囁き森の奥深く、女神様は奇蹟を起こす―
「ジャン!飯はまだか?」
切り株にちょこんと座った小柄な少女が膨れっ面で僕を呼ぶ。
いや、少女と言ったら失礼だ。
だって彼女は僕の何倍も生きている正真正銘の『女神様』なんだから。
「えっ、女神様さっき食べたでしょ。もうお腹空いたんですか?」
「さっき西の村のサリーの願いを叶えてやったらの。とっくに消化したわ」
「サリーってお母さんに赤ちゃんが生まれるって言ってた例の女の子ですか?」
「ああ、母親が難産でな。わしが手助けしてやらんかったら生まれなかっただろ」
「ひゃあ、そりゃあパワーがいりますね」
「わかったらジャン、はよ飯を用意せい」
「はいはい、えっと確か港町のヨハンが持って来た薫製がそろそろ‥‥」
僕はランプに火をつけ倉庫(と言っても洞窟だが)に向かう。
そこには女神様に願いを叶えてもらいたい人々が持って来た様々な貢ぎ物があるのだ。
僕が戻ると女神様は「めーし、めーし」とコールしながら足をばたつかせていた。
その様はよくいる只のだだっ子のようで、とてもじゃないが『女神』とは思えない。
でも、彼女は奇蹟の力を持っている。
日照りの大地に雨雲を呼び、嵐の海を沈め、畑に実りをもたらし、人に安らぎを与える。
全て人には無い力。
ここ、囁き森に来てから僕は何度もその力を目撃した。
そしておもしろいのは彼女の力の源のほとんどはなんと『食事』なのだ。
「ほお、これはうまそうな鮭じゃの。ヨハンのやつなかなかよい土産を持ってくるではないか」
僕が調理した鮭を女神様は嬉しそうに頬張る。
口の端にソースをつけて、やっぱり子供みたいだ。
「女神様はヨハンの願いを叶えてやるんですか?」
僕の問いに彼女のフォークがぴたりと止まる。
「あやつの願いはふしだらだからのう。商人の娘のリラと上手く行きます様に、酒屋の娘のマリアと結婚できます様に、親方の姪のシルビーとデートできますように。‥‥女絡みの願いばかりではないか!!」
「ヨハンの今度のお願いは東の村のロッテでしたっけね」
どすっ。こんがりと焼いた鮭にナイフが突き立てられる。
「ま、あいつの願いを叶える手助けはせぬが、あいつを恨んでる女は山程いるからの。夜道でぐっさり刺されんように一応は守ってやろとしよう」
いつもは漆黒の女神の瞳が金色に輝き、同時にふわりと光の玉が宙を舞う。
それは森を抜け、港町に向かってゆっくりふわふわとと、かろうじて風に流されることもない位ののんびりとしたスピードで飛んでいった。
女神様の瞳が再び黒に戻る。だが、同時に彼女はがくっと崩れてしまった。
「女神様!!」
僕は慌てて駆け寄る。食事を採ったばかりなのに、彼女は青ざめて弱々しい。
「人の命を守る奇蹟は消耗が激しいからそんなに連発しちゃ駄目でしょう」
「うむ、ちと無理しすぐたわ‥‥」
僕は彼女を抱き上げ祠に向かう。そこに女神の寝所があるのだ。
見た目よりも遥かに軽い女神様のからだを寝台に横たえ、布団をかける。
彼女は元々この辺りの気候を司る女神だ。
誰かを苦しめるとか殺したいみたいな願い、いや呪いなんてもってのほかなのは当然として、出産にしても病気にしても人の命に関する奇蹟は本来専門外で力を使うとすごく疲弊してしまうのだ。
それでも女神様は人を救う。
そして僕はそんな女神様のことを心から尊敬してる。
だからずっと女神様に仕えてきたんだ。あの日から―
眠りについたかのように見えた女神を残し、僕は去ろうと背を向ける。だが、
「すまんの、ジャン」
しゅんとした声が背中越しに届いた。
服の端が弱く引っ張られている。
「もう少し、側にいてくれ‥‥」
僕の大好きな女神様は、布団にすっぽりと顔を隠し、小さな声でそう言った。
目の前にあるのは透けてしまいそうな白い肌。
僕は穢さぬ様に、浄めるようにそっと口づける。
初めて目にした時から変わることの無い女神様のからだ。
少女のような華奢な外観と異なり、双つの乳房の膨らみも、柔らかな腰のラインも大人の女性のものに近い。
(とはいっても僕は女神様以外の女性のからだを見た事はないのだけれど。)
服を脱いで裸になった僕の胸板にうなだれながら、女神様が呟く。
「ジャンは立派になったのう、ここに来た時は泣いてる鼻垂れ小僧だったのに‥‥」
「五年も経てばさすがに成長しますよ。僕は人間ですから」
五年前、僕は囁き森にやってきた。大旱魃の被害にあった僕の村を救うために。村の長老の案だった。
僕は女神様への生け贄としてここにやってきたのだ。
でも女神様が僕をとって食ったりするわけもなく、僕は村に帰っていいはずだった。
でも僕は残ってしまった。そしてずっとここにいる。
女神様に仕えるために。病で死にかけてた僕の妹を助けてくれたお礼をするために。
あの時も今と一緒だった。
ぐったりとした女神様。
