魔のエイプリルフールから早二ヶ月。  
六月最初の日曜日の今日はすごくいい天気になった。  
そして、俺の心も大変にいい天気だ。  
なぜならば。  
ふっふっふっ。  
もうすぐマイ・ディア・ワイフ・穂波が、ついに、ついにっ!  
裸エプロン姿で現れてくれるからだ!  
ドアの向こうからはまだシャワーの音が聞こえてくる。  
一応椅子には座っているけど、どうも落ち着いて座っていられなくて、  
俺はさっきから新聞を広げてみたり、テーブルの上のティッシュの箱の位置を微妙に変えてみたりしてる。  
シャワーの音が止まったら、正座して穂波が出てくるのを待ちそうなくらい、今の俺は舞い上がってる。  
けど、姿勢を正すにはまだちょっと早そうだから、俺はこの期待が嘘じゃない、ってことを再確認するために、  
今日のことを反芻することにした。  
 
朝起きたら、すごくいい天気だった。  
絶好の洗濯日和、掃除日和とは今日みたいな日を言うんだろう。  
穂波は洗濯、俺は掃除。  
ついでに今日は衣替えもした。  
この時期は雨になると気温が下がるから、多少は厚手の上着も残しておくことにしたけど、  
クリーニングから帰ってきてたセーターとか冬物のジャケットは全部奥にしまい込んで、夏物の服を引っ張り出した。  
押し入れの中身総取っ換え、ってなところだ。  
さすがにこれだけやると結構な労働になるし、時間もかかる。  
昼飯は手を抜いて買い置きのカップめんで済ませて、俺たちは昼の二時くらいまでかかって衣替えを終わらせた。  
 
ようやく一息ついて麦茶を飲んでたら、穂波が言った。  
「衣替え、できちゃって良かったね」  
「晴れて良かったよな」  
とかなんとか返した気がする。  
「うん。でも、今日は暑くなったね。  
 汗と埃でべたべただよ」  
「だな。今日はもう風呂入っちゃおうぜ」  
と言ったところで、俺は素晴らしい案を思いついた。  
思いついた途端に顔が緩んだらしく、穂波がすかさず、  
「大樹……。一緒に入ろうとか言いそうな顔してる」  
とツッコんできた。  
もっとも、最近は穂波も慣れてきたから、これくらいじゃ嫌そうな顔も恥ずかしそうな顔もしない。  
大樹の考えてることなんて分かってるんだから、と言わんばかりの笑みが浮かんでた。  
照れた顔の出現率が減ったのはちょっと残念だけど、ああいう穂波らしい顔が俺は好きだ。  
けど、今日の思いつきは違うから、俺は得意になって胸を反らした。  
「ふっふっふっ。もっといいことだ」  
「え……、てことは、やっぱりそっち系なことなの?」  
不安そうな表情の穂波。  
「どっち系かは知らないけど、……今日は暑いよな」  
「うん……」  
「てことは、多少薄着でも風邪なんか引かないよな」  
「まあ……そうかもしれないね……」  
嫌な予感がしてるとばかりに、穂波は俺から目を逸らした。  
「俺さ、今日って絶好の裸エプロン日和だと思うんだけど」  
こっちを向いた穂波の表情が何とも言えないものになった。  
呆れの上に嫌悪に近いまなざしが上乗せされてた気がする。  
若干照れが混じって見えたのが唯一の救いだ。  
「大樹……諦めてなかったんだ……」  
穂波はため息をついた。  
 
ため息をつきはしたけれど、仕方ないなあ、と穂波は了承してくれた。  
シャワーを浴びてる間、ずっと顔がにやけてたのは言うまでもないだろう。  
ただ、一つ気になるのは穂波が風呂に入る時に持って行ったもの。  
赤い色が見えなかった。  
青いエプロンはさっき洗濯してたから、他にエプロンはない筈なんだけど……。  
 
