優しい風と暖かい日差しを浴びて、僕は目を覚ました。  
柔らかな草の感触、見上げれば、雲ひとつ無い青空。何もかもが心地よい。  
………ん?そういえば、昨日はいつも通り部屋のベッドで寝たはずだ。  
そうだとしたら、やはりここは夢の中…いわゆる明晰夢というヤツだろうか。  
僕は立ち上がった。この夢のなかを散歩してみたくなった。  
 
どうやらここは小高い丘の中腹の辺りのようだった。目覚めた場所の裏手まで行くと、  
僕の部屋のクローゼットやベット、テレビにコンポ、昨日買ったスニーカーなんかが置いてあった。  
ほら、やっぱり夢だ。こんなモノ、ここにある訳無い。僕は嬉しくなった。  
とりあえず、スリッパだと足がチクチクするのでスニーカーに履き替えた。  
ついでに服も部屋着のスウェットから、ハーフデニムとTシャツに着替えメッシュキャップを被る。  
「よーし、出発〜♪」  
僕は歩き出す。ちょっとした探検気分…のはずだった。  
 
とりあえず、この丘の頂上までいこう。  
僕は丘を登る。緩やかで、木はあまり生えていない。頂上には家が一軒。  
ログハウスっぽい感じで、軒先には綺麗な花のプランターが置いてあった。  
「いいな〜。こうゆう家。やっぱり夢だなぁ」  
僕は玄関の段差に腰掛けて伸びをした。ここから見渡せる景色もとても綺麗だ。  
麦畑に舗装されて無い道、遠くには街が見える。  
「のどかだなぁ。こうゆうとこでギター弾きたいな〜」  
という事で、さっきの場所まで取りに行くことにした。  
しかし、探しても探しても見つからない。どうしたんだろう?  
「もしかしたら、さっきの家にあったりして」  
まあ、夢の中だしね。こうゆうこともアリなんだろう。ちょっと面倒だけど、引き返した。  
「瞬間移動とか出来ればいいのに」  
試してみようか?瞬間移動といえばやっぱコレ。  
「ルーラ!!」  
…何も起こらない。MPが足りないようだ。  
頂上に着いた。走りっぱなしだったから疲れた。夢の中なのに疲れたりするんだな。  
家の玄関の段差に腰掛けた。風が気持ちいい。僕は夢の中なのにまたウトウトしだした。  
 
「ねえ、ちょっと君!」  
…誰かが僕を揺すってる。もうちょい寝かせてよ…  
「もう、仕方無いんだから…」  
遠ざかる足音。ようやく諦めたかと思った瞬間。鼻の穴に何か入ってきた!!  
「へーっくしょん!!」  
飛び起きると、細い草の葉を持った女の子がクスクスと笑っていた。  
「わ。コレ夢じゃ…ない?」  
「何言ってるの?当然じゃない。ここはガブリエル嬢の私邸。君…大丈夫?」  
安眠を妨げられた怒りとこれが現実という混乱で、僕は思わず  
「すみません。ちょっと飲み込めそうもありません。あなたこそ何言ってるんですか?」  
と言いそうになったけど、今はそんな事言ってる場合じゃなかった。どうしよう。  
 
「わたしはソラ。ここの使用人やってるの」  
へぇ、ソラさんかぁ。綺麗な人だなぁ。って、そんなこと考えてる場合じゃなかった。  
「ぼ、僕は建(ケン)。」  
何だか照れる。白い肌、柔らかそうな唇、ぱっちりとした目、サラサラのショートヘア。  
背は僕より少し高い。そして、真っ白な毛並みのネコ耳としっぽ。…ネコ耳としっぽ?  
…どうゆう趣味してるんだろ。とりあえずそこは流しとこう。  
「隙ありッ!」  
考え込んでいると、いきなり帽子を取られた。  
「うわあっ!!何するんですか!」  
ソラさんは僕を見て歓声を上げた。  
「きゃあ〜!や〜ったぁ〜〜!!」  
「なな何!?僕がどうかしたんですか?」  
「君、『ヒト』でしょ。ず〜っと欲しかったの」  
え?何?今なんて?  
「君は今日からわたしの召使い。はい、決定〜!」  
「ちょ、ちょっと何言ってるんですか!?そんな事、勝手に決定しないで下さい!!」  
ひょっとしてソラさんてば、かなりヤバイ人?つーか、いきなり召使いは無いだろ。  
「大丈夫。家事とか全部わたしがやるから。それに、行くアテないんでしょ?  
この世界じゃ『ヒト』は超貴重だから、君なんかす〜ぐ捕まえられて売り払われて、  
それこそホントの召使いとして死ぬまでこき使われるよ〜。それでもいいの?」  
「…良くないです。」  
「君の仕事は、わたしとガブ様の相手。あと、さっき家具とか拾ったから、君の部屋用意してあげるね」  
「それ、僕の部屋の家具じゃ…」  
「じゃあ決定!そろそろゴハンにするから家に入ろ」  
「は、はい」  
ソラさんはふんふふんふふ〜んと鼻歌を歌いながら中に入っていった。  
こうして、僕は召使いになった、というかさせられた。  
 
 
「お邪魔しまーす。わぁ〜。すげー」  
中は結構広い。入るとすぐリビング兼ダイニング兼キッチンになっていて、  
キッチンとリビングはカウンターで仕切られている。かなりお洒落な部屋だ。  
ん?あれ、僕の部屋のソファじゃん。  
「ただいま、でいいよ。ここは君の家でもあるんだから。あ、そっち君の部屋。  
それと…あのソファ、ここに置かせて。お・ね・が・い」  
でも、お世話になるんだし、それ位はしないと。  
「いいですよ。」  
「ありがとー。じゃあゴハンの仕度するから、手伝って。今晩はカレーよ」  
ルーは作り置いてあったので、仕度は簡単に済んだ。  
「おいしそうですね。」  
「ウチはカレーの粉からブレンドするし、隠し味も色々入れて寝かせてるから、オイシイよ〜」  
そして、ソラさんは白ワインのボトルとグラスを持ってきた。  
「ねぇ、乾杯しましょ〜」  
「でも、僕未成年ですよ。お酒なんて…」  
「な〜に言ってんの?こっちじゃ子供でもお酒はOKよ」  
「でも…」  
「ほら、『郷に入っては郷に従え』って言うでしょ?さあさあ」  
そう言ってソラさんはグラスにワインを注ぐ。  
「えと、じゃあ。新しい家族にかんぱ〜い」  
「乾杯」  
チリンとグラスの触れ合う音。僕はちびっとワインを啜りカレーを口に運んだ。  
「おいし〜い!こんなの初めてです」  
「えへへ。ありがと。どんどんお替りしていいよ〜」  
夕食を取りながら、ソラさんと色々な事を話した。今までの自分の事、僕の家族の事、  
友達の事、学校の事…ソラさんはとても嬉しそうに話を聞いてくれた。  
 
「あの、ところで、それって付け耳ですか?」  
「え?普通こういう耳よ。わたしから見れば君たち『ヒト』のほうが変よ」  
「うそマジで!?」  
思わず僕は席を立ち、ソラさんに近寄った。そして、なでなでさわさわ…  
「にゃあ!そこッ…ちょっ…だ、だめなのぉ……ふにゃぁ〜。ゴロゴロゴロ〜」  
わぁ〜ホンモノだぁ。この人のネコ耳ホンモノだよ。目細めてノド鳴らしてるよ。ははは。  
って何やってんの僕!?もしかして、セクハラ!?  
「ふにゃあ。ふぅ…もうちょっと…って、何すんの!」  
「ごめんなさい。つい、その…本当にすみませんでした」  
「ん〜。ま、いいわぁ〜」  
ソラさんはふにゃふにゃと笑いながらそう言うと、ぐいっとワインを飲み干した。  
もう一人で2本飲んでいる。僕も黙々とカレーを食べる。  
本当にこのカレーはおいしい。おなかがペコペコだったのもあるけど。  
「あ、しょうにゃ。おひゅりょ、しゃき入っていいにょ。むにゃむにゃ」  
潰れて寝ちゃったみたいだ。仕方ないので食器を片付けて風呂に入ることにした。  
昼とは打って変わって、少し肌寒かったので、  
風呂に入る前に僕の部屋からブランケットを持ってきてソラさんに掛けてあげた。  
 
