暗い船倉の中で、十人以上の男達が、一組の男女を囲んでいる。  
中央に横たわるのは、輝く長い金髪を床に広げた黒衣の少女。胸元のロザリオと、服装からシスターであることは疑いようもない。  
ようやく女性らしい膨らみを見せ始めた躯、新雪のように輝く白い肌、少女と女性の狭間の、危うい均衡の上に成り立つ魅力に包まれた美しい少女である。  
もう一人は、彼女の親程の年齢の巨漢。  
全身の傷跡と鍛えられた肉体から、戦士としての雰囲気を漂わせている。全裸で。  
 
この時代、キリスト教とイスラム教との休戦協定で、信者のエルサレム巡拝の自由を認めてはいるが、道中の危険に備え巡礼者達が傭兵を雇うことは珍しくはない。  
そのため、修道士と傭兵の組合せは多く見られるが、人目を避けた場所で傭兵がシスターを組み敷くような状況は尋常ではない。  
 
肉の鎧のような肉体が、容易く折れそうな華奢な肢体を貪る様を、周りの全裸兵達は涎を垂らさんばかりの表情で、羨望の視線を向けている。  
「げひゃひゃひゃひゃ。相変わらずシスターのナカは狭いなぁ〜」  
 
「でも大分慣れてきてますぜ。グチャグチャ湿った音が響いてやす」  
「そりゃ俺達のチンポ見て興奮してんだよ。シスターはエッチだからね〜」  
男達の言葉に、少女は頬を紅潮させ、否定の意を示すよう弱々しく首を振る。  
細い脚を掴まれ力任せに腰を叩きつけられる少女は紫水晶のような瞳に涙を浮かべ、人差し指を噛む事で陵辱に必死で耐えようとしていた。  
男はその少女の仕草に下卑た笑みを浮かべ、涙を舐めとる。舌の刺激にびくりと震える少女に嗜虐心が芽生え、次はどう可愛がってやるか考えていると……。  
「兄貴ぃ〜」  
脇からの情けない声に腰が砕けそうになる。  
「あっしはもう限界でやんすよ。早く替わって欲しいでやんす」  
「アアン? 上に行きゃあ、女がゴロゴロいんだろ。そっち犯れ」  
苛立ちを隠そうともしない傷男の声に、少女は顔を青くした。  
少女は暴れる様に身体を動かし、今までただ弱々しく犯されていたとは思えぬほど声を張り上げ懇願する。  
 
「やめてくださいっ! 私のことはどう扱ってもいいですから、他の人にはっ……!」  
少女の必死な様子に、他の男が嘲るような視線と共に言葉を投げる。  
「でも、兄貴の相手してたらシスターの穴埋まってるじゃん。俺達も気持ちよくなりたいのさ」  
少女は自棄になったかのように、叫びに近いほどの声をあげる。  
「私を使ってくださいっ。手でも、足でもっ、お口も使えばいいじゃないですか。だからっ……」  
涙が溢れ絶叫する少女に一歩、また一歩と男達は近づく。それを手で制し、傷男は少女に優しく囁いた。  
「シスター、そいつはいけません。俺は貴女が望んだからこうやっているだけで、無理にさせちまったら天罰があたっちまう。まあ、雄の精液が欲しい淫乱なシスターが自分から求めるなら話は別ですがねぇ」  
一瞬、絶望の色を浮かべた少女は眼を伏せ、か細い声で鳴いた。  
「……私に、どうか、御奉仕させてください。私は、貴方達の、熱くて臭くて、濃厚な精液が欲しいのです。聖職者のくせに淫乱な私に……せ、精液を……」  
声無く泣く少女に、獣が群がったのはその瞬間だった。  
 
 
焦点の定まらない虚ろな瞳が虚空を映し、白く染まった身体は痙攣する。少女の躯を貪り尽くした男達は、三々五々と散っていく。  
そして誰もいなくなった船倉で、白く濁った黒衣に顔を埋め、声を上げずに涙を流す。そんな少女の頭に、使い古してはいるが、丁寧に洗っている布が掛けられた。  
「……使え」  
何時の間にか、少女の背後には長身の男が水桶を片手に立っていた。  
夜のような黒衣、麦畑のような頭髪、猛禽のような瞳、猫のようなしなやかな体、それらの何よりも目を引くのは、腰につけた刃も柄も湾曲した異形の剣だろう。  
「……ありがとう、ございます。アルさん」  
震える声で返事をし、のろのろと顔を拭き始める。涙は見せないように、辛い顔など私には存在しないのだと言い聞かせながら……。そして、少女がアルに見せる事のできた顔は、屈託のないような笑顔だった。  
 
