どうやら本格的に拗らせたみたい。  
痛む頭、引かない熱、お陰でなかなか眠れない。熱のせいか目が霞む。  
僕はベットに横たわり、ぼんやりと天井を見上げていた。それにしても酷い寝汗だ。…気持ち悪い。  
喉渇いた。体も拭きたいけど、タオルが無い。取りに行こう。  
朝食の時からソラさんを見ない。相当キツそうだったし、大丈夫かなぁ…  
ふらつく足で立ち上がる。頭が痛む。まるで重い石が頭の中を転がってるみたいだ。  
部屋のドアを開けようとしたとき、リビングから話し声がした。  
「…あと、風邪薬持ってきて。切らしちゃってて……うん。熱と頭痛が酷いの。……2人分持ってきて。  
1人分はヒト用で………え?…いいから……うん、ありがと。じゃあね」  
――ガチャン  
電話か。誰に掛けてたんだろ?ドアを開ける。すると、ソラさんが電話の前でぐったりと倒れていた。  
僕は慌ててソラさんを抱き起こす。  
「ソラさん!!大丈夫!?しっかりして!」  
「…ぅ…はぁはぁ……私なら大丈夫。…それに、もう少しでお薬持って来てもらえるから」  
ちょっと寝るね。と言ってソラさんはフラフラと部屋に戻って行った。  
僕はキッチンの冷蔵庫からミネラルウォーターのミニボトルを取り出すとそのままゴクゴクと飲み干した。  
少し楽になった気がした。  
洗面所で、タオルを取り出し、体を拭く。着替えも持ってくればよかった。まぁ部屋で着替えよう。  
そのまま部屋に戻ろうとした僕だったけど、引き返して洗面器とタオルを取り出す。  
そしてキッチンで洗面器に水を張り、冷蔵庫のフリーザーから氷を出して洗面器に入れる。  
ついでにまだ手をつけていないミネラルウォーターのミニボトルを取って、ソラさんの部屋に向かった。ドアをノックする。  
「タオルと、水持って来たよ」  
返事が無い。寝ちゃったのかな。  
 
とりあえず、置いていこうと部屋に入る。本棚とベットとクローゼットと鏡。  
ソラさんらしくシンプルで整頓された部屋だ。セミダブルのベットにソラさんは眠っていた。  
僕はベット脇のサイドテーブルに洗面器を置いて、タオルを軽く濡らしてソラさんの額に乗せた。  
「…ん」  
ソラさんが起きてしまった。  
「…気持ちいい。ありがと。でも、君も寝てなきゃダメだよ」  
「大丈夫です。それに、僕も何かしなきゃって…一応、召使いだし。それに………」  
「それに?」  
「あの…一人だと、その…お、落ち着かなくて」  
熱のせいか、どうも上手い言い方が出来ない。…恥ずかしい。  
「いいよ。一緒に寝よ」  
ソラさんは少し苦しそうに微笑んだ。熱で潤んだ瞳、少し青ざめた顔。何ていうか、すごくドキドキする。  
「…お邪魔します」  
「どうぞ」  
セミダブルベットだけど、少し狭い。ソラさんに悪いと思って端の方に行こうとすると、ソラさんがすらりと長い腕で僕を抱き寄せた。  
「こっちに来て」  
されるがままに、身を寄せる。  
「ねぇ、こっち向いてよ」  
振り向くと、ソラさんが僕を見つめている。パジャマの胸元が肌蹴てて、そこから覗く白い肌が色っぽい。  
「えっち」  
つい見入ってしまったのを気づかれた。熱が上がった気がした。  
「ふふっ。顔赤いよ。図星?」  
「そ、そんな、僕は別に…」  
恥ずかしさの余り反対を向いて少し離れた僕、少し気まずい。  
「…熱い。どうにかなんないかなぁ」  
ソラさんが呟いた。  
「タオル、冷やしますよ」  
起き上がろうとした僕の手をソラさんが掴んだ。  
 
