12月の日曜日、  
世間は年末の忙しさに慌ただしくなる時期だが、  
もうすぐ、クリスマス、そして冬休みと続く気楽な学生にとってはあまりそうでは無い。  
オレが自分の部屋でぼ〜っとマンガを読んでいると、  
コンコン  
と軽くノックがされ、  
「海外からみたいなのですが、なんて読んでしょうか?」  
それとほぼ同時、  
オレが返事をする前に、勝手に扉を開けたベアトリスが小包に貼られた伝票を睨み呟く、  
「……はちせんほこ…やちほ…?」  
最初来た時は窓からだし、今回も返事も確認せずに扉を開けて入って来ている、  
普通に入ってくるよにその内、注意せねば……  
……一人でしてる最中だったりしたら気まずい……  
と頭の片隅で考えながら、  
「八千矛(やちよ)武(たける)だろ?」  
と、小包の差出人名を読めないで小首を傾げる彼女の可愛らしい様子に軽く笑いながら答え、  
オレは彼女の差し出す小包を受け取り、  
「少し早いけど、オレと美迦にクリスマスプレゼントだろうな」  
 
その場で小包を開け、  
「あっ、アイツ不精して誕生日プレゼントも一緒に贈って来やがった」  
クリスマスの後、一週間ほどで来るオレたちの誕生日、因みに武は元旦、オレは2時間遅れで2日のプレゼントも入っていることを確認し、  
毎年ながらオレに一緒に送った方が手間無かったと悔いながら、自分宛てと妹宛てに分け勉強机に妹のものを置く。  
 
「…八千予さんって?」  
プレゼントを置いたオレにベアトリスが尋ねてくる。  
「一応、兄貴だな……双子に上も下もねえし、オレや美迦とは別の親戚にひきとられて何年も会って無いけど」  
振り向くこともせず、詳しく話せば両親の不幸にまで話が行きしめっぽくなり兼ねない為、手短に答える。  
が、そんな些細なやりとりのはずが、  
「…お兄さん…居たの?」  
返ってきたベアトリスの声がおかしい、震えている?  
オレは焦って立ち上がると、急いで振り向いた。  
 
そこに立ってるベアトリスは、白い貌をうつむき、その場に立ちつくし何か考えていた。  
「……居たがどうかしたのか?」  
なにやら考えている彼女の肩にオレは手をかけ尋ね、  
「…成さんに…お兄さんなんて聞いていない……」  
返ってきた彼女の言葉に  
そんな事、言った覚えない…と言いかけて思い出した。  
そいえば、ベアトリスが一番最初に来た時に確認した『家族』は伯父と妹だけだ、  
もちろん、それは正解だ。  
別々に引き取られて以来、大人の暑中見舞いやお歳暮程度にクリスマスと誕生日プレゼントでの付き合いで『家』族とは言わないだろう?  
オレや妹から言わせると武は親戚といった感覚だ。  
だから、家族を聞かれて伯父と妹と言われて何も考えず、  
ほとんど惰性で答えた。  
……わけだけど、  
「武が何か問題だったのか?」  
オレは明らかに何かあると感じてベアトリスに向かって尋ねた。  
「……成さんと双子で…兄……」  
オレの問いかけにベアトリスは顔を少しうつむき、ゆっくりと自分の口の中で自分で言ったことを確認するように呟き、  
「成さんの兄は敵対者以外には有りえません」  
顔を上げた彼女ははっきりと言い切った。  
 
