「ジェバンナちゃんが何もかも一晩でやってくれましたわ」
「うぐ〜…」
一生の不覚。
世界一の探偵だったFも(社会的な意味で)抹殺して、
捜査本部も完全に信用させ、あと一歩で羞恥界の神になれるというところだったのに…。
まさかここにきてミアの策略に嵌ってしまうとは。
「言い逃れできるなら言い逃れてみてください」
もはや完全に私に敵対している捜査本部とFBIに周りを囲まれる。
奥の手だった腕時計に仕込んだノートも、味方だったはずの松島桃恵に銃で弾き飛ばされた。
だけど…
私には、まだ最後の手段が残されていた。
「留琴! あんたがこいつらの名前をノートに書くのよ!」
後ろを振り向いて叫ぶ。
私に唯一残された味方…銃弾すら効かない、羞恥神の留琴。
「おねがい…留琴、書いて! もうあんたしかいないのよ!」
「ええ…書くわ」
留琴はペンを取り出し、自分のノートに書き込み始める。
「くくく…終わりよ! 留琴が名前を書いた以上誰にも止められない!
あんたたちは一生忘れられないほど恥ずかしい目に遭うんだわ!」
「いえ、恥をかくのはライム…あなたよ」
「え…?」
名前を書き終わった後のノートを私に見せるように突きつける留琴。
そこには「小神ライム」と書かれていた。
「結構長い間お互い退屈しのぎになったじゃない。色々面白かったわ」
「い…嫌だ、恥ずかしい目になんか遭いたくない…
なんとかしてよ、何か手はあるんでしょ留琴!」
「一度羞恥ノートに名前を書き込まれた者の羞恥はどんな事をしても取り消せない…
あなたが一番よく知っているはずよね?
さよなら、小神ライム」
「いやあああ!」
私は必死で倉庫の出口に向かって走り出した。
確かに私の名前が羞恥ノートに書かれた以上、40秒後に羞恥が降りかかるのは避けられない。
だが少なくとも外に出れば、あいつらの前で恥ずかしい姿を晒すことはないはずだ。
とにかく、40秒の間に誰も居ないところへ逃げなければ!
出口まであと10メートル…あと5メートル…2…1…
だがその瞬間、タイムリミットは容赦なく訪れた。
私の目の前で倉庫のドアが勢いよく開き、ビデオカメラとともに大勢のさくらテレビのスタッフが現れる。
「どうも、『突撃!となりの晩御飯』です! 今回はここ、大黒埠頭YB倉庫にやってきましたー!
なお、今日は特別編ということで、全世界同時中継でお送りいたしております。英語への通訳はヨシコ・アンダーソン…
…って、あれ? もしかしてお取り込み中でしたか?」
倉庫内の異様な雰囲気に気づき、カメラマンが怪訝な顔を浮かべる。
「い…いやっ…来ないで!」
全世界同時中継ということが何を意味するのか、私は瞬時に理解した。
慌ててカメラから逃げようとする。だが、私の足はまるで凍りついたようにその場から動かなかった。
「な、なんで…きゃあっ!?」
驚いている暇もなく、今度は両手が私の意思を無視して動き出す。
まずは私の襟元に向かって伸びると、ブラウスのボタンを一つ一つ外し始める。
「いや…止まらないよぉ…!」
そして全てのボタンを外し終えた後、カメラに向かってブラウスを大きく開け放つ。
「〜〜っ!」
私の色気のないブラが、全世界に向けて放映されてしまっている。
それだけでも顔から火が出そうな思いだったが、わたしの両手はまだまだ止まらない。
ブラウスを勢いよく脱ぎ捨てると、ブラのホックに向かって伸びて行き、
「…! やめっ…」
ぷち、と背中のほうで音がした後、ブラが床に落ちていく。
「あ、ああ…お願い…撮らないで…っ!」
言葉とは裏腹にまったく隠すそぶりも見せず、私はカメラに向かってトップレスを晒していた。
「君、突然何をしているんだ! カメラ、とにかくよそを写せ!」
「それが…急にカメラが石のように固まって動かないんです!」