「ちがうの」  
「え?」  
少し驚いてソラさんを見る。ソラさんは下を向いてもじもじしながら続ける。  
「ねえ建ちゃん…熱って、汗かくと引くって言うじゃん?」  
「は、はい」  
「こんな時に言うのもなんだけどさ…」  
黙り込むソラさん。何故か顔が赤い。ソラさんは少し考え込んだように黙っていたが、  
やがて何か決心したように小さく頷くと潤んだ目で上目遣いに僕を見つめた。  
「えと、その……え、えっちしよ…」  
小さな声で恥ずかしげにそう言うと、心配そうな表情で、こちらをうかがうソラさん。  
「え?あ、あの、その…」  
予想外のお誘いに、僕は嬉しさと驚きでついしどろもどろになってしまう。  
「…ダメ?」  
泣き出しそうな声。ソラさんのそんな声で頼まれたら、もうガマンできないよ。  
「いいですよ」  
「ゴメン。無理言っちゃって」  
「いいんです。僕もソラさんとしたいです」  
繋ぎあった手と手。見詰め合う瞳と瞳。僕はソラさんを抱き寄せると、パジャマのボタンに手を掛ける。  
―ちゅ  
ソラさんが僕にキスする。でもそれは昨日の様な触れるだけのじゃなくて…  
―くちゃ  
「ん、んぐっ!?」  
驚く僕。でもすぐに舌を絡める。いそいそとパジャマの上を脱がし、下にも手を掛ける。  
ソラさんがぎゅっと抱きつく。下着の中は既に濡れていた。僕も片手でスウェットの下とパンツを下ろす。  
「…いきますよ?」  
「うん、来て」  
僕たちは再び見詰め合った。ゆっくりと身体を重ね合わせた。  
 
その時だった…  
―ガチャ  
「ソラちゃん、お見舞いに来ましたわ!」  
『!!!!!』  
突然ドアが開き、美しいブロンドの髪と蒼い瞳で、小柄で顔つきも幼い少女が顔を出した。  
胸が顔に似合わず大きい。余りの驚きで僕とソラさんは声も出せなかった。  
一気にその場の空気が凍りついた。  
しばらく無言の3人。少女はようやく状況を理解したのか、急に顔を真っ赤に染めた。  
「あ、あああの、ソラちゃん、こっこれは……」  
「…えへへへへへへ」  
とりあえず(?)笑って誤魔化すソラさん。僕は物も言えず凍り付いている。  
この異常な発汗は決して熱のせいだけじゃ無いな。なんて場違いな事を考えながら……  
 
 
数分後、僕たちは気まずい雰囲気のままリビングのソファに掛けたガブリエルさんの前で正座していた。  
「全く、心配して来てみれば昼間から男なんか引っ張り込んで。わざわざ魔法の勉強もお休みして来たのというに…」  
「あぅ…ごめんなさい」  
先程の恥じらいぶりとは打って変わり、ガブリエルさんはすごく不機嫌だ。説教は30分にも及んでいる。  
ひたすらあやまるソラさん。僕は気まずさに何も言えない。  
「ところでソラちゃん」  
ガブリエルさんが僕をチラリと見る。青い瞳がさらに冷たく感じられる。怖い…  
「は、はい?」  
ソラさん。声、裏返ってますよ。  
「あの子、誰?」  
「今更かよ!」  
思わず某芸人風に突っ込むソラさん。しばらく静まるリビング。ソラさん、外したか?  
しかし、ガブリエルさんが突然吹き出すと、ソラさんも釣られて吹き出した。そして2人で笑い転げた。  
ひとしきり笑い転げると、ガブリエルさんの表情も場の雰囲気もすっかり和んでいた。  
「え〜っと、この子は建ちゃん。一応私のヒト召使い。すごいっしょ?」  
「へぇ〜ソラちゃんも立派になったものですわねぇ。雇い主の私よりも先にヒト召使いを手に入れるなんて。お幾らでしたの?」  
「いや、拾ったの。てゆーか、ウチの前に居たのを捕まえたの」  
得意絶頂のソラさん。つーか、捕まえたって……  
 
しかし、ソラさんの「拾った」という言葉を聞いたガブリエルさんはニヤリとわらって、  
「ところでソラちゃん。この家と土地は、誰の物でしたっけ?」  
「ガブのでしょ?」  
「……という事は、ここに堕ちて来たモノは…」  
ここでソラさんはしまったという顔をして、大声を出す。  
「ダメダメダメダメダメ!!ぜ〜〜ったいダメ!」  
負けじと大声を張り上げるガブリエルさん。  
「欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい!!欲しいの〜〜〜!」  
……あんたら、子供か?  
ヒートアップする2人の大きな駄々っ子。反対に冷める僕。温度差は開く一方。ん…温度?……熱?……あ…。  
「はっくしょん!!」  
思い出した。今、酷い風邪を拗らせてるんだった。思い出したら思わずおっきなくしゃみが出た。  
 