とかなんとか、あれこれ思いを巡らせていると、ブーンとドライヤーが唸る音が聞こえてきた。  
いつの間にか風呂から上がっていたらしい。  
おうおうおうおう、いよいよですよ!  
いよいよですよ!!  
っていうか、落ち着け俺。  
……なんて、無理だけどな。  
……ふっ。  
やべえ、顔が勝手ににやける。  
うう……、穂波のヤツ呆れるだろうなあ。  
んがっ!仕方がない。  
許せ穂波。  
長年の俺の夢が愛する妻によって実現するんだ。  
にやけるくらいは許してくれ。  
おお!ドライヤーの音が止まった。  
くうっ!やばい、勃つ!  
ムスコよ、落ち着け!  
せっかくの裸エプロンなんだから、堪能するんだ!  
あの格好のまま料理作ってもらうんだろ?  
そんな穂波を後ろから眺めちゃうんだろ?  
 
かちゃり、と遠慮がちにノブの回る音がして、俺は思わず生唾を飲み込んでドアを食い入るように見つめた。  
 
「オー。穂波サーン。  
 ソレハ何デスカ?」  
「……ハーイ、大樹サーン。  
 コレハえぷろんデース」  
「ノー。私ハソレヲえぷろんダト思ッテイマセン」  
「りありー?私ハコレヲえぷろんダト思ッテイマス」  
「……なるほど分かった。  
 冷静に話をしよう」  
俺はそう言って両手を広げて、ヒートしそうになる自分自身を落ち着かせるために、その手でぐっと宙を押えた。  
「私ハ冷静デース」  
目を逸らして大げさに肩をすくめる穂波。  
だが俺は騙されん!  
「あのな、穂波……。  
 百歩譲ってそれがエプロンだとしよう」  
「エプロンだよ」  
「分かった。少なくともお前がそれをエプロンだと思っていることはよく分かった。  
 だがな、穂波……。  
 それはエプロンはエプロンでもジャパニーズ・エプロン、……割烹着じゃねぇかーッ!!」  
椅子から立ち上がり、テーブルを挟んで真向かいに居る穂波にびしっと指を突きつけて指摘すると、  
穂波はえへ、とわざとらしく笑って、  
「かわいいでしょ」  
と両手を広げて見せた。  
 
穂波が着てる割烹着は確かにかわいいと思う。  
丈は膝よりちょっと上までで、形はばーちゃんたちが着てそうな昔ながらの形だけど、色は全体的に明るい黄緑、  
襟のところとポケットは濃い緑が基調のちっさな水玉模様のでアクセントに……  
って、そういう問題じゃねー!  
そして、もしや、見えないのをいいことに……。  
更なる不安がよぎる俺。  
「穂波……回れ右」  
「え?」  
「後ろ向いて」  
「え……このままでよくない?」  
「よくない」  
穂波がちょっと赤くなって唇を尖らせた。  
お?ということは、俺の不安は取り越し苦労?  
ちょっと安心すると、すぐに調子に乗るのが俺の悪いところだ。  
自覚はあるんだけど治せない。  
が、まあ、今はいいか。  
「なんだよ。見られたら都合悪いのか?  
 もしかして、パンツはいてるとか」  
ちょっと意地悪く、見下ろすような感じで穂波の下っ腹あたりに視線を向けると、穂波は、  
「は、はいてないよ」  
と一歩下がって、約束だし、と小さな声で付け加えた。  
「んじゃ、見せて」  
「見せなきゃダメ?」  
「うん。ダメ」  
「ね、あのね、絶対変だと思うんだけど」  
「変じゃない、変じゃない、変な筈がない。  
 だから見せて」  
「もー……。いつも見てるのに……」  
穂波は口を尖らせはしたけど、ゆっくりと後ろを向いてくれた。  
 