その言葉でまたオレに頭に疑問が浮かんだ。  
「……そういうのは無しって話じゃなかったのか?」  
もっともこの質問をしたところで、ベアトリスから答えが来ないのは判っている。  
「私の聞いた話では、そのはずなんですけど……」  
当然だ。  
だから、ベアトリスはオレを迎えに来たんだ。  
こっちでまだやる事が有るのに天に帰って来させようとはしないだろう。  
……となると、その辺のこと知ってそうなのに残っている心当たりとなると……  
オレの脳裏に先日会った少女(多分、見かけだけ)の顔が浮かぶ。  
「別にうっちゃっておいても良いんだけど……知らない間に余計面倒な事になっても困るし……」  
オレは自分にしか聞こえない位の声でそう軽く呟き、ため息とつくと、  
ベアトリスに対して、  
「良いか?  
 絶対に槍は無しだからな」  
と強く言う。  
当然、突然何を言われたか解らないという顔をする彼女にもう一度、オレは  
「頼むからっ!!」  
と念を押して部屋から出た。  
 
オリビアが知っているかも知れない。  
オリビアが知らなくても先の少女はなんたって自称魔王だ、知っている可能性は高いと思う。  
部屋から出たオレは、そのまま靴を履き自宅から出て、  
隣、つまりオリビアの家に向かった。  
不意打ちで事情も知らずに兄貴に殺されるなんざ、オレはアベルじゃ有るまいし御免だ。  
もっとも、向こうにわざわざ説明してくれる義理は無いんだが、聞ける限り事情を聞こうとオリビアの家の門をくぐろうとした所で、  
それまで黙ってオレの行動を後ろから見ていたベアトリスがオレの腕を掴み、  
「成さんっ!」  
オレを止めようとする。  
当然といえば、当然だな。  
「仕方ないだろ?  
 ベアトリス以外に事情知ってそうなのは他に居ないんだし」  
「それはそうですが、悪魔に聞くなんて……」  
言葉は弱いがそれとは裏腹にベアトリスはしっかりオレの腕をつかみ、凄い力で門から引きはがそうとしている。  
しかし、悪魔全体を指してどうかは知らないが、オリビア個人はベアトリスのいう程悪くない気がする。  
……結構、迷惑かけられててそう思うのも変だけど……  
ずるずると少しづつ引きずられながら、なんとかベアトリスを説得しようと、オレが口を開いた。  
その時、  
 
「トリシアではないか?」  
突然、頭の上、  
ブロック塀の上から声をかけられた。  
 
声の主は例の少女だ。  
ブロック塀の上で仁王立ちし腕を組み、前に会った時と同じくフリルをたっぷりあしらった黒いゴシック調のドレスに身を包みこちらを見下ろしている。  
……それに、かけられた少女の言葉?  
「ベリアス様」  
ふとオレの頭に疑問がよ切った隙に、先に少女に反応したのはベアトリスだ。  
ベアトリスはおそらく少女の名前であろう言葉を叫びながら、掴んだオレの腕を思いっきり引き寄せ、軽々と片手で引っこ抜き自分の体の後ろにオレを庇う。  
 
……というかこの立ち位置って……  
オレがふと思った事を、オレを見下ろしたままの少女に、  
「惚れた女の後ろに庇われおって……情けないのう」  
……的確に言われてしまう……  
オレはその屈辱に対して、  
「そっちだってカッコイイつもりだろうけどその格好、実は結構間抜けな格好なんだぞっ!!  
 下から黒いタイツを透かして白いショーツが丸見えだぜっ!!」  
とささやかな復讐をした。  
もちろん、口に出したら人生終わりそうなので心の中だけで大声をはりあげた。  
 
……つもりが……  
「……しっかり口から出ておるわ!」  
怒号と共に、わずかに少女の体がふわりと浮いたかと思うと、  
空中で二回半前転し、オレの頭上の手前でぴたりと一瞬止まる。  
そして、その一瞬の後、  
黒いタイツに包まれたすらりとした右足を目一杯伸ばし、  
そのまま重力に任せて落下……  
 
