知らない世界  
   
 1  
   
(あ、着替え用意するの忘れてた)  
 巧はその時、ゆっくりと湯につかりながら外の台風のすさまじい風音を楽しんでいた。  
突然風呂場と脱衣所の明かりが落ちたときも、好都合ぐらいにしか感じていなかった。  
(停電なんて久しぶりだ……素っ裸で部屋まで戻ってもはるかの奴を脅かさないですむ  
な……)  
 夏の夜半に巧は妹のはるかと二人きりだ。  
 他の家族は今日はいない。というより旅行先から戻ってこれないのだった。  
 高2の巧と中3のはるかだけ、部活の関係で家族旅行を半分で切り上げて帰ってきて  
いるのだ。  
   
 手探りで、体を拭いて脱衣所へ出ると、バスタオルを腰に巻く。  
 その時、はるかの悲鳴が二階から降ってきた。  
「もうやだあ! お兄ちゃん、どこなの? 返事してよう……」  
 おそらく自分の部屋の壁や扉にぼこぼこ引っ掛かりながら、廊下に転がり出たような  
音がした。その軽めの音が、小柄なはるかの体を思い起こさせる。巧だったらどかどかと  
重たい音が響き渡っているところだろう。  
「おーい、部屋でおとなしくしていろ。懐中電灯持っていってやるから。どこにあるん  
だっけ?」  
 と、中途半端に濡れたままの足でぺたぺた階段のほうへ歩きながら、  
「着替えるからちょっと待ってな」  
 上に向かって声をかけてやる。  
(バスタオルなしで全裸ですれ違ったりしたら、興奮するだろうなあ……。でもはるか  
はもう部屋に戻ってるかな?)  
 そんなくだらないことを考えながら一応は、急に明かりがついたときのことを考えて  
バスタオルを合わせなおす。  
 
 暗闇の中、記憶を元にゆっくり階段を上りながら巧は、はるかの半泣きになった顔を  
思い浮かべて苦笑する。元気にテニスコートを走り回っている時とは違って、別人のよう  
に情けない声を出すのだ。  
 トントンと自分の足音だけがする。  
 もちろん外は大嵐だ。はるかはどこにいるのだろうかと、巧は階段を上りきり、  
「はーるかちゃーん、どーこでーすかー」  
 それとなく気持ちを和らげてやろうと呼びかけてみる。  
   
「お兄ちゃん! ……えっ?」  
「おわ! はるか、こら、よせ!」  
 突然、腰のバスタオルを毟り取られて巧は仰天した。  
 声と足音を頼りにすぐ近くに来ていたはるかがしがみつこうとしていたのだ。  
 驚いたのははるかも同じだった。  
「これ……バスタオル? やだ、お兄ちゃん、裸なの!?」  
「はっはっは! その通りだ。……だから返せっての」  
 と巧が無造作に出した手が、はるかの胸を突いていた。  
「やっ」  
 はるかが反射的に身を引いた。  
 とっさに両手で胸を覆ったので、バスタオルは手を離れてかさこそと階段をすべり落  
ちていく。  
「やわらけ……じゃなくて、わり!」  
 華奢な割にはちゃんと「ある」はるかの胸の感触にくらくらする。  
 そのために本当に慌てて手を引っ込め、巧は肘で廊下の壁を強打した。  
「痛え! ていうか、変な音したぞ? 壁が」  
「やだ、大丈夫?」  
 今度ははるかが慌てて手を出した。  
 
「や、お兄ちゃん、早く服着てきてよう!」  
「今、俺の尻を触ったな? はるかのエッチ」  
「な、なに言ってんのよ! お兄ちゃんがそんなとこにお尻出してるからでしょ!?」  
「そうか、前を向いてたらちんちんを触られてたんだな」  
「お、お兄ちゃんの馬鹿! もうお弁当作ってあげないんだからぁ!」  
「なにを言うか。作ってんのは大部分姉貴じゃねえか」  
「お兄ちゃんのお弁当には二度とミートボールが入らないんだからねっ」  
「ほー。あのパウチに入っていてお湯であっためるやつか」  
 その次のはるかの罵声を、轟音がかき消した。  
「きゃあああっ!」  
 勢いのままに、はるかは巧に飛びついていた。  
「お、おい!」  
 二度、三度と吹き荒れる風雨が窓や屋根を叩く。  
 はるかは巧の裸の背中に回した両手をそのたびきつく握り締めた。  
 自分が服を着ていない分はるかの胸の感触をはっきりと感じられて、巧は大いに慌て  
ることになった。  
 なぜなら……  
   
