618は早弁を後悔していた。昼休みの購買部のメロンパン争奪戦に敗れて、
食い物にありつけないまま、ひとりしょんぼりと渡り廊下を校舎に向かい
歩いていた。すると、いささか音量によっては声が割れるスピーカーから、
耳慣れた声が聞こえてきた。
「みなさんこんにちは。」「こんにちは。」
「倍分市立入田間々中学校、お昼の校内放送の時間です。」
「担当は、私、松木と」「新谷でお送りします。」
「最初の曲は、小池徹平さんで」「『君に贈る歌』どうぞ」
イントロが流れてきたが、なんだかごそごそ、くちゃくちゃ雑音が入る。
放送委員って、放送しながら、弁当食べるものなのだろうか。
そうでなければ、いつ昼食をとるのか、問題だ。
どうも、歌のリズムに合わせて、拍子をとるように、
くっちゃらくっちゃらぐぼぼぼぐぼぼぼと、雑音がかぶさっている。