「じゃあ電源を切れ!」
「今やろうとしてますが、全く操作を受け付けません!」
今更ながらノートの絶大な威力を実感し、私は絶望に打ちひしがれていた。
こうなったら、この悪夢が一刻も早く終わりを迎えること…それだけを期待するしかない。
しかし私の期待とは裏腹に、羞恥は終わりを迎える気配は全くなかった。
私の両手は今度は下半身に向かうと、スカートとショーツを一気に引き摺り下ろす。
「やぁっ…!」
体を隠して屈み込みたいが、当然その願いが叶うはずもない。
いや、厳密には少しだけ叶った。今まで全く動かなかった私の足がゆっくり動き出し、床の上に屈み込むような姿勢になったのだ。
その私の動きを追うように、カメラは少しずつ下を向いていく。
そして、私の両足はひとりでに大きく開いていき…
「いやあああ!」
足を閉じようと必死に力を込めるが、私の奮闘もむなしく足は逆に大きく開いていくばかり。
やがてカメラの目の前…つまり、全世界の見ている目の前で、私は自分のまだ産毛も生えていない秘所を公開していた。
「あ…あ……」
このままショックで意識を失ってしまえたらどんなに幸せか。
だが、残酷なことに私の意識は完全に冴え渡り、否応なく自分のしていることがどれだけ恥ずかしいことなのかを自覚させられる。
(お願い…この悪夢を早く終わらせて…)
自分の秘所を見せびらかすような姿勢のまま1分ほど経った頃だろうか?
再び私の右手は私を更なる羞恥地獄に叩き落そうと、今度は私の股間に向かっていった。
(これ以上、私をどうやって辱めるつもりなの…?)
私の疑問はすぐに氷解した。私の右手は秘所にたどり着くと、既に充血しきったクリトリスをこね回し始めたのだ。
「ふぁぁっ…!」
びくん、と体が快感に跳ねる。
(やだ…私…今、世界中の人に見られながらオナニーしてる…!)
頭では止めたいと思っているのに、体は容赦なく、カメラに対して見せ付けるように大胆にオナニーを披露する。
私の右手はヴァギナ全体をかき混ぜるように動き、左手は乳首をこね回していた。
(お願い…見ないで…)
せめてカメラに向かって懇願しようと口を開くが、実際に出てきた言葉は全く逆のものだった。
「おねがい、みんな見て…! ライムがいやらしいオナニーをしているところ、世界中に見て欲しいの!」
(違う、こんなことが言いたいわけじゃないのに…口が勝手に…!)
両手でのオナニーが激しさを増していくとともに、口からはあえぎ声があふれ出す。
もはやテレビ局のスタッフも止めようともせず、呆れたように私を見下ろしている。
「ああんっ、気持ちいい…! 私、オナニーを見られながら感じちゃう変態女ですぅ…!」
実際、自らの手によって送り込まれる快感で、私はそろそろ絶頂が近づいていることを感じていた。
同時に、私の羞恥の演技もついにフィナーレを迎えようとしていた。
「ふぁぁぁ…私、世界中に見られながらイっちゃいますぅ…! 気持ちよすぎて潮吹いちゃいますぅ…!」
(うわあああ、イきたくない、吹きたくないーーー!)
私の心の叫びもむなしく、私の右手が思いっきりクリトリスをつねる。
そして、今までに経験したことがないほどの激しい絶頂が訪れた。
「あああああああああああ!」
ドクン!
私は体を弓なりに仰け反らせると、びくんと体を震わせる。
同時に下半身から力が抜けていき、股間から熱い液体が迸る。
「あ、あ…」
ノートの効力が切れ、私の全身に自由が戻る。
だが心身ともに消耗しきった私は、まるで糸が切れた人形のように仰向けに床に倒れこむことしかできなかった。
「ち…ちくしょう……」
テレビ局のスタッフのざわめきと、ミアたちの見下したような嘲笑をどこか遠い世界のことのように虚ろに感じながら、
私はゆっくりと目を閉じた。