「女刑事 三神響子」  
 
1  
 
「警察よ! 全員動かないで!!」  
三神響子はそう叫んで拳銃を構えた。  
 
ここは港の倉庫。大掛かりな麻薬取引があるという情報を得た響子は、部下の真鍋智哉と共に、  
張り込んでいたのである。  
三神響子、二十八歳。警視庁防犯部保安二課に所属する女刑事だ。  
鷹が獲物を狙うような鋭い目つきと、細く刈り込んだ眉。薄桃色の唇は、それらと反比例するように  
ぽってりとして厚く、吸い付きたくなる程の艶っぽさを醸し出している。  
 
肩に届くか届かないかという長さのショートボブの黒髪。  
168cmというすらりとした長身。ブラウスを押し上げる豊かな胸のふくらみ。  
くびれた腰、なだらかな臀部の丘陵。そして、そこから伸びる長い脚。  
文句の付けようのない完璧なプロポーションだ。  
 
彼女の身体を包む白いブラウスと漆黒のパンツスーツが、その抜群のスタイルの良さと相まって、  
さらに彼女の魅力を引き立てる。  
刑事にしておくのはもったいない程の美貌とその肢体。事実今でも街を歩けば、スカウトらしき男に  
声を掛けられる事もざらにあるくらいだ。  
むろん刑事としての実力も高く、上司や先輩たちも一目を置く存在だった。  
 
ただひとつの欠点と言えば、“鼻っ柱が強い”と言うところか。  
特に女として扱われる事が嫌いだった。  
昔に比べれば、ずいぶん変わったとは言え、やはり警察組織は男社会である。  
女刑事、婦人警官などと呼ばれること自体性差別の様に感じられた。  
それだけに「男には負けない」と今まで頑張ってきたし、おそらくこれからもそうするだろう。  
実際、今回の件にしても、本来ならもっと大人数での張り込みになるところを、部下の真鍋と  
二人だけで張り込んでいたのだ。  
 
もちろん、普通ならそんな事は不可能だ。しかし、今回は真鍋の得た情報からだったため、  
上の方に報告もせず響子の独断で捜査を開始したのである。  
 
そして今、響子は麻薬取り引きの現場を押さえた。先に潜入していた真鍋から連絡を受け、  
乗り込んだところなのだ。  
 
「さぁ、全員逮捕するわ。両手を挙げて壁に手を付きなさい」  
その場にいるのはわずかに五人。思っていたより少ない数だ。  
響子は射撃にも自信があったし、十人くらいまでなら素手で倒せる程の武道の達人でもあった。  
こんな無茶ができたのも、そういった実力に裏打ちされての事だった。  
 
銃を構えあたりを見回す。しかし、彼女の指示に従い壁に手を付いて、神妙にお縄につこうとする者は皆無だった。  
それどころかニヤニヤと笑みを浮かべながら彼女を見つめている。異様な状況に響子は背筋に冷たいものを感じた。  
 
「へぇ〜。美人だとは聞いていたが、これ程とはなぁ。ひひひ、さて女刑事さんこいつを見なよ」  
リーダー格らしい男がひとりの男を引き出す。なんとそれは先に潜入していた部下の真鍋智哉だった。  
「ま、真鍋!!」  
「み、三神先輩……すいません……」  
 
「くくく、どうだい。お仲間の命を助けたかったら、銃をこっちによこしな」  
真鍋の喉下には鋭いナイフが突きつけられている。ほんの少し動かせば動脈は簡単に切れてしまうだろう。  
 
くっ……まったく……  
いつもながら役に立たないやつだ。今回珍しく有益な情報を持って帰ってきたと思ったら、詰めの段階でこれだ。  
「真鍋!! 役に立たないだけならともかく、人の足引っ張ってんじゃないわよ!!」  
ムカムカしながら響子は叫ぶ。せっかくここまで追い詰めたというのに、こんなところで逃すわけにはいかない。  
 
「言っておくけど本部に連絡しておいたから、すぐに応援が駆けつけるわよ。どっちにしろあんたたちの逃げ場はないわ」  
もちろんこれはフェイクである。彼女が連絡などするはずはない。  
「ふふふ、嘘はいかんよ、お嬢さん。こちらさんがあんたが連絡なんかするはずないって言ってたぞ」  
 
なっ……そんな事まで……バカかこいつは!  
「ほら! 早く銃を捨てな!!」  
「……」  
「早くしろって言ってんだよ!!」  
 
男の言葉に不敵な笑みを浮かべる響子。銃を構えたまま口を開いた。  
「わたしはそんな甘い人間じゃないのよ」  
「なんだと?」  
「大事の前の小事。悪を根絶やしにするためなら、真鍋も喜んで命を投げ出すわ。そうでしょ?」  
響子の言葉にうろたえる真鍋。顔面蒼白になっている。  
 
「い、いや……三神先輩冗談っすよね……」  
「安心して。二階級特進よ」  
「そんな……」  
真鍋は情けない声を漏らしながらがくがくと震えていた。  
 
もちろん、響子は彼を見殺しにするつもりはなかった。ナイフを持つ男の腕を打ち抜くつもりだった。  
彼女程の射撃の腕前ならそれも可能だったし自信もあった。へたに真鍋が暴れたりしなければ。  
 
「こ、この女。本気か?」  
敵はこちらの真意を測りかねているようだ。真鍋を殺すのは簡単だろうが、それでは大事な人質を失う事になるのだから。  
 
今だ!!  
ナイフを持つ男が一瞬戸惑った隙を逃さず、響子は銃を放とうとした。  
しかし───  
 
ガシッ!!!  
 
何が起こったのかわからなかった。後頭部に強い衝撃を感じたのだ。  
「くっ……しまっ……まだ、いたのか……」  
どうやら犯人たちはまだどこかに潜んでいたらしい。チャンスを窺っていたのは、むこうも同じだったようだ。  
 
後頭部を押さえ倒れこむ響子。目の焦点がぼやけ、銃を撃とうにも標的が定まらない。  
「ぐはっ!!」  
腹部に蹴りを入れられ、さらに意識が遠くなる。  
 
ドカッ! ボカッ!! ドカッ!!  
 
なおも袋叩きにされていく美貌の女刑事。いつの間にか銃も取り上げられていた。  
(くっ、くそっ……)  
抵抗を試みようとするが、意識はどんどん薄れていく。  
 
遠くなる意識の中彼女が見たのは、薄笑いを浮かべながら近づく、真鍋智哉の姿だった。  
 
 
2  
 
「先輩……三神先輩……」  
遠くで声が聞こえる。  
聞き慣れた声──真鍋智哉の声だ。  
 
「ううっ……」  
苦しげな呻き声をあげ、響子はうっすらと目を開けた。  
ぼんやりとした視界に、真鍋の顔が飛び込んで来る。こちらを見つめ心配そうな表情をしていた。  
「ま、真鍋……」  
響子はか細い声でつぶやく。  
一瞬、状況が把握できないでいた。記憶がとんでいる。今どこにいるのかも瞬時に思い出せない。  
 
「大丈夫ですか?」  
「あ、ああ……くっ……」  
後頭部に鈍痛を感じる。特に首のあたりに痛みが走る。  
(そうだ。後ろから殴られて……)  
少し記憶が戻ってきたようだ。響子は右手で首筋を押さえようとした。  
 
「えっ?」  
両手が動かせない。太い柱のようなものを背にして、後ろ手に縛られているようだ。手だけではない、  
両足も括りつけられている。  
そうか、あの後袋叩きにされたんだ。  
意識を失っている間に、縛り付けられてしまったということだろう。  
 
(しかし……)  
響子は思った。  
それなら何故真鍋は自由なのだ?   
この男に危険性がないと判断されたとしても、こうしてわたしに近づける以上、この戒めを解くくらい  
造作もないことである。自分たちは別に牢獄に入れられているわけではないのだから、拘束さえ解かれれば、  
ここを抜け出すことくらいわけもないことだ。敵がそんな事に気づかないとも思えない。では……  
 
(待って……そう言えば……)  
響子は記憶を手繰る。そして、意識を失いかけたその瞬間の映像を思い出した。  
袋叩きに遭いぼろぼろになっていく自分を、蔑むような笑みを浮かべながら見つめていた真鍋の顔。  
見間違い? いや、違う。確かにそれは現実だった。どういうことなのか? まさか──裏切り……  
 
一瞬そんな疑念が浮かんだ響子だったが、真鍋のいつものヌボーッとした表情を見、それはあり得ない、と思い直した。  
(そんな大それたことができるような器の男じゃないわ。やっぱり見間違いよ)  
朦朧とした意識の中で見た幻覚なのだろう。  
ここは牢獄ではないにしろ、かなり厳重に監視されているのかもしれない。  
そのため、もし真鍋がわたしの戒めを解いたとしても、そう易々と逃げ出せるはずがないと、  
敵は思っているのかもしれなかった。  
 
