魔法のランプなんぞがもてはやされたのも今は昔。  
科学万能のグローバル社会では、世界中駆けずり回ってそんなものを探すより、  
いつ飛び込んでくるか分からないチャンスに備えていたほうが効率がいいらしい。  
最後に人に会ったの何十年前だったかな…  
 
「ああ馬鹿!そこで抜かさずにどうするッ!?ギャーなにやってんだセカイトネリコオー!その八本足は飾りか!?あんたに一体いくら突っ込んでると…」  
 
「ヴァジュラ打法きたぁーッ!さすがインドラ!ローカパーラーズ最高ッ!ヒャッホーイ!」  
 
以上、私の一日でした。  
一コマじゃないよ。  
全部だよ。  
あれ、目から塩水が…  
 
「…はあ」  
 
こう見えてもわたし、結構凄いんだけどな…  
イフリータですよ?  
城とか建てられますよ?  
いやもうホント、誰でもいいから擦ってよ。  
 
「へえ、これが魔法のランプか!どれ、早速…」  
 
っておいおいマジですか!?  
壁の向こうからゴシゴシとロック解除音  
なんとビックリ、願ったその場で叶っちゃった。  
ご都合主義バンザイ  
 
「呼ばれて飛び出て「おっ、本当に出てきた!」  
 
…わたしが30年もかけて考えた登場シーンが…  
 
「あーごめん、なんか言おうとしてた?」  
「べ、別に…それで一体何のご用かしら?先に説明しておくと、願い事の回数は3回で固定。生命および精神に直接介入する願いは、罰則として無期限の悪魔化を…」  
「ああ、もう決まってるから大丈夫。」  
「あんた、すぐに話の腰を折るわね…まあ別にいいけど…で、何?」  
「うん、ヤらせろ。」  
「はいはい、お安い御よ…なんですと!?」  
 
久々に指名入ったかと思えばこれかよ!  
…いや、初めてじゃないよ?  
もともと、魔法のランプなんて物を欲しがる連中は、全てを投げ打ってでも叶えたい願いを一つだけ持ってる奴がほとんど。  
それさえ果たしてしまえば後は消化試合で、さっさと願いを消費して厄介な呪物とは縁を切ろうとする。  
そのついでに精霊を抱いてみたいって人間も何人かは居た。  
しかし…まさか最初の願いでそう来るとは…  
 
「…マジで?」  
「うん。」  
「…最優先で?」  
「うん。」  
「…この場で?」  
「うん。」  
「………」  
 
ま、まあ…いつもの事といえばいつもの事…  
順番おかしいけど…  
 
「むぅ、分かったわよ!ったく…」  
「あ、シャワーそこ左だから。」  
「へいへい」  
 
あーなんか調子狂うなぁ。  
せいぜい搾り取って、二回目こそはやりがいのある願いを言わせてやろう。  
…よし、準備完了!  
 
「おまたせー」  
「お帰り。俺はさっき入ったから、早速始めようか。」  
「そりゃ用意のいいことで…」  
 
うわ、こいつマジだよ。  
石鹸臭漂う男の股間は既にギンギンだった。  
けど、その顔はなんと言うか…  
無邪気な期待に満ちていて、わたしにはそれが妙に新鮮な感じ。  
物珍しさで体を要求される事が多かったからかな、こういう反応はちょっとうれしい。  
 
「どうするー?」  
「とりあえずキスから。」  
「はいよ。」  
 
むちゅー  
はは、なんだこのノリ。  
こういう性格なのかな?  
会ったばっかりなのに前から友達だったみたい  
…いや、友達同士でキスはしないか。  
じゃあなんだろ?  
 
「ん…んむ…」  
「ちゅ…」  
 
むむむ…結構うまい。  
ていうか、わたしの経験が少ないんだよね。  
基本的に突っ込んで出すだけだったから。  
こんなふうに優しく抱きしめられたのって初めてかも。  
…ろくな男に当たってないな、わたし  
ちょっと欝  
 
「ぷは!」  
「ふぅ、次はどうしようか?」  
「…んと…」  
 
えーと…なんて答えたらいいんだろう?  
こうやって自分のしたい事を聞かれるのも初めて。  
舐められちゃうかも知れないけど…こういうの、なんかいいな  
くすぐったい感じ  
 
「胸?」  
「ん、そだね…優しくね?」  
「あいよ、優しく…」  
「…っ!ふ…!」  
 
やわやわと、壊れ物を扱うように首筋から胸を愛撫される。  
うん  
いきなり鷲づかみにされたり、挟まれたり、前戯なんて楽しいのは男ばっかりだと思ってたけど、こういうのなら悪くない…  
 
「ん…ん…」  
「声、我慢しないほうが気持ちいいらしいぞ。」  
「別に…我慢なんて…」  
「してるじゃないか。せっかくだし、そっちも気持ちよくなって欲しいな。」  
「…へ?」  
 
その発想はなかった。  
 
「へ?…って。普通はそう思うだろ。」  
「いや、まあ…そうなの?」  
 
そういう風に考える奴もいるんだ。  
てか、わざわざ願いまで使って強要しておいて何言って…  
あ、こらちょっと!ひっぱるな!  
 
