気のせいだろうが、さぼりの時に浴びる日光というのは普段よりも暖かく感じる。  
蛍光灯のように光る左腕を隠すために黒い布を巻き光が洩れないようにした上、更にそれを隠す為に包帯を巻き怪我という事にし誤魔化しているオレは、  
どうせ見学しか出来ない上、男女分かれベアトリスの監視の目の離れる体育の時間に久しぶりのさぼりを屋上で満喫していた。  
「良い天気だ」  
心地よいけだるさの中、オレは背伸びと一緒に欠伸をしながら呟く。  
 
と  
「全くだな」  
全く気配も無かった横から、予想だにしない同意の言葉が返ってくる。  
その言葉に驚き、振り向きたオレの目に、  
日の光に重なり良く見えないが、黒いレースのフリルでふんだんに飾り付けられた、真っ黒なドレスに身を包んだ日の光に透け紫に見える奇妙な黒髪の少女が飛び込んできた。  
「…ベリ……」  
反射的にオレの口から言葉が出る。  
名前だ…この少女の名前を言おうとしたのだとは何故か判る。  
しかし、続けるべき言葉が思い出せない。  
そんな混乱する様子のオレを彼女は見下ろしながら、  
くすくすと笑い。  
「久しぶりだな」  
と、当然のように続ける。  
久しぶり……と言う言葉、そもそも髪の色が変な時点で確定だ。  
つまり、また例のあれだ……  
「また天国だか、地獄だかの関係者?」  
服の色がすでにどっちの側だか明らかに物語っているが、人は見かけで判断しちゃあいけない。  
「当たりだ。  
 余は悪魔の中でも、七つの大罪の一つ怠惰を司る魔王を勤めておる」  
それは少女の姿からは想像もつかない、  
…いや、角度を少しずらして日の光を避けて改めて見れば、その顔、というか表情は少女らしからぬ硬質な冷たさを持ってることが解る。  
 
「ものおじしないな」  
少女は意外と言うより、予想通りの事を確認すると言う感じでオレに言う。  
「今更、魔王だからって驚いたり脅えたりてのもなぁ……」  
「天に居た時から変わらぬな」  
少女はオレの横に座りながらに、懐かしい物を見るように遠くを見つめながら呟く。  
「天に居た頃のオレと知り合い?」  
先ほど、オレの口から出かかったこの少女の名前、  
それに久しぶりという言葉、  
となれば、どういう知り合いなのか気になる。  
「気にするな、ただのさぼり仲間だ」  
……ああ、オレって昔っからそういう奴なのね……  
「なにしろ、天界で余と渡り合える程の怠け者であったのは貴公だけだったからな」  
「さいですか」  
「そこで本題だが、  
 余の代わりに七大魔王の椅子に座らんか?」  
 
それは…つまり、  
怠惰の魔王ってことは……  
まったりとだらけし放題?  
……凄くそそられるじゃないですか……  
「後から恨まれても、人間じゃなくなったお前にはかなわないから言っておくが激務だぞ」  
一瞬、引き受けちゃっても良いかな?  
とも考えたが、速攻で結論が出る。  
「やめときます」  
「だろうな…  
 だが、天に戻っても仕事漬けには変わらんぞ」  
「……意地でも死ねないじゃないか」  
少女は、オレのふてくされた言葉に軽く笑うと、  
突然、立ち上がりオレの髪を掴み髪を引っ張りオレの顔を自分に向けると、  
そのままオレの唇を奪う。  
……柔らかい……  
じゃなくてっ!!  
オレは彼女の肩を掴み、髪が引っ張られ数本抜けるのも構わずに引き離し、  
「いきなり、何しやあすっ!?」  
叫ぶが、言葉に詰まる。  
少女のその赤い瞳には、今にも涙でも浮かびそうな暗い色が浮かんでいた……  
なんだか被害者のオレの方が悪い気がしてしまう。  
しかし、少女はオレの言葉が止まるとまるで何事もなかったかのように、元の表情に戻ると  
「覚えておけ…私は貴公を気に入っている。  
 今日のところは話はそれだけだ……」  
と言い捨てると身を翻し、そのまま屋上から飛び降り消えて行った。  
 