ぼくのくしゃみにソラさんとガブリエルさんもはっとする。  
「あら、ごめんなさいませ。すっかり忘れていましたわ」  
こうしてようやく昼食。ソラさんが少しだるそうに仕度をした。  
「今日のメニューは、シーフードリゾットで御座いまぁ〜す」  
とってもおいしそうだ。やっぱりソラさんはすごいなぁ。  
「ところで、ガブリエルさんは料理しないんですか?」  
「ガブはねぇ、料理裁縫洗濯どれもみ〜んなダメなんだよ」  
横からソラさんが嬉しそうに答える。ガブリエルさんは顔を赤くして、  
「そ、そんな事。使用人がいるのに私がする必要なんて有りませんわ」  
「そんな事言っちゃって。だからいつまでも出来ないんだよ」  
追い討ちを掛けられ、ガブリエルさんは黙り込んでしまった。  
昼食後、僕は片付けを手伝うと薬を飲んだ。  
しばらくすると効いてきたのか、すごく眠くなってきた。  
「すみません。ちょっと眠くなってきたんで、部屋に戻ります」  
「はい、お構いなく。ゆっくりお休みになって」  
部屋のベットに倒れこむと、僕はすぐに意識を手放した。  
「ふふふ…お薬が良く効いているみたいですわ」  
ガブリエルさんの妖しげな笑い声が聞こえたような気がした。  
 
「…さて、つぎはソラちゃんの番ですわ。覚悟はよろしくて?」  
ガブが妖しく笑ってわたしをソファに押し倒す。さっきバカ騒ぎしたせいで頭が割れそうに痛い。嫌な予感…。  
――ちゅ…くちゃくちゃ  
ガブがわたしの唇を奪う。そして、貪るように舌を絡ませながらわたしのパジャマの上を脱がし、パジャマでわたしを後ろ手に縛る。  
抵抗してみても、今のわたしの力じゃあっさりと押さえ込まれる。  
「…っはぁはぁ……や…やめて。お願い…」  
「うふふ…最近私が来なかったから、溜まっていたのでしょう?子供に手を出すなんて…」  
「そ、それは…その……きゃう!!」  
――くちゃり  
いつの間にかわたしは下も脱がされていた。ガブの少し冷たい手に私の大事な所をゆっくりイヤらしい手つきで撫で上げらた。  
思わず嬌声を上げてしまったわたしを見てガブは目を細める。  
「それに、熱は汗をかくと引きますのよ…」  
ガブはそう言うとしつこく愛撫を繰り返す。  
「ちょ、あん!あっ…やめっ…にゃあ!!」  
「ほ〜ら、もうこんなに。ソラちゃんはやっぱり欲求不満でしたのね」  
わたしの愛液で濡れた手を見せ付けるガブ。もう、一体どうしちゃったの?  
 
「やめてよぉ……こんなの恥ずかし過ぎだよう」  
「あら?ここで止めてよろしいの?」  
「え?あ、あの…」  
「…続けて欲しいの?」  
「…ぅ」  
ガブわたしを見下ろしながらニヤニヤしてる。何か怖いよ…  
でも、身体はもう押さえがが効かないみたい…  
風邪の熱とガブから与えられた熱で、わたしの理性が霞んでいく。  
「ほら、黙っていては解りませんわ」  
「………して…」  
「え?良く聴こえませんわ。もっとはっきり仰らないと…」  
ガブは相変らずのエロ笑いを浮かべ、わたしの控えめな胸をふにふにと揉む。  
「ぁぅぅぅぅ…」  
「う〜ん。いつ揉んでもソラちゃんのおっぱいは揉み心地が良いですわ〜」  
ああ、もう限界かも…  
「でも、いつも揉んでるのになかなか大きくなりませんのね」  
「ぅ…わたし……もう…」  
「はい?」  
「…ダメみたい」  
ああ、さようなら、わたしの理性。こんにちわ、わたしの欲求。  
 