「痛ッ…」  
「おっと、ごめん!」  
「…優しくって言った。」  
「いや、悪い悪い。」  
「…誠意が感じられません。」  
「悪かったよ…ほら、気分直しに…」  
「ちゅ…」  
 
ぎゅー  
ふふん、分かればよろしい。  
…じゃなくて!  
なに浸ってんのわたし!  
一応仕事中だぞわたし!  
 
「ね、下も。」  
「もう痛くないか?」  
「平気。」  
「ならいいんだけど…」  
 
背中からわき腹、お尻、足…子供をあやすみたいに撫でられる。  
おおぅ初めて知った、こんなところでも気持ちよくなれるんだ。  
こんなまったりしたのも、たまにはいいかな。  
むしろ、いつもこうでも…なんてね  
 
「ひゃん!」  
「あ、ごめん。痛かった?」  
「く、くすぐったかったんだよ!」  
「…脅かすな。」  
 
あーもう優しいなちくしょう!  
悔しいけど顔がにやけてくる。  
こちとら、いいかげん無垢な少女って年じゃ…な、なんじゃこりゃぁ!?  
ビチョビチョだぁ…こんなの見せたら呆れられちゃうかな…  
それは、いやだな…  
 
「これだけ濡れてりゃ十分か。」  
「あんたが焦らしたせいでしょ…」  
「じゃ、入っていいかな?」  
「…恥ずかしいこと聞かないでよ。」  
 
いちいち了解とる男なんてはじめて見た。  
なんだか今日は初めてづくしだ。  
でもキライじゃないよ、そういうの。  
 
「…入れるよ。」  
「うん…ゆっくりね?」  
「わかってる。」  
 
ゆっくりと、熱い塊が入ってくる  
ああ、なるほど。  
これが、よく言う一つになるって感覚なんだ。  
うん、いいよ。  
気に入った。  
体はめちゃくちゃ興奮してるのに、心が落ち着くなんて初めて…  
すごい、ドキドキする…  
 
「あ…く…」  
「全部入ったよ。」  
 
ああ、いいよぉ…凄くいい…  
中と外から抱きしめられてるみたい。  
 
「そろそろ動くよ。」  
「うん、来て…あっ、あぅ…うぅ…」  
「だから、我慢するなって。」  
「や…だって…ふわぁ…」  
 
だ、だって!  
やらしい奴って思われたらやだもん!  
…年甲斐もなく何考えてるんだ、わたしゃ  
ああもう、本当に調子狂う!  
調子狂うけど…好き  
 
「うぅん…やぁ…」  
「お、その顔可愛いな。」  
「か…っ」  
「はい、隙あり。」  
「ひゃぁぁん!」  
 
いまの…私の声…?  
 
「うぁ!ああぁ!」  
「ふ…き、気持ちいい?」  
「あぅ!ひぃ…ひあぁぁー…」  
 
とまらない…とまらないよ…なにか言わなきゃぁ…  
 
「もぉ…もっとぉ…」  
「ん、物足りない?」  
「違うの!そうじゃなくて…その…んぁ…」  
「もっと激しい方がいいか?」  
 
ちがうの  
もっとしたいの…  
あんたと、もっとしたいんだよ…  
何て言ったら…わかってよぉ…  
 
「ぅ…え…」  
「お前…泣いてるのか?」  
「ちがうもん…」  
「…やめようか?」  
「や、やだ!やめないで!」  
 
ごめんなさい!  
めんどくさい女でごめんなさい!  
あ、あやまるから…離さないで…  
おねがい…  
 
「だっこ」  
「ん?」  
「だっこして」  
「…分かったよ。」  
 
あったかい  
ずっと、こうしてたいな  
ずっーと…  
 
「まだする?」  
「うん、続き…んっ…くふぅ…」  
 
フワフワする…きもちいい  
 
「ああ!ああああああああ!」  
 
きもちいい!  
 
「んにゃぁぁ!だ、ダメぇ!」  
「い、イきそう…?」  
「ダメ!ダメなのぉ!」  
 
だめ…  
えっち、終わっちゃう  
そんなのやだ…イきたくない…  
このままずっと…ああ、ダメなのに!  
 
「や…あ…あぅ…ッ」  
「俺も、出そう…ぬ、抜くよ!」  
「嫌!」  
 
待って!  
行かないで!  
ずっとわたしの中にいてよぉ!  
 