後ろは八センチくらいの隙間が空いてて、首のところと腰のところで紐を結ぶようになっていた。  
五月までは背中まであった髪を肩のところまで切ったせいで、背中のラインがきれいに見える。  
肩甲骨のせいでできる滑らかな凹凸、そんで白くてぽっちゃりとしたお尻。  
これは……予想以上だ。  
俺は立ったまま、しばらくの間見惚れてしまった。  
たかが割烹着と侮っていたけど、いやいやとんでもない。  
腕とかが見えないせいで、見える肌の部分がやけに際立ってる。  
「はあぁ……」  
俺が思わず感嘆のため息を漏らすと、穂波はそれを悪い方に解釈したらしい。  
くるりとこちらに向き直ると、腕を組んでほっぺたを膨らませて少し怒ったような口調で言った。  
「ほらあ。だから、変だって言ったのに。  
 溜息つくくらいならやらせないでよ」  
「だあっ、ごめん!  
 別に変でがっかりしたから溜息ついたんじゃないんだ。  
 あまりの素晴らしさに、こう、つい」  
「はいはい。ありがとうございます。  
 もう満足したよね」  
俺もかなり単純な方だと思うけど、穂波も相当単純だ。  
ほんの十秒前までは怒っていたのに、素晴らしいと言っただけで今はもう機嫌を直してる。  
だがしかし、それはさておき、  
「待て、穂波。  
 確かにお前は胸だけじゃなく、尻も素晴らしい。  
 今日は改めてそれを実感させてもらった」  
先を読んだのか、穂波の笑顔が引きつった笑いに変わった。  
 
けど、そのくらいじゃ俺はめげない。  
この三ヶ月半、俺の要求をことごとく回避しようとする穂波を、褒めて口説いて時には宥めて、  
色々やったり、やってもらったりするようになってきた。  
まあ、まだ色々やれてないことはあるけどさ。  
今回だってここにこぎ着けるまでに多くの苦難を乗り越えてきたんだ。  
ここで普段着に戻られてしまったら、俺は今週一週間悶々とした日々を過ごすことになる。  
という訳で、俺は今日も頑張って穂波を説得することにした。  
「でもな、まだ満足はしていないぞ」  
「え〜。だって、ちゃんと約束守ったじゃん」  
「穂波。遠足は帰るまでが遠足だろ。  
 まだ、学校に集合した後、駅に向かって出発したくらいの段階だぞ」  
「またおバカな喩えを……」  
穂波にバカ呼ばわりされるのにはもう慣れた。  
俺はそんなコメントは軽く聞き流して、  
「とにかく、だ」  
と続けてから、はっとした。  
この後、どうしてもらうべきなんだろうか。  
いや、いわゆる普通のエプロンに着替え直してもらいたいというのが本音だけど、  
実は予想外に割烹着の後ろ姿も悪くないと思ってしまった。  
このままの格好で料理をしてもらうのもありかもしれない。  
ありだと思うし、このチラリズムは捨てがたい。  
だけど、俺の理想とする裸エプロンはやはり穂波の乳が見えてこそじゃないか!  
しかも、この機会を逃したら、穂波は二度と裸エプロン姿を見せてくれないような気がする。  
「大樹さーん、どうかしましたかー?」  
言いかけたまま、割烹着のチラリズムと露出度の高い普通のエプロンの間で葛藤を続けていた俺に、  
穂波はテーブルに片手をついて身体を乗り出し、俺と自分の顔の間で手を振った。  
 
「ホント、どうしたの?」  
呼びかけられても答えずに穂波の顔をじっと見つめて悩む俺の顔を見て、穂波は眉を下げた。  
穂波にこの現在の心境を伝えても、きっと共感は得られない。  
ここは一人で乗り切らなくてはならない難関だ。  
俺はさらに数秒悩み、長年の夢を優先することにした。  
もしかしたら、近い将来、穂波が再び裸割烹着をやってくれるかもしれないという淡い期待を抱きつつ。  
 
「穂波」  
俺は穂波の肩をがっしりつかんで、可能な限り真摯な気持ちで口を開いた。  
「エプロンに着替えてくれ」  
「だから、これ」  
穂波もなかなか往生際が悪い。  
「ジャパニーズ・エプロンじゃなくて、普段お前が使ってるやつに着替えてくれ」  
「だって、さっきほら、洗濯しちゃったし」  
穂波は俺の腕に手をかけて、引き離そうとしながら目を逸らした。  
だが、そのくらいじゃ俺はめげない。  
「確かに青いやつは洗濯したけど、赤いのがあるだろ?」  
「あ、赤いのは良くないよ……」  
「なんで?」  
「えーっと……、えー、あれはですねえ、肌触りが」  
「タオル地じゃんか」  
「う……」  
 
もうひと押し。  
傍から見たらきっと気持ちが悪いんだろうけど、穂波にやると効果抜群な一手だ。  
距離的に届かないのは承知の上で、俺は軽く唇を突き出してキスするそぶりを見せてから、  
「お願い」  
ちょっと声を潜めてこう言った。  
顔を赤くした穂波は、  
「もう、大樹ばっかりいつもずるい」  
と口を尖らせた。  
成功ーッ!  
でも、ここで調子に乗って穂波のご機嫌を損ねる訳にはいかない。  
「何がずるい?」  
片手をテーブルについて身を乗り出して、膨れるほっぺたをつつくと、穂波はその指先に視線を向けた。  
「だって、私は大樹のお願い聞いてあげてるけど、大樹は私のお願い聞いてくれないじゃん」  
「そうか?」  
ぷくっと突き出てる唇を指で押すと、唇が物欲しそうに開いてから、  
「そうだよ」  
と不満気に言葉を告げた。  
「例えば?」  
答えられないって分かっててワザと聞く俺。  
うーん。  
Sっ気はないつもりなんだけど、穂波の反応見てると楽しくてついつい意地悪言いたくなるんだよな……。  
穂波はちょっと考えてから答えがないことに気がついて、案の定、しまった、という顔をした。  
そう。  
穂波はこれまで俺にお願いなんてしたことない。  
お願いと言ったところで、帰りが遅くなりそうな時に晩飯を作っといてくれ、とかそんな程度だ。  
 
笑いたくてしょうがないけど、笑ったらダメだ。  
キスしたくてうずうずしてる目の前の唇をくすぐりながら、  
「穂波も俺にワガママ言えばいいじゃん」  
と言ってみた。  
「……だって、私、大樹みたいに知識豊富じゃないもん」  
待て、笑わせる気か。  
笑うっていうか、にやける。  
「何で笑うの?」  
「いやいや、笑ってなんていませんよ」  
「いえいえ、顔がとてもにやけていますよ」  
ほっぺたをつねられたけど、痛くない。  
「らって、おまえ……エッチなことだっていう前提で言ってるだろ」  
「……あ!」  
さすがに限界。  
俺はふっ、と吹いてしまった。  
「もういいよ。大樹のバカ。  
 大樹がいつもエッチなことばっかり言うから、うつっちゃったんじゃない」  
なんだ、その理屈は。  
声出して笑いたい。  
けど、それをしたら、エプロンが遠ざかってしまう。  
俺は椅子に座ると、落ち着いたふりをして穂波を見上げた。  
「いいぞ。エッチなワガママでも、エッチじゃないワガママでも」  
「別にしてほしいことなんて」  
と言いかけた穂波の顔が赤くなった。  
「ん?なんか思いついた?」  
この顔は絶対こっち系な思いつきだ!と確信したけど、必死にこらえる。  
全ては裸エプロンのために。  
 
「なんにも、思いついてないよっ」  
明らかに声が上ずってる。  
穂波が思いつくエッチなお願いってなんだろう?  
クンニだってやってるし、フェラだって地道に挑戦中だし、体位だって無理がない程度にじわじわとお試し中だ。  
だいたい、この辺は全部俺のお願いでやってるもんだしなあ……。  
穂波が自分からシックスナインやりたい、なんて言うとは思えないし……。  
「なあ、穂波。穂波のお願いって何?」  
「なんでもないって。  
 あ、私、着替えてくるね!」  
穂波は顔の前でぱたぱたと手を振ると、隣の部屋に早足で入って行ってしまった。  
かわいいお尻の残像を俺の目に残しつつ。  
 
ぱしん、とふすまを閉められてから、はっとした。  
慌ててふすまの前に行く。  
「穂波。普通の服に着替えないでね!  
 マジ、ホント、すごくお願いします!!」  
ふすまの前で手を合わせる俺。  
我ながら必死すぎる。  
でも、仕方がない。  
かわいい妻がだな、念願の裸エプロンをやってくれるかどうかの瀬戸際で必死にならない男がいるだろうか。  
いや、絶対にいない筈だ。  
「えー……」  
「えーじゃなくて!さっきの穂波のお願い聞くから!」  
「別にそれは聞かなくていいけど……」  
「いや、聞く!だから、エプロンを!」  
 
