夏も半ば過ぎ行きもう一、二週間も時が過ぎ行けば立秋を迎える今日  
市街地より数里程離れた所に存在する緋早神社の境内では  
一組の男女が揃って竹箒を持ち掃いていた。  
 男の方は名を緋早葵(ひはやあおい)と言い若くしてこの神社の宮司を務める身だ。  
 その葵の目の前で白衣に緋袴といった典型的な巫女装束に身を包んだ女性が彼の方へ振り返る。  
「だいぶ涼しくなったけれど、これだけ働くと汗も掻くわね」  
 彼女は掃除の手を休め左手で竹箒手を押さえながら右手で自身を扇ぐ。  
「ここを掃いたら今日は終わりだし、もうお風呂も沸かしてあるからすぐに入れるよ」  
「さすが葵、そういう所もしっかりしてるわね。これも神様のお力のなせる技かしら」  
からかうように呟かれた言葉に葵が声を上げた所で、沙良と呼ばれた女性は腰まで伸びた  
黒髪を翻しながら彼の方を向いた。  
「やめてよ。そういう言い方をするなら沙良だって……」  
「そうだよね。葵がしっかりしてるのは神様だとか関係無しに葵が葵だからだよね」  
 そういって沙良はごめんねとばかりに彼の頬に短くキスすると顔を僅かに赤らめ掃除を再開するのに  
対して、葵はまだ彼女の唇の感触が残る頬に手を当てながらもの思いに耽る。  
 彼女、壬白井沙良(みしろいさら)はこの都市の市街部に有る神社に次女として生まれ、  
緋早の現人神として両親から生を受けた葵に仕えるべく者としての力を有している。  
 力と言ってもここ数ヶ月の内に儀式を終えたばかりの沙良はもちろん、  
葵でさえもそこまで神懸かりなことは出来はしない。  
 せいぜい天候を予想したり予知夢を見れたり、他者の感情がなんとなく解る程度のものだ。  
「葵、葵。早くこっちに来て手伝ってよ」  
「うん。今行く」  
 社の裏に広がる森林へと続く道を掃く沙良から声がかかり駆けていく。  
 
 元からあまり広い空間ではなく定期的に掃除をしていることから二人で数分も掃けば  
掃除も終わり石造りの道の上はきれいになった。  
「掃除も終わったことだし、さ、お風呂、お風呂。もちろん今日も一緒に入るわよね」  
 数時間のにも及ぶ掃除でかいた汗を流せる事かそれとも単に彼といちゃつけることの  
どちらかが主たる理由かはわからないが、表情や声に頼らずとも沙良が上機嫌なのかが伝わって来る。  
 彼の使っていた竹箒も持ち葵よりも数歩ほど先を行き、一定の差がつくと立ち止まり  
彼が追いつくのを待ってからまた数歩ほど先を行く。  
 それを何度か繰り返し、じれったくなったのか逆の沙良の方が葵に向ってきた。  
「あーもうっ、葵ったら遅い。私は早く汗を流したいのに」  
「そんなに早くお風呂に入りたいなら先に入っていても良いのに。箒を片付けたら僕も行くからさ」  
 彼としては最善の案を提案したつもりなのだろうが彼女には気に食わなかったのか、  
沙良の表情が見る間に怒った顔に変わる。  
「葵は私が先にお風呂に入って平気でいられるようなような、ふしだらな女だと思っているの?」  
 普段の言動ではさっぱりとした感じが有る沙良だが、こうした男女間の礼節には人一倍厳しく  
言葉こそは優しい感じでは有るが、怒りの感情が強ければ強いほど逆に丁寧な口調になるのが  
彼女なので今の状態は推して知るべしだろう。  
「そんなことを思った事は一度も無いけど……」  
「けど……何? そう思っていないんだったらここで証明してみせて」  
 沙良は彼の語尾の曖昧さを攻め、ある事をねだるような言動を取る。  
「わかった」  
「頬じゃ嫌だよ」  
 先刻彼女がしたのと同じ事をしようとする葵に対し、真っ直ぐに立ち顎を上げ唇を伸ばす事で  
互いのそれを重ねる事を沙良は望んだ。  
 
