可愛い女の子と結婚するのが夢だった。
幸せな家庭を築き上げることが夢だった。
新婚初夜で、妻を妊娠させることが夢だった。
俺のささやかな、子供の頃からの夢だった。
今、俺のすぐ側に、可愛い妻がいる。
顔も性格も良い、素晴らしい妻。
幼き日に夢見た理想の女性が、今俺の隣にいる。
妻は俺の隣に腰掛けて、寝そべっている俺を見て微笑む。
何て、幸せなんだろう。
「私も、幸せです。」
これからきっと、俺と妻は幸せな家庭を築いていけるだろう。そう俺は確信する。
将来産まれてくるであろう俺と妻の子供たちも、きっと可愛いに違いない。
幼き頃の夢。
可愛い女の子と結婚する、そして、幸せな家庭を築き上げる。
この二つの願いは、叶ったのだ。
だが・・・・・・
三つ目の夢は、終に叶わぬものとなった。
後に俺の妻となるこの女の子は、素敵過ぎた。
美しく、そして心も綺麗で、優しすぎた。
あの日・・・・・・
楽しいデートの帰り道。
「今日は、すごく楽しかった。」
人気のない暗い夜道を、俺は彼女を家まで送っていた。
「俺も、すごく楽しかった。」
「本当?良かった!」
彼女はそう言っておれの顔を覗き込んで微笑んだ。
「もしかしたら、私だけ楽しんでたんじゃないかなあって、ちょっとだけ心配だったの。」
「そんなことないさ。君と一緒だったし、すごく楽しかったよ。」
君と一緒だったという部分を強調して言ったので、彼女は少しだけ、頬を赤くする。
「もう・・・、そんなに真正面から言われると、照れちゃうよ・・・」
照れた彼女の顔も、すごく可愛い。こんな表情の顔を見せられると、俺の心はもう止まらなくなる。
「いつき・・・」
「!!!」
俺は彼女の肩を抱き寄せ、一気に唇を奪った。
彼女はいきなりな俺の攻撃に身体を強張らせて、じっと俺を見たまま固まってしまう。
やがてその硬直が解けると、彼女は顔を真っ赤にした。
「も、もう!いきなりだったから、びっくりしちゃったじゃない!」
「ご、ごめん・・・でも、俺・・・・・・」
そう言って謝る俺の顔に、彼女は唇を押し付けた。
「お・か・え・し♥」
「あっ、やったなあ〜」
そんな調子で、彼女の家の前に来た。
「ねえザビー。」
「ん?」
俺の親父は宣教師で、そのことから小学校時代に『ザビエル』というあだ名を付けられた。そして、今でも俺はそう呼ばれている。
そして彼女からは、『ザビー』と呼ばれていた。
「あのね、今日、パパとママ、出かけてていないの。ちょっと休んでいかない?」
俺はびっくりして彼女を見た。俺にはまだHの経験はなかったが、その言葉の意味はわかっていた。
ものすごく、ドキドキしている。まさか、こんなにも早く、このような展開になるなんて、思いもしなかった。
「え、ええっと・・・・・・いいの?」
彼女は言葉を返さずに、ただ、首を縦に振っただけだ。それも、顔を赤く染めて。
すると彼女はぎゅっと俺の腕を握ってきた。その潤んだ瞳に見つめられると、もはや拒否はできない。
「わ、わかった。」
「嬉しいな♥」
そして彼女が玄関の鍵穴に鍵を差し込むと、俺はそれだけで勃起してしまう。
(鍵が俺の×××で、鍵穴が彼女の・・・)
そんな下らない妄想をしつつ、俺は玄関に入った。
暗い。
彼女の言うとおり、家には誰もいないらしい。
そのまま家の階段を登り、彼女の部屋へと案内される。
「ねえ、シャワーを浴びてくるから、ちょっと待ってて。」
「ええっ?だって、いつき全然汗臭くないし、俺は気にならないよ?」
「私が気にするの!だから、ちょっとだけ、ねっ?」
「うん。でも・・・そんなこと言ったら、俺も相当汗臭いかも。」
「ええっ?そんなことないと思うな。」
そこまで言って、彼女は更に顔を赤くした。
「えっと・・・その・・・一緒に入る?」
「・・・・・・いいの?」
「すごく恥ずかしいけど・・・・・・いいよ。」