「は、離れろ、はるか」  
「え?」  
 はるかは巧に引き剥がされて、その両手に肩をしっかりとつかまれたままじっとして  
いる。  
 巧は小さくため息をついた。  
 反応の小ささからして、自分の身体に起こった変化に気づかれずにすんだだろうと、  
胸をなでおろす。  
 
「な。待ってろ、ちゃんと服着てくるからさ」  
 はるかがくす、と笑った。  
「お兄ちゃん、今……」  
「う……そ、それ以上言うな」  
 巧は、がっくり肩を落とした。  
 そして照れ隠しのつもりでろくでもないことを言い始めていた。  
「真っ暗ってのは面白いな」  
「そうだね……うふふ」  
「こーーーんなことをしてもはるかにはわかるまい」  
「……だいたいわかった」  
「お、お、親父には秘密だぞ」  
「どうしよっかなー」  
 はるかの口調は非常に楽しげだった。さっきまで怯えて泣きそうになっていたのがす  
っかり消えてしまっている。巧はそれを感じ取ってさらに気を緩ませ、  
「はるか、階段と廊下の電気って、ついてたか?」  
「ううん。あたし部屋に居たから消えてたよ?」  
「安心したぜ。今いきなりついたら大変だからな」  
「あはははっ。そうだよね」  
「そこでだ、はるか」  
「なあに?」  
「自分の部屋の電気、消して来い」  
「? いいけど」  
 はるかの気配が動く。手探りのべたべたという音と、スイッチの硬い音がして、ゆっ  
くりとその気配が戻ってくる。  
 
「で?」  
「これで今ついているはずの電気は風呂場だけだ」  
「そうなの?」  
「そうなの。だからはるか、おまえも全部脱ぐのだあ!」  
「え? なんでよう!」  
「懐中電灯争奪一本勝負だ。はるかは確か場所知ってたよな。俺は知らん。ハンデだ。  
勝ったほうが相手を照らし放題。さあ、脱げー」  
「悪趣味よ、お兄ちゃん……でも……」  
 はるかは、兄のわけのわからない挑戦状に興奮し始めていた。兄のいつもの悪ノリで  
はある。  
 さっきの兄のものの感触が少しおなかに残っている。それはつまり、兄がはるかの胸  
の感触に女を感じてしまったということなのだ。いつも子供扱いして、からかってばかり  
の兄がである。背伸びしたい年頃、兄妹とかそういうことに関係なく女としての自尊心を  
一人前にくすぐられている。  
 はるかは、兄の巧のものが今闇の中でどういう状態になっているのか、意識しないで  
はいられなかった。  
 どんな形をしているか知らない。  
 どんな大きさかもよく知らない。  
 それを見てみたいという好奇心と、それを見ているときの自分の顔を見られないで済  
むという安心感、さらに「ハンデ」の後押しを受けて、はるかはなにかもう勝った気にな  
っていた。  
「受けたよ、お兄ちゃん?」  
 先に風呂に入ってパジャマ姿だったはるかは、それを思い切りよく脱ぎ捨てた。少し  
だけ考えて、下着も足から抜く。  
   
 巧は、その気配の生々しさに動悸を激しくしていた。風呂上りの妹がどの程度の物を  
身につけているのか、よくは知らない。だが少なくとも、裸の自分の目の前にいる妹まで  
裸なのだ。はるかがズルをしているようには感じられなかった。そもそもそういうタイプ  
の女ではない。  
「よっしゃ。そいじゃあ……」  
「ゴー!」  
 調子よく足を踏み出した瞬間、はるかが、自分が脱いだパジャマで足を滑らせて転倒  
した。  
 そのまま巧に見事な足払いをかけてもつれ合って……  
「きゃあああ! やああ!」  
「どわ! こんなときにお約束をするなあ! 今……」  
 そして二人がお互いに五体の無事を確認してほっと一息をついた時。  
 半回転してあおむけに倒れた巧の上に、はるかが逆になって乗っていた。  
 そしてそして、巧のものは、はるかのおでこに突き立っていた。  
(つっかえ棒……これはまづい……)  
 