本来なら人間と同じ食事と睡眠があれば少しずつだが女神様は回復する。
でも、特効薬があるのだ。あの時、女神様は言った。
「小僧、お前わしを抱けるか?」
透けてしまいそうな肌に、口付ける。
細い肩に。うなじに。耳たぶに。
奇蹟を起こした疲れのためか、女神様は余り言葉を発しない。
紅を塗ってるわけでもないのに赤くふっくらとした唇に唇をあわせる。
軽く開けた唇から温かな舌が遠慮がちに伸び、僕は己の舌でそれを絡めとる。
女神の心の臓の鼓動が僕に伝わる。
女神であっても、食事もするし、睡眠をとる。心臓も動くし、涙も出る。
そして、セックスもする。
手のひらで柔らかな乳房の感触をあじわいながら、僕は胸の頂きを攻める。
唾液にぬれぼそった桜色の突起は舌で押し込んでもすぐ頭を出し、僕はそれを甘く噛む。
手で遊んでいたもう片方の乳房に口を移し、赤児のように乳首をしゃぶる。
桜色の吸い続けても何も出ては来ないけど、そうしてると時々女神様が僕の頭を撫でてくれる。
僕はそれが好きなのだ。
臍のくぼみを舌でくすぐりながら、僕は女神様の股の間に手をすべらせる。
ふとももまでもが流れる愛液でぬらりと湿っていて、僕の手は容易に秘部にたどりつく。
女神様にはないけど、人間の場合、男も女もここには毛が生えるとのことだ。
僕は女神様の足を割り、顔を愛液で光る秘唇に近付ける。
舌をのばし、割れ目を下から上へと舐めとる。秘唇を割り、赤い恥肉に吸い付く。
滲み出る女神の愛液と下等な僕の唾液が混じる。
ぷっくり膨らんだ陰核をつつき、膣口に舌を伸ばす。
女神様は声を出さないけど、小さく震えているのがわかる。
僕の愛撫に感じてくれているんだと思うと堪らなく嬉しい。
彼女の愛液に唇を濡らしたまま、額に口付ける。そして、唇をあわせる。
弱々しく伸びた白い手が、緊張した僕のペニスを握る。
昔は、
「肉屋のカールの作るへなちょこウィンナー以下じゃのう」
と屈辱的な台詞を良く言われたが、今ではそんなこと言わせない。
女神様は、膨張した僕のペニスをやわやわとさすり、形を、熱を愉しんでいるようだ。
僕は女神様の膣に指を滑らせ、二本の指をゆっくり行き来させる。
「女神様。そろそろ入れますよ」
僕は女神様の足を大きく開き、充血したペニスの標準をあわせる。
「馬鹿者、わしを抱く時は名を呼べと言っただろう!」
さっきまでのしおらしい顔はどこへやら、眉間に皺を寄せて女神が、フィーネが言った。
十分に愛撫でほぐしたとはいえ、少女のような体つきのフィーネのヴァギナはきつく、僕のペニスをぎゅうぎゅう締め付ける。
「フィーネ、もうちょっと力抜いて‥‥」
「わしが悪いんじゃない。ジャン、お前のが大きいんだ!」
「‥‥ふふっ」
「何がおかしい?」
「いや、昔にくらべると有り難いお言葉だなって思って」
やっと全てが納まりきったが、フィーネの膣壁は僕のペニスを押し返し、僕はそれに反発する様に、ヴァギナをを拡げる様に突く。
接合部は充血し、ペニスの動きにかき乱された愛液はぐちゅちゅと音をたてていた。
青白かったフィーネの頬にはうっすらと赤みが戻り、うっとりと開かれた瞳はわずかに金色の光が灯っていた。
僕はフィーネのからだを裏返し、四つん這いにさせる。
後ろから獣が交尾するようにフィーネを突いた。
双つの乳房を鷲掴みにし、乳首をこすりあげる。
首筋に吸い付き、赤い花をつける。
疲弊ではなく、快感でフィーネの上半身は床に崩れ、口からは切ない吐息が漏れる。
「ジャン‥‥来て、一緒に‥‥」
「フィーネ!!」
僕は限界まで膨らんだ己の欲望をフィーネの中に吐き出した。
充血したままの接合部から、白い欲望がフィーネの透けそうな白い肌を伝う。
女神を征服した達成感に酔いしれて僕はフィーネを抱き締めたまま眠りについた。
「ジャン、飯はまだか?」
聞き慣れた声に僕は飛び起きた。
目の前には少女のような外見の女神が僕を見つめていた。
僕は頭を振り、さっきまでの状況を思い出す。
「えっ、女神様さっき食べたでしょ?一回セックスしたら三日分は食事いらなかったんじゃ‥‥」
「さっき森で迷ってる兄弟を道に戻してやったからの。とっくに消化したわ」
「ええ!!またですか?」
女神は僕に抱き着く。
「奇蹟を起こすのには力を使うからのう」
その表情は悪戯に成功した後の小悪魔のようだった。いや、女神なんだけどね。
「ジャン」
「なんですか?女神様」
「お前がいつかこの森を出る時がきたら、わしはお前の願いをか‥‥」
僕は女神の言葉を口付けで封じる。
「僕はずっとここにいますよ。それが僕の願いですから」
女神は微笑む。
そう、僕の一番好きな顔で。
囁き森の奥深く、女神様は奇蹟を起こす。
神と人、僕らに別れは絶対来る。それでも僕は側にいたいのだ。
女神のそばに―