ゴズン  
と彼女のかかとがオレの頭に的確にヒット、  
そのかかとはそのまま、オレの頭をひっかけたまま振り抜かれ、  
ドガッ!!  
オレの額をアスファルトにめり込ませる。  
「いててて……手加減しろよっ!!  
 見ろよ、額擦りむいたぞ」  
オレがめりこんだアスファルトから頭を上げ、前髪を持ち上げて擦り傷をアピールすると、  
少女は人の頭大に破壊されくぼんだアスファルトと、オレの額のすり傷を見比べ  
「貴公もいい加減、丈夫だな」  
と呟く。  
……どうやらこれ以上、文句を言っても無駄らしい。  
原因が原因だから仕方ない気もするけど、ベアトリスもオレを庇うどころか心配もしてくれないし……  
孤立無縁で喚いても空しい、  
オレは男らしく額の痛みを我慢し立ち上がると、本題に入る前にベアトリス、少女のどちらというわけでもなく、  
双方に先ほど気になったことを質問した。  
 
もしかして、  
「二人とも知り合いなのか?」  
トリシアは多分、ベアトリスの愛称だ。  
それに少女はオレの知り合いだったらしいし、ベアトリスと知り合いでも不思議はない。  
知り合いだったら、ちょっとは話がスムーズに進まないかなぁ〜  
と期待しての質問だったのだが、  
ベアトリスに  
「成さんは忘れてても良いんですっ!」  
とけっこう強めに言われてしまった。  
……忘れててもって事はオレに関係有り?  
スゲー気になるんですが?  
もっとも、これ以上の追求はベアトリスが恐いのでしない。  
そうオレが考えると、  
「何のことはない、恋敵という奴だ」  
と少女はあっさり答える。  
……忘れよう厄介ごとの種は忘れるに限る。  
オレがそう決心すると、少女は  
「ところで主らはここに何をしにきたのだ?  
 トリシアが好んでくるとは思えぬが?」  
ベアトリスが打ち切ったことで先の質問は終わったらしく、少女は、オレの希望を裏切り話を進める。  
……そう言えば用があって来たんだ。  
危うく、更なる疑問に忘れそうだったよ。  
オレは、ベアトリスを押し退け、  
「成さん」  
彼女の制止を無視し、一歩前に出てオレは武のことを少女に問いかけた。  
「ああ…そんな事か。  
 それは……」  
オレの問いを聞いた少女は、あっさりと呟くとそのまま言葉を続けようとしたが、それを止め。  
少し思案して、  
「教えてもよいが、その代わりに余の話も少し聞いてもらうぞ」  
と続けた。  
 
オレは少女に  
「承知って意味の聞くじゃないだろうな?」  
一応の確認をし、  
「成さんっ!」  
横でオレを止めようとしているベアトリスを  
「話を聞くくらいなら良いだろ?」  
と押しとどめ、  
「もちろん、強要する気はない。  
 判断はお前…いや、お前たちに任せる」  
少女の返事を確認し、お前たちと言う言葉に多少ひっかかったがオレは、  
「じゃあ、教えてもらおうか」  
承諾の返事をする。  
少女はその返事を聞き、話を始めた。  
「簡単に言うと……奴にはやる気がない!」  
……別に育ってもさすがはオレの双子。  
と納得しかけたオレに少女は話を続けた。  
 
「一番の原因はお前が近くに居ないからだな」  
「はい?」  
思わずオレの疑問の声が洩れ、  
少女はオレの声への答える。  
「真面目にやっているのに、怠けている奴の方が認められるとむかつくだろ?」  
そこで一旦、切って少女は、  
「貴公は自分の中身が天使だとは知っておろう?」  
オレが頷くのを待って少女は続ける。  
「神が創ったもっとも優れた天使の兄弟の中でも、奴は常に神を補佐し身を粉にして働いたが、  
 いざ、世界が出来てみれば、神に認められ神のひとりごである人の元に神の子として送られることに決められた天使は、 
事あるごとに雲隠れしさぼっていた弟のおまえだった……  
 奴が神の決定に不満を持ち、真意を問ただそうと逆らっても仕方有るまい。  
 事実、多くの天使は奴の言い分に納得し、ともに神に逆らったしな……おかげで奴は反逆者として堕たというわけだ」  
「それはつまり…  
 オレは面倒な仕事を命じられた上に、そのせいで兄に恨まれたって事ですか?」  
……泣けてきたよ。  
「まぁ、そうだな。  
 お蔭で神から離反した奴は常におまえと共に有り、争うことが仕事になったわけだが、  
 今回は、奴もむかつく弟が居ないからやる気になってくれん…困ったことだ」  
他人事と言わんばかりに、少女はあっさりと答える。  
「それって…オレが居なきゃ敵が居ないなら、オレは必要ないんじゃありますまいか?」  
至極、当然なオレの疑問に横で黙っていたベアトリスが  
「敵対者と戦うだけが成さんの仕事じゃないですから」  
と答える。  
 