   
 2  
   
「お、お兄ちゃん……」  
 声が震えている。上ずった、悩ましい声だ。  
「これ……」  
「いやまあ、そのアレだ」  
 巧はなんとか理性を取り戻そうと焦る。空気を変えようとしてみるも、言葉がろくに  
出ない。  
 妹のおでこに突きたてているという状況と、腹の上の二つの柔らかい感触に意識を奪  
われ、股間の硬直が痛いくらいになっていた。  
 なにより二人とも裸なのだ。  
 はるかが顔を起こし、いきなり巧のものを握り締めた。  
「うわ、よせ!」  
 巧は慌ててはるかを押しのけようと暴れる。  
 すべてが徒労に終わった。どこに触ろうとしても、それは妹の胸や背中や、尻や、太  
股、つまり素肌なのだった。なにをしても妹の身体に対する働きかけになるように思えて  
しまって、巧は泣きそうになった。  
 そうする間に、妹の小さな手で握り締められたものが、快感を訴え始めている。  
「お兄ちゃん……」  
 感触に浸るような甘い声で、はるかが何度もそうつぶやく。  
「た、頼む。はるか、それ、放してくれ」  
 反応する気配はない。  
「はるか」  
 名前だけ呼んで、さらに促す。  
 効果がない。  
(……こうなったら積極的に攻撃して引かせてやる)  
 
 巧がそう思った時だった。  
「今だけ、あたしにも使わせてよ」  
 巧はその言葉に固まってしまった。  
(……こいつはいったい、どこでそういう言い方を覚えてくるんだ)  
 姉の都にも似ていて綺麗なはるかの顔を、思い浮かべた。  
「冗談言ってんじゃねえ」  
「冗談なんかじゃないよ……それに」  
「な、なんだよ」  
「お兄ちゃんもその気じゃない」  
「お、俺は……おまえとつきあってはやれないぞ。妹だし」  
「お兄ちゃんがつきあってる人、知ってるもん」  
「……まじで?」  
「うん。だから別にいいでしょ?」  
「……」  
「……」  
「……一回。一回だけだからな」  
「うん……。初体験は一回だけだもんね……」  
「え? おい、なに言って……」  
 その後の言葉を巧は続けられなかった。ペニスを覆う熱く柔らかい感触に、うめき声  
を上げるハメになっていたからだ。  
「お、おまえこんなことまで知って」  
「お兄ちゃんの本に載ってるでしょ?」  
 はるかが口をはずして、応える。  
「お兄ちゃんの本っていう言い方はよせ」  
「ふぁーい」  
 
 すでに口の中にモノを戻して舐めあげようとしている。  
 よけいなことを考えるのはやめよう、と巧は決めた。  
「やっ」  
 とっさにはるかが低く悲鳴を上げるのを無視して、巧は妹の身体を抱き上げると、自  
分の部屋の方へ、そろそろと歩き出した。  
 腕の中で、裸の妹の身体がうごめいている。  
 なにも考えられない。一秒でも早く、自分のベッドに妹を横たえたかった。そして…  
…  
「お姫様だっこ……えへへ」  
 のんきな声が聞える。  
   
「好き」と言われた事があるのを巧は思い出す。  
 その時は、どういう意味で好きなのか確かめるつもりもなく、「俺もおまえのことが  
大好きだぞ?」と普通に答えていた。  
 無論、意味に気づかない振りをしていた。巧の答えに黙って抱きついて、すぐ離れた  
はるかにしても、巧がわかっていて気づかない振りをしたのを知っていたかもしれない。  
   
 ベッドの柔らかい布団の上で巧の体重を徐々に受けながら、はるかは身体を小刻みに  
震わせている。  
 腹と腹が合わさって、巧のペニスは今、はるかの両太股の間にある。  
 巧の右手が、はるかの胸のふくらみに押し付けられた。  
「!」  
 はるかの身体が一瞬硬直する。  
「ね! お兄ちゃん」  
 
