カタン……カタン……。
星の海に浮かぶ庵から規則的な機織りの音が響く。
中には見目麗しき妙齢の美女。
匂い立つ美貌には一片の憂いと百爾の期待に彩られている。
(明日……、明日になれば彼の人に逢える……)
牽牛。愛しき兄の君。
年に一度許された逢瀬の時を焦れ只管に服を織る。
流れる大河を億千万と怨んだが明日だけは気にならぬ。想い募らせてくれたことに感謝すらしたい。
変わらぬ時の刻みに焦慮に駆られ橋が架かるのを鶴首して待つ。
不意に扉が叩かれる音。
「誰ぞ」
「我等玉皇大帝の使者として罷り越しました」
「入るがよい。許す」
入室した3人の男は皆似たような外見である。
「申し遅れました。我等右から伊井、蝋、端と申します」
右の男、伊井は慇懃に礼をする。彼等の容貌は整っているし所作も上品である。
だのに織姫は彼等に嫌悪の情しか覚えない。
「お祖父様の使いとのことじゃが、何用じゃ」
「我等玉皇大帝の命により姫様を慰めに参りました」
颯と三人は織姫を捉える。身を捩り抵抗するが男の力の前に屈服する。
「何の真似じゃ。妾に触れるでない」
「お祖父様の命なのですよ。姫からあの牛飼いを忘れさせよ、とね」
「嘘じゃ、騙るでないわ」
「曇り無き真実に御座います」
「じゃが妾の心は彼の方のものじゃ。貴様等にくれてやる気は毛頭無い」
「委細承知。心は奪えますまい。ですが躰はどうですかな?」
「この下郎め……ぐむっ」
唇と唇が重ねられ織姫の口内を伊井の舌が蹂躙する。蠢く舌。絡み合う唾液。一年振りの口付けとそれが別の男であるという衝撃が織姫を虚脱させる。
「おや、抵抗はおしまいですか。牛飼いへの操はもう捨ててしまったのですね」
「下らぬ冗談じゃ。あまりに下手糞じゃから呆れてしもうたのよ」
「強がりも程々になさいませ」
「ひゃうっ」
背後から蝋が襦袢の内に手を遣り豊満な乳房を揉みしだく。見る間に頬は紅潮し薄桃色の蕾を弄られると熱い吐息が溢れる。
「乳首が弱いようですね。ならば牛飼いには到底できぬ快楽を与えてあげましょう」
はだけた着物からまろび出た両胸に端と蝋が迫る。伊井はより激しく口内を荒らす。
「……ッ」
2本の舌と4本の腕で胸を蹂躙される快楽に声を出そうとも舌も唇も自由にならない。
しゅるり……。
伊井の手が徐々に着物を剥いでいく。項、肩、背中、乳房、太股……純白の肌が次々と露になる。
「やめよ! これ以上は見るでない! ぐっ……」
再び舌で言葉を封じられると女としての場所が遂に晒される。
洪水の様に淫液が流れるそこは覆うはずの痴毛が影も無くひくひくと震える様を見せている。
「まさか無毛の園であるとは」
愛する者にしか見せたことのない秘密を暴かれ織姫は虚ろな瞳に涙を流し虚脱する。
「どうやら観念したようですね。次は我等も気持ち良くしてもらいましょう」
伊井は脱力した織姫の下に潜ると陽根を陰唇へと突き入れる。それだけで織姫は軽い絶頂を感じてしまう。
「もう気をやったのですか。貴女だけでなく我等も気持ち良くしてくだされ。ほら、蝋が股間を熱くして待っています」
下から突き上げつつ臀部をぴしゃりと叩く伊井の言葉に従い、姫は自ら蝋の一物に舌を這わせる。
愛してもいない男を上下の口に埋め、牽牛とは違う壊れそうな程に激しい動きに溺れてしまいそうになる。
「姫様、私も忘れないでくださいませ」
背後から乳房を揉んでいた端は耳に舌を這わせながら囁くと臀部の奥の菊門を一息に突き刺した。
「……ッ!?」
「ほう。此方は初めてでしたか。なれば牽牛殿も味わったことの無き媚肉、ゆるりと堪能させてもらいましょう」
肉壁を挟み2本の陰茎が媚肉を貪る。その快楽に溶かされつつも、口内を蹂躙する一物を味わう。
噎返る程の雄の味と臭い。かつて愛する者に悦んでもらおうとした行為。今は、雄を感じていたいがために行っている。
「のっ、飲み干してくだされ織姫様ァ」
喉の奥へ射精された精液の味と臭いに酔いしれつつ、こくりこくりと飲み下す。奥に残った精液も飲み干されたそれは、激しく射精したものとは思えぬ程に熱り勃っている。
「姫様、私ももうっ……」
挿入時は緩々とした動作だったが、次第に苛烈に腸内を犯していた肉茎からも濃い精液が放たれる。直腸の奥へ精を放った物は最後まで未知の快楽を与え引き抜かれた。
「織姫、私のややを身籠ってくださいませ」
「そっ、それはやめよ。膣外に、膣外に射精すのじゃ」
ややの一言に我に返った織姫の懇願も虚しく子宮へと精液が叩き込まれる。その感覚に織姫は絶頂し、憎い男の身体を強く抱き締めてしまった。
「嫌じゃ……こんなややこなぞ欲しゅうない……牽牛様……」
未だ絶頂の余韻醒めさらぬ中、虚ろに紡がれる織姫の言葉。
「安心なされませ。姫は伊井の子を授かるわけでは御座いませぬ」
その言葉に一縷の希望を求めた織姫に更なる絶望が投げかけられる。
「我等は3人。何れのややかは誰にもわかりませぬ」
再び始められた悦楽の宴に織姫はただ溺れるしかなかった。
「では、我等は退出させて頂きます」
「本日の逢瀬、楽しみなされ」
「その姿で、牽牛殿に逢えるのでしたらね」
男達が去った後、性の臭いと跡が無数に残る庵で織姫はただ座っていた。膣からも尻からも精液が垂れ続け、口の端からも流れ落ちる。
幾度躯を重ねたかは覚えていない。だが、牽牛様に逢える躯でなくなったのはわかる。静かに泣く織姫は外から庵の戸を叩く者がいるのに気付いた。
「織姫、儂じゃ。今日は七夕ぞ。2人で過ごせるめでたき日ぞ」
昨夜の事を何も知らぬ男が扉を叩き呼びかける。織姫が許さねば入れぬこの扉。何ぞあったかと男の声色に焦りが増す。
「……妾は逢いとうない。……疾く去ね」
「泣いて、おるのか……?」
気丈な織姫の弱々しい声に心配を隠せない牽牛。
「泣いてなどおらぬ。そなたには愛想を尽かした。顔も、見とうないわ……」
それでも諦めずに呼びかける牽牛であったが、姫の決意が変わらぬと知り去っていった。
そして、誰もいない庵で織姫は声をあげて哭いた。
その涙が地上に流れ、七夕は雨になるのだという。
とっぴんぱらりのぷう。