「暇だな……」
あたいは今、一人で街を歩いてる。本当ならあいつと一緒なのだが、どうしてもはずせない用が入ったとかで来れなくなってしまった。
まあ、たまにはいいかなんて思って一人で街に来てみたんだが……
「暇だ……」
正直、退屈死しそうだ。
あいつがいりゃこんなことにはならんかったのに。あたいとのでぇとより大事な用がこの世にあんのか!?そりゃなんだ!!?
………考えてても仕方ないな。退屈死する前に帰るか。
そう思って元来た道を振り返った時。
知らない女と手を繋いだ、あいつが居た。
「……っ!?」
な……なにやってんだあいつ!あたいという女がありながら、う……浮気だと!!
しかも……なんで…そんなに楽しそうに……
こんな……ことが……
そこから先のことは、よく覚えていない。気がついたら家の前にいたみてぇだ。
組のやつらがやたらと「お嬢、大丈夫ですか!」とか言ってた気がするが、適当かわして自室に入った。
そしたら……
「……うぅ……ぇぐ…」
涙が、止まらなくなっちまった。
あいつのあの笑顔。あたいも見たことがないものだった。
それは…つまり…あたいより、あの女の方が……大事ってことなのかな……
次の日、あたいはあいつを家に呼び出した。
もちろん、昨日の件について問いただすためである。覚悟は決めた。どんな結果だろうが受け止めてやるさ。
「で、話ってなに?緑さん」
「昨日のことについてだ」
きっと睨みつけてやる。
「恋人に嘘ついて浮気とは、いい身分だな」
「浮気?なんのこと?」
ブチン、という音がした気がする。
「とぼけんな!昨日街で見たんだよ!お前がどっかの女と手ぇ繋いで仲良く歩いてんのを見たんだよ!!」
思い出したら猛烈に腹が立ってきた。あたいは浮気野郎の首をつかんでギリギリと締め上げる。
人の気持ちを弄んだ罰だ。たっぷりとくらいやがれ!!
「ちょ…!う…浮気!?あ、もしかして…妹と歩いてたのを見たの?」
………は?
「ごほっ!ごほっ!……あー、昨日一つ下の妹にせがまれて街に行ったんだよ。訳あってたまにしか会えないから。あれ見られてたの?」
…つまりあたいは……一人で勘違いをしてた…いや違う!させられてたんだ!!
「この野郎!勘違いさせやがって!紛らわしいんだよ!」
「はは、ごめんごめん。でもさ」
ん、なんだ?
「嫉妬した緑も、すっごくかわいいね」
……う、うるせぇ!あんまふざけてっと太平よ(ry