全ての始まりは校庭で拾った、ピンクの表紙をしたノートだった。  
「羞恥ノート…直訳するまでもなく羞恥ノートね」  
私はぱらりと表紙をめくり、1ページ目に書いてあった「使い方」というページに目を通す。  
「『これは羞恥神のノートです』…ぷっ」  
あまりのばかばかしさに思わず吹き出してしまう。  
要は、このノートに人の名前を書くと、その人の身に羞恥が降りかかる、という代物らしい。  
まあ、不幸の手紙のようなものだろう。よくこんなくだらないことを思いつくものだ。  
 
「ふぅ…」  
自室に戻ってテレビをつけ、ベッドに寝転がる。  
テレビの中では、音原くるすが生放送で新曲を披露しているところだった。  
音原くるすは最近人気上昇中の中学生アイドルで、  
そのあどけない笑顔とちょっと天然っぽい性格が世の男性の心を鷲掴みにしていると評判だ。  
今日もいつものように白のフリフリのワンピースを着て、ステージの上でかわいらしく踊りまわっている。  
「…羞恥ノートか」  
そういえば、音原くるすは本名で活動しているとどこかの雑誌に書いてあったな。  
私はなんとなくノートを開き、音原くるすの名前をそこに書く。  
もちろん、本気で何かが起こることを期待したわけではない。  
ただ…もしも国民的アイドルがテレビの中で恥ずかしい目に遭ったら面白いな、と思っただけだ。  
(さあ…どうなる?)  
使い方によればノートが効果を発揮するのは名前を書いてから40秒後。  
単なる遊びとはいえ、私は固唾を飲んで見守っていた。  
…あと10秒…  
そろそろ曲もフィナーレに差し掛かってきたところだが特に何か起きそうな気配もない。  
(…ま、そりゃそうだ。そもそもこんなノート一冊で何か起きる方がおかしいか)  
『私の全てを貴方に見て欲しいの〜♪』  
画面の中ではくるすが最後の歌詞を歌い終わり、決めポーズとともにカメラに向かってウインクを決めたところだった。  
 
その瞬間、何の前触れもなくそれは起こった。  
ワンピースのスカートについていたリボンが、まるで誰かに引っ張られたかのようにするりとほどける。  
それと同時に、上衣のボタンもぷち、ぷち、ぷちとごく自然に外れていく。  
そして全てのボタンが外れると、彼女の着ていたワンピースは重力に引っ張られてするすると体を滑り落ちていく。  
『ふぇ…?』  
自らの体を布が滑る感触に、くるすが不思議そうな声を上げる。  
程なく、ぱさり、と柔らかい音を立てて白いワンピースはステージに落ちる。  
時間にしてわずか1秒ほどの出来事だった。  
『え…ぁ…』  
あまりの衝撃に自分の現状を瞬時に理解できなかったのだろうか、  
くるすは自分の体を隠すこともせずに呆然と立ち尽くしていた。  
彼女の体を包んでいるのは淡いピンクのレースのショーツと、おそろいと思われる同色のブラ。  
国民的アイドルの音原くるすは、全国のファンがテレビの前で見守る中、  
自らの下着姿を生中継で晒していた。  
『あっ…!』  
ようやく我に返ったのだろう、彼女の瞳に涙があふれ始め、雪のように白かった肌が桜色に染まっていく。  
『いっ……いやぁぁぁぁぁ〜!』  
衣を裂くような悲鳴とともに、画面は「しばらくお待ちください」のテロップに切り替わった。  
 
(第一話終わり)  
 

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