……でも、今回は他にやること無いんだよな……  
あ…だから、ベアトリスが迎えに来たのか。  
オレが一人で自己完結して納得していると、少女が  
「疑問が解けたなら、そろそろこちらの話をしたいのだが?」  
と話しかけてくる。  
「本当に話しだけですよ」  
その声にオレより先にベアトリスが少女に念を押す。  
 
少女はベアトリスの言葉に小さく頷くと、話し出した。  
「話というのは、オリビアのことなんだが」  
「ん?」  
少女の口からオリビアの名前が出た瞬間、  
ベアトリスが息をのむ音が聞こえ、オレは思わず少女から目を外しオレはちらっとベアトリスを覗き見、顔色を伺う。  
少し動揺しているような気がする。  
「どうした」  
ベアトリスを気にし注意をそらしたオレに少女が聞く。  
「いや…続けてくれ」  
少々の動揺くらいは仕方ないか……  
どうせ、ベアトリスだけ帰ってろって言っても無駄だろうし、  
そう思いオレは少女に話の続きを促す。  
「率直に二人に聞くが、嫌いか?」  
「はぁ?」  
「えっ?」  
突然の質問にオレとベアトリスの声が重なる。  
 
そして、  
「またですか」  
ベアトリスが呟く。  
「また?」  
その台詞にオレがベアトリスに訪ねると、  
「いえっ!  
 何でもありませんっ!」  
とベアトリスは慌てて否定する。  
……気になる。  
が、気にしている間無く少女が答えを迫ってくる。  
「どうなんだ?」  
 
どうと聞かれても、少々面倒を起こされたりするけど  
「嫌いではないよな……」  
オレは嘘をつく理由も見あたらないし正直に答える。  
「貴公は嫌ってはおらんのだな?」  
少女は一瞬、優しく微笑んむとベアトリスを向き、  
「トリシアも嫌ってはおるまい」  
と優しく語りかける。  
「そんなっ!私は彼女が嫌いですっ!」  
即座に否定するベアトリスの声を少女は、きっぱりと否定する。  
「ならば、なぜまだオリビアがここにおる?  
 お前の方が強い…追い払えば良いではないか?」  
 
少女の指摘にベアトリスが困惑しうつ向き黙る。  
そうか…二人は嫌いあっているとかそういう事はなかったのか。  
そのベアトリスの反応に、  
困っているベアトリスには悪いが、オレは少なくとも二人の間で派手なドンパチが起こる可能性が少ないと判ると、  
少し肩が軽くなった気がした。  
「で、それが?」  
気を良くしたオレは少女に話の先を尋ねる。  
「……」  
少女は一瞬、視線を落とした後、  
「トリシア、怒るなよ」  
と付け足し話を続けた。  
「二人でオリビアを抱いてやってくれぬか?」  
 
……  
………  
…………  
「ちょっと待ていっ!!」  
唐突な少女の申し出に、止まってしまった思考の復活と同時にオレは叫ぶ。  
「大声を出すな…うるさい」  
少女はオレの抗議に対して、静かだが恐ろしい威圧感のある言葉を叩きつけ黙らせ、」  
「大体、お前がほいほいと惚れられるのが悪いのであろうが」  
何故かオレが悪いという事にしてしまう。  
「意味解らないし……」  
怒られたので、ひかえめなオレの抗議に、  
少女は、  
「これから、説明する」  
と話しはじめた。  
 
