「ううっ…」
暗い牢獄に私のうめき声が響く。
あれから更に数日が経った。
私は相変わらず組織の男達に拷問、陵辱されると言う惨めな日々を送っている。
今の私は気力だけで持っているようなものだ。
薬の影響で、陵辱された後も私の身体には性への欲求が渦巻いていた。
だが、拘束された状態では自分で性欲を解消する事も出来ず、ただ身もだえしながら耐えるしかないのだ。
「ふっ、んん…」
身体に渦巻く性欲に、思わず身体を捩じらせる。
今の私は後ろ手に縛られ、両足も拘束されている『芋虫』状態にされていた。
何度もさせられた格好だ。
「はっ、ふぅん…」
今の私を他人が見たら、まさしく芋虫がのたうっているようにしか見えないだろう。
その時、淫気に苦しんでいる私の耳に足音が聞こえてきた。
―今は真夜中の筈だ、こんな時間に一体誰が―
足音は牢獄の前で止まる。そして鍵が開けられる音がしたかと思うと、乱暴に牢獄の扉が開かれた―。
「…ッ!貴方は!」
私は思わず驚愕の声を上げる。
そこに立っていたのは私を捕えたあの大男だったのだ。
彼とはあの日以来会ってはいない、私が拘束されている間彼は一度も牢獄には来た事がないのだ。
それが、なぜ今頃突然やって来たのだ…。
「グシュシュ〜、ダークネス・クィーンともあろうものがいいザマだな」
相変わらず猛獣を連想させる目つきの男は口から涎を流しながら話しかける。
「ふふっ、貴方、私を誰かと勘違いしていない?それよりどんな御用でここに来たのかしら?」
懸命に淫気を抑えながら私は言う。
「お前にいい事を教える為にやってきたのよ」
「いい事?」
「そうだ、つい先ほどボスはここを出て行った。新しい商品を受け取るためにな」
「新しい商品?!まさか!」
男の言葉に、私は思わず上体をもたげる。
「そうだ、数人の少女達が新しい奴隷として調教される事になる」
「…!!そんなことはさせない!!」
私は必死で叫ぶ、それは魂の叫び。だが、そんな私に男はただ薄笑いを浮かべるのみであった…。
「グフフ〜、『そんなことはさせない』だと?今のお前に何が出来るっていうんだ?」
「くっ…!」
無力な自分が恨めしい、私は悔しさに唇をかみ締める。
「グルル〜、なんだその顔は。己の立場がまだ解ってない様だなぁ」
「私の命に代えても貴方たちの思い通りにさせはしない!」
男がナイフを手に、ゆっくりと私に近づく。
「何も出来ない癖に口だけは一人前か…、馬鹿な女だ。だが、俺はお前のそういうところが好きだぜ」
そう言って、男は両足を拘束しているロープを切る。
「えっ?」
「グッフフフ。いかなる状況でも決してあきらめない意志の強さ、他人のために己の命をも捨てれる自己犠牲精神。お前は最高だ、俺はお前みたいなヤツをなぁ…」
クワッ!
男の目が大きく見開かれた。
「ズタボロにぶっ壊したくなるんだぁああああ!!!」
雄たけびを上げ、男はすさまじい勢いで私に襲い掛かってきた。
「!!」
とても反応出来る速度ではなかった、気が付いた時には既に私は男に組み敷かれていたのだ。
「は、放しなさい!放せ!」
ジタバタともがく私。だが、全く抵抗になっていなかった。
縛られている上に薬を打たれている身では、例え相手が子供でも振りほどけないだろう。
「グシュシュ〜、お前に他人を守る力など無いわ。己の身すら守れねえんだからなぁ!」
「貴方…!」
「グルルル〜、これからお前に身の程というヤツを教えてやるぞ!」
男は剛直を取り出した。
あまりにも大きい、彼のモノに比べたらボスや他の男達のモノなど子供以下だ。
彼はソレを躊躇うことなく私の膣に挿入しようとした。
「グロロロ〜。行くぞぉおお!」
「止めろ!止めなさいっ!アッ、アァアーーーー!!!」
ズンッ!
男のモノが私の身体を貫く!
その大きさ、その勢い、私はなすすべも無く激痛を甘受するしかなかった…。
「ウワァアアーーー!!!」
牢獄に私の絶叫が響く。
だが、男は私を両腕で押さえつけながら容赦なく腰を動かす。
「ガロロロ〜、どうだ?女どもが取引されようととしている時に、なすすべも無く犯される気持ちは」
「放せ!」
「グロロロロ…、どうだ?悔しいかぁ?そうだ、その顔だ。いい顔だなぁ!屈辱にまみれたお前の顔は美しいぞ!」
「ウグッ!私は…、必…ず…少女達…を…助…ける…。ウッ、ウォアアアーー!!」
「グフフ〜、そう強がるなよ。そろそろ俺のモノを感じる頃だ、お前も楽しむといい」
「な…、なんだと…。ハッ!ハァアーーー!!!」
ああっ、なんと言うことだ…―
私の身体はこの拷問に対してすら、快楽を貪っているのだ!
「グシュシュ〜、何が少女達を助けるだ?淫乱のお前の事だ、本当は女達の事など何も考えてはいまい」
「違う…」
「グハハ!これでもまだそんな口が利けるか!」
ズンズン!
「ウハァアーーーー!!!」
とても耐えられなかった。肉棒が更に私を強く貫くその衝撃は、より強い快楽になって私の身体を駆け巡る。
「アアッ!イッ、イヤァアアーーーーー!!!」
「ガロロロ〜、いいぞ、俺も感じてきたぞォ!!」
男が口を大きく開ける。
「お前のカラダをもっと味わわせてくれぇ!」
興奮した男は、そのまま私の首に噛み付いた。いつも薬を打たれている部位に、男の歯が突き刺さる。
「ッ!!ァアアーーーー!!!」
最早これは人間の性交ではない。獣のあくなき蹂躙に、私はなすすべも無く従うしかなかった。
「ガホォー!!」
男の牙が私の首筋に食い込む。
「アアッ、止めてぇー!」
今の私にプロとしてのプライドは最早無かった、今の私は唯の無力な23歳の女にすぎないのだ…。
「グホホォーー!!いいぞ、お前の味は最高だ!」
「イヤァーー!!」
男に抱きすくめられた私は下半身を貫かれ、首筋をかまれている。
私に抵抗する気力はもう無い、あまりの恐怖に快楽すらも吹き飛んだように見えた―が。
「ガロロォーー!!」
ようやく噛み付きを止めた男は、更に腰を激しく動かす。
情けなくも、私の身体は再び快楽を感じていた。さっきまでと違うのは、私が抵抗するのを止めた点だけだ。
パンッパンッ
「グルル〜、かわいいぞ。オオッ!お前も一緒に感じろ!」
「イッ、イヤッ…。ハッ、ハッ、アッ、ハァアーー!!」
男が動くにつれて、私の身体も熱く淫らになっていく。
「グルル〜、お前はやはり最高だ!オォオ!出すぞ!お前も共に果てろぉお!」
「アアーーッ!ファアアアーーーーー!!」
男が咆哮を上げて、私の膣に射精する。
同時に、絶頂に達した私も身体が快楽に支配されるのを感じながら意識を失っていったのだった。
「んっ、んん…」
絶頂に気が跳んだ私は、再び意識を取り戻した。
ずいぶん長い間気を失っていたように感じたが、実際は3〜4分くらいだったようだ。
男は既にいなかった。相変わらず後ろ手に縛られているものの、両足は縛られていない。そして、股間は綺麗にぬぐわれていた。
何かがおかしい…、何かが今までと違っていた。何だろう…。しばらくして、何がおかしいのかに気が付いた。
身体が軽い。組織に捕らわれて以来打たれ続けていた薬のせいで、私の身体は力が出ず、身体と頭が重い感じが抜けなかった。
それが今では嘘のように収まっている。もちろん拷問による身体の痛みや体力不足によるだるさはあるが、これなら以前のように戦うことが出来る。
早くここから脱出しなければ…。
もう時間が無い。私は身体をもがかせて、縛めを解こうと試みる。
バラッ…
信じられなかった、縛めは少しもがいただけではあっさりと千切れてしまったのだ。
久方ぶりの自由を喜ぶ間もなく私は身体をほぐす。身体の硬さが元に戻った所で縛めのロープを見る。千切れた部分は、明らかに刃物で切れ目が入れられていた。
(彼がやったの?でも、何のために?)
理由は解らない。でも、彼は明らかに私を逃がそうとしている。
身体の調子が良くなったのもやはり彼のおかげだろう、噛み付いた際に口に含んだ解毒剤を注入したものと私は考えている。
私はドアに手をかける、鍵がかかっていない事は最早確信出来ていた。
外に人の気配がする。だが、それにかまわず私は外へと足を踏み出した。
外にいたのはやはりあの大男だった。
「貴方…、何を考えているの?私は貴方の敵でしょう?」
男は私の質問には答えずに、逆に私に問いかけてきた。
「グルル〜、お前は女共を救いたいんだろう?」
「えっ、ええ、もちろんよ」
突然の質問に私が答えるや、男は不意に背中を向けて走り出した。
「待って!どこへ行くの!?」
私の声に一瞬、男が振り返る。
「グハハ、来いっ!女!お前が行きたい所へ俺が連れて行ってやる!」
「!」
私は反射的に男の後を追いかける、時ならぬ追いかけっこが始まった。
私たちは建物の裏庭に出る。おそらく取引に大勢の人員が出払っているのだろう、途中、誰にも出会わなかった。
庭には二台のバイクが置いてあった、男はその内の一つに乗るやすさまじい勢いで飛び出していった。
私も慌ててもう一台のバイクに乗る。鍵は既にかかっていた、そのまま私も彼の後を追う。
暗闇の中、奇妙なドライブが始まった。
30分程走っただろうか、男が案内してくれた場所は山奥の廃工場だった。
入り口付近に人の気配がする、良く見ると武器を持った男が数人たむろしていた。中には見覚えのある顔も何人か混じっている。
男は無言で私を工場の裏手に案内する。
2mを超える巨体にもかかわらず、前を行く男は気配はもとより、足音すら全く立てずに歩いていた。
―なんという男だ―私の身体を冷や汗が流れる。
この男の技量を改めて思い知る。今や私は確信していた、今の私ではとても彼には太刀打ち出来ない、と。
私の考えを他所に男は天井裏まで私を導いた、そして天井の隙間を指差すと無言でスコープを私に手渡す。
男に示されるまま、スコープで天井の隙間を覗く。
「!!」
私の目に飛び込んできたのは縛られた数人の少女と複数の部下を引き連れたボス、そして取引相手らしいチンピラ風の男数人だった。
なにやら話し合っているボス達を横目に、捕らわれた少女達は脅えきっていた。
許せない―
私の心が怒りに燃える。本来、私の任務は潜入調査であり、犯人捕獲は管轄外だ。だが、こんな場面を見て何もしないでいられるものか。
もうしばらく辛抱してね、必ず助けるから―私は心の中で少女たちに呼びかける。
だが―ふと疑問が湧く。なぜ、彼は私をここまで連れてきたのだろう。私は振り返りつつ彼に声をかける。
「ねえ、何故貴方は私を―」
言葉が途中で止まる。
彼は姿を消していた。完璧に気配を隠し、いつの間にかここから出て行っていたのだ。
そして、彼がいた所に、敵に没収された私の武器や道具がおいてあった。
拳銃の弾を確かめる、確かに私の使っていた特殊スタン弾だ。
身体はまだ節々が痛み、疲労で少々脱力気味だが彼ら相手なら問題は無い。
私一人で人質を助け、敵を制圧することは不可能ではないはずだ。
命に代えても彼女達を助け出す―突入の準備をしながら、私は覚悟を決める。
そして、私は全ての準備を終えた。
―いくぞ―
新たなミッションの始まりであった…。
その後、私は制圧に成功。少女達を全員救出し、犯罪組織の人員はボスを含め全員を生かしたまま捕縛することに成功した。
任務は成功したものの、拷問によるダメージが思いのほかひどく、私はしばらくの休養を余儀なくされた。
見舞いに来た上司から、お前はまた任務を逸脱した、本来は調査だけだろう、何制圧部隊の物まねをしているんだ、と小言を言われながら組織の建物の調査の結果を教えてもらった。
上司の話しでは、内部は相当荒らされていたらしい。そして、金品や組織の情報に関するものは一切がなくなっていたと言う。無論、私が手にした組織に関するディスクも見つからなかったようだ。
私には、誰が犯人か解っていた。そして、彼の真の目的も。
彼は始めから組織に関する情報を狙っていたのだ。そして、たまたま私が侵入してきた事から私を利用しようと思ったのだろう。
すなわち、私が組織と戦っている間に組織の情報を入手する事を思い立ったに違いない。あわよくば、組織の壊滅も願っていたのかもしれない。
組織は確かに壊滅した、だが、新たな犯罪組織が急速に根を伸ばしてきたとも言う。組織をつぶし、組織の情報を駆使して勢力を急速に伸ばす。彼はその犯罪組織に雇われていたのだと私は確信している。
全ては私の憶測に過ぎない。ただ、一つだけ確かなことがある。
それは、彼とは近いうちに再びあいまみえると言う事。
闇の世界から人々を守るのが私の使命。
私の戦いはまだ始まったばかりなのだ。