そのお客がやってきたのは、ハクが旅館の女将となって一月ほど経った頃だ。  
前まではこの旅館に宿泊客が来る事などほとんど無かったのだが、  
ハクを妻として迎え若女将として仕事をするようになってから客の入りが良くなっており、  
家族経営の旅館は妻の連子のコハクもフル活用してなんとか営業しているのが現状だ。  
そのお客が来たのは、古めかしい帳場に座りながら、帳簿を捲って最近のお客の入りを振り返っていた時で、  
見た感じは、落ち着いた感じの物静かな女性といったところだろうが、すぐに理解できた。  
彼女が人間で無いと言う事が。  
すっきりとした体つきで、その表情から、おっとりとした印象を漂わせた女性である。  
 
「あの、予約をした‘弐口(ふたくち)美穂’ですが」  
 
不安そうな表情で玄関を眺め回しながら声をかけてきたが、口調も印象どおりに控えめ。  
その不安そうな表情をかき消すように、幸一は飛び切りの笑顔で対応する。  
 
「はい、承っております。それでは、こちらの宿泊名簿にご記入ください」  
 
基本的に、この旅館は電話での予約がメインである。  
お客のほとんどは彼女のように人間世界に溶け込み、独自の住居を構えている者達で、そのために安心して対応できる。  
時々飛び込みのお客も来るが、その場合は色々と問題を抱えている場合が多い。  
つまり、襲われる場合が多いと言う事だ。  
 
「名前、住所、電話番号と……種別?種族?」  
 
記入欄の最後にある不思議な項目を見ると、キョトンとした顔を目の前の主に向けた。  
 
「あぁ、それはですね、お客様の場合は妖怪とでも書いて頂ければ結構です。」  
「妖怪って、あの、私の正体はもうばれているのでしょうか?」  
「えぇ、ここはそういう所ですからね……」  
 
このお客は友人に紹介されたとの事であるが。  
ただ、“幽霊や妖怪でも安心してリラックスできる旅館”としか言われていなかったようで、  
お客の9割以上が人外の者達であることまでは聞いていなかったらしい。  
 
「種族の方は……まぁ、記載されなくても結構ですが、サービスの都合がありますので」  
「はぁ、サービス?」  
 
特に、妖怪の類になると、食べる物や用意する物を色々と選ばなければならない場合が多い。  
この前のお菊さんとの時は、「あたしっ、お皿を割らないと夜眠れないのぉー」と言って10枚近く皿割るし、  
偶然同じ日に宿泊していたカッパ娘さんは「きゅうりっもっとイッパイ頂戴っ……夜に使う分もね♪」  
と言ってきゅうりばっかり要求するし……  
まぁ、この時はカッパ娘さんの頭の上にある皿をみたお菊さんが艶かしい視線を投げつけ、  
それを感じたカッパ娘さんが身震いをするという微笑ましい場面もあった。  
本当は電話予約の際に要求することは全部言って頂けるとありがたいのだが、  
メリーさんみたく道を一つ曲がる度に電話してこられて困る場合もある。  
当の女性は旅館の事を詳しく知らなかったらしく、不思議そうな顔をしながらも全て記入してくれ、  
サラサラと種族の欄に記入した文字を見て、ようやく女性の正体を知る事ができた。  
 
「“二口女”・・・ほぉ、ならば夕食は、後ろのお口用にもう一つ必要ですね」  
「そうよっ、よくわかっているじゃないっ」  
 
夕食の相談をはじめた途端、今まで沈黙を守っていた後ろの口が声を上げた。  
 
「こういう旅館ならあたしも喋り放題ね、あたしっ、ごはん100杯はいくわよ」  
「だっ、ダメだよぉ、人間のお客様もいるんだからぁ、静かにしててよぉ」  
「ははっ、承知しました。こちらも、夜中に出歩かれて、冷蔵庫を空にされては困りますので」  
 
後ろの口は嬉しそうに声を上げるが、表の顔の方は恥ずかしさからか真っ赤に染まっている。  
正直、ちょっと萌えた。  
静かで落ち着いた謙虚な感じの女性と、その後ろについた正直で明るい口。  
どうやら、後ろの口は別の意思を持っているようだ。  
二口女には、前後両方とも同じ人格で支配している場合と、別々の意識が混在している場合があると聞いた事があり、  
今回の場合は後者ということになる。  
 