数秒のキスを終えた彼女は満足しきった顔のまま彼に抱きしめられ、手を取られながら  
社殿へと戻り入浴を済ませてからか、あるいはその最中に事に及ぶつもりだった。  
 だがしかし、葵は沙良を抱きしめるとそのまま彼女を持ち上げる。  
「ちょ、ちょっと。何するの?」  
「沙良が品性が良くて、貞淑な女の子だって事の証明」  
 情緒の有る姿勢ならともかく、時折履物が地面触れるこの状態では気が気で無いのか  
沙良は身体を動かすが彼は気にした様子も無く移動する。  
 沙良を木に寄りかからせ右手で彼女の身体を支えながら葵は改めてキスをした。  
「んっ……」  
 深く相手を求めるように舌を絡ませながら空いている左手で白衣の上から胸元を撫でると、  
和服を着るには少しだけ大きい沙良の胸が揺れる。  
「葵、んっ……あっ……ちょっ、ここじゃ駄目……んっ……あんっ……」  
 唇を離し胸を触る手に力を入れ始めると沙良は嫌がる素振りを見せた。  
「何で駄目なの? ここでって言ったのは沙良だの方だし、今までに外で何回かしたけど  
一度も嫌がったことは無いのに今日に限って何で?」  
 それどころか葵の着ていた衣を敷いただけの場に四つん這いにさせ、後ろから交わった  
時も彼女は怯さえすれ拒絶の言葉は無く、情事の後には満足し喜びの顔を見せてくれた。  
「私だって求められたら応えて上げたいけど……今は汗かいてて汚いし、お風呂場でだったら  
葵のして欲しいこと何でもするから……今は待って欲しいな」  
 
俯き顔を背けながら、途切れ途切れに言葉を紡ぐ沙良に向かい葵は左腕で白衣を開くと  
彼女の脇の下が汗ばんでいるのを確かめてから口を開く。  
「僕は沙良にして貰うんじゃなくて、してあげたいの」  
 短く言い切ると頭の位置を下げ彼女の首筋につたう汗を舐めとりながら続きを言う。  
「それに沙良の身体で汚いと所なんて一つもないと緋早の現人神である僕は思うけど、  
それでも駄目?」  
 さっき神様って呼んだ事を気にしてるなと彼女が漏らすと、勝手に一人で機嫌を悪くして  
キスを強請るのもどうかと思うよ、と葵は言い沙良を抱きしめた。  
 そして諦めた様に沙良も彼の背中に手を回し、胸元に頭を埋め上目づかいで真っ直ぐに  
見つめながら誰かに言うでもなくただ呟く。  
「いじわる」  
 その言葉を受けて葵は白衣の下で汗によって身体に貼りついている肌襦袢を脱がせることなく  
彼女の右胸を揉み始める。  
「あっ……んっ……あぁぁ……」  
 手を動かす間隔こそは一定にしつつも強弱をつけつつ、時には潰れる位に強くし、  
時には包み込むぐらいに優しく。  
「ねぇ、その……あ、葵そろそろ下の方も触って」  
 何度も胸をいじられるも一向に下へと下がってこないことに焦れた沙良が、意を決して  
自分から求める言葉を口にする。  
「うん。わかった」  
 緋袴の紐を解き裾よけを捲り上げた所で彼の指先に感じたのは汗とは違う液体だった。  
「沙良……」  
「駄目、言わないで!」  
 秘所を濡らし欲情している事を理解していても口に出されるのは嫌なのか大声で叫ぶ。  
 