「いつもすみません」  
シスターはアルに頭を下げると精液に塗れた服を布で拭っていく。その様子を男は黙って見ているだけ……。これらの行為は少女が男達の慰み者になった日から今日まで変わらずに続いている。  
あの日、少女が傭兵達に躯を差し出すと誓った日から……。  
 
「げひゃひゃ…ハルト、それが俺の名だ。あんた達、ムブダズ修道会の面々をエルサレムまで護衛する傭兵団の、団長をやっている。長い付き合いになるんだ。仲良くやろうぜ」  
傷面の大男の自己紹介から、傭兵と修道女が互いに紹介を交わす。  
これからは聖地巡礼の旅が始まる。清らかなる修道女と野卑な傭兵、対極ともいえる存在だが、旅の道連れの事は知っていて損はない。そういう意図で始めた自己紹介も最後の少女を残すだけとなった。  
「ミアと申します。この度は、皆様のお世話をするためにご同行させて頂きます――」  
可憐な唇から放たれた鈴のような声、これが少女の運命が軋む最初の音だった。  
 
 
小アジアまでは海路、そこからは陸路をとる。これが傷男の案だった。  
海路ならば陸路よりも安全かつ時間も短縮できる。だが、直接エルサレムに向かえば、停戦からまだ間もないイスラム教徒を刺激しかねない。  
他にも、気候や風習の急激な変化で体調を崩さぬよう少しずつ慣れ進むのが得策、との事だった。  
途中一度、野盗に遭遇したが危なげなく撃退する。何度も巡礼者を護衛したというだけの腕はあったようだ。  
他に然したるトラブルもなく船旅を始め二日目……。  
 
船内を最年少の少女、シスターミアがてふてふと歩いている。清潔なシスター服に身を包み、楚々と歩くのは修道院でも陸を離れた船内でも変わらない。唯一つ違うのは、スカートを少し捲り上げ、そこに大量の焼菓子を載せて運んでいることだ。  
はしたない姿だと、ミア自身も感じてはいるが何度も往復するには時間が勿体ない程にはこの船は広い。  
大型船というわけではないが、ガレー船とは違いこの船のような帆船は船底まで広いスペースを使える。  
傭兵達は荷物の管理も兼ねて船倉を寝床にしているのだった。  
そしてミアは、シスター達で作った焼菓子を傭兵達にも振る舞うよう運んでいるというわけだ。  
 
これを運び終えれば、今日は休んでよいと言われている。  
昨日、初めて海というものを見たミアは夜が更けるまで飽きもせず海を眺めていた。潮風で髪が少し痛んだが、常に変化する波の形を見たり、聞いたことのない鳥や波の音を聞く事に時間を忘れる程に夢中になり――、日課である聖書の朗読を忘れてしまった事に愕然とした。  
だから今日は昨日の分も聖書を詠み、祈り、念じようと心に決めていた。  
そうこうするうちに船倉の前に着き、いざ扉を開こうとして、両手が塞がっているのに気付いた。  
ミアが少し困っていると、中から声がする。盗み聞きはよくない事だと思いながらもついつい耳を傾けてしまった。  
『兄貴ー、とりあえず陸からは離れやしたし、そろそろ味を見てもいいんじゃないっすかー?』  
『あっしはもう限界でやんす。犯りたくて犯りたくて、幻覚が見えてきたでやんす』  
『そうだなぁ……、そろそろ犯るか。ババアが多いが、そのあたりは海に捨てりゃいいだろう』  
その時、少女は焼菓子が割れる音を、どこか遠くの事のように聞いた。  
 