「ねぇお兄さん、私おなかすいちゃった。先に温泉入ってくるから、夕飯と、あと布団の用意も……」  
「ああっ、もうっ」  
 
自分の意識ではどうにも制御できない後ろの口のマシンガントークを聞き、ガックリと首をうなだれた。  
で、1時間ほど経って  
 
「いやぁ、いいお湯だったぁ、お肌もつるつる、腹もいい感じに空いてきたし、ガッツリ喰うわよ」  
「ご飯はっ、ご飯はまだなの?早くして頂戴ねっ」  
「メーシッ、メーシッ、メーシッ」  
 
後ろの口から出た言葉を聞き、前の口の方は呆れて黙ったままである。  
 
「そうですか、それは良うございました。夕飯のほうもすぐに用意を……」  
「失礼しまーす、、、うぅ、重いよぉ、パパもてつだってぇ」  
 
タイミング良く、仲居の衣装を身に着けたコハクが夕飯を運んできたが、それが半端な量ではない。  
盆に載せた普通の食事がひとつで、これは前の口が食べる分だと言う事が分かるが、  
さらに、巨大な飯桶を山のように抱えてきたのである。  
盆に載せた飯は前に、そして、後ろの方に大量の飯桶を配置した。  
 
「あの、コレでよろしいでしょうか?」  
「はい、ご迷惑をおかけします」  
 
伏目がちに礼を言うと箸を手に取り食事をはじめる。  
箸を手に持ち、盆に載った飯を口に運ぶのは何の違和感を覚えることはないのだが、  
その後ろでは、飯を運んできた二人を横目に衝撃の光景が繰り広げられる。  
 
「あの・・・茶碗によそいましょうか?」  
「結構よ、私はこっちの方が好きだし」  
 
二口女の髪の毛がワサワサ蠢いたかと思うと、飯桶に絡みついてゆっくりと持ち上げ、  
箸にも髪の毛を絡みつけると、後ろの口にゆっくりと近づけて、  
“ガツガツガツガツ”  
一気に口の中へとにかきこんだ。  
目にもとまらぬスピードで一つ目の飯桶を空にすると、それをポイッと投げ捨て、  
二つ目の飯桶に手(髪)をかける。  
あっけにとられながらその光景を眺めていると、5分と掛からず全ての飯桶が空になった。  
 
「こっ、コラッ、私のご飯にまで手付けちゃダメ」  
「えぇー、だってあんた食べるの遅いんだもん」  
 
髪の毛をシュルシュルと伸ばし、絡み付けた箸を前の膳へと伸ばそうとするが、寸前で動きが止まる。  
蠢く髪の毛は、後ろの口だけでなく、前の彼女にも操作する事が可能なようだ。  
 
「ごちそうさまでした」  
「ゲプッ、ふぅ、私も満足したわ」  
「もおっ、お下品なまねは止してっていつも言っているでしょ?」  
「いいじゃないの、ここにいるのはお兄さんだけだし、しゃべり放題、いい所だわ」  
 
相変らず甲高い声を上げる後ろの口に愚痴をこぼすが、聞いてくれるとは思っていないよう。  
再び肩を落とす二口女だったが、急に、何かに取り付かれたかのような動きを見せる。  
 
「んっ、くっ、ふあぁ」  
 
口から甘い吐息が聞こえ、自分の身体を抱いて身悶える。  
 
「ほらっ、さっさと私に譲りなさい、こんな良い男、あなたも抱きたいと思ったでしょ?」  
「ひあっ、こらっ、だめよっ、だめっ、意識が、遠くにっ」  
「どうせ私には勝てないんだから、無駄な抵抗はよしなさい」  
「んっ、ふぅ、お兄さん、逃げて、逃げてくだ……さ……」  
 
