこの際単純にやりまくって楽しむのもいいか、と思いはじめた俺のそれが一気にくわえ込まれる。
「うぐぉっ……」
意外にも、見た目から思っていたより、ちょっと……いや、結構、重い。
だが、その重さのおかげで、奥まで深く食い込んで……その飲み込まれた全体がきゅーっと締め付けられる。
これは新しい感覚……き……効くぅ……!
「あはぁん……!いいっ、いいですぅ……!」
「でも、なんか重そうだよ」
「そうねぇ……やっぱり『オスが上』の方が良いかしら」
「……そ、そうです……ねっ! んく……んブッ!」
「う、おっ!?」
俺の上に覆いかぶさってきたかと思うと、繋がったまま二人ごと寝返りをうつように上下を入れ替える。
上になった俺が率先して腰を動かすべきなのか、と思ったが、
それより先に、娘が添えた手が想像以上の力で俺の腰を揺らし、
自らの腰も激しく上下させてピストン運動を繰り返す。
「ぐ……す、凄ぇ……うひ……っぃい」
快感が頭の中でぐるぐる回って意識が朦朧とするぅ……。
「んブゥ、ブヒィ……」
彼女の激しい鼻息が聴こえる。
何の錯覚か知らないが、視界が桃色に染まっていく。桃色がエッチな色と言うのは本当だったのだろうか。
……いや、錯覚じゃ、無い?
俺が見ていたのは彼女の肌。その色が、
興奮によって赤みがかった、という度合いを超えて、ピンク色に染まっているのだ。
手に触れる彼女の肉は、ぷにぷにとした豊満な弾力を俺の手に返していたが……
……俺が手をついていたのは、彼女の胸ではなく、腹だった。
しかもいつの間にか、何か柔らかい毛のような感触まで……。
恐る恐る上に視線を移していく。真ん丸とした腹、更に膨らんだ胸、妙に太い首、そしてその上の顔には……
「ブヒ♪」
と楽しげな鳴き声を上げる、大きな鼻面と広がった耳が……。
豚の、顔が。
「う、うわああああぁぁ!!??」
俺はパニックになりながらも逃れようとするが、
既に勃起してしまっていた俺のペニスは、きつく絞まる膣内で入り口近くに引っ掛かり、
まるで外れそうで外れない知恵の輪のように、抜くことが出来ない。
それでいて与えられる刺激は甘美で、相手がおぞましい化け物であるにも関らず
俺の体は萎えてくれそうになかった。
更に俺の腰を掴む手が未だ強い力で俺を押さえている。それどころか無理矢理俺の腰を動かしている。
「う、ぐ、あああ……!」
俺を束縛する手はいまや指の代わりに何か硬い塊を持っていて、それがごつごつと俺の腰に当たって軽い痛みが走るが、
腰を突き入れさせられるたびに、そんな痛みなど上回る、背筋が寒くなるような感覚が生まれる。
その感覚が快感であるということを俺はとても認めたくはなかった。
既に、逃れるために手段を選んでいられるような状況ではない。もはや殴りつけてでも……!
だが、そんな考えも見透かしたように、腕を振り上げようとした瞬間に左右から別の娘たちが、
俺の両腕の手首をしっかりと捕らえた。
「ブふふっ……駄目よぉ、おいたは」
「SMプレイがお望みなら後程お付き合い致しますが、今は……ブヒィ」
「そブねぇ。まずはこのご奉仕を最後までさせてもらわなくちゃ」
他の女たちも、段々と姿が変わりつつある。鼻が突き出て耳が広がり全身が肥大化する……。
「ひ……ッ」
目の前の豚の腹を押さえていた俺の両手がとられ、支えを失った俺の上半身が前に倒れこむ。
大きな胸と腹がクッションになったが、間近に豚の顔があって息を飲んだ。
目が合って、その豚の顔が、にんまりと笑み――のような表情――を浮かべると……
俺の腰を抱えていたヒヅメ付きの両手の内、左手を離し、俺の後頭部にあてがい、
その一方で俺の顔に頭部を近づけ……って、おい、まさか、ちょっと、冗談、やめ……!