彼女の話によると、  
オリビアは理由は教えてくれないが今、力が非常に弱っているらしい。  
普通に消耗しただけなら回復はするが、彼女の場合は根こそぎ消えてしまった為に回復出来ず、地獄の闇に戻るか、  
他の力があるものから補わなければならないらしい……  
……で、その後者の補充方法として抱けというわけだ……  
 
「そんな理由で女性を抱けるかよ…」  
普通ならベアトリスが凄い剣幕で断りそうだが、黙っているのでオレが反論する。  
それに対して、少女は  
「そうだろうな。  
 だから、オリビアは余が治そうとしても拒んでおる。  
 幸い、トリシアは弟との縁が切れておらぬお蔭で、貴公の光をオリビアのための闇に変えられる」  
と、補足の説明をする。  
それを聞いたオレは胸が締め付けられるように感じた。  
目の前の少女を拒み、オレなら良い……  
というオリビアの気持ちに、自分で動揺しているのが解る。  
オレはなるべく声にそれが出ないように質問した。  
「ほっとくとどうなる?」  
「存在が消える」  
即答された少女の答えはショックだった。  
消える?  
オリビアがどこにも居なくなるってことか?  
混乱する頭でようやくに考えて、  
「じゃあ、地獄とやらに一度帰って……」  
言いかけたオレの言葉を少女が遮る。  
 
「帰れば、もう二度と貴公には会えぬ」  
そして、ベアトリスに向かい、  
「その辛さはトリシアには解るであろう?」  
と諭すように声をかけ、オレたちの答を待つ。  
 
……二度とオリビアと会えない。  
いや、それ以前に彼女が消えてしまう。  
正直、前提条件が卑怯だと思った。  
それが無ければ、ベアトリスが一番好きだ。  
ベアトリスだけで充分だ。  
それだけで済む話である。  
しかし、この彼女の居ることが当たり前になってしまった数箇月を過ごしたオレはオリビアが居なくなるという条件を振り切れる程、彼女が嫌いではない。  
いや、正直に言うと好きなのだろう。  
ベアトリスに判断を任せる手もあるが、この判断をベアトリスに任せるのはずるいんじゃないかと思った。  
 
オレは意を決し口を開いた。  
「オレはオリビアを助けたい」  
オレの返事にベアトリスが息を飲む音が横で聞こえ、罪悪感がオレの肩に重くのしかかり、  
永遠とも思える沈黙の後、  
「成さんがそうおっしゃるなら……」  
とベアトリスが言って何かを確かめるようにオレの手を握ってくれる。  
少女はオレたちの返事を聞くと一度、目線を落とすとオレたち二人に軽く微笑み、家の中に案内する。  
 
家の中に通され、案内された二階の寝室でオリビアは多少、息を荒くつきながらベッドの上で寝巻きを乱し眠っていた。  
その様子は確かに何らかの患いである。  
「……気づかなかった」  
ずっとこうだったのか?  
それとも今日昨日の事だろうか?  
どっちにしろ、オレは近くに居ながら全く気づけなかったことが情けなかった。  
 
そんなオレの胸中を無視して、少女の無遠慮な声がかかる。  
「さっさと、始めよ」  
「って、おたくはいつまで居るんだよ……」  
「何なら混ざってやろうか?」  
こっちはいろいろと悩んでいるというのに……  
「……とっとと出てきゃあせっ!!」  
オレは少女を押し出すように、寝室から追い出し扉を締める。  
もっともこいつらが本気で入るつもりなら、扉や壁なんて意味ないんだがそこまではしないだろう。  
 
