この勝負が俺の人生で最後のギャンブルになるだろう・・・。
勝負に勝ったとしても、もう俺がギャンブルをすることはない。
もし!万が一!負けたとしたらなおさらだ・・・。
負ければ命はないのだから。
なぜ、あの時・・・小金を掴んだ時点でやめなかったんだろう。
博打の才能もないくせに調子に乗ってしまったんだろう。
後悔ばかりが頭の中でぐるぐると駆け回っている。
緊張と恐怖で脂汗が止まらない。
傍から見たら今の俺はラードの塊に見えるだろう。
諸悪の根源である対戦相手の女は、そんな俺の様子を見ながらニヤニヤと笑っていた。
糞っ!この女があんなこと言い出さなければこんなことには・・・・・・。
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事の始まりは一時間程前まで遡る。
温泉旅行の帰り道、お酒大好きな俺と友達は穴場発見!とたまたま見つけた寂れた酒場に入った。
思ったとおり客は少なく中も食べカスや泥などで汚れていた。
だが、そんなことを気にする俺たちではなかったので、席に着くなりすぐに酒を頼んだ。
一言も喋らない無愛想なマスターや、ブツブツとうるさい客どもに多少イラついたが
酒を飲み始めるとすぐにそんなことはどうでも良くなっていた。
俺たちが飲み始めてからしばらくして、一人の女が店に入って来た。
他にも席は空いていたのに、なぜかその女はわざわざ俺たちの席の近くに座った。
『酔いがすっかり冷めた頭で冷静に考えてみると、こんな夜中に若い女が一人で
こんな汚い酒場に入ってくるわけがなかった。ましてや俺たちみたいなのに話しかけるはずもない。』
しかし、すっかり出来上がっていた俺たちはこのことについて何も疑問にも思わなかった。