さらさらの黒髪、黒曜石の色をした優しい瞳、しなやかな長い手足、線の細い顔、無駄の無い体。  
私にとってソラちゃんは唯一無二の親友でもあり、面倒見の良い頼れる姉でもある。  
本当に小さな頃から、私たちは一緒だった。  
お互いの事は何でも知っている。性格、好物、性癖…それこそ体の隅々まで。  
幼い頃。  
私は父親に叱られる度に彼女に慰めて貰った。  
幼くして両親と別離した彼女の孤独を私は埋めてきた……つもりだった。  
でも、私はいつもどこか不安だった。  
いつか彼女が、わたしから離れるのではないかと。  
その不安は的中し、彼女は一度私の元を去った。でも、それは親のいない彼女が中央の全寮制の学校に通う為。  
あの時、彼女は泣きじゃくる幼い私を抱きしめて、必ず帰るからとあの優しい声で約束してくれた。  
そして、3年前彼女は帰ってきた。  
10年の年月を経て容姿も内面もすっかり大人びていたが、彼女は別れる前の優しい彼女のままだった。  
…でも、不安だった。  
また私の元から離れてしまうのではないかと。そうしたらもう二度と帰ってこないのではないかと。  
だから父の会社に勤めだした彼女をこの家の使用人として住まわせる事で繋ぎ止めた。  
彼女は相変らず頼れる姉であり、親友であり続けた。  
私が魔法薬の勉強の事で父親と揉めた時も、彼女は一緒になって父親を説得してくれた。  
彼女は、私といる時はいつも楽しそうに笑ってくれる。  
 
でも、私には足りなかった。彼女の全てを知りたかった。  
だから、ある時バストアップのマッサージと偽ってそのまま彼女と『体の関係』を作った。  
初めて私によって絶頂に追い遣られた彼女は、…哀しそうな顔をしていた。  
それでも、その後は彼女から求めてくるようにもなり、私はようやく満たされた。  
…なのに。  
……それなのに。  
学業の都合で2ヶ月ぶりに訪ねた彼女の傍には、見知らぬ少年がいた。  
しかも、私が家に着いた時、2人は彼女のベットの中で愛し合っていた。  
彼女は私にだけ見せるあの笑顔を彼にも向けていた。  
先程の様に、彼女は少年を手放そうとしない。  
そして、彼は彼女に好意を抱いている。恐らく彼女も…  
私だけが取り残されてしまったようで。  
それが私は悲しく、そして怖かった。幼い日の決別シーンがフラッシュバックする。  
 
―ソラお姉ちゃん、ガブを置いていかないで。  
 
――かぷっ…はむはむ……  
「ああっ!…ダメぇ!耳はぁっ!んっ…」  
ソラちゃんの耳を甘噛みする。彼女はここがすごく弱い。  
そして彼女のしっぽを両手で強く握り、扱く。  
「うにゃあぁぁぁl!!」  
ソラちゃんは目をぎゅっと強く瞑って体をピクンと痙攣させた。どうやら軽く達したらしい。  
「はぁはぁ…」  
「ふふっ。耳としっぽだけでイっちゃうなんて、かわいいですわ」  
快楽に潤んだ瞳。上気した桜色の肌。荒く呼吸をする愛らしい唇。緩んだその端から一筋、唾液が垂れている。  
私はぺろりとそれを舐めた。私しか知らないソラちゃんの表情(カオ)……  
あの少年も、こんな彼女を見たのだろうか?ふとそんな事が脳裏に浮かんだ。  
その瞬間、私は猛烈な嫉妬に駆られた。あの少年にソラちゃんを渡しはしない。渡す位ならいっその事…  
 