 はるかが、巧の手を押しとどめるように口を開いた。  
「なんだ、やめたくなったか」  
「ひとつ賭けをしない?」  
「賭け?」  
「うん。部屋の電気、ONにしておくの。それで、最後まで……しちゃう……までに電  
気がついちゃったらお兄ちゃんはあたしとつきあう」  
「……」  
「冗談よ」  
「……」  
「……嫌なこと言ってごめんね、お兄ちゃん。でも、ちゃんと、してくれるよね?」  
「電気つけときゃいいんだな?」  
「えっ…………」  
 巧の感触が腕の中から消えると、とたんにはるかは不安になる。  
 例えば、今すぐ明るくなってしまったら?  
 本当にその賭けの通りに二人はなるのかと。  
 カチ、という音がして、すぐにはるかの上に巧の体重が戻ってきた。  
 胸が詰まりそうになって、はるかは熱く息をもらした。  
   
 巧ははるかが羞恥を覚えるようになって以来、その裸を見たことがない。  
 つまりふくらんだ胸も、恥部を覆う恥毛も、見たことがない。  
 その、見たことのない柔らかい胸をやさしく揉みはじめる。  
「あっ」  
 少しだけ声を漏らしたはるかが、その後の喘ぎをすべて押し殺しているのを感じて、  
巧ははるかに囁きかけた。  
「今から声を立てるな。俺ははるかの胸の形も、下の毛の生え方も知らない。ここは暗  
闇でなにも見えない。おまえは今からしばらく、知らない女だ」  
 
「……」  
「はるかはとてもかわいい、俺の自慢の妹だ。兄として出来る限り守ってやりたい。だ  
から、今俺の腕の中にいるのは別の女だ」  
 唇を、片方の乳首に乗せた。  
「いきずりのどうでもいい女とは違うけど……妹のはるかほど近くにいないから、やわ  
らかくて、あたたかくて、肌のなめらかなその身体を征服してやりたくなる、生身の一人  
の女だ」  
 はるかは、身体の中から噴き出してくる快感に悶えた。  
 
 兄の言葉ひとつひとつの音の響きに細胞が震え、揉まれ撫でられている胸、腹、そし  
て舌に舐め上げられる乳首の感触が絡まりあって、ひとつの波になってはるかを襲ってい  
た。  
 それからしばらく、兄が自分にしたことをはるかは思い出せなかった。  
 快楽に身体と神経を持って行かれて、なにもわからない。ただ、巧にすがりついてい  
た。  
 兄が女の身体のことをよく知っているのを、悔しく思う余裕もない。  
 自分の身体が兄を喜ばせられているか、不安になる余裕も。  
 他人に与えられる快感を初めて知ったはるかは、その受け止め方を知らず波の中で溺  
れている。  
 
「大丈夫か」  
 巧の声に、はるかは闇の中に引き戻されていた。  
 外の風雨の鳴り響く闇の中、そして兄の身体に包み込まれた闇の中だ。  
 返事をする代わりに、はるかは頬を兄の胸に摺り寄せた。  
 巧がほっと息をつくような気配を見せて、  
 
「そろそろ、やるよ」  
 巧が上体を起こし、あおむけのはるかの両足をゆっくりと広げた。  
 はるかは巧の言い付けを忠実に守り、ひたすら静かだった。  
 だが、巧には痛いほどわかる。見えないけれど、はるかは身体を羞恥と興奮に震わせ  
ながら巧を見つめ、その行為を求めているのだ。  
 ゆっくりと上体をかぶせる。  
 指を秘部に這わせると、すでに潤みきったそこからにちゃりと音がした。  
 巧のものも、すでに先端をぬめらせていた。  
 巧はそっとはるかの頬を撫でてから、両手でその腰を抱えた。  
 ゆっくりと、先端を入り口に擦り付けていく。  
 
