日本自治国の某県,某所…表向きは保健所だが、国の極秘命令にてある研究をしている極秘研究所である。
今日もまた一人,バイトと称した実験材料が目の前に座っている。
「…ふむ、家族も親族も生き別れ、お金を稼がないと生きていけないか……。」
「はい…なので、お願いします。」
カモ、絶好のカモ。この広い日本自治国の中で一人くらい消えたって失踪事件,または自殺と見られるだろう。
しかも、ここは国営…警察もここには絶対に手出しなんてできない。
「まぁ、確かにうちは国営だから、月に50万くらいは出せるよ。けどねぇ、仕事辛いけど大丈夫?」
「はいっ。何でもやります。」
「ほぅ…なんでもねぇ。」
真面目タイプと見た、隣にいる助手もこれは「完全に」いけると内心大笑いしているだろう。
「んじゃあ、この書類にサインして。」
「はい。」
こうして、新しい実験材料が苦もせず手に入ったわけだ。罪な事をやっているという事くらい分からない歳でもないが、
金に勝るもの無し…私にとって今がよければ全て良いのだ。
1週間後――
社員寮に移ってきた…名前は、まぁどうでもいい。そうだな、これで40人目だからNo.40とでも呼ぼうか…食事に睡眠薬を入れ、寝かせた後に、拘束して8時間。
もうそろそろ起きる頃か。
「えっ? ここは? うわっ!? は、裸!? それに……」
「お目覚めかね、40君。」
「しょ、所長! 40って…一体、これは?」
見るからに顔色が青くなるほど慌てているねぇ。いつも思うが、こういう瞬間がゾクゾクするよ。
「どうせロクに話もできなくなるだろうから、冥土の土産に教えてやろうではないか。」
「な、何を言ってるんだ! あんたは…!!」
「君は選ばれたのだよ…栄えある日本自治国…いや、中華人民帝国の未来の為にね。…さぁ、やりたまえ。」
私の優秀な助手が、手足腹を拘束された被験者に近づく。
「嫌だ、いやだ、ヤメロぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
暴れようとするが、動くのは首のみ…くくく、無駄だ…無駄な足掻きだ。
助手は光の速さと見まごう程の速さで腕に針を刺し、薬品を注入する。
「うわぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!」
叫ぶ被験者を尻目にかまう事無く近づき、こう囁いた。
「この薬は人間のDNAを組み替えて、動物のそれに組み替えるのだよ…しかも、じわじわと。
ん〜、そうだな、長い被験者で1ヶ月、短くて1週間で完全に理性を失った。君はいつまでもつかなぁ〜?」
くっくくくくく…は〜っはっはっはっはっは……
実験室内に私の高笑いが響き渡った。
「なるほど…ベットチの次は日本自治国って訳か。お前達や政府も含めて地獄に落ちればいいのに……。」
被験者の言葉はつぶやく程度で私の高笑いにさえぎられて、被験者自身や私以外にその言葉が届くことは無かった。
あれから10時間後――
被験者の身体の変化が始まった。さして大きくも無い一物が徐々に小さくなり、両胸も徐々に膨らんでいく。これは女性になっているのか?
性転換した被験者はこれが初めてだ。
「しょ、所長……。」
「分かっている。映像は撮ってあるな?」
「はい。問題ありません。実験室の閉鎖,遠隔操作での拘束解除もすぐにできます。」
「分かった、このまま続けろ。」
しまった…女性化するのならばTの字じゃなくてIの字で拘束するんだったな。
「所長…今、いかがわしいこと考えていませんでした?」
「ん? 何故、そんな事をいうのかね?」
「鼻血…出てますよ。」
否定もせずに何事も無かったかのようにティッシュで鼻血を拭き、モニターを食い入る様に見つめる。
「くぅ…あぁ…はぁぁ…。」
モニターの彼の一物からは触ってもいないのに白濁した液体が吹き出ていた。どうやら精を噴出す度に女性の身体へと変化しているようだ。
20時間後――
被験者は完全に女性となり、肌にも茶色い毛が生え始める変化が見られ始めた…これは最高記録になるかもしれない。
次の段階の準備が必要と考え、回収担当に内線を繋げる。
「李君、今日回収した犬猫はいましたか?」
「いえ、今日は無いです。」
「分かりました。」
大きなため息が出る…何故、こんな大事な時に回収できてないのか。
「確か、最近のがまだ処分されてないですが…そいつを使います?」
「面白いですね。いいでしょう…しかし、あいつはかなり強暴だったが大丈夫かね?」
私の脳裏に狼に近いシルエットのあいつを思い出す。思い出すだけでその美しさと殺気に鳥肌が立ってきた。
「…複数でやれば問題ないでしょう。」
「問題が無ければかまいません。やってください。」
「了解。」
こうイレギュラー続きだと、3,4日徹夜しなければな…当分、また寝られんかぁ。
「所長、本音が漏れてますよ。」
「あぁ、すまない。ついでに、あいつが運ばれる所を眠気覚ましに見てくるわ。」
「はい、何かあったら連絡しますね。あと良ければでいいので、飲み物奢ってください。」
「…分かった、気が向いたらな。」
適当に返事を返すと、早足で“奴”のいる檻へと向かったのだった。