オレは扉から離れて、オリビアの眠っているベッドを振り向くと、  
「成さんにベアトリス?」  
オリビアが上体を起こしこちらを見ていた。  
先ほどの大声のせいで、起こしてしまったらしい……  
状況が飲み込めず困惑するオリビアにオレは彼女の傍らまで近づき、先ほどまでの話をオリビアに説明し、  
最後に  
「オレはオリビアが好きだから抱きたい」  
と、自分の言葉を付け足す。  
「本当に?  
 ベアトリスはそれで良いの?」  
オレの言葉に戸惑うオリビアがオレの後ろに居るベアトリスに問いかける。  
……オレもそれは恐くて聞けなかったから、当然気になる。  
オレとオリビアに注目されベアトリスは、  
「……成さんがそう言うなら仕方ないじゃないですか……  
 見殺しにする程、貴方の事は嫌いではないですし……」  
と少し不機嫌そうではあるが、  
なんとか許容範囲かな?程度に聞こえる声色で答える。  
 
「じゃっ天使様の気が変わらない内に……」  
オリビアはオレの腕をひっぱると唇を奪う。  
「二人だけでなさったら意味ないじゃないですかっ!!」  
ベアトリスは、そう言うとオリビアからオレを引き離し、自分の後ろに回す。  
声が多少、高ぶっている。  
オリビアがオレに口づけをするのを見て、ベアトリスの殺していた感情が出てしまったのだろうか、  
オレのベアトリスが一番好きなのに、オリビアもほっておけない弱さが彼女の心を殺してしまっているのだろう……  
今更ながら、迷い後悔しはじめ動けなくなったオレの横でベアトリスは自ら服を脱ぎ去り、スラリとした白い裸体の胸と薄い金色の茂みを両手で隠し、  
ベッドに一歩向かいってオレを振り返ると、  
「成さん…も脱いでください」  
とオレの迷いを察して、声をかけてくれる。  
 
その声に我を取り戻したオレは  
「……御免」  
と自分にしか聞こえない声で呟き、いそいそと服を脱ぐと既に寝巻きをはだけ下着を脱いだオリビアの居るベッドの上に乗って、  
横で待つベアトリスをベッドに導く。  
 
ベアトリスの背丈のわりに驚くほど細く軽い裸体を傍らに抱き寄せ、  
「で、普通にすれば良いのか?」  
勝手のわからないオレは抱き寄せたベアトリスに訪ねる。  
「はい…普通で構いません。  
 あとは私が致しますから」  
オレは返事を聞くと、  
ベアトリスの細い肩の肌の感触、重さ、  
オリビアのはだけた胸もとから覗く白い胸、足の付け根にある黒い茂み、  
そして狭い空間に立ちこめた二人の甘い匂いに興奮し、痛いほどに起立したオレは直ぐにでも二人に入れたくなる衝動を必死に抑え、愛撫を始めた。  
 
オリビアに膝立ちで跨り、  
彼女の体に体重を掛けてしまわないように、膝に力を入れて注意しながら、右手で彼女のボリュームの有る胸をその丸さにそって、寝巻き……所謂、ネグリジェの上から撫で、  
「は……んっ……」  
彼女の喘ぎを聞きながら、  
骨盤の形のはっきりと解る細い腰、そして  
くちゅり…  
と、湿った音をたて、すでに黒い茂みをやや湿らせている彼女の秘裂へ指を這わせて行きながら、  
左手はベアトリスの肩から腰、そして彼女の秘裂へ這わせてゆっくりと刺激してゆく。  
「んん…」  
オレの指が蠢く度にベアトリスの口からくぐもった息が漏れ、  
序々にその入り口は濡れ、  
二人の呼吸の度、一層強く部屋に甘い匂いが立ちこめていく。  
 
二人を愛撫しながら、  
どっくん…どくん……と、やけに自分の心臓の音が大きく聞こえるようになった頃、  
「ぁん…さっきから、私に当たってるね」  
オリビアが限界まで大きく硬くなったオレのモノに指を這わせ、指の腹を往復させてくる。  
「……っん…」  
決して強い刺激ではない中に、それに慣れた頃時々、彼女の長い爪がオレのモノにひっかかる事で不意うちに強い本来は痛みであるはずの刺激が加えられ、オレは思わず声を洩らしてしまう。  
 
「……ん…」  
何度目かオレの声が漏れ、指に感じる心地よい暖かさと滑った感触がその刺激とあわさり溺れるようにオレの意識を濁し始めた時、不意に自分自身にかかった圧力が増した。  
ベアトリスがオリビアの指の絡むオレの先端から溢れた先走りを延ばしながら、オリビアと同じように指を這わせ、  
空いた片手でオレの顔を引き寄せ、唇を合わせる。  
柔らかい彼女の唇の感触が、オレの唇に強く…強く…押し付けるように合わせられ、  
彼女の温かく柔らかい舌がオレの歯茎を…舌を…その付け根を…口蓋を嘗めつくしていく。  
 
「くっ…」  
オレは限界に近いことを感じたオレは、愛撫していた手を止めオレ自身に添えられた二人の手を握り、  
「…ちょっと待って…」  
そのまま二人の手をモノから離すと、じっと射精感が過ぎるのを待ちオリビアの上から降りる。  
 
「…えっと」  
三人でするには…いつもとの勝手の違いに違和感を感じながら、オレは少し悩み……  
「ベアトリス、オリビアの上に跨ってくれる?」  
と提案するが、  
「えっ…それは……」  
短く驚きの声をあげた彼女は顔を耳まで真っ赤にしてうつ向かせると、オレの提案を柔らかくだか拒否する。  
「正常位以外、嫌なのよね?」  
そのやりとりを見ていたオリビアは、そう言い微笑むとベアトリスがうつ向いたまま頷く。  
それを確認したオリビアは自分の体を重そうに横にずらし、ベッドの中央を空ける。  
「私が上になるわ…貴方はいつも通りに……」  
オリビアが動くのが辛いのはその重そうな体の動きから判る。  
それでも彼女は体の負担の少ないだろう下をベアトリスに譲り、ベアトリスがベッドの中央に横たわると、互いの割れ目が合わさり合うように体を重ねる。  
 
オレの目の前に二人のピンク色の花弁が並ぶ、  
「……っ」  
オレは息を飲み二人につい見入ってしまう。  
オリビアの方が露が多く、ほんの少し赤みを帯びているように見える。  
「二人、交互に愛すれば良い?」  
オレは確認するでもなく多分、自分に言い聞かせるために呟くと、ベアトリスの中に押し入った。  
「くっ、あんっ……」  
熱く痛いほどに狭いベアトリスがオレを押し潰さんばかりの圧力で締めあげる。  
オレが、その圧力に抵抗にし抜き差しすると彼女が苦しげに喘ぐのに合わせて柔軟にオレを包み込む。  
そして抜き出す瞬間、大きく揺れベアトリスの小さな芽の先端がオリビアのそれにこすれ、  
「ああっ!」  
「っん!」  
二人に声を上げさせるほどの刺激となった。  
オレはその刺激がさってしまう前に目の前で焦れて濡れているオリビアのなかにベアトリスから抜いて、すぐに自身を埋めた。  
ベアトリスと違い、圧力という感じでなく絡みつくという感触がオレにまとわりつく。  
「あふん……あっん」  
オレはそのまま深く、押し入ろうとしてとんでもない事に気づいた……  
身長が足りない……  
一応、成長期だから伸びてはいるが、  
まだ170に達しないオレの身長、というか足の長さで膝立ちのままでは、オリビアの背丈で後ろから余裕を持って動くことが出来ない。  
オレは一瞬、考えたが仕方なく膝を少し浮かせその勢いで、彼女の絡みつきを振り切るように一気に突き入れた。  
「ああああっ!!」  
勢い良く限界まで突き入れられたオリビアの口から長い声が上り、その声と共に崩れ落ちそうになるオリビアの腰をオレは両手で掴み支える。  
「手…暖かい…」  
弾む息のまま、オリビアが呟くのを聞きながらオレは膝が自然と降りるのに任せ、オレ自身を彼女のなかから抜き出す。  
 