   
 3  
   
「っ! …………っ」  
 はるかの、殺しきれない悲鳴のようなもの。  
 それを聞きながら、入り口のあまりの感触に巧は身体を引きつらせた。  
 はるかは初体験と言った。はるかに与える痛みのことを考える。  
(人によるらしいとは言うけど、やっぱりなあ)  
 充分に潤っているように感じるものの、そこはまだ男を知らない。  
「おまえ……結構感じやすいよな。おっと、じゃべるなよ」  
 はるかの震えと、身体の熱さを手のひらに吸わせながら、指を唇に持っていく。口づ  
けだけはできないと巧は考える。唇を、毎日いろんな形に動くはるかの唇を見てきた。そ  
の感触を自分の唇で知ってしまったら……  
 指を突くと、はるかは口を開いて受け入れようとする。巧は引いて、唇をなぞる。そ  
れを追って、また口に入れようとする。巧は最後まで避けつづけて、手をはるかから離し  
た。  
 それが口づけの代わりにした。  
 巧はもう一度だけはるかの髪を撫でる事で、頭を切り替える。  
 はるかの中に、入り始めた。  
 はるかの身体が逃げようとするのを、両手で押さえてやる。巧にとって一番慎重にな  
らなければいけない時間だ。  
 無言の少女の荒い息が、巧の心を撫でる。  
 ほんの少しずつだけ腰を進め、そのたび力をかけないで進めそうな角度を探して、膣  
壁の抵抗を確かめる。  
 ともすれば気持ちよさだけに身体を持って行かれそうになる。そのたびはるかの笑顔  
を思い浮かべ、いたわろうと思いなおす。  
 
 停電の為にエアコンもつけられず、暴風雨のため窓も明けられない。暑い。だが腕の  
中のはるかはじっと巧の動きに耐えている。巧の汗はそのはるかの小さな身体に今、した  
たり落ちていることだろう。それだけでも自分が妹を犯しているのだという背徳感を煽っ  
てくれる。やる以上はそこで得られる全ての快楽を持ちかえることにためらいはない。  
 それだけにいっそう、巧ははるかをいたわった。  
 ゆっくりと、ゆっくりと、巧のものははるかの身体の奥へと進む。やがて一番奥につ  
きあたり、さらに押し上げようとしてから、そこで巧は腰を止めた。  
 お互いの恥毛が交じり合って擦れる。腰と腰が密着しているのを感じて息をつく。  
 完全に埋没したものが、はるかの膣内をきつく押し広げている。  
 膣壁から絶え間なく与えられる感触に酔いしれる。  
(これがはるかの……)  
 時々びくびくと、締める動きが加わり、はるかの呼吸に合わせて身体の動きも伝わっ  
てきた。  
(一回だけ、か……)  
 最後まで明かりがつかなかったら、そうなる。そういう約束だ。  
 はるかが、肩で息をしている。  
 巧が覆い被されば完全に隠れそうな小さな身体は、汗にまみれていた。  
 その汗を拭い、巧が身体を重ねると、待ちかねたように両手で抱きしめてきた。胸の  
感触を楽しみながら抱き返す。  
   
 はるかは、思ったほどの痛みもなくむしろ、自分のそこがいっぱいに押し広げられて  
いるという感覚と、それが兄のものによってであるという実感に、いわば至福の時を味わ  
っていた。  
 涙があふれてきても不思議ではないくらい切なかった。  
 これが兄の巧の感触なのだ。さっき巧がはるかに言い聞かせた言葉を思い出す。そん  
な言葉が必要になるほど、危うい世界に二人はいる。  
 
 それでもいいのだ。  
 兄の汗が落ちたところにしびれるような感触が広がる。  
 それを拭われてしまって、少しだけ寂しかった。でもその跡に、兄の肌が優しくきつ  
く重ねられていた。  
 はるかを思って巧は動こうとしない。はるかは巧のものを見たことはない。形はさっ  
き自分の手で確かめた。それを今自分の身体の中にあるものとつなぎあわせてみる。  
(お兄ちゃんの……)  
 はるかは、それに動いて欲しいと思った。指先で兄の背中に語り掛けてみる。  
 それに反応して、巧が上体を起こす。「動いても大丈夫か?」と優しい言葉が返って  
くる。たまらなくなって両足を兄の腰に回し、促した。  
 これで言葉はもう必要ない。  
 ずるりと、引き出された。さすがにこうやって擦られると痛い。最初にゆっくり入れ  
てくれた兄のためにも、痛みに反応するまいとはるかは思った。  
 入り口まで引いたものが、再び突き戻ってくる。その繰り返しが始まった。  
 恥ずかしくも不思議な、むずがゆくなるような行為だった。  
   
