「あっ・・・やっ・・・」
しんしんと雪が積もる音と、いろりで燃える炭の音だけが響く一つの家。
そこに、一人の女性が横になっていた。
太股あたりまで捲ったその和服がなかなか扇情的であり、可憐でもある。
雪女の、さつき。
偶然に出会った男性、徹と再会の約束をした女性である。
再会の日は、11/20。
今日は、11/19。
人は待つ事こそが最大の苦しみだという。
彼女は、己の内なる衝動が抑えられなかった。
彼の事を考える事で起きる切なさと妙な情欲が、彼女を突き動かしていた。
その白く細い指は胸元をさまよい、それだけで通常よりもずっと快楽を感じる。
それは、さつきがその指を「徹の指」と認識しながら、自らを慰めているためだ。
「胸が・・・いいよぉ・・・あっ」
手を和服の中へと入れ、既に硬くなっている乳首を摘まんだ。
少しだけ力を入れてコリッ、とさせると、細かい電流が流れるように身体が小さく跳ねた。
「んあっ・・・はぁんっ」
「いい、のっ・・・乳首、あっ・・・が、いいの・・・んっ」
「もっとして・・・もっと弄って、徹ぅ・・・」
一人で自らを慰め、その指を想う人の指だと信じ込む。
それだけで、まるで媚薬が効いたようにさつきの身体は敏感になった。
いないはずの男を想い、貪欲に、快楽を求めるままに弄り、喘ぎ、悦に浸る。
とても寂しく、とても切ない。しかしそれを責められるだろうか。
何十年も人の温かさを知れず、あまつさえ男に蹂躪された思い出。
表にこそ出していないものの、それは彼女の心に深い傷を残している。
「んんっ・・・」
そんな時、自分を助けてくれた一人の男性。
迫害され畏怖され続けた自分の存在を認めてくれた男性。
そして・・・その男性の「守りたい」という言葉。
嬉しかった。心がとても暖かくなった。
嘘だとは思えなかった。いや、思いたくなかった。
それが「人を疑う」事に繋がってしまうから。
「徹ぅ・・・んぁっ!」
一人の男性を疑うのではなく、一夜の出会いを信じたい。
自分を抱きしめてくれた、その温もりを信じたい。
そしてなによりも・・・
「早く、会いたいよぉ・・・ああぁ!!」
自分のこの気持ちを、信じたい。
胸の辺りを弄っていた右手を、下半身へ滑らせる。
左手は乳首を摘まんだままだ。
「はあっ・・・はぁっ・・・・」
動きやすいようにと、太股まで捲られた和服。
捲るのがもどかしくて、帯を外してしまう。
下着の上から、つつっ、と秘部をなぞる。
「ん・・・っああ!!」
さっきよりも大きく身体が震えた。
なぞっただけ。ただそれだけで、まるで秘豆を摘ままれたような快感が走る。
これが本物の徹の指なら、さらに強い快感が来ていた事だろう。
さつきの気づいていない部分で、彼女はそれだけ徹の事を想っていた。
「やだ、こんなに濡れちゃってる・・・」
くちゅり。
下着の上から触ると、淫猥な水音が耳に届いた。
それを聞いて自分が興奮している、という事実を改めて実感し、その白い肌を朱に染めながら
指を動かす。
「あっ・・・んぅっ」
瞳を閉じていると、まるでそこに徹がいてくれるようだった。
さつき自身は気づいていないものの、彼女は相当の寂しがり屋である。
人と会わない40年こそ耐えられたが、あの暖かい人と会えない三ヶ月は、さらに辛かった。
切ない痛み、とでも言うのだろうか。
どこかぽっかり心に穴が空いたようで、1日2日とその日に近づくほどそれは強くなる。
そして前日の夜。
さつきは、ついに我慢する事が出来なかった。
下着をずらして直接秘裂に触れてみると、まさに洪水という言葉のように濡れていた。
誰かに見られているわけでもないが、それが無性に恥ずかしくて、そっと身体を縮める。
「はぁ!あ・・・んあっ!」
人差し指が完全に膣内に埋まる。
かき回したい衝動に駆られるが、それを抑えてゆっくりと動かす。
「んんっ・・・あっ・・・・とお、るぅ・・・」
切なく声を上げながら、また想う人の名を呼ぶ。
快感を求める衝動で、指が止まらない。
気づいた時には、中指も膣内へ挿入されていた。
「ひあぁっ!あんっ、ふぁぁ!」
どんどん指の動きが早くなる。
それに呼応して、部屋に響く粘液音も大きく、激しくなる。
何より、さつきの嬌声が大きくなった。
「もう、イッちゃ、う・・んぁっ!」
自慰というはしたない行為をしていても、さつきの身体は十二分に艶やかだった。
否、自慰をしているからこその、妙な淫らな美しさが全身から醸し出されている。
乳首を弄っていた左手は、さつきの口元にある。
人差し指を咥えて、全身を襲う快感に耐えようとした。
指の動きはとどまる所を知らず、さつきはついに絶頂に上り詰めていく。
「あっ!イイよぉ・・・あっ、ああっ!」
意識がぼうっとしてくる。
「イッちゃう!んっ、イッちゃうよ、徹・・・・ひぁっ、あっ!・・・んはぁぁぁぁぁ!!」
甲高い嬌声と同時に、身体がビクン、ビクンと跳ねる。
腿から愛液が垂れ、着物を汚す。
口からはだらしなく涎が垂れているが、それもどこか扇情的である。
頭に靄がかかったようになり、意識が段々と遠のいていく。
「・・・とお、る・・・」
一筋の涙がさつきの眼から零れた後、さつきは深い眠りについていた。