「は、離せって!」  
「やだ!やだぁ!」  
「中で…出しちゃうだろ!」  
「平気、だからぁ…妊娠しないから…」  
 
そう、わたしは精霊だから  
人間の子供は妊娠しない  
できない  
 
「おねがい…そばに…」  
「く…」  
「今だけ…今だけでいいから…」  
「ううぅっ!」  
 
ドクドク言ってる  
あったかい…  
わたしも、もうダメ…  
 
「ひゃああああああッ!!!」  
 
そういえば…えっちでちゃんとイったのも初めてかも…  
ホント、今日は初めてづくしだ…  
 
「…!…!…!…!」  
「く…凄いな…」  
「…はふぅ」  
 
また、だっこ  
終わったあとも優しいね。  
…本当に、終わっちゃったんだ  
わたしで満足してくれたかな…?  
 
「…ね、きもちよかった?」  
「ああ、よかったよ。」  
 
どうしよう、うれしい  
うわーまいったな…  
ねんねじゃあるまいし…  
行きずりの…一回しただけの相手に惚れるとか、バカじゃないの…  
 
「あの、もう一回…」  
「次の願いももう決めてあるんだ。」  
「…あ」  
 
ホント、バカじゃないの…  
わたし…ランプの精なのに  
願いをかなえるのが仕事なのに…  
ただの仕事なのに…  
 
「…願い事は、何?」  
 
3つかなえたら、お別れ  
もう二度と会えない  
 
「ああ、すぐにかなえてもらえるかな。」  
「…」  
「2つ目の願いは…」  
 
お別れしたくない…  
やだ、やめて…三回しかないんだよ?  
まだ先でいいじゃない…  
ねえ…  
 
「それで、その…」  
「…はやく…言いな、さいよ。」  
「ああ…えーと、やっぱり緊張するな。」  
 
はは、ホントなにやってんだろ、わたし  
涙声聞かせて同情引こうなんて…ごめんね、情けない奴で  
 
「ねえ…言いなさいよ…なんでも、叶えてあげるから…」  
 
だから、わたしのこと忘れないで  
ごめんね、変な勘違いして  
嫌いにならないでね  
 
「俺の恋人になって欲しい」  
「…へ?」  
 
恋人…?  
それは公正願掛け法に抵触…  
神頼み機会均等の原則に…  
いや、そんなことより!  
 
「あ、あんた…まさか!」  
「んー?何のことかなー?」  
 
…ああ、こいつ!  
最初からそのつもりだったな!  
ちくしょー、はめられた!  
 
「反則!反則だよこの野郎!」  
「いやー、知り合いからこの口説き方が一番いいって聞いてさあ。」  
「むきーッ!」  
 
ひ、人がマジ泣きしてる時に!この男は内心ほくそえんでやがったのか!  
ちょろもんだぜ、とか思ってやがったのか!  
あーもう!悔しぃぃぃぃぃぃぃ!  
 
「それで、叶えてもらえるのかな?」  
「…ルール違反よ!」  
「ほう、ペナルティは?」  
「私と一緒に地獄行き!」  
「それは怖いな。」  
 
さらばエリートコース  
わたしは恋に生きます  
…次の職どうしよう  
パートで亡者の監視係とか募集してたっけ?  
 
「…とまあ、こうして見事に落とされて今にいたるわけですよ。」  
「ひゅーひゅー!アツアツねぇ。」  
 
こいつは指輪の精。  
例の知り合いとやらに一足先に口説かれた女で、しかもわたしの元同僚だったりする。  
世間は狭いわ  
 
「それで、その手段って何よ?」  
 
精霊のわたし達は、人間と子供を作ることはできない  
それを解決する方法を思いついたというので、こうして聞きに来たんだけど…  
いつから、夫との馴れ初め話になったんだっけ?  
え、わたしから話しだした?  
嘘つけ  
 
「要は精霊と人間でなくなればいいのよ。」  
「だからどうやってよ!?」  
「そこで、願い事よ。」  
「…?」  
「お互い最後の一つはまだ残ってるでしょう?その一つで…」  
 
まさか  
 
「不老不死でも願わせるの?」  
「そう、ペナルティで二人とも悪魔になっちゃえば晴れて同族同士!名案でしょう?」  
 
な、なんてことを思いつきやがりますか!  
でも…そうね、確かに名案かもしれない。  
どうせ地獄行きは確定だし、二人で堕ちるところまで堕ちてみるのも悪くないかな。  
 
「いいわね、それ。」  
「でしょ?」  
「それじゃ早速…愛しのダーリンに悪魔の囁きをしてきましょうかね!」  
 
多分、こんな目的で悪魔になる精霊もわたし達が初めてなんだろうな。  
ホント、あいつと会ってから初めてづくしだわ。  
 

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