「いじわるしないで優しくして。そうすれば葵のすることなら何だって受け入れるし、  
何でも出来るから」  
 沙良は自分を落ち着かせようと息を深く吐いいてからはにかむような笑顔でいった。  
「僕としては好んでいじわるをしてるつもりは無いんだけど」  
「そんなことはわかってるけど、こういう時の葵って結構いじわるだよ……んっ……」  
 今も熱く濡れている秘所の表面を撫でこそはすれ、肝心な場所に触れてこない  
彼をたしなめる様に言う。  
「こういう時って言われても沙良以外の人とこんなことはしないし、  
したいとも思わないからわからないよ」  
「……やっぱり葵はいじわる。そんなこと言われたら私はもう何も言えないじゃない」  
 沙良は腰の辺りに下げていた手を彼の背中に回し自らに言い聞かせるようにし、  
肩幅ぐらいに足を開く。  
 ここまでされれば彼も彼女の意図に気づいたのか自らの袴の前を開ける。  
「いくよ」  
「うん、お願い……」  
 お互いの顔すらも見えない程、密着してから互いに肌を重ね一つになる。  
「あっ……葵のが入ってくるよ……あぁぁぁ……」  
 肝心な場所に殆ど愛撫をしてないことから彼の挿入はゆっくりとしたものであり、  
それを彼女の身体も切望していたことも有って、最奥に到達した瞬間に一際大きな声が辺りに漏れた。  
 
突然身体の力が彼女を支え怪訝そうに彼は訊く。  
「もしかして、挿入しただけでいっちゃった?」  
「うんくだけど……」  
 彼女としても予想外のだったのか必要以上に恥らう事も無く答え、彼の次の言葉を待つ。  
「あっ……んっ……あっ、葵……」  
 数秒待っても、彼からの返事はなく帰って来るのは下半身から伝わってくる甘い刺激。  
「その……我慢できない」  
 短く呟き葵は沙良を強く抱き腰を動かし始める。  
「あぁぁ……い、いいよ、も、もっと動いても」  
 自分も先程のなんかじゃ満足出来ないとばかりに彼女も訴えたのが起点となった。  
 葵は一端抱きしめる手を緩め姿勢を整えると動きを徐々に本格的なものにする。  
「あっ、あっぁぁ、駄目、も、もう、そろそろっ!」  
「いいよ、ぼ、僕もだから!」  
 焦らされていたことも手伝って数度動いただけで沙良は限界を訴えるが、それは葵も  
同じだった。  
「あっ、うんっ! いっしょ、絶対に一緒だからね!」  
「うん。このまま沙良の中に出すよ」  
 お互いに限界が近い事を知り、身体を重ねたまま最後を迎えるために二人は動き出す。  
「あっ、お、お願い。あっ、あっ、あぁぁぁぁぁぁ!」  
「んっ、くっ!」  
 
同時に絶頂を向え葵が沙良の中に精を放ち終えてからも二人は気だるさから動く事は無く、  
木によりかかり体力の回復に努める。  
 そして日も高い内から事に及んだ恥ずかしさから互いに黙ったまま衣服を整えた。  
「そろそろ戻ろう」  
 そう言って葵はしゃがみ込み、沙良をおぶる様な姿勢を取る。  
 彼女も行為後で疲れの残る今の状態では、甘えたいと言う気もちも手伝って、  
素直に応じ無言のまま彼の背中にその身を預けた。  
「ねえ……葵……」  
「どうかしたの?」  
 立ち上がり、数歩を歩いた所で背中から声がしたので意識をそちらに持っていく。  
「私は葵にいっぱい愛して貰って幸せだよ」  
「僕もだよ」  
 思ったままの感情で返すと彼女は、  
「言葉にしなくても、葵の気もちはちゃんと私に伝わってるよ」  
と、嬉しそうな声で言った。  
 それから二人は言葉を発することなく社殿へと戻っていった。  
 
 一方、葵が抱きしめたときに沙良が落とした箒が原因でひと悶着有ったのはまた別のお話。  
 
 
 

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