「あ〜気持ちいい〜」  
中々広い浴室に浴槽。いい香りがする。これってヒノキ?  
ああ幸せ。例え別世界に飛ばされても、突然召使いにされても、この幸せは変わらない。  
お風呂は大好きだ。体だけでなく、心も温まるから。湯船につかり、天井を見上げると様々な事が脳裏を過ぎる。  
今日の事、僕はどうなるのだろう?元の世界に帰れるのだろうか?それとも、このままこの世界で?  
ソラさんと上手くやっていけるだろうか?  
ソラさんとはどこかで会った事がある気がする。でも、そんな事あるはずが無い。  
わかってはいる。でも…  
ゆっくりと目を閉じる。そのまま眠りに身を委ね…られなかった。  
――ガラッ  
「ぃぃぃぃぃやっほ〜〜い!!」  
「…へ?」  
――ザッパーン!!ガッ!  
「う〜ん。お風呂サイコー!」  
何か騒がしくなったけど、僕はそのまま眠りに堕ちていった。  
 
 
「お風呂ってだ〜い好き!!ねぇ、建ちゃ〜ん?」  
…返事ナシ。  
「ねぇ?建ちゃ〜ん?建ちゃんってばぁ〜。」  
揺すっても反応ナシ。…寝ちゃった?  
「ねぇ?建ちゃん?もお〜。お風呂で寝ちゃダメぇ〜」  
つねってもダメ。それにしても、寝顔カワイイなぁ〜。  
「起きないとイタズラしちゃいますよ〜いいんですかぁ〜?」  
てゆうか、イタズラしに来たんだけどね。  
そういえば、男のコとお風呂入るの、初めてかも。  
それにしても、建ちゃんカワイイ〜。起きないし、イタズラしちゃえ。  
「う〜ん。これが、おち○んちんってヤツ?」  
いじってると、大きくなってきた。すご〜い。  
これが、わたしの…アソコに?入るのかなぁ〜。  
「…ん」  
小さな呻き声と共にピクリと眉を顰める建ちゃん。気持ちイイの?  
あ〜ん、カワイイ〜!!もっとイタズラしたくなっちゃう。  
「ぅあ」  
…ヤバイ。超カワイイ!わたし、もうガマンが…いいや。やっちゃえ!  
狙いを定めて建ちゃんのおち○んちんの上に腰を落とす。  
――くちゃ  
先っぽがわたしの中に入った。でも…  
「いっ…痛っ。…ぁん、おっきいよぉ〜」  
すっごく痛くて涙が出ちゃう。それでも何とか頑張ってみる。  
すると、建ちゃんの目がパチッっと開いた。二人の目線が合う。  
「…う、ん?わ、わわわわわ!何やってるんですか!!」  
「…はぅ…いたっ……建ちゃんにイタズラしてまぁ〜す」  
 