――ずぷっ!  
「いぎっ!!」  
私はソラちゃんの秘部に乱暴に中指を突き入れた。彼女の目が大きく見開かれる。私は指を折り曲げ、彼女のGスポットを刺激する。  
同時に親指で彼女のすっかり充血した淫核を捏ね回す。  
「い゙っ!痛い!やめて!やめてぇ!!あん!」  
痛みと快感に泣き叫ぶソラちゃんに私は異常な興奮を覚えていた。私はもう片方の手で彼女の可愛らしい乳首を揉みしだき、  
もう一方のそれを口で吸う。  
「はあっ!ダメっ…そんな……やめてよぉ」  
「口ではやめてと言いながら本当は感じているのでしょう?いやらしい…」  
自分でも驚くような冷たい声でそう言うと、ソラちゃんの表情に怯えが浮かぶ。気丈な彼女の滅多に見せないそんな表情に、  
私の異常な興奮はますます高まる。もう少しだ。もう少しで彼女を堕とせる。私がさらに力をかけたその時、  
「……めて…やめて…やめて!怖いよぉ!建ちゃん!!」  
私はソラちゃんの口から初めて聞いた『怖い』と言う言葉に、私は硬直した。  
私からドス黒い何かが抜けていく。私…1番大切な、自分より大切なソラちゃんに…何て…酷い事を……  
もう何も考えられない。私の頬を温かいものが……流れて…  
 
怖かった。自分がされている事、見たことも無いようなガブの冷たい表情…でも、本当にわたしが怖かったのは……  
…ダメ。言葉にできない。でも、ガブがガブでなくなったんじゃないかって思った。その時、わたしは生まれて初めて心から怖いって叫んだ。  
その瞬間まるで魔法に掛かったみたいにガブはぴたりと動かなくなると、ようやくいつものガブの顔に戻った。  
そして、ガブはボロボロ泣き出した。  
わたしは何とか手首に絡んだパジャマを解くと、ガブをおもいっきり抱き寄せた。わたしの大事な親友、大事な家族。  
泣かないでガブリエル…  
「…ぅぐ、ごめん…なさい」  
「いいよ」  
泣きじゃくるガブの頭をそっと撫でる。小さい頃も、わたしはこうやってガブをあやしたっけ。  
「どうしたの?ほら、話してごらん?」  
「えぐっ…だって、だって…」  
「だって?」  
「ソラ…お姉ちゃんが、ガブを置いてくって…」  
そっか、建ちゃんとあんな事してたからガブ、不安だったんだね。建ちゃんにわたしを取られるんじゃないかって、怖かったんだね。  
 
…それにしても、『ソラお姉ちゃん』か…久しぶりに聞いたなぁ。わたしは、学校の寮に引っ越しをした日の事を思い出していた。  
「どこにも行かないよ。わたし、ガブの事、絶対置いていったりしないからね…」  
「ひっく…本当?」  
「うん。本当。ごめんね…心配させて。でもね、建ちゃんにはね、わたししかいないんだよ。あの子が頼れるの、わたししか…」  
何故か目の前が涙でぼやけていた。  
「…そうだガブ、建ちゃんはわたしたちの弟って事にしよ?だからさ……ガブ…あの子の事も…お願い…」  
「うん…うん」  
最後の方、言葉が上手く出なかった。でも、わかってもらえたみたい。  
「ありがと」  
ガブの背中をゆっくり撫でる。何時しかガブは眠ってしまった。  
ごめんガブ…嘘ついちゃった。わたし、ホントは建ちゃんの事……でも、同じくらいガブも大事なんだよ。わかってくれるよね?  
わたしはそっと起き上がるとパジャマを着なおした。  
そして、昨日建ちゃんが持ってきてくれたブランケットを広げて、ガブと一緒に包まった。  
ブランケットの中でガブの寝息を感じながら、わたしはいろいろ思い出してた。  
お父さんとお母さんが突然居なくなって、他に身寄りの無いわたしはお父さんの親友、つまりガブのお父さんに引き取られて…  
あ、ガブとは同じベットで寝てたっけ。お母さんを早くに亡くしたガブは、とっても甘えん坊で、わたしも寂しくって、  
10歳になって、エッチな事を覚えたばかりのわたしはそれでガブに…  
………ぁ。  
ゴメン!ガブ。わたしのせいでこんな趣味が…申し訳なさ全開でガブの顔をみる。  
いつの間にか昇っていた月の光に照らされたガブの寝顔。  
とっても、幸せそうだった。  
 
 
目が覚めると、外はもう明るくなり始めていた。相当寝たみたいだ。  
ガブリエルさんの薬のおかげでだいぶ体調もよくなったみたい。水を飲みに部屋を出ると、リビングで2人が眠っていた。  
一緒の毛布で眠る2人はとても穏やかな寝顔で、なんか本当の姉妹みたいだった。  
もう少し寝よう。  
僕は水を飲むと再びベットに潜り込んだ。  
 
 

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