俺は耳を疑った。この可愛くて素敵ないつきが、俺と一緒にお風呂に入ると言っている。
もう正常な精神状態にはいられないかもしれない。こんな夢みたいな現実、ありえないと思う。
でも・・・
今、このお風呂場に、俺といつきはいる。
手を伸ばせば、彼女の柔らかい素肌に触れることができる。
彼女は俺と身体を向かい合わせているが、目はまともに俺を見ようとはしない。すごく恥ずかしいのだろう。
今の俺は、何も身に纏ってはいない。文字通りの全裸だ。
だが彼女は・・・タオルを身体に巻いている。
「ずるいなあ。」
「で、でも・・・」
「俺は素っ裸なのに、君はタオルで隠してる。」
「もう、H・・・」
次の瞬間、きた。
彼女の身体から、タオルが消える。後に残ったのは、数多の肌色。
手を伸ばせば届く距離に、彼女のあられもない姿がある。
「あ・・・」
彼女の程よく実った、柔らかいその胸を、俺の手が触る。
「す、すごい・・・・・・」
母ちゃん以外の女の人の胸を触るのなんて、これが初めてだ。想像以上の、そして予想以上の柔らかさ。
俺は欲張りだ。こんなに柔らかい彼女の胸を、彼女の身体を、もっと身近に、思う存分堪能したい。
俺はそんな彼女の裸体をぎゅっと抱きしめる。これで一気に、彼女の柔らかく、そして暖かい身体を、思う存分堪能できる。
すると彼女は俺の耳元に囁きかけてきた。
「ザビーって、思ったよりもたくましいね。」
「思ったよりもって、どういうことだよう。」
「うふふ。だってあなたって、見た目痩せ型だし、何となくひょろっとしてるのかと思ってたから。」
「そんなことないだろう。」
「うん。たくましくてかっこよくて、私の理想の男性。」
そしてここで会話は途切れた。俺の唇が、彼女の唇を塞いだからだ。
その瞬間、彼女の鼓動が、素肌越しに大きく響く。ものすごく、興奮している。
それに釣られるかのように、俺の鼓動も大きく共鳴している。
今までの俺たちの関係は、仲の良いお友達以上恋人未満の関係だった。
でも今、この瞬間に、それは変わる。
恋人、そしてそれ以上の関係に。
俺は変わってしまってもいいと思っている。だが、彼女はどうだろう?
「いいかな?」
俺は彼女との関係の変化の受容を彼女に求めた。すると彼女は・・・・・・無言で頷いた。
次の瞬間・・・彼女は瞳を閉じた。
彼女の身体が、お風呂場のマットの上に横になる。そして・・・彼女の両足が大きく開かれた。
再び彼女は目を開けた。その瞳は、真っ直ぐに俺の顔を見ている。
彼女はもはや、身体を隠そうとはしない。ただじっと、不安そうに俺を見ている。
いつき・・・・・・怖いのかな?
いや、違う。彼女の不安は、怖さではない。俺が、彼女の身体を受け入れてくれるかどうかの不安。おそらくそうだろう。
だがその種の不安は、俺にもある。果たして彼女の身体が、俺を受け入れてくれるかどうか。
でも、やってみないことにはわからない。それをしないことには、お互いに相手の身体を受け入れられるかどうかなんてわからないだろう。
でも、予感はする。多分、大丈夫だ。何となく、勘でわかる。
「・・・・・・怖い?」
「ちょっと。でも・・・・・・私・・・・・・」
俺は驚いて彼女を見た。彼女の身体が・・・・・・光り輝いている。
その瞬間、俺は理解した。彼女の髪の毛の先っぽから、足のつま先に至るまで、彼女の身体のすべてが、俺を求めている。
怖いのは確かだろう。だがそれ以上に、俺を求めている。
俺は彼女の身体に覆い被さった。そしてその開かれた両足の間に、俺の腰を滑り込ませる。
そして、俺の先っぽが、彼女の女の証に触れた。
その場所は、紛れもなく、膣だ。
男と女の、生殖器。これを男女がお互いに交わすという行為には、意味がある。
この瞬間、俺と彼女はお友達ではなくなってしまう。それ以上の関係になるかもしれない、歴史的な瞬間。
だが、最悪の場合、俺と彼女は破局を迎えることになってしまうかもしれない。その意味では、まさに俺と彼女の、生涯の分岐点。