……目が覚めると、僕は襲われてアレされてるまっ最中でした。  
僕のアレがソラさんのアソコに!…キツくて、暖かいなぁ。じゃなくて!  
「なななちょっと!!あう!うぁ!やめっ」  
止めてください。と言おうとしたその時だった。  
――ちゅ  
柔らかい感触とお酒の匂いが僕の口を塞いだ。ビックリしてソラさんの顔を見ると、  
ソラさんはほんのりと桜色に染まった顔でにっこりとやさしく微笑んだ。  
やばい…すごくドキドキする。  
「もしかして、君のファーストキス貰っちゃった?うれしい〜。  
じゃあ、私の初めて、君にあ…あげちゃう」  
ソラさんは涙目でウインクしてそう言うと、思いっきり深く腰を降ろした。  
――ぷつり  
ソラさんが一気に腰を落とすと、僕のモノは完全にソラさんの中に埋まってしまった。  
「ゔあぁっ!!!い、いだい!痛いよぉ〜」  
ぽろぽろと涙を流すソラさん。とても痛そうだ。何かしてあげれないだろうか。  
そうだ。  
――ちゅっ  
今度は僕の方から唇を合わせる。驚いた表情のソラさんをそのままぎゅっと抱き寄せる。  
ソラさんの中がきゅっと締まった。ぁ、やばい!  
「うあっ!でちゃう!!」  
――どくん  
「ぇ?」  
「あわわわわ!ごっ、ごめんなさい!」  
しまった…出してしまった。子供ができたらどーしよう。  
「大丈夫。ヒトとネコの間に子供は出来ないんだよ」  
ソラさんが強く抱きつく。ソラさんの柔らかいカラダと小振りな胸。  
「あ〜、またおっきくなった〜」  
「ぅ、そんな…言わないで下さい」  
「ねぇ、もうちょっとこのままでいい?」  
何だか安心するの。少し寂しそうな声でそう言ったソラさんのさらさらの髪を、  
返事代わりに僕はそっと撫でた。  
 
密着した部分から体温と心音のリズムが伝わってくる。  
僕たちはしばらく無言でお互いの優しく、どこか懐かしいそれを味わった。  
「…ありがと」  
ソラさんが耳元で小さく呟いた。  
何故ソラさんがこんな事をしたのだろうか。僕は尋ねる事が出来なかった。  
ソラさんが僕と繋がったまま小さな寝息を立てていたからだ。  
そんなソラさんに対して僕は何とも言えない温かいものを感じた。  
「そろそろ上がらないとのぼせちゃうよ。  
ソラさんもちゃんとベットに寝かせなきゃ」  
僕はソラさんを抱き上げて立ち上がった。  
「う、重い。うわあ!」  
予想以上にソラさんは重かった。僕はバランスを崩した。  
―バシャ〜ン!!ゴツン!!  
また後頭部を強打してしまい、目の前が真っ暗になった。  
 
その後、僕は目を覚ましたソラさんにベットまで運んでもらったみたいだ。  
結局二人揃って風邪を引いてしまった。  
 
 
翌朝  
 
寝込んでしまった僕にお粥を作ってきてくれたソラさんに、昨夜の行為の理由を聞いた。  
「あれが君の仕事。言ったでしょ?君の仕事はわたしの相手って」  
「てっきり、ただの話し相手とかかと。それにあんなやり方無いですよ。」  
どうやら、僕は相当機嫌の悪そうな顔をしていたらしい。ソラさんは申し訳なさそうに続ける。  
「ゴメンね。わたし初めてだったからちょっと言い出し難くて、それでお酒飲んで…その……  
私じゃイヤ?そりゃ、胸は小さいし…」  
段々声が小さくなっていく。  
「いいえ。僕はソラさんで良かった。ソラさんは優しいし、綺麗だし」  
「え、そ、そんな…建ちゃん……」  
ソラさんの顔が赤くなる。  
「僕、ソラさんの事、す…っくしょん!」  
大事なところでくしゃみが出てしまった。…カッコ悪。  
「大丈夫!?ホントに昨日はごめっ…くしゅん!…きゃあ!!」  
くしゃみをした拍子に熱々のお粥を僕にぶちまけるソラさん。  
「あっちい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」  
僕の絶叫は爽やかな朝の丘に響き渡った。  
死ぬかと思った。マジで。  
 
 
続く?  

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