そういった直後、彼女の意識は失われ、抱きつくように倒れこんできた。  
 
「ちょっ、お客様、大丈夫ですか、お客様!」  
 
肩をゆすって意識の有無を確認するも、意思の無い彼女の首は、ガクガクとゆれるだけである。  
 
「これは、大変だ、おい、誰かっ」  
 
それは、応援を呼ぶために叫び声をあげた瞬間であった。  
 
‘ガシッ’  
「つっかま〜えたっ♪」  
 
意識を喪失したと思っていた彼女が起きると同時に体をがっしりとつかみ、全体重をかけて圧し掛かってきたのである。  
だが、その顔つきはおっとりとした彼女の顔ではなかった。  
意地悪げな光を包んだ細い目に、にやりと笑うたびに吊り上る口の端。  
そう、まるで後ろの口の発する台詞に相応しい顔つきになっていたのである。  
 
「なっ、あれっ?」  
「ふふっ、状況が把握できなくて困惑しているみたいね、でも、薄々は気がついているでしょ?」  
「その身体を支配しているのは、後ろの口の方だってことがかい?」  
「正解、なかなか鋭いじゃないの、さすがは人外旅館の若旦那ね」  
 
この時点では、幸一にも余裕があった。  
妻を迎える以前からこの手の客はよく来ていたし、襲われる事もしばしばあった。  
その場合は、大抵おいしく食べられてしまうのだが、2割くらいの確立で逃げる事もできる。  
今回の場合、人外といっても相手は二口女であり、力もそこまで強いわけではない。  
実際に押さえ込まれてはいたが、じわじわと身体を起こし、反撃を開始しようとしていた。  
だが……  
 
‘シュルシュルシュル’  
「ん、なっ!?」  
「残念でした、妖怪を甘く見ない事よ、じゃまな服は全部、脱ぎ脱ぎしましょうね」  
 
力任せで振りほどこうとすると、二口女の長い髪がさらに伸び、譲の身体に絡みついた。  
服の内側に入り込んだ髪の毛は、器用に服を脱がし始め、双方ともいつの間にか素っ裸になっていた。  
 
「お、お客様、当方ではそのようなサービスは……」  
「してるんでしょ?知ってるわよ、ここの若旦那は最高だって評判だものね」  
「え、でも、最初は何も知らないような事を言っていたはずでは?」  
「ふふっ、美穂は知らなくても、私が知っている事もあるのよ」  
「む、くうっ」  
 
気が付けば、譲は大の字で床に縛り付けられたような状態になっていた。  
たかが髪の毛とタカをくくり、力任せに引っ張ってみたが、  
 
「いやんっ、痛いっ」  
「うっ、申し訳ありません」  
「……なんてね、ウ・ソ・よっ」  
 
他愛も無いやり取りをしている間に、細い髪の毛が束となって譲の四肢を拘束し、体の自由を完全に奪っていた。  
当の二口女は譲の腹に尻を乗せ、怪しく光る瞳で完全な拘束を確認し、ご満悦な表情であった。  
 
‘シュルリッ’  
「ひあっ、なっ、なんだっ」  
「んっ、ふふっ、これから貴方を狂わせる、その最初の挨拶よ」  
 
髪の毛が譲のペニスに幾重にも巻きつくと、それぞれが意思を持つように動き回る。  
竿を強く、易しく、時には激しくさするその動きは、人間には決して真似のでき無い技である。  
譲の上に尻を据えた二口女の身体が邪魔で、自分のペニスがどう責められているのか見る事はできないが、  
二口女の頭から伸びる髪の毛が、ザワザワと蠢いているのだけが見て取れた。  
根元から先端に向かって続けられるその動きは、その辺の男を射精へ導くのには十分な動きであったが、  
経験豊か人外旅館の若旦那に対しては、まだまだ足りるものではなかった。  
 
「大概の男はこうしただけで壊れちゃうのに……あなた、やっぱりすごいわ」  
「でも、こうしたらどうなるかしらね?」  
「え……ひっ」  
 
二口女の長い髪が、拘束された身体の表面をサワサワと撫でた。  
さらに、自分の手を使い、譲の乳首辺りを入念に、塗りこむように髪の毛をこすりつける。  
 
「うわっ、ジョリジョリいって、こんなの初めてだ……ひっ!?」  
 
今度は、滑った何かがペニスに触れた。  
 
「何が触れたのか分からないって?ふふ、‘コレ’よ」  
「二口女としては、最初はコレで責めるのが定石なんだけど、それじゃ面白くないでしょ?」  
「ま、そのせいで一族の中でも変わり者って言われてるけどね」  
 
譲の眼前に出現したのは、二口女の後ろの口から出された巨大な舌であった。  
幅も10センチ以上、長さも今出ている分だけで3メートル近くはありそうな舌が、  
蛇のようにのたうっているのである。  
 
「まずは、全身を唾液まみれにしてあげるわ」  
 
と、言うと、伸びた舌が全身を這い回り、あっという間に全身が唾液まみれにされてしまった。  
長い髪が弄り、敏感になった体の表面を、唾液で濡れた巨大な舌が這い回る。  
 
「ふふっ、体全体がヌラヌラと光って……そそるわねぇ、おいしそうよ」  
 
そして、舌がペニスに巻きついた。しかも、髪の毛が激しく巻きついた状態のままである。  
ペニスに巻きついた髪の毛に巨大な舌が唾液を塗りつけ、髪の毛がじょりじょりとさすり、  
今までに感じたことの無い快感が譲るのか阪神を襲っていた。  
 
「ひあっ、待ってくれ、このままじゃ、だしちまうよ」  
「あら、射精しちゃうの?私はいつでも大歓迎よ?さぁ、さっさとわたしに精を捧げなさい」  
 
二口女は、譲の精を何度でも受け入れる準備ができているようであったが、  
わずかに残ったプライドが許さないのか、譲は二口女に従う気が無いようであった。  
予想外に抵抗する譲の態度に、二口女も最後の手段に打って出た。  
 
「ねぇ、私の後ろの口で犯されてみたいと思わない?」  
「私の口にモグモグされて、精液を出し尽くしてみたいと思わない?」  
「でも……この体勢でどうやるっていうんだ?できやしないだろ?」  
「あら、私が何者だか忘れてはいない?私は……妖怪よ」  
 
譲の言葉通り、二口女は床に大の字に拘束した譲の腹の上にドスリと尻を置いているため、  
普通に考えたら口を使ったフェラチオなど不可能である。  
……普通に、彼女が人間であったらの話だ。  
 
‘ザワワワワワワワ’  
刹那、二口女の髪の毛が譲の視界一杯に拡がったかと思うと、渦を巻くようにして絡み合い、集束してゆく。  
その中央から髪の毛を掻き分けるように巨大な口と巨大で長い舌が姿を現すと、譲の眼前で静止し、  
長く伸びた舌で譲の顔面をゆっくりと嘗め回しながら、自分の過去を話し始めた。  
 
「これが‘私’二口女の本当の姿」  
「昔は、ふふっ、こうやってね、大きく口を開けては、人間を喰らっていたのよ」  
「それが祟って、ある退魔士に破れ、ほとんどの場合は美穂に身体を封じられているの」  
「でもね、奥手な美穂の性欲が異常に高まると、こうして私が表に出てこられる」  
「美穂の身体が満足すると再び不自由な後ろの口……だから、今はタップリ楽しまないと」  
「さぁ、あなたにも、‘私に食べてもらいたい’って思うくらいの責めをしてあげるわ」  
‘ブチュー’  
 
二口女による、熱い口付け。  
と言っても、二口女の巨大な口に対して人間である譲の口はサイズが小さすぎ、  
譲の顔全体が口の中に呑み込まれたような状態になっている。  
顔をジュプジュプと吸い上げながら、その中では舌が激しく動き回り、  
完全に顔を塞がれた譲は呼吸が出来ず、拘束されながらもジタバタともがく。  
口が離れると唾液まみれになった譲の顔が現れ、呼吸を荒げていた。  
 
「どうだった?私の熱い口付けは。もう、虜になってしまいそうでしょ?」  
 
おもむろに口を大きく開くと、顔を犯していた口の中を譲に見せ付ける。  
その口の中で蠢く舌は一本だけではなく、何十本もの舌のような突起が存在し、  
譲のペニスを犯しつくそうと狙っているのだ。  
(この口の中でしゃぶってもらったら……どうなってしまうのだろうか)  
と、不安と期待が入り乱れた表情を見せる。  
 
「ドロドロの唾液まみれになってかわいい顔、さぁ、いよいよペニスを責めてあげるわ」  
 
「……そう、そんなに射精したくないの?気持ち良くなりたくないの?」  
「じゃあ、今までとは違う‘快感’をあなたにあげるわ」  
 
譲がその言葉の意味を理解しかねていると、二口女の髪の毛がペニスの根元を激しく締め付けた。  
激しい締め付けではないが、勃起したペニスにはさらに血が集まり、硬度が増してゆく。  
また、譲の眼前では、何本かの髪の毛がしゅるしゅると現れ、‘紙縒り’のような束となって現れる。  
その先端は鋭く尖り、二口女はそれを譲に見せ付けているのだ。  
 
「ねぇ、これをどうやって使うと思う?これでどうやってあなたを責めると思う?」  
「ふふっ、こうするのよっ」  
 
髪の毛で作り出した‘紙縒り’を譲の下半身へと移動させると、  
‘ズプッ’と、尿道口へ差し込んだのである。  
 
「ひっ、いぎっいぃぃっ」  
 
突然の痛みを伴った快感に、譲は歓喜とも痛みによる絶叫ともとれる雄たけびを上げた。  
尿道に進入した髪の毛は、狭い道をギチギチと拡げるように侵入し、  
仕舞いにはその道を塞いでしまった。  
舌による奉仕は相変らず続けられており、行き場を失った精子が譲の中で逆流する。  
根元を締め付けられて快感は持続されながらも、尿道を塞がれて射精する事ができない。  
 
「どう?根元を押さえつけられて、尿道を塞がれて、出したくても出せないでしょう?」  
「あぐっ、ひっ、ぎあっ」  
「でもね、もし、私に食べて欲しいって言うのなら、出させてあげないことも無いわよ?」  
「うっ、はうっ、いっ」  
「あら、射精がしたくてしたくて、ろくに声も出せないみたいねぇ」  
 
再び誘惑の言葉を譲に投げかけながらも、尿道に進入した髪はどんどん奥へと入ってゆく。  
 
「くっ、痛いっ、やめてくれぇ」  
「いやよ、あなたが出したくないみたいだから、こうしてあげてるんじゃないの?」  
「ふふっ、痛みに耐えるその表情も、たまらなくそそるわねぇ」  
 
この二口女にとっては、男を激しく攻め立てることも‘快感’のひとつであった。  
強い意志を持ち、喰われることを望まない相手には、さらなる快楽を持って答える。  
 
「ダメだっ、俺の……壊れちまうっ!」  
「良いわよ、壊れちゃいなさい、私が責任を持って食べてあげるからねっ」  
「出るっ……出るっ……うわあぁっ」  
 
ビクビクッと長い痙攣を続け、大量の精液を吹き上げると、  
噴出した精液が漆黒の髪の毛を白く染め上げ、二口女は、驚きと喜び持って答えた。  
 
「すっ、すごいわっ、尿道を髪の毛で塞いでいるのに、それを押しのけての射精……」  
「やっぱり最高よ、うふっ、うふふふふふっ」  
 
自分の責めている男の素晴らしさに興奮し、背筋をゾクゾクと震わせる二口女に対し、  
譲のほうは、その激しい射精の後、意識を喪失してしまっていた。  
 
譲の意識が戻ると、未だに床に大の字にされていた。  
開放されて自由になったわけではなく、髪の毛も舌も、相変らず譲を舐り尽しているが、  
先ほどまでペニスをしゃぶっていた口は元に戻っている。  
 
「ふふっ、髪の毛で雁字搦めにされて、尿道を責められて、視姦されながら舌でフェラチオされる気分はいかが、若旦那さん」  
「一人でこんな事できるのは、人外広しといえども、私くらいのものよ?」  
「さ、もっとその喘ぐ顔を見せてちょうだいな」  
「……残念だけど、もうすぐ美穂の意識が戻る、あと少しの間だけでも、私の虜でいてちょうだい」  
 
‘二口女’が本来の姿を隠して美穂の後ろに戻ったのは、身体の支配権を失いつつあるためだろうが、相変らずペニスに舌を絡みつけており、  
最初の時と同じように譲の腹に尻を乗せ、怪しい光の燈った瞳で喘ぐ様を見つめている。  
その視線は、まるで質量を持っているかのようにねっとりと絡みつき、譲を犯す。  
ペニスを舌で舐られながらも、髪で根元を締め付けられ、今度は尿道を完全に塞がれて射精ができずに  
焦燥感が募っていたが、譲を犯し尽くしていた全てのモノが、スッとその場から引き上げた。  
またお預けかとも思ったが、二口女がゆっくりと腰を上げ、譲のペニスに己のヴァギナをあてがう。  
 
「ね、見て、私のココもこんなに濡れてきちゃった、そろそろ入れてもいいわよね?」  
 
ペニスの先端とヴァギナの入り口が触れると、クチュリと水音を立て、  
何枚ものヒダが‘早く入れてくれ’と言わんばかりに絡み付いていた。  
腰を下ろせば、いつでも挿入する事ができる状態だが、何故かそこで動きが止まる。  
 
「美穂、もう意識が戻っているんでしょ?分かっているわよ」  
「いつも私にばっかり働かせて、たまには自分で動いたらどうなの?」  
 
ペニスの先端を膣の入り口に接触させたまま、身体の支配権を美穂に譲り、  
髪の毛も舌も、譲の体を拘束している物意外は全てが引っ込んだ。  
だが、譲られた方の意思が身体にうまく伝わらなかったのか、  
 
「急にダメ……ひあんっ」  
‘ズンッ’  
 
支配権を譲られた瞬間、美穂の身体は重力にしたがって降下、ペニスを膣の奥深くに導く結果となった。  
譲の胸の上に両手を置き、身体を持ち上げてペニスを抜こうと力を込めるが、うまくゆかない。  
身体の自由が戻ってくるのを感じつつも、ズリズリと身体を動かすたびに快感が襲い、  
次第に快感を求める激しい衝動に突き動かされるようになる。  
 
「いっ、今は身体を自分の意思で動かせるんですよね?だったら直ぐに抜いて下さいっ」  
「あうっ、お兄さん御免なさい、でもっ、でもっ」  
 
ペニスを膣の奥深くに収め、快感にうめき声を上げながらもゆっくりと身体を持ち上げ、  
全てが抜けきるかと思った次の瞬間には、体重をかけて再び胎内へと収める。  
重力に従う形で身体を沈めるたびに、反り返ったペニスが肉壁を強く擦りつけ、  
天を仰いだ口からはその度に媚声が漏れ出ていた。  
 
「あんっ、良い感じよ美穂っ、もっと激しく動きなさい、もっと抉るようにっ」  
「ふふふっ、いつも私に身体を任せて、何もせずにこんなに気持ち良い思いをしていたのね?」  
「でも、美穂が自分で快楽を貪れるようになったら、私が表に出られなくなっちゃうかなぁ」  
 
体の支配権を譲った後ろの口も、共有する体から伝わる快感に喘いでいるようだが、  
その言葉は激しい上下運動を繰り返す美穂の頭には届いていない。  
いや、頭は同じだから届いているのかもしれないが、快感に溺れてペニスを絞る事意外考えていないのは間違いない。  
譲も、激しい上下運動だけで次なる射精へと導き出されるが、さすがにお客様の中に出す事は気が咎められる。  
だが、  
 
「いいのっ、お兄さんっ、中にっ、中に出してぇー」  
「えっ、でも……」  
「ほらっ、美穂もいいって言っているでしょ、観念してビュビュッとだしちゃいなさい!」  
「……あーもうっ、じれったいわねぇ、私も手を貸してあげるわっ」  
「んなっ、何をっ!?」  
「ふえっ、何!?」  
 
体の制御を美穂に渡してから動きを止めていた髪の毛が蠢くと、再び身体に巻きついた。  
どうやら、髪の毛だけは身体の支配に関係なく二口女が自由に動かせるようだ。  
しかも、今度は譲だけではなく、美穂の身体にも激しく絡みついたのだ。  
美穂の胸に絡みついた幾本もの髪の束が、胸元を締め上げるように、乳首を摘み上げるように、  
譲に絡みつく髪は、ペニスのサオや睾丸をやさしくマッサージするように怪しく蠢いた。  
 
「あんっ、あたしの中で、ペニスに絡みついた髪の毛がっ、すごいよぉ」  
「我慢のっ、限界……」  
 
激しいピストンだけでも限界に近かった二人が突然の襲撃に耐えられるわけもなく、  
乳首をつまみあげられた瞬間に硬直した膣の圧力は、譲を一気に射精へと導いた。  
 
「くあっ……うっ、だしちまった」  
「ああっ、はあっ、ふうっ、ふみゅーん」  
 
結局、激しいピストンと絡みつく髪の毛による刺激に耐えかね、中出ししてしまった。  
幸一の胸の上に倒れこみ、荒い息を続ける美穂の顔を覗いていると、フッと目が合い、  
どちらからともなく顔を付き寄せ、軽い口付けを交わす。  
美穂が倒れこむと同時に、二人の身体を縛り付けていた長い髪も元の長さへ戻っていた。  
 
「よかったよ、若旦那さん」  
「ふふっ、なかなかいいサービスだったわ、このことはみんなに広めてあげるからね」  
「そっ、それだけは止めてください……では、失礼いたしました。」  
 
開放されると、一応は若旦那らしく挨拶をして部屋を後にし、  
足を引きずりながら自分の寝床である離れの部屋へと辿り着いた。  
離れでは、妻が先に仕事を終え、布団を敷いて待っていてくれた。  
部屋を見渡して、いつものように布団が二人分敷いてあったのを見て、何となく一安心。  
 
「あらアナタ、ずいぶんとお疲れのようね?」  
「ん?ああ、“この手”の客は久しぶりでさ……そういえばお前が来てからは初めてだったな」  
「……」  
 
その時のハクは何も言うことなく、疲労困憊で布団にバタリと倒れこんだ姿を温かく見守っていたが、  
異変は数時間後に訪れる。  
 
「でだ、ハクさん、この状態は一体どういうことでしょうか?」  
この状態……というのも、異様な気配に目が覚めると、妻に簀巻きにされていたのだ。  
妻の顔は怒りを感じさせるものでは無いが、潤んだ瞳が何かを強く訴えかけてくる。  
何を言いたいかは聞かずとも分かっている。  
無論、先ほどの行為についての事だろう。  
「お客様とはいえ、あんなに激しく性交するなんてっ……それで私はお預けですかっ?」  
「アレは仕事の一部でっ……それは親父やお袋にも説明してもらっただろ」  
「それは承知しています。承知していますが我慢ならないんです!」  
言葉に感情がこもると同時に、巻きついた太い胴体の締め付けがだんだんと強くなり、  
身体の骨がミシミシと悲鳴を上げはじめた。  
「おっ、お前との行為は週に1度って決めてただろっ」  
「それはまた別ですっ、あんな気持ち良さそうな声聞かされたら、我慢できないのぉーっ」  
汗まみれ、体液まみれのまま、女の匂いが染み込んだ身体で寝入ったのがまずかったのか、  
赤面したハクの興奮が最高潮に達し、巻き付かれた幸一の身体も限界に達したその時。  
‘ぎゅ〜……ボキッ’  
「がっ!?」  
普段聞きなれない、だが、妻のハクにとっては聞きなれた音が部屋に轟いた。  
「……あなた?今、左右の肋骨が合計で3本ほど折れるような音がしたけど大丈夫?」  
さすが、人間を締め付ける経験が豊富なだけあって、折った箇所を言い当てるのも正確だ。  
的確な状況把握をしながら、拘束している自分の夫の顔を覗きこむ……が、  
反応がない。ただの屍のようだ。  
「ちょっ!?あなたっ、あなたぁー」  
肩をゆするが、首がガクガクと前後に揺れるだけで何の反応もなく、口からは泡を吹いているのが見えた。  
幸い、指摘どおり3本ほど肋骨を折っただけで大事には至らず、九死に一生を得た。  
その後の話し合いで、“他の種族と行為に及んだ後は、優先的に妻と行為に及ぶ”  
という事で決着。  
譲が(俺、いつまで生きてられるだろうなぁ)と真剣に考えるようになったのは、これからである。  
 
 

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