む ぢ ゅ う っ
「んぐ、むぅううううううっ!!!」
……無理矢理に、唇を、重ねられた。
触れ合うだけのライトなキスならまだ良いが、舌が、口内に入ってくる。
さらに、最悪なことに……化け物のクセに……
「……ん、む、うぅ……ッ」
……舌の使い方が、尋常じゃなく、上手かった。
「わぁ、気持ちよさそブゥ〜」
「そりゃそブでしょ。彼女、キスだけで相手をイかせたことあるって言ブもん」
「ぐ、む……ぅう〜……ッ!」
逃れようとする動きや舌で押し出そうとする動きすら絡め取られ利用されて、
口の中ってのはこんな快感を感じるような器官だったのか、と驚愕さえするような感覚が溢れ出る。
口を合わせている以上、その上の大きな鼻も俺の鼻に押し付けられていて、
その豚鼻から漏れる、不思議と甘い香りの吐息が俺の中に入ってくる……頭がおかしくなりそうだ。
「む……んブ……ッ!?」
……その甘い香りをもっと嗅ぎたいと欲するかのように、
自分の鼻の穴が広がり始めているのに気付いて、俺は戦慄した。
戦慄しつつ、しかし、逃れることが出来ない。
口内を舌で愛撫される度に、口が、顔が、快楽と共に歪んでいく。
「ブふふっ、それじゃあ、私たちも手伝って、そろそろ仕上げに入りましょうか」
「うん!ブヒ、ブヒッ」
両腕を掴んでいた豚が、俺の手を、指先から舐め、しゃぶりはじめる。
更に別の二匹の豚が、俺の足先を口に含む。
「むブ……ッ!ぐ、ブゥー……ッ!!!」
指の間を舌が蠢くぞくぞくする感触とともに、指が硬く、動かなくなっていくのを感じながらも、何も出来ない。
鼻から注ぎ込まれる甘い吐息が腹の奥に溜まっていくような感覚。鈍い快楽が段々と重く積み上げられていくようだ。
腹が、胸が、全身が膨らんでいく……嫌だ……嫌なのに、気持ち良い……気持ち良過ぎる。どうにかなってしまう。
膨らんだ部分をさらに他の豚が舐め回す。脇腹、太腿、ふくらはぎ……。
「ブごブーーーッ!!ブぐゥー!んブーーーッ!」
十数の豚の舌が全身を這い回ると同時にその皮膚の表面に体毛が生えてくる無数の快感に発狂しかける。
いや、むしろ狂えればそれでいいのかもしれない。いっそ殺してくれとすら思う。
自分の肉体が、存在が歪められ、人外の何かに堕とされてることに対する激しい嫌悪と同時に、
快楽の海で溺れて呼吸すらままならない現状に悦びを感じている自分に、心が引き裂かれそうになる。
耳が、はむはむと甘噛みされ歯と舌で揉みしだかれる度に大きく広がっていくのを、
嫌だと思っているのか嬉しいと思っているのかもう自分でもわからない。
「ブ……ッ?」
肥大化した尻の肉が、ヒヅメで両側に押し広げられる感触がした。一体何を、と思う間もなく、
ずぷうっ、と濡れたものが……舌が肛門に押し入れられる。
「んごブゥウウウッ!?」
鼻や口から吐息や唾液と共に流し込まれているのと同種の、不思議な力が内側に注ぎ込まれる感覚。
刺激を受け続けながら何故か達することの出来ない陰茎に繋がった睾丸が、膨張を始める。
大量の精液が溜まっていくのが感触として実感できるほど内側にエネルギーが溢れるのを感じて目眩がする
……片方だけでも握りこぶしより大きなサイズに……
「ブゥウウウッ!むブ、んブぅーッ!」
舌を入れている豚の鼻息がかかる尻の上に違和感を覚える。
変化の仕上げ、人外の烙印たる尻尾が生成されるのを感じて、人間としての意識が絶叫し必死で抵抗しようとする。
随意筋なのか不随意筋なのかわからないが、尻から生え始めた肉の紐を縮めようとするように念じ、集中して。
……集中して、他に向ける意識が手薄になった隙を虎視眈々と狙っていたかのように……
腰が深く突き入れられ、きゅっ、と膣が一際強く、肉棒を締め上げた。
あ。
「ブ」
だめ。
「ぐブ」
イっちま
「ごブフッ」
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!
「ブぎヒィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!!!!」
「……どう? 勝利の報酬としての、人間では味わえない快楽は」
賭けの相手だった女の声が、どこか遠くに聞こえる。
「……と言っても、安心してちょうだい」
ぼんやりと、ああ、元に戻して解放してくれるのか、と一瞬思ったが、
「この程度で、私の負け分の払いを完済し終わった、なんて思ってないから」
それを聞いて、頭が、真っ白になる。
「彼女たちの住んでいた国……と言うか、世界は、今、雌しか産まれないという原因不明の奇病が蔓延してて、ね」
言葉も、右から左に通り抜けていくようで、
「そこに雄が送り込まれれば……もてはやされ、崇められ、尊ばれること間違い無しよね」
一回だけでも気が狂いそうなのに、こんな交わりをもし、何度も、し、たら。それこ そ 死
「というわけで、勝利の報酬は一世界の雌すべて、に……」
ああ、いや、むし、ろ、死、んだり、狂え ば、らくに、なれ、るか
「……おまけして、例え死にたくても死ねないような頑丈な不老長寿の生命力と、
狂うことも壊れることもない、強固な神経もプレゼント♪」
――え――
「まあせいぜい楽しんで……また私の使い魔として使えるような、優秀な子孫を作って、ね!」
女がその言葉を言い終わると同時に、ベッドや床の感触が消えた。
落とし穴に落ちるようでもあり、逆に宙に登っていくようでもある、そんな奇妙な浮遊感。
感覚が遠ざかって……俺が今まで過ごしてきた世界が遠ざかっていくのを感じながら、
(ああ、人生の終わりに向かう場所って、天国や地獄だけじゃないんだなぁ)
などと、もはや他人事のように的外れなことしか考えられなくなっていた。
……精神を保たせるには、それくらいしかできなかった。
豚の表情筋に慣れていない俺は、自分が笑っているのか泣いているのかさえ
理解することが出来なかった。