でも俺は、このまま止めてしまって、その後もずるずるとお友達でいようなどとは思わないし、彼女もおそらくそれは望んでいないはずだ。
運命の一瞬。
それは唐突に訪れた。
俺も、まさか今日この場所で経験するとは思わなかった。
彼女は一瞬だけ、顔を歪めた。
多分、痛いはずだ。その証拠に、血も出ている。だが、俺のいきり立った性欲は、もう抑えが効かない。
一瞬にして、俺の性欲の塊は、彼女の奥深くに滑り込んだ。
「・・・痛かった?」
俺はそう言って彼女の顔を見た。おそらくまだ処女だったのだろう。彼女の瞳は、少しだけ涙に潤んでいる。
「うん。」
「ごめん、今抜くよ。」
俺は彼女を気遣ったつもりでそう言った。だが彼女は、俺の言葉に不快感を示した。
「嫌!」
「いつき?」
「だって、ずっとずっと憧れてたんだもん!本当に好きな人と、こういう関係になるって。」
「いつき・・・」
「だから・・・私、幸せだよ♥」
まだ痛そうだけど、彼女はにこっと微笑んだ。本当に、幸せそうな顔をして。
「いつき・・・・・・俺も、すごい幸せだ。」
幸せだし、気持ちもいい。それに、なぜか安心感もある。彼女の柔らかく暖かい身体が、俺を包み込んでいる。
俺はそのまま、彼女をぎゅっと抱きしめた。もう逃がさない。誰にも、渡すもんか!
まさに、俺のためだけに生まれてきてくれた、唯一の女性。
俺の生涯をかけて愛する、それだけの価値のある女性。
その女性が今、ここにこうしている。
彼女だけ、いてくれればいい。
これが、愛してしまったということなのだろうか。おそらくそうだろう。
今、俺と彼女は一つに結ばれている。
二つの心音が、お互いに共鳴し合っている。
そのハーモニーの、天上の響きが、俺たち二人に祝福を与えてくれる。
そして、俺たちの鼓動に合わせて、二人の魂も共鳴しあう。
その先には、彼女の身体の奥底に眠っている、母性。
それを目覚めさせるべく、俺の身体から、数多の鍵が流れていく。
彼女の今だかつて目覚めたことのない、母の自覚を呼び起こすために。
「大好き・・・だよ・・・♥」
行為が終わって横になる俺の顔を覗き込んで、彼女はそうつぶやいた。
彼女の身体も、そして心も、既にお友達を卒業している。
結ばれるか、別れるか。その最大の難関を、俺たち二人は手を取り合って乗り越えた。
この先、俺と彼女には、様々な難関が待っているだろう。
でもきっと、彼女と一緒なら、上手く乗り越えていける。俺にも、そして彼女にも、その自信はある。
だが、乗り越えるには、体力と英気を養わなくてはならない。
さすがに今日は疲れた。彼女もそんな俺の事情はわかっているみたいだ。
「ねえ、一緒に寝よ?」
俺は何も言わずに頷いた。
どんな難関も、彼女と一緒に乗り越えてみせる。
だが、最初の難関は、すぐにやってきた。
俺と彼女は、彼女のベッドに入って、すぐに眠ってしまった。
そして翌朝、彼女の両親が帰ってきて、俺たちの寝ているベッドを見るまで、俺たちは目を覚ますことがなかった。
それから時が過ぎ・・・・・・
今こうして、彼女は俺の側にいる。
あの時結ばれたいつき。彼女はそのまま、俺の妻になった。
一つ目の夢。可愛い女の子と結婚する。この夢は叶った。
二つ目の夢。幸せな家庭を築き上げる。これも、多分大丈夫だ。彼女と一緒なら。
だが、三つ目の夢、新婚初夜に彼女を妊娠させる、それはもはや叶えられぬものとなった。
今、俺の隣で微笑むいつき。
彼女のお腹は今、大きく膨れ上がっている。
俺たちが結婚したその夜、妻のお腹は既に大きくなっていた。
あの日に、彼女は妊娠してしまったのだろう。お腹の子供の成長具合から逆算しても、辻褄が合う。
でも、それでいい。
三つ目の夢など、もうどうでもよくなっていた。
今こうして、俺の隣にいつきがいる。
「あっ、今、赤ちゃんがお腹を蹴ったわ!」
おしまい