 
その日の放課後、  
 
保健医が帰り無人となった保健室でオリビアは、  
「くっ…はぁ」  
ベッドに倒れ込み胸を押さえ、苦痛が過ぎるのを待っていた。  
彼の光により焼かれた彼女は、その痛みを日毎に増し彼女を蝕み続け、  
ここ数日は一日が終わり、彼とあの天使が視界から居なくなると張っていた気の緩みから今まで耐えていた苦痛が一挙に押し寄せ、帰宅する事でさえ困難なほどとなっていた。  
 
「苦しそうだな」  
不意に苦痛に喘ぐ、彼女に後ろから声がかけられる。  
先ほど屋上で成と会っていた少女だ。  
その前に立つ者の違い故か、その表情の冷たさは更に増し幼い風貌に反し威厳さえも纏っている。  
その声に振り向き、その姿を認めたオリビアはベッドから降りると、膝を折り床に片手とともにつけ、残った片手で胸を押さえたまま、  
「…このような…姿で失礼を…」  
頭を下げようとしたが、  
少女の小さな手に顎を優しく掴まれ止められ、  
「無理をする必要などない、よく彼をこの世に引き留めてくれた」  
そのまま、少女は軽くオリビアを引き寄せ彼女の胸もとに手をかけるとブラウスのボタンを外しはじめた。  
 
オリビアはようやく、その段になりようやく事態を理解したかのように、少女の小さな手を押しとどめ、  
「…お止め下さい」  
苦しげな小さな声を絞り出し拒絶するが、  
少女はその力無い手を無視し、滑らかな手つきでオリビアのブラウスを脱がせると、  
そのまま彼女の身体を強引に冷たい保健室の床に横たえ、  
「その苦痛…、余の力を分ければ補い癒しも出来よう」  
少女はそう言うとオリビア手を軽く払い退け、そのままその手で彼女の大きめの胸を覆う紫のレースで編まれたブラに手を掛ける。  
が、  
「……しかし、それには…」  
オリビアは尚も拒絶の意を崩さない。  
「吾奴以外とは交わりたくないとでも言うのだろう?」  
「な……」  
あっさりと、自らの悪魔らしからぬ意を見透かされされたオリビアは思わず驚きの声を上げる。  
 
少女は、その様子に軽くその冷たい美貌故に嘲笑にも見える微笑みを洩らし、  
「安心しろ、そうだと思って余も完全な女の躯で肉を得てきた」  
と言う、と同時に横たえたオリビアを片手で押さえながら、  
残った手を黒いフリルに飾られた独特の光沢のあるスカートの中に入れ、衣服の黒と対象的に真っ白なショーツを自ら下ろし、  
その手でスカートをまくり上げ、少女はショーツの白とまた違った透き通るような白の肌を持つ足と、  
その付け根にまるで、その白に融けこんでそこにある事を見逃してしまいそうな位、慎ましやかな産毛すら生えていない秘裂をオリビアに見せる。  
そして、  
「もっとも、深くは繋がれぬ故に一時凌ぎ程度にしかお前を癒せぬが構わぬな?」  
と最後に言葉で付け加えた。  
 
そこまで言うと、もう少女はオリビアの言葉は待たなかった。  
片腕でオリビアを押さえたままで、  
オリビアのブラジャーを多少、強引に引きはがすとブラジャーという支えの無くなったオリビアの胸が仰向けになっている為に重力に引かれ形を変える。  
「っ!」  
反射的に胸を隠そうと動こうとしたオリビアの腕を少女は、そのか細い腕に似つかわしくない力をもって強く押さえた為、  
痛みに対する反射としてオリビアは歯を食いしばり、その隙間から息が吐き出される。  
少女は、そんなオリビアの反応に気づかないように、その手を彼女の足に這わせ、  
オリビアのタイトなスカートに手を差し入れショーツをパンストと共に下ろし、  
「……美しいな…死に関わる者だったとは思えぬ程に」  
少女はオリビアの足の間に自らの足を絡ませ、露になったオリビアの秘裂に自らのそこを合わせると、  
「くぅ…」  
「あっ…ぅん」  
まだ、二人とも濡れてはいないが、それでも小さいながら充分な硬さになった突起が当り合い、二人の口から甘い声を引き出す。  
 