 巧は脳を灼かれるような快感を味わっていた。  
 ただでさえきつい処女のそこの感触に、腰がしびれていく。  
 それだけだと、思いこむことはできない。  
 言葉でどう気持ちをごまかそうとも、自分のもので妹の膣内をえぐっていることに背  
徳的な喜びを感じないでいることはできなかった。  
 一突きごとにはるかの身体がうごめく。  
 快感も増してきていた。背筋に立ち上る耐えがたいものが爆発的に股間に走っていく。  
 
 それを感じた瞬間に、巧ははるかの中を名残惜しそうに一度強く突き、引き抜いた。  
 
快感がはじけ、ほとばしったものははるかの恥毛の上からへそのあたりにうちつけられた。  
 
 引き抜いた瞬間の、両手ではるかの腰をつよく掴んだ姿勢のまま、しばらく巧は息を  
吐いていた。ティッシュの箱を手繰り寄せ、はるかの身体の汚れているところを確かめな  
がらふいてやる。その手を、はるかがとらえた。  
 巧は逆らわず、はるかの上に身体を重ねた。  
 明かりは、つかなかった。  
 外の嵐が少し弱くなっている。  
 そのまま、二人は互いの身体の感触に身をゆだねていた。  
 離れがたいのは、離れたら終わってしまうからだ。  
 それでも、離れなければいけなかった。  
   
 巧が着替えに袖を通してベッドのところにに戻る。  
「あたしのパジャマ、取ってきて」  
「!」  
 少しかすれた妹の声に、巧は衝撃を受けていた。  
 長い間聞けなかった声を聞いたというより、事を終えた恋人の出したような声を聞い  
たという感じがした。  
「……待ってろ」  
 かろうじてそう言ったが、巧は今の自分が他人に見せられる顔をしてるかどうか自信  
が持てなかった。  
 廊下に出て、はるかのパジャマと下着を拾い上げる。持つ手が少し震える。  
 その時突然、巧の部屋の明かりがついた。  
 とっさに手が動いて、巧は部屋の扉を閉じた。かなり大きな音がした。  
「お兄ちゃん……」  
 
 すぐ近くから、はるかの声が聞えた。巧は、明かりの中で裸で立っている、扉の向う  
のはるかの姿を想像した。  
 扉を開けてしまいたい。けれど……  
「開けるなよ。ここに置いとく。俺は風呂に入りなおしてくるから。…………おやすみ、  
はるか。電気は消しといてくれよ」  
「待って、お兄ちゃん!」  
 巧は答えずに廊下の明かりをつけ、足早に階段を降りていった。  
   
(やっちまった、なあ……)  
 汗だくの身体を冷ましながら、巧は惚け気味になっていた。  
(心配しなくても、明日からまた知らん顔してやるからな、はるか。…………先に風呂  
入れてやるべきだったかな)  
 手早くすませ、緊張しながら二階に上がっていく。自室は真っ暗で、はるかの姿もな  
かった。当然のことに失望している自分がいる。  
「はるか」  
 部屋の前まで行って、声をかけておく。少し間があって、  
「……なあに?」  
「おまえも、入ってこいよ」  
 その言葉を聞いた瞬間、はるかは手にしていたブラシを取り落とした。入りなおさな  
ければならない理由と、今ブラシをかけている理由に改めて動揺する。  
「……うん」  
 タイミングを失ってから、「誰のせいよ」と言ってしまえばよかったと思う。  
「おやすみ、お兄ちゃん」  
「おやすみ」  
 兄の足音が遠ざかる。二人の夜も終わる。  
 朝が来て、また夜が来ても二人は仲のいい明るい兄妹でありつづけている。  
 はるかが巧の部屋を訪れて遊ぶのも今まで通りだ。  
 たまにはるかが部屋に入ってすぐ、明かりを消すことがある。  
 闇の中のことは誰も知らない。  
   
                              了  
 

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル