「明日、ちょっとアキバデビューしてくるから」  
 学校の昼休み、同じクラスのツレ原田が何か言ってきた。  
 真面目で、オタクであるということ以外これといって特徴もなく、今のところ地味に高校生活を送って  
いるヤツだ。育ちがいいので大人しく、一応俺にとって数少ない友達の一人と言っていい。  
「は?」  
「夏目有乃って……知らないと思うけどさ、そのアイドルのイベント行く都合で、初めて秋葉原に行くん  
だよ」  
「アキバ系アイドルってヤツか」  
「例のちょこたんとは違ってさ、生粋のゲーヲタなんだよなっつんは。コスも好きらしいし」  
 夏目有乃って確か、チェシャっていうアリスグループ傘下事務所のアイドルだ。あそこは所属タレント  
にキャラを作っやっていて、そのためのレッスンまでしてるっていうから作られたヲタキャラに違いない。  
 ……って、誰かが言ってたのを思い出した。  
「え、ちょこたんのヲタって、作ったんだ」  
 わざとらしく、驚いた顔をしてやる。  
「作ってるに決まってんじゃん。この間漫画好きの芸能人が出るクイズ番組出てたけど、全然正解できて  
なかったもん。コメントしてる内容もさ、ベタなことばっかでボロ出てたし」  
 その収録現場に俺もいたりする……今ブレイク中のちょこたんこと桜田知世は似非疑惑が強いが、間違い  
なく本物だ。青山のオサレカフェテラスでエログロ系漫画家を語っては爆笑するような(実体験)女なので、  
事務所からの指示により、わざと手加減しているだけである。  
 これは間違いない。だって、散々本人が愚痴ってたし。  
 
「秋葉か……」  
「? なに、その微妙な顔」  
「え? あぁいや、何でもない」  
 実は俺も、秋葉でロケを行う某アイドルの相手に呼ばれていたりする。ヘタに鉢合わせしたら色々と  
ややこしいことになりそうだが……大丈夫だろうか。  
 翌日、俺は心配を抱えつつも秋葉原へと向かった。  
 JR山手線秋葉原駅で下車し、エスカレーターを降り電気街口へ……意外と綺麗な構内だ。むわっと  
する風が吹いたかと思うと、原色の電光掲示板が印象的な、例の建物群に出た。  
 出てすぐ、メイド達が店のチラシを配っていた。中にはマイク片手に歌っている子もいて、わかりやすい  
街の雰囲気を醸し出している。ああ、これが秋葉原か。  
(腹、減ったなぁ……)  
 正面の通り、すぐそこにチェーンのカレー屋がある。そこでチーズカレーの一つでも食っていきたい所だ  
が、相手から昼食は抜いて来るように言われている。変な注文付けやがって……  
 腹を減らしながら、約束の場所へと向かう。建ち並ぶ店からはひっきりなしに電子音が響き、道には予想  
より普通なルックスのオタクが闊歩している。まさに想像通りだなんて思いながら歩いていると、前方に黒  
山の人だかりが出来ていることに気付いた。  
(ん? えーっと、AGSファン感謝……ここだ)  
 真新しいビルに、アニメイラストと共にでかでかと垂れ幕が下がっている。もうイベントが始まっている  
ようで、次々と汗くさい雄共が、建物の中へと吸い込まれていく。  
 ここが約束の場所だ。ロケは昼過ぎには終るらしいから、そろそろ終わっている頃だろうか。  
「若!」  
「!」  
 と、突然、前方のタクシーからスーツ姿の女性が降りたかと思うと、驚いた顔で俺に話しかけてきた。若  
ってのは事務所の人間が使う俺の呼称で、社長の孫だから「若」らしい。イベントの関係者か?  
 
「どうしたんですかこんな所で? イベントに来られたんですか」  
「いや、あの、ちょっ……とりあえず場所変えないっすか?」  
「でしたら中へどうぞ、こちらへ」  
 俺のことが周囲にバレたらマズい。慌てて彼女について、裏口から建物へ入った。  
 エレベーターで最上階へ向かい、イベント会場を横目に事務所へと通される。応接用の  
ソファに座らされると、すぐに冷たい麦茶が出てきた。相変わらず、社長の孫である俺への  
気の使い方は半端じゃない。俺に媚び売っても何の特にもならないのに。  
「わざわざ新人のイベントを見に来るなんて、お疲れ様です」  
 何か勘違いしてるのか、感心した様子で彼女が言った。結構綺麗な人で、さぞ職場の上司  
からモテるだろう。  
「ええと、AGS、でしたっけ」  
「元々人気のネットアイドルだったのを、ウチでスカウトしたんですよ」  
「いわゆる、アキバ系アイドルってやつですか」  
「まぁ、仕事はゲームやアニメの声優だったり、そっち系が多いですからね。まだまだ駆け出し  
ですから」  
 一言二言会話して、マネージャーはステージの方へと行ってしまった。俺もどうかと誘われ  
たが、こっちは別の仕事がある。   
 そして10分後、今日の主役が姿を現した。  
「あっ、若お疲れっす!」  
 その幼さの残る童顔に似合わない、巨乳。ぴたりとしたインナーを着ているので、余計にムチ  
ムチ感が増している。主にバラエティで活躍しているグラビアアイドル、三沢まどかだ。  
 親が有名人なのでデビュー当初は七光りのイメージがあったが、大物とのカラミが上手く空気  
も読めるので、次第に頭角を現してきた。グラビアをやりたい本人の意志とは反対に、来る仕事  
はバラエティが中心である。  
 
「若、やっぱり秋葉が似合ってますよー。超自然」  
「いや嬉しくないから……で、もうロケ終わり?」  
「ハイ、もう前からスケジュール開けててー、てかさっそく行きます? 行っちゃいます?」  
 ノリノリな笑顔の彼女に手を引かれるようにして、俺達は彼女のマネージャーの車に乗り込んだ。  
 行き先はわからないが、たぶん適当なホテルだろう。  
「今日って実は、一人友達来てるんすよー」  
「友達? 誰?」  
「由羽奈ちゃんです。星野由羽奈ちゃん」  
 彼女もウチの関連事務所から出ている、売り出し中のグラビアアイドルだ。いかにもお嬢様ぽい  
清楚な感じから女優としても評価されており、たまに舞台にも出演している。名前よりも、美尻の  
シリドルという肩書きの方が有名だろうか。  
「お互い体の一部分で勝負してるから、凄い分かり合えるんですよねー。若的にはどっちが好き  
ですか?」  
 ほのかに香る良い匂い、絡めた腕に押し付けられる巨乳、そしてこの笑あどけない顔。正直  
どっちでもいいです。  
 やがて、開けた場所に出たと思うと、車は某有名ホテルの駐車場へと入っていった。  
 
「じゃあ……ちゃんと時間守ってね」  
「だーいじょぶだって、そういうトコきちんとしてんだから、あたし」  
 心配そうに念押しし、由羽奈は部屋を出て行った。  
 ホテル最上階にあるスイートルーム、広々としたベッドルームに、俺と三沢まどかが残された。3Pかと  
思いきやそれぞれ持ち時間を決め、順番に一人ずつ楽しむということのようだ。  
 料金は事務所持ちだ。ここのホテルは昔からウチがお得意様になっており、タレントが利用する時にはプ  
ライベートを完全に守ってくれる。定期的な盗聴器チェックやマスコミ関係者の確認などもしてくれるので、  
安心して利用できるというわけだ。  
「とりあえず、おフロ入りましょうよ」  
 テンション高く俺の手を取り、バスルームへと引っ張って行くまどか。  
 彼女は前に一度相手をしている。その時は普通に本番をしたんだが、それから性的な意味でハマりSEX  
指南書を買って勉強してるとアホなことを言っていた。頭は良いが、どこか抜けている子だ。  
「あーもー、脱いでる途中でちょっかいなしって、ちょ、……ちょっともぉ」  
「笑顔で言っても説得力ないから」  
「そういうことなら、こっちだって」  
 上着を脱ぎ、ゴスロリなブラを付けた巨乳が現れたところで、乳首のあたりをつまんでみる。  
 感じやすい体質に加え気分が乗っているから、これだけで反応がある。まどかはお返しとばかりに、首に  
腕を回し俺の唇をふさいできた。  
「ん……ちゅっ、んちゅ……んふぅ……」  
 はぐきのあたりを、舌でなぞってきた。顔は半目で薄ら笑っており、すっかり夢中といった表情。  
 それにしても、タオル一丁の俺の胸に押し付けられる巨乳の弾力は凶悪だ。  
「んっ、う……ふぅっ」  
 背中から手を伸ばし、つんと突き出た尻をショーツ越しにまさぐり始める。  
 通常彼女みたいな背が低めの巨乳ちゃんはぽっちゃり型が多いのだが、まどかはウエスト、足、二の腕と  
きちんとシェイプアップされている。  
「あっ、んぁっ……! って、若、入る前に終わっちゃいますよ」  
 後ろからヴァギナのあたりを触れた瞬間、声が漏れた。慌てて、まどかが制する。  
 ひとまず、俺達は服を脱いで入ることにした。中にはゆったりとしたジャグジーがあり、大人二、三人で  
も余裕で入れる広さがある。照明や隅に置かれた観葉植物も、いかにも高級な感じだ。  
「若、背もたれのトコ座って」  
「ってまどか、いつの間にそんな髪型に……」  
「髪濡れたら貞子みたいになっちゃうじゃん」  
 髪を縛り、ポニーテールみたいな髪型になったまどかの言うとおり、俺は一人ジャグジーにもたれた。  
 続いて、正面からバスタオルを巻いたまどかが入る。と、俺の目の前で仁王立ちする格好となった。  
「前に見た洋画のDVDで、やってみたかったんですよ」  
 耳元でつぶやき、頬にキス。そのまま上にずれたと思うと、彼女の胸元が目の前で現れた。綺麗な色の乳  
首が、すぐそこで揺れている。ていうか凄い迫力だ。  
 向こうから見たら、完全に俺にのしかかっているように見えるだろう。せっかくなので、乳首に吸い付い  
てみる。  
 
「あっ……あ、あ、こ、これヤバ……あーっ…」  
 すでに固く立っている乳首を吸う度に、まどかは体を激しくよじらせる。片手で乳房を揉み、もう片方の  
手を既に濡れているヴァギナへと伸ばす。  
 たまらず、彼女は俺に抱きついてきた。  
「若……気持ちいぃよ……んふっ、ヤバ、可愛い……」  
 左肩のあたりに頭を乗せ、やはり半目の顔で見つめてくるまどか。はにかむと、軽く何度も口づけてきた。  
「ねぇ、好きって……ちゅ、ん、あ、そこ……クリ……うぅん」  
 お湯の中でクリトリスに触れると、ふるるっ、と彼女の体が震えた。  
 密着しているので、巨乳は大きくつぶされている。そのままヴァギナへの責めを集中させていたら、まど  
かはゆっくり腰を動かし始めた。  
「やらしぃな、腰動いてんじゃん」  
「だって……動かしてるもん。もう入れたい?」  
「つか、そっちが入れて欲しいんだろ」  
 はぁ?と言いつつ、彼女がゆっくりと離れた。  
 俺も上体を起こし、湯船の縁に腰掛ける。と、まどかは元気になっている俺のマイサンを手に取り、迷う  
ことなく咥えてこんでいった。  
「ん、ん、んっ……」  
 リズミカルに顔をピストンさせ、フェラを開始。こいつにしてもらうのは初めてた。  
 初のフェラということもあり、あの浅間悠希のバキュームに比べると迫力不足は否めない。こんなこと言  
ったら怒るんだろうなぁ……  
「っとここで、じゃーん」  
「準備いいなお前……」  
 まどかは用意していたコンドームを俺に装着させると、嬉しそうにペニスを手に取った。  
 そのまま腰を落とし、ゆっくり……と、その時。  
「時間、もう過ぎてんだけど?」  
「! ゆ、由羽奈ちゃん……いたんだ」  
「じゃ、交代ね」  
 明らかにイラッとした黒い笑顔で、脱衣所の方を指さす由羽奈。  
 有無を言わせぬ迫力にビビりつつ、俺とまどかはジャグジーを出た。   
 

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