乾いた音が床を鳴らした瞬間、黒い陰が飛び出した。  
少女がそれに気付いた時には、背中から床に叩き落とされていた。背中を痛打されたことで、肺の空気がすべて排出され、視界が眩く染まる。  
急激に体勢を崩されたために、前後の感覚も失い、意識が回復した頃には屈強な男達に囲われていた。  
少女を押さえつけていた黒衣の男――、確かアルと言ったか、彼はゆっくりと立ち上がる。  
そして、彼に代わるように傷だらけの男が少女の前に立つ。  
「ん〜〜〜? お嬢ちゃん、こぉんな所で何してたんだい?」  
「あ、あの……私達が作った、焼菓子を……」  
震えた少女の答えに傷男が足元を見回すと、男達に踏まれ粉々になった菓子の残骸があった。  
傷男はそれらを見、ばつが悪いように頭を掻く。  
「あ〜、悪い事しちまったな。詫びというわけじゃねえが、熱いミルクをご馳走してやるよ」  
「? ミルク……ですか? でも、牛さんはいませんよ?」  
下品な団長の冗談に、団員達は笑い声をあげ、少女の間の抜けた回答にさらに沸き上がる。  
 
「牛乳なんかよりももっと濃くて美味いミルクだよ」  
傷男はミアを船倉の中へ放り投げると、徐に服を脱ぎ始める。  
少女は初めて見る異性の裸体に息を飲み、慌てて目を逸らしたが、そちらでも服を脱ぐ男が居たために目を覆う。  
「なっ、なっ……何をしているのですかっ!?」  
「準備だよ。これから、あ〜、教会じゃ姦淫って言うのか。それを嬢ちゃんに教えてやるんだよ」「かっ……」  
少女は絶句した。姦淫と言えば、地獄に堕とされる最大の禁忌の一つ。それを彼等は犯そうというのだ。  
「やっ、止めてください。そんな事をすれば、天罰が降りますよっ!?」  
「……じゃあ、止めてやるよ」  
背を向けて、あっさり言った傷男の言葉に、男達は抗議し少女は安堵する。  
「あんたの代わりに、上の連中に相手してもらう事にする。手前等、付いて来い!」  
幼いシスターは総毛立った。姦淫の罪は犯された者も同罪とされる。このままでは男達だけではなく先輩のシスター達も……。  
「待ってくださいっ! わ、私が相手を務めます。ですから、他の方には手を出さないで……」  
傷男は顔を歪める。少女の答が想像のままだったのと、この少女を滅茶苦茶にしてやれる事を夢想して……。  
(計画通り)  
 
「仕方ねぇか。俺達を独り占めしたいって言うんじゃあなあ」  
にやにやと下卑た笑みを浮かべ、ミアに近付く。  
「ちがっ……」  
「あ? シスターは自分から男を求める淫乱なんだろ?」  
シスター達の顔を思い浮かべたミアは、否定の言葉を飲み込み涙を流しながらも肯定する。  
「はい……。ミアは、男の方を、独り占めしたい、い……淫乱な、シスター、です」  
「聞いたかぁ! 今からこのシスター様が俺達の相手をしてくださる。可愛がってやろうぜ!」  
喚声をあげる男達の中、一人の男が退出しようとしていた。  
「アル、あんたは参加しねえのか?」  
「……そういった趣味はない」  
「そうか、なら海賊が来ねえか見張りでもしといてくれ。俺達が終わったら交代するからよ」  
黒衣の男は軽く頷くと、一度も少女を見る事なく扉を閉めた。  
「さあ、邪魔はなくなったし、お待たせしましたシスター。さあ、楽しもうか」  
(主よ……)  
彼等を止めることはできない――。そう感じたシスターは眼を伏せ、祈ることしかできなかった。  
 
「じゃあ……服を脱いでもらおうか」  
「ふっ、服を、ですか!?」  
「嫌なら脱がしてやってもいいんだがな。破れても知らねえぞ?」  
「わかり、ました……」  
顔を真っ赤に染めた少女は、ゆっくりとゆっくりと衣装を外していく。  
ウィンプルを外すと、金糸のような長い髪が辺りに広がる。その光景を拝んだだけで、喉を鳴らす音が何度も響いた。  
「ほう。綺麗な髪だな。今度からはその頭巾は着けてこなくていいぜ」  
「……はい」  
そうだ。今回で最後ではないのだ。予想していたとはいえ、実際に告げられると胸が苦しくなってくる。少女は、自らの身を男達から隠してくれている、服に手をかけた。  
 
男達の眼前には、シュミーズとズロースだけを纏った少女が立っていた。彼女は羞恥に躯を震わせ、何度も下着を脱ぐのを躊躇っている。  
「どうしたでやんすかー? 早く脱ぐでやーんす」  
傭兵の声に慌ててシュミーズを脱ぎ捨てる。ようやく膨らみ始めた胸に、男達はギラギラと瞳を輝かせる。  
「小せえ胸だな」  
「そこが可愛いんじゃねえか」  
「もう乳首たててやがる。よっぽど淫乱なんだな」  
「泣きそうな顔で脱いでいくのがたまらないでやんす」  
「揉みまくってデカくしてやろうぜ」  
 
周りからの声に、更に躯を紅く染め、胸を隠そうと、つい身を縮こませてしまう。  
あとはズロースだが、片手で胸を隠しながら脱いでいくため、遅々として脱ぎ終わらない。少しずつ少しずつ、下着に包まれていた、誰も見たことのない柔肌が露わになる。  
まだ熟していない、固さを持った桃のような尻が露わになる。そして最後に、産毛が少し生えている程度の未成熟な秘部が衆目に晒された。  
「これで、いい……ですか?」  
風に儚く散ってしまいそうな声で、これから先の指示を求める。  
傷男は満足気に頷いた。「次は、このテーブルの上で仰向けに寝てもらおうか。俺達が命令しない限りは何もしなくていい。ただし、命令した場合は従え。それと、男達がする事に抵抗するな」  
「はい……」  
少女は手で胸と秘部を隠し、瞳を閉じて横になる。これからの陵辱に備え、身を硬くする少女に、男達が次々と群がっていった。  
 
なだらかな双丘を複数の舌と指が這い、股間に陣取った男が未踏の秘部に舌を入れる。それ以外にも指、脚、腹……あらゆる場所を舐められ撫でられ弄ばれた。  
男達に与えられる嫌悪感と怖気、脳の奥が融けてしまいそうな未知の感覚が次々と襲う。  
惚けて脱力した少女の顔に押し当てられる傷男の一物。  
「コレを舐めろ」  
言われるがままに舌を這わす。普段ならば羞恥で眼を背けるだろうモノを何の感慨もなく一心に舐め続ける。  
「あ〜、やっぱ下手だな。ちょっと口を開けろ……よっ、と」  
「ごっ……」  
軽く開いた唇から喉の奥まで突き入れられ、目を白黒とさせる。  
息苦しさと嘔吐感に耐えようと舌で押し出そうとするが、その動きが男の官能を刺激してしまう。  
「そんなに出して欲しいのかよ。オラっ、熱いミルクだぜっ」  
「んっ――、ぐ、げふっ……ごほっ……」  
口の中で男の欲望が弾けたと同時、少女の躯が痙攣し股間にいた男の顔を愛液が汚す。  
熱い塊が少女の喉を灼き、耐えかねて吐き出してしまう。黄みがかった白濁液がミアの口から垂れるのを見て男達は嘲笑った。  
「せっかくのミルク吐くなよ〜」  
「ミルクは嫌いなようでやんすねぇ」  
「これから好きにしてやゃあいいじゃねえか」  
 
傷男は好き勝手に騒ぐ男達を押しのけ、無心に溢れる蜜を啜る男を引き剥がした。  
「野郎共、これから嬢ちゃんを女にしてやる。ようっく見やがれ」  
喚声に沸く男達と身を硬くするミア。対極の反応を見比べた後、一つのモノをミアへ見せつける。  
「コレがお前を女にしてやるんだ……いくぜっ」  
「ひぐっ……!」  
力任せに奥まで入れられグリグリと掻き回される。流れ落ちる鮮血と愛液が挿入された物を濡らし染め上げる。  
突き入れられた時には肉をこじ開けられる痛みしかなかったが、幾度となく挿入を繰り返すうちにこなれていった媚肉からは次第に淫液が零れてゆく。  
そんな少女を見て、傷男は嬉しそうに顔を歪めた。  
「初めてのクセに慣れるのが早いな。これも神の御加護ってヤツかぁ? ……そろそろイイだろ。次は俺の番だ…なっ」  
薄桃に濡れたシスターのロザリオを放り捨て、傷男の肉棒を深く埋めた。  
「ふひゃぁぁあ」  
「痛いくらいに締め付けてくるなぁ。シスターにゃ勿体ねぇ」  
木の十字架よりも太く熱い肉杭が抉る度に絡みついてくる秘肉に傷男は夢中になって腰を振る。  
「も、もうダメだぁっ」  
さしたる時間もかからずに、純潔を散らされたばかりの少女の膣内に精液を注いだ。  
 
