『小沢直紀のー、おまかせーラジオー。続いての曲はローリングストーンズの・・・』  
 
 
カーステレオのスピーカーから流れるラジオに、何となく耳を傾ける。  
週末を利用して、妻と二人、一泊の温泉旅行に出掛けて来たが。渋滞に捕まり、さっきからずっと動いたり止まったりを繰り返す、ノロノロ運転が続いている。  
ハンドルを握りながら、退屈な時間が過ぎ去ってゆく。  
スイスイと走り去る、対向車線の車を見ながら、ただ何となく、退屈なラジオを聞いている。  
助手席の妻も、退屈そうに窓の外を眺めている。  
 
 
『午後、零時をお伝えします。ピ、ピ、ピ、ポーン。  
小沢直紀のー、おまかせーラジオー。続いてのコーナーは、リスナーからのお手紙を紹介します・・・』  
 
 
正午か、予定ではそろそろ目的地に着く時間だ。地元の郷土料理を食べてから、ゆっくり観光するつもりだったが、これではいつ目的地につくか、まるで分からない。  
先の見えない渋滞に、イライラを通り越してうんざりしている。  
 
「事故かな、工事かな? ここまで流れないと、うんざりしてくるね。」  
 
妻の言葉に、自然と笑みがこぼれる。  
 
「ああ、そうだな」  
 
10年も付き合っていると、不思議と考える事が似てくる。  
 
『ええ、次のお便り紹介したいと思います。ラジオネーム、ピンクの妖精さん、20才の女子大生ですね。  
「小沢さんこんにちわ、もうすぐバレンタインデーですね。今の彼氏とは付き合って半年、今年は思い切って、彼にチョコと一緒にフェラチオをプレゼントしたいと思います。」  
いいですねー、彼氏とラブラブですねー・・・』  
 
 
さして聞く気の無かったラジオが、耳に留まった。  
 
「バレンタインフェラか、懐かしいね、幸司。」  
 
退屈そうだった妻のさおりも、喜々とした顔で話しかけてくる。  
 
バレンタインフェラ。今から10年前、俺とさおりが付き合うようになったのも、バレンタインフェラがきっかけだった。  
 
 
 
10年前、俺はまだ高校三生。  
毎年大会では1、2回戦止まりの、公立高校の野球部の部長を勤めていた。  
新入生の三澤さおりは、マネージャーとして野球部に入部してきた。  
ぱっと見た印象は、背が低くて可愛い子だと思ったが。用具の手入れ、掃除、スケジュールや選手の体調管理に至るまで、何でもそつなくこなす優秀なマネージャーだった。  
後輩ながら、さおりのことを、頼れるマネージャーだと思っていた。  
 
彼女のことを意識するようになったのは、彼女が入部して一ヶ月くらいたってからだった。  
何か、他の部員と自分との接し方が違うように思えたからだ。  
自分自身には特に親切に接してくれるような、そんな気がしたが、それは自分がキャプテンという特別な立場にあるからかもしれない。それに自意識が強過ぎるだけで、実際は他の部員と変わりなく接しているだけかもしれない。  
そう思い、普通の野球部員とマネージャーという関係が続いた。  
 
そして、高校球児達にとっては運命の夏。  
三年のオレにとっては、最後の甲子園出場を賭けた、地区予選が始まった。  
結果は0対5の惨敗。一回戦での敗退だ。  
小学校から続けてきた野球だが、それが最後の試合となってしまった。  
 
結局、自分が部長を勤めた期間には、練習試合でこそ勝てたものの、公式戦では一勝も上げられなかった。  
そんな悔しさもあって、夏の大会で三年はみんな引退したが、オレだけは暇を見て後輩達の練習を覗きに行った。  
練習の邪魔にならないよう、ベンチから様子を見て、直ぐに引き上げてしまうが。そんな時に話し相手になってくれるのが、大抵の場合三澤さおりだった。  
 
さおりは何かと気の利くマネージャーだから、先輩が遊びに来れば、退屈させないように気を使ってくれたのだろう。  
マネージャーの仕事をテキパキ片付け、あるいは後回しにして、話し相手になってくれた。  
初めて見た時から、可愛い子だと思っていたが。接するうちに、次第に三澤さおりに対して好感を持つようになっていった。  
野球部の練習を覗く目的も、後輩の様子を見るのが半分、三澤さおりと話したいのが半分、という感じになっていた。  
しかし、さおりも忙しいマネージャーの仕事の合間に、話し相手になってくれているのだからと、遠慮して10分程度で引き上げてしまうことがほとんどだった。  
 
 
そして卒業も間近に迫った2月14日。  
進学組は受験の追い込みで必死になっているが、既に就職の内定しているオレは、別の意味で緊迫していた。  
2月14日バレンタインデー。男子は皆、落ち着かない一日だ。  
クラスの男子は皆どこか不自然で、敢えてその話題には触れようとしない。  
いつもは、塊って話をしている同級生も、なぜか一人で窓の外を眺めている奴がいたり。休み時間の度にトイレに行く奴がいたり。明らかに不自然だった。  
 
そんなクラスの男子を、冷静に眺める余裕があった。  
正直言って、クラスの女子にはまったく興味が無かったからだ。  
自分にとって、気になっていたのは放課後だ。三澤さおりからチョコを貰えるかどうか、それだけが気になっていた。  
 
昼休みも終わり、午後の授業も終盤に差し掛かると、段々と緊張は増していった。  
授業を終え、野球部の練習するグランドに向かい、努て自然に振る舞おうとする。  
まあ、今にして思えば、逆にそれが不自然だったのだが。  
ベンチに向かいながら、グランドを隈無く見渡す。だが三澤さおりの姿は、どこにも見つからない。ユニフォームを着た野球部員十数名と、手に袋を下げた、制服姿の二年マネージャーだけだった。  
部室か用具室にでもいるのだろうかと思いながら、ベンチの後輩達に話しかける。  
 
「国分先輩こんにちわ。これ、バレンタインのチョコです。」  
 
二年のマネージャーが袋から取り出したのは、アルファベットの刻まれた、指先ほどのチョコレートだった。  
 
「ありがと。」  
 
明らかに義理と分かるようなチョコを頬張り、辺りを見渡す。  
 
「さおりなら居ませんよ、頭痛いから帰るって言ってました。」  
 
「別に三澤を探しているわけじゃないよ。」  
 
そう言った後で、二年マネージャーがクスクス笑うのを見て、墓穴を掘ったことに気が付いた。  
それじゃ三澤が居ないから帰る、では更に墓穴を掘ることになるので、何食わぬ顔でそのまま雑談を交した。  
何か肩透かしを喰らって、がっかりしながら家路についたが、校門を出て少し行った所で、不意に女の子の声に呼び止められた。  
 
「国分先輩。」  
 
直ぐに分かる聞き覚えのある声は、三澤さおりの声だった。  
 
「あれ、三澤。頭が痛いから先に帰ったって聞いたけど、大丈夫なのか。」  
 
彼女のことを心配しながらも、内心ではオレを待っていたのではないかと、ドキドキしていた。  
 
「あっ、それは仮病なんです。本当は、先輩が来るのを待っていました。」  
 
予想した通り、さおりはオレが帰るのを待っていた。  
しかも真面目なさおりが仮病を使って部活を休み、学校ではなく帰り道で声を掛けてくるということは。  
次に起きる展開は応々にして予測できるが、それを表に出さないように、努て平静を取り繕おうとした。  
 
「オレが来るのを待っていたのかい、何かオレに用事でも有るのかな。」  
 
さおりは手提げ袋の中から、白いリボンのかけられた、ピンクの小さな包みを取り出し、それを差し出した。  
 
「私、入部した時から、ずっと先輩に憧れてました。これ、受け取ってください。」  
 
オレは有頂天になって喜び、その包みを受け取った。  
だが、その後に続く言葉に愕然とさせられた。  
 
「先輩お願いします、フェラチオさせてください。」  
 
あの時は、余りのショックに思考が停止した。まったく予測しなかった突然ことで、どうすれば良いのか分からず、ただ呆気にとられていた。  
 
「私、まだキスしたことありません。だから、ファーストフェラは国分先輩にって、ずっと前から決めていました。」  
 
さおりは恥じらいながら、頬を赤く染めていた。  
オレはさおりのことを、賢くて気の利く女の子だと思っていた。しかし、まさかあんな馬鹿な噂を、信じているとは思いもしなかった。  
 
その当時、うちの学校には一つの噂というか、都市伝説があった。  
 
『キスをしたことのない女の子がフェラチオをすると、その相手と両想いになって、幸せに成れる。』  
 
話の種に、冗談で囁かれていた噂話だが、まさか本気で信じているヤツがいるとは、まったく思いもしなかった。  
 
真面目で、地道にマネージャーの仕事をこなす、オレが知っていたさおりとは、まったくかけ離れた行動だった。  
そんな馬鹿な迷信を信じるような子だとは思えなかったが、その頃はオレもエッチしたくてしょうがない年頃だ、これはチャンスと思った。  
その半面、明らかに嘘と分かるような噂を利用するのは、彼女を騙すようで後ろめたい気もした。  
エッチなことはしたいけど、先輩としてそんなのは迷信だと教えてやるべきか。  
しかし断ってしまうと、彼女を傷つけてしまうかもしれない。彼女のことは好きだから、付き合いたいとわ思っている。彼女を受け入れてやった方が良いのか。  
しかし、好きだからこそ、騙すようなことはしたくない。  
オレは考えあぐねたが、さおりは考える時間を与えてくれなかった。  
 
「ダメですか。」  
 
すがるような目で見つめられ、思わず、いいよ、と答えてしまった。  
 
「良かった。断られたらどうしようって、凄くドキドキしました。」  
 
純粋に喜んでいるさおりを見ると、罪悪感にさいなまれたが、さおりの方から話を持ち掛けたのだから、別にオレは悪くない。そう開き直って、彼女をオレの家に案内した。  
 
「ただいま。」  
 
オレはぶっきらぼうに帰宅を告げる。  
 
「お帰り、今年はチョコ貰え・・・。」  
 
出迎えに来た母は絶句した。  
無理もない、毎年義理チョコ2つか3つといった息子が、バレンタインにいきなり女の子を連れて帰って来たのだから。  
 
「野球部のマネージャー、三澤さん。」  
 
簡潔にさおりを紹介する。二人が初めましてと挨拶を交わしたところで、さおりを二階のオレの部屋に案内する。  
 
「お邪魔します。」  
 
と言って、さおりは付いてくる。  
あの頃は女の子と付き合ったことなど無かったから、内心ドキドキしっぱなしだったが、それを悟られないように、そっけ無い態度で平静を装っていた。  
 
部屋に入り、二人きりになると、おもむろにズボンを脱いで、トランクスを下ろす。  
さすがにさおりも、いきなり局部を見せられて、かなり当惑していた。  
オレとさおりの関係は、野球部元キャプテンと後輩のマネージャーだ。ここは一つ、男らしいところを見せなければと思い、大胆に脱いでチンポを晒したが、さすが二人きりになった途端いきなりでは、戸惑うのも無理はない。  
しかし脱いでしまった以上、後戻りは出来ない。オレはさおりに指示を出した。  
 
「触ってみて。」  
 
さおりの手が、まだ勃起してない小さいチンチンに、恐る恐る触る。  
初めて女の子にチンチンを見せるのは恥ずかしかったが、触られることに次第に興奮を覚えた。これからエッチなことをするのだという実感が徐々にわいてきた。  
さおりの指がチンチンを摘み、袋を撫でる。興奮したチンチンは、少しずつ膨らんでいった。  
 
「気持ちいいですか。」  
 
緊張して、少しうわずった口調でさおりが尋ねる。さおりにも勃起くらい分かるのだろう、次第に大きくなるチンチンを見て、オレが段々興奮して来たと思ったようだ。  
 
「うん、気持ちいい。」  
 
それを聞いたさおりは、大胆にチンチンをいじり始めた。  
さおりの指先が強く亀頭を擦る。  
 
「痛っ。」  
 
さおりは慌てて手を離した。  
 
「ごめんなさい、大丈夫ですか。」  
 
不安気に、さおりはオレの顔を見上げた。  
 
「ちょっと痛かったけど、大丈夫。先っぽは、渇いたまま擦ると痛いんだ。」  
 
オレは生唾を飲み込んでから、高鳴る胸の鼓動を抑えて、ゆっくりと言った。  
 
「渇いていると痛いから、口で舐めてみて。」  
 
さおりは緊張した面持ちで頷いた。  
 
「わ、分かりました。」  
 
いよいよフェラチオが始まる。  
そう思うと鼻息が荒くなってしまうが、さおりには悟られないよう、必死で平静を取り繕う。  
さおりの指が、まだ半勃ちのチンポを摘み上げ、それに顔を寄せていく。  
それを見ているだけでも興奮し、チンポはピクピクしながら、大きさを増していく。  
さおりの口から舌が伸びる。それが先端部分を舐め始めた。  
チンポに快感が走る。ぺろぺろと舐める舌の動きに合わせて、欲情は加速的に高まっていく。  
激昂したチンポは、完全に勃起した。  
 
「国分先輩、気持ちいいですか。」  
 
さっきの事もあってか、不安そうにさおりは尋ねる。  
 
「スゴく気持ちいいよ。三澤にも分かるだろ、チンポがこんなに勃起してるよ。」  
 
オレは腰を突き出して、さおりに勃起したチンポを見せ付ける。  
 
「先輩、私ずっと先輩のこと好きでした。国分先輩のこと大好きです。」  
 
さおりの唇が、チンポの先にキスをする。そのまま唇はチンポの表面を舐めながら、すっぽりと口に亀頭を含む。  
頭を前後に振りながら、しっぽりと、上唇が亀頭を舐め、下唇がカリ裏を刺激する。  
チュプ チュプ と湿った音を立て、さおりの唇は、何度も往復しながら、繰り返しチンポをしゃぶる。  
 
マネージャーという裏方の仕事を、地道にこなしている、真面目で大人しい女の子。  
オレはそれまで、さおりをそんな風に思っていた。  
しかし、恋愛に関しては、かなり情熱的で大胆だ。  
いきなりフェラチオさせてくれと願い出て、初めてのフェラで、ずっぽりチンポをしゃぶっている。  
ねっとりと唇を吸い付かせながら頭を振り、夢中でチンポにしゃぶり付いている。  
予想以上に激しいフェラチオに、チンポはビンビンに反応し、初体験の快感に、かつて無いほど、硬く大きく勃起していた。  
 
「三澤、凄く気持ちいいよ。」  
 
飲み込みの早い、器用な子で、マネージャーの仕事も直ぐに覚えたが、チンポの扱いも飲み込みが早い。初めてとは思えない、気持ち良さのフェラチオだ。  
さおりは更に大胆にチンポにしゃぶり付いて、舌を絡ませてくる。濡れた唇はぴったりと吸い付き、繰り返しチンポの上を這う。  
 
快感が込み上げてくる。  
今まで経験したことが無い欲情が沸き起こり、息は上がり、鼓動は早くなる。  
チンポに宿る欲情は、解放されたいと雄叫びをあげる。  
その瞬間、悦楽が訪れる。  
精液が送り出される感覚。ビクンビクンと脈を打つ、射精の感覚が、悦楽と共に訪れた。  
 
口内射精。  
キスの経験も無い女の子に、フェラチオさてることだけでも大胆なことなのに。いきなり口内発射というのは、いくら何でも厳しいだろう。  
しかしまだ若かったオレは、快感を我慢しきれなかった。しまった、と思ったが、もう出てしまったものはどうしようもなかった。  
 
往復運動を繰り返していた、さおりの頭が止まった。  
一回では終らずに、チンポは繰り返しビクンビクンしている。  
オレは欲望を抑えられず、さおりの頭を押さえ付けて、口の中に繰り返し射精した。あの時の快感は未だに忘れられない。  
さおりも、自分からフェラチオさせてくれといっただけあって、男がその精液をどう処理してほしいのか分かっていた。  
 
「飲んだのか。」  
 
はあはあ、と口で息を整えるさおりに、オレは尋ねた。  
 
「はい、私先輩のことが大好きなんです。お願いします、私を彼女にしてください。」  
 
オレはもちろんOKした。  
ここまでしてもらって、断れる筈がない。寧ろ此方から頼みたいと思ったくらいだ。  
元々さおりには気が有ったのに、さおりの気持ちが分からず、男なのになかなか告白できずにいた、自分の意気地の無さが恥ずかしいと思った。  
 
 
『小沢直紀のー、おまかせーラジオー。さて次のコーナーは・・・』  
 
カーステレオのスピーカーからは、退屈なラジオが流れている。  
 
あれから10年。  
助手席には、オレの妻になった、さおりが座っている。  
車は相変わらず、渋滞のノロノロ運転が続いている。  
しかし、たまには狭い車内で、妻と二人きりというのも、意外と悪くない。  
 
「どうしたの、ニヤニヤして。」  
 
さおりは微笑みながら、オレの顔を覗き込む。  
 
「バレンタインフェラのこと思い出してさ、さおりと結婚できて幸せだなあって思ったんだ。」  
 
「私も。幸司と結婚できて幸せよ。」  
 
 
 
 
『キスをしたことのない女の子がフェラチオをすると、その相手と両想いになって、幸せに成れる。』  
 
あの噂も、あながち嘘とは言い切れない。  
オレとさおりが付き合い始めたことは、あっと言う間に野球部に広まった。  
そしてあの噂も、さおりから口コミで女子の間に広まり。後輩から後輩へと語り継がれながら、他校へと広まっていった。  
あれから10年たった、2018年の今では、バレンタインフェラとして全国的に広まり、定着している。  
 
 
 
しかしこの噂、最初に言い出したのはオレであることを、まだ妻には話していない。  
 

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