オレは何度か二人の間の往復を繰り返し、  
彼女たちはその度に喘ぎ、躯が揺れる度に起こるこすれ合いに声を上げた。  
そして、  
オレが自身の限界を感じ、最後とばかりに強くベアトリスの中に付き入れると、  
「ああっ、んっ!!」  
大きくベアトリスの背がのけぞりその動きに、彼女の体のなかに収まったオレ自身も引きずられるような方向に刺激され、強く強く達する。  
 
「ふう……」  
息をついたオレは、いつも通り後始末をするためティッシュを探し辺りを見渡す。  
「……ずるいわ」  
ティッシュの箱が見つからずどうしようかと考え始めた時、  
ぽつりとオリビアが呟いた。  
「ベアトリスのなかで出して……私も欲しいのに…」  
……そうは言われましても……  
オレが反論、というか言い訳をしようとした口を  
「んっ」  
オリビアが体を捻り抱きつき、キスをして塞ぐ。  
 
そして、口を離し  
「まだ、出来るわよね?」  
と、今のキスのお蔭で再び固くなったオレ自身を握り、  
完全にこちらを向くと、余韻でぐったりしているベアトリスを膝立ちで跨ぐと、腰をオレに擦りつけるようにしてオレのモノを再び自分のなかに収めた。  
 
「っ!」  
一度、達して敏感になったモノを再び、なかに押し入れた刺激にオレは後ろに倒れそうになるのを両手でふんばり、  
繋がったまま、オリビアを腰に乗せてベッドのバネを利用してその勢いで、抜き入れする。  
「ぁぁあっ……!」  
オリビアのなかをオレ自身が動く度に、ベッドのきしむ音と潤みきったそこから粘度の高い湿った音が彼女の声と重なり響く。  
「くっ…ん」  
痛みに近い刺激に、食いしばったオレの歯から息が漏れ、  
その刺激は二度目でありながら、簡単にオレに耐え難い射精感に導く。  
オレはその感覚に焦るように、激しく腰を動かし、  
「あ、はあっん……ああっ」  
激しくなった動きに合わせ洩れるオリビアの声を聞きながら、あっけない程に再び達した。  
 
 
ー・ー・ー・エピローグ・ー・ー・ー  
 
「はぁ…はぁ…」  
二度目とは思えないほど精をオリビアのなかに放ったオレが、そのままオリビアの躯を抱き締め呼吸が整うのを待っていると、  
 
バタンッ  
 
と派手な音をさせ、扉が開いた。  
「もう遠慮してせぬか……」  
例の少女だ……  
「聞いているこっちはたらんぞ」  
かなりお怒りのようだ。  
「全く、貴公は昔からデリカシーが足り…いや、皆無だっ」  
酷い言われようだ……  
オレが弁護を求めようと、オリビアを見ると  
「あっ」  
オリビアは翼を出したまま眠っていた。  
それは、いつか見たコウモリの翼でなく黒い色には変わらないがベアトリスと同じ鳥類の翼であった。  
…ってそんな事はどうでも良い。  
見るとベアトリスも余韻にひたったまま眠ってしまったようだ。  
つまり、じりじりとプレッシャーと共に近づいてくる少女に対してオレへの助け舟はどこからも来ない。  
「つーかこの二人も同ざ…い……」  
オレの言葉は最後まで言い切れずに、少女の右拳に掻き消された……  
「余の方がトリシアより先に……」  
オラオラかそれとも無駄無駄かという程のパンチラッシュの中で聞こえた少女の台詞は、面倒なので聞かなかった事にしておこう。  
オレはそう決めて意識を手放した。  
 
 

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