精を放たれた瞬間、少女の脳裏に白い爆発が何度も起こり、意識を失いそうになった。  
それに合わせ痙攣する少女の膣内で、未だ堅さを失わない肉棒を動かし始める。  
「ち、ちょっと、兄貴ズルいでやんすよ。交代するでやんす!」  
部下に目もくれず、一心不乱に腰を動かす。  
「うるせえ、俺はコイツにガキを孕ませてやるんだ……。飽きるまでは手なり口なり勝手に使え」  
「こ……こど、も……?」  
朦朧とする頭で聞き返すシスターに、傷男は笑いながら答えてやる。  
「なんだ。知らねえのか。女はな、此処に男のモノを入れられたらそいつのガキができるのよ」  
「ひっ……」  
ミアはその言葉に自分の未来を想像してしまった。顔を青白くしたミアに、他の男達が自身の欲望を次々と擦り付ける。  
「この髪、サラサラしてやがる」  
「生フェラゲットー」  
「可愛い乳首にミルクかけてあげるからね〜」  
「この足がイイでやんす」  
「また射精してやるからな。しっかり孕めよ……」  
「んっ、むぐぅぐぁぁぇぇぇ」  
少女の絶叫と共に放たれた欲望が彼女の躯を白く染め抜く。それでも褪せない男達の欲望は更に少女を蹂躙していった。  
 
 
……何故、あの少女の事が気になるのだろう。  
呆然と海を眺めながら、アルは考えていた。  
彼等が護衛の報酬と称して女を犯すのは何時もの事だ。共に参加した事もある。  
少女を助ける義務はないが、男達の邪魔はしない程度の義理はある。  
罪悪感など欠片もない。  
だが、彼女が犯される姿を見たくなかったから……こんな場所にいる。  
 
答の出ぬままに頃合を計って船倉へと戻る。  
せめて、汚れを落とすための布と水を用意して……。  
 
そこには全裸で横たわる彼女がいた。小さな身体を小刻みに震わせているのは泣いているからだろう。  
アルが何と声を掛けるか考えていると、ミアも気付いたのだろう。一瞬、びくりと身体を震わせると、怯えたような顔を向けた。  
陵辱の後の男だ。警戒するのは仕方ないと言えよう。  
「アルさん……でしたよね? 貴方も……?」  
「そんな趣味は無いと言った。……これで拭け。そんな姿で外には出れんだろう」  
 
布を投げ渡すアルに、ありがとうございます、と笑みを浮かべ礼を言う。  
その笑顔は目映いばかりの爛漫の笑み。  
何故だ。何故、自分を陵辱した男達の仲間にそんな笑顔ができる!?  
自問するアルは無自覚に、身体を拭いている少女を眺めた。  
美しい少女だと思った……。まだ肉付きの薄い華奢な躯は、その時期特有の危うい魅力を放ち、穢されてしまったというのに無垢に輝く。  
蜂蜜のように流れる髪と、人形のように整った顔容。……似ている場所なぞ殆ど無いというのに、何故か死んだ妹を思い出させる。  
だからだろうか。この少女を犯す気になれないのは……。  
 
気付くと終わっていたようだ。修道衣を纏ったシスターが、布を浸けた水桶を危なげに持っていた。  
思わず水桶を奪ってしまい、礼を言われる。  
「構わん。それよりも休め。明日からも此処に来るのだろう……?」  
「そう、ですね。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます」  
影を落とした笑みを浮かべ少女は去っていく。その後ろ姿を男はただ見続けていた。  
 
 
 
 

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