ふすまに貼りつきそうになりながら懇願していると、目の前のふすまが少しだけ開いて、  
五センチくらいの隙間から、穂波が顔半分だけ覗かせた。  
「あのね、ホントに変なの」  
「変じゃないって」  
「いや、これは変だよ」  
ちょっと泣きそうな目がこっちを見上げてくる。  
うお……ざ、罪悪感が……。  
「どこら辺が変?」  
「……胸の辺」  
何イイィイッッ!?  
胸ですと!?  
変?  
なに?  
もしや、期待通りはみ乳しすぎてんのか?  
ティクビが出ちゃってるのか!?  
いや、むしろ歓迎、ばっちこーい!  
巨乳、万歳!  
「穂波、それは変じゃないよ」  
優しく紳士的な態度で両腕を広げる俺。  
「大樹、目が怖い」  
「怖くない。俺は冷静だ」  
「……意味分かんないよ」  
「穂波。俺はどんなおまえでも受け止め、受け入れ、抱擁し、生がぃ」  
「もー……分かったよ。  
 変でどん引きしたら、今日の晩ご飯、大樹が作ってよね。  
 ふて寝するから」  
 
からりとふすまが開いた。  
怒ったような顔を赤くしながら、片腕で胸元を隠した穂波がこっちを見上げてる。  
「隠しちゃいやーだ」  
「隠させてくれなきゃいやーだ」  
まあ、穂波が胸を隠すのはいつものことだ。  
それに、腕をどけてなくても胸の谷間がばっちり見えてる。  
見慣れてるのに、肩から肘にかけてのラインがやけに艶めかしい。  
俺はドキドキしながら、いつもやるように穂波の手首をそっと掴んで引っ張ろうとした。  
「あ、た、たんまっ!」  
「ダメ」  
「い、いや、ちょっと待って、ホントに」  
「えー」  
「お願い!」  
さっきのとは違うニュアンスだけど、まあ、お願いと言われたら仕方がない。  
俺がぶうぶう言いながら穂波の腕を離すと、穂波は慌てて後ろを向いた。  
ぐはっ!  
なんという会心の一撃!  
さっきとは打って変わって大きく開いた背中。  
腰のところで紐が結んであるのは割烹着と同じだけど、それ以外は肩から腰にかけての紐が  
背中の真ん中でバツ印を作ってるだけだ。  
お尻も両脇がちょっとエプロンで隠れてるけど、またそれがいい感じにぷりんと……おおう、ワイドビュー。  
 
「あ、えっと、ご、ごめんね」  
穂波の声に俺ははっと我に返った。  
穂波の後姿だけで満足しそうになっていたらしい。  
ぬうう、これほどとは……。  
恐るべし破壊力。  
「あ、んや、いいけど、どうかした?」  
「う、うん、あのね、ちょっと、えっと、はみ出しそうに……」  
穂波はしきりに胸元を気にしてるけど、おま……、はみ出しそうって、  
「モウ、シッカリハミ出シテマスヨ。穂波サーン」  
俺がひょいと横からのぞくと、穂波は、  
「待ってってば!」  
と声を大きくした。  
いつもだったらオクラホマ出身設定の穂波サーンが返答をくれるのに、そんな余裕はないらしい。  
そりゃそうか。  
だって、こんな無防備な背中を向けちゃうくらいだもんな。  
「えー」  
俺は一応不満そうに言ってはみたけれど、穂波がこっちを向く気になるまで後ろ姿を堪能し、  
いつでも思い出せるようにするため、目に焼き付けることにした。  
うーん、随分エロくなったなあ……。  
こう、内からにじみ出るエロさっていうのかな、これもひとえに俺が頑張って  
日々穂波にエロいことを教えているからなんだろうな。  
偉いぞ、俺。  
にしても、裸もいいけど、なんでエプロンで少し隠しただけでこんなにエロくなりますかね。  
裸エプロンに最初に挑戦して、布教した奴に感謝せねば。  
 
(続)  
 
 

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