そして、少女はそのまま足をオリビアの足に擦りつけ、足と足の肌で愛撫しながら、腰をより深くお互を食い込ませながら、  
自らの上着の装飾の施された銀色のボタンを外し、中のブラウスを引きちぎるように前を肌ける、  
真っ白い透けるような肌と、まだ膨らまず輪郭さえもはっきりとしないながら、しっかりとその存在をアピールする桃色の小さな頂点を持った胸を、オリビアを抱き締めるようにオリビアの胸と合わせ、  
「あぅん」  
「……ぅん」  
互いの快楽を引き出す為に、合わせた部位を擦り合っていく。  
 
オリビアの上で少女の体が蠢く度に、  
少女の固く尖った胸の先端が鋭く、オリビアの柔らかい胸を、  
オリビアの柔らかい胸が包み込むように、少女の未だ固くつぼみの胸を刺激しあい、  
二人の白い体は紅潮し、互いの秘裂と合わさったその部分がしっとりと濡れ、全身に熱を送りはじめる。  
「…うっん……濡れて…んっきたな」  
少女はオリビアを組み敷いたまま、自らの動きが彼女の体にもたらした変化を満足気に熱い息とともに声に出す。  
「そ……そんな…言わないで…くだ…あん…さい」  
もっとも、少女の方も同じように濡れて来ている。  
「……あっ…うん…」  
「くっ…ふぅん……」  
その証拠に、すでに断続的に聞こえる甘い喘ぎ声はどちらのものともつかず、混ざり合い、  
人の居なくなった学校の片隅で響きあい、  
粘性の液体の音が序々に大きくなってきている。  
 
そして、その内に強く結び付いた二人の体は、少女から人の肉眼でも見えるほどの、黒い黒い闇がゆっくりと染みだし、  
それがオリビアの体を包み込んでいく。  
「……くっ…余が…もう…っ」  
そして、彼女たちはその闇が二人を完全に包み込むと、  
「はっ…い……私も…っ」  
今まで耐えていた物が堰を切ったように彼女たち二人は登りつめ、  
「「あっあああぁぁっ」」  
二人は同時に達すると、闇はオリビアの体に染み込むように消えていく、彼女たちが一呼吸ごとに余韻を冷ます度に序々に消えていった。  
 
 
ー・ー・ー・エピローグ・ー・ー・ー・  
数時間後、金刀宅  
 
オレは台所で料理をしているベアトリスに今日、学校で会った悪魔の少女の事を話すべきか悩んでいた。  
「……話すべきなんだろうけど」  
オリビアの時、隠し事されて怒った手前…言うべきだよなぁ…  
しかし、そうすると……  
「体育さぼった事も言わねばならん」  
小学生の時分には、自力でフーリエ関数まで導き出していたオレの頭脳が初めて経験する袋小路……  
「困ったモンです…」  
銀次に勉強を教える以上の難問に思わず言葉が洩れる……  
「よっし」  
が、悩んでいても仕方ない。  
当たって砕けろ、  
いつ会ったか言わなきゃ良いと決心し、オレがリビングのソファーから立ち上がった。  
その時、  
 
ぴんぽーん♪  
ぴんぽーん♪  
ぴぽ、ぴぽ、ぴぽ、ぴぽーん♪  
と最初の二回は普通に、その後、どうやら連打してるらしき呼び鈴の音か鳴った。  
「……せっかく」  
人が決心固めたのに……  
オレは、仕方なく足の向きをかえ玄関に向かい扉を開ける。  
と、  
「暫く隣でオリビアと暮らす、これは引っ越し蕎麦だ」  
そこには今日、学校の屋上で会った少女がどんぶりを抱えて差し出していた。  
が、……頭痛の種の増加に胃が痛くなってきたオレは蕎麦どころじゃなかった……  
 
 

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