「早くこの縄を解いて」  
響子はとにかく自由になることが先決だと思い、真鍋にそう命じる。  
だが、彼はまるで動こうとしない。縄目を解こうという素振りさえ見せないのだ。  
「ちょっと! なにやってんの!! 早くしなさい!!」  
いらつく響子を見つつ、真鍋は淫猥な笑みを浮かべる。その表情は薄れていく意識の中で見たあの顔だった。  
 
「いやですね」  
真鍋は言った。クククッと含み笑いをしながら、響子のそばへ近づく。  
「どういうこと……」  
響子は真鍋を睨みつけた。  
いつもならそれだけで、おどおどとした態度になるというのに、まるで動じる気配はない。  
 
彼は右手を彼女の頬へ当て、優しく撫で擦り始めた。  
「どういうことって……わかってるんでしょ? 先輩」  
真鍋は鼻先が触れるほどに、彼女へ顔を近づける。  
「情報提供のご褒美に、貰えることになったんですよ。──あなたをね」  
 
「な、何を言ってるの?」  
響子はいぶかしげに問う。裏切り──すべて仕組まれた罠だったと言うのか?  
「ふふ、まだそんなこと言ってるんですか? 前に先輩自身が言ってたじゃないですか。情報が洩れてるって」  
「じゃ、じゃあ、真鍋、お前が!」  
「そうですよ。で、少しやばいかなって思って、今回の作戦考えたんですよ。だって先輩しつこいんですもん。  
他の人たちは早々にあきらめてたって言うのに」  
 
「なんて奴……」  
とは言え響子にはじっと睨みつけることしかできない。両手足を縛られている今、目の前の敵に対して  
どうすることもできないのだ。  
「先輩が、他の人たちに報告でもしたら、この計画はお流れだったんですけどね。思ったとおり  
突っ走ってくれましたんで」  
 
くそっ……こんな奴の手のひらで踊らされてたなんて。  
響子は臍を噛んで悔しがる。  
「わたしをどうしようって言うの?」  
真鍋はその問いに口の端を吊り上げ笑う。そして響子の顎を掴むと顔を上に上げた。  
 
「くくく、先輩は気づいてましたか? 僕三神響子の大ファンなんですよね。いつかは自分のモノにしたかったんですよ」  
「何バカなこと言ってるの?」  
「ふふふ、それそれ。その気の強いところがまたそそるんですよねぇ。こんな絶望的な状況でも  
そんな強気でいられる先輩が、泣き叫んで僕に許しを請う姿、僕のチンポをおねだりする姿を  
是非見てみたいんですよね」  
 
「あ、あなた気が狂ってるわ」  
「ひひひ、なんとでもおっしゃって下さい。きっちり堕とさせて頂きますよ。ああ、それから薬とか暴力とかは、  
可能な限り使いませんから安心して下さい。まあ、捕まえるのに暴力使っちゃいましたけど、  
必要最低限てことで許して下さいね」  
 
「ふん! 女ひとりを縛りあげといて、そんなことがよく言えたもんだわ。卑怯者!!」  
「おやおや、これは先輩らしくない科白ですね。あんなに男女を区別されるのが嫌だった人なのに」  
真鍋はそう言うと軽く右手を挙げた。するとどこに隠れていたのか、ぞろぞろと先程の男たちが現れてきた。  
 
「さあ、そろそろおしゃべりは終わりにして、ショーを始めましょうか。もちろん主演女優はあなたですよ。先輩」  
真鍋はニヤリと笑った。  
 
 
3  
 
響子のまわりに男たちが集まってきた。  
全部で七人。先程真鍋にナイフを突きつけていた、リーダーとおぼしきやつもいる。  
響子は鋭い目つきをして睨みつけた。内心は、これから何をされるかという不安で一杯だったが、  
気弱になっているところを悟られてはいけないと、目一杯気丈に振舞っていた。  
 
「おい、早く剥いちまおうぜ」  
リーダーらしき男は、真鍋に向かって言う。  
「長内さん。まぁ、ちょっと待って下さい。ここは僕に任せてもらえる約束でしたよね。犯すのは簡単ですけど、  
それじゃあ面白くないんで……できれば、この女の口からおねだりの科白を聞きたいんですよ」  
どうやらリーダーは長内というらしい。  
 
「真鍋、えらく自信満々じゃないの? 生憎だけどわたしがおねだりなんて、天地がひっくり返っても  
あり得ないわよ」  
響子は、自分自身セックスには、かなり淡白な方だと認識していた。  
むろん年相応の男性経験はあったが、今まで一度としてエクスタシーというものを感じたことがなく、  
もしかすると不感症なのではないかと思っているくらいなのだ。  
 
もちろん肌を愛撫されれば、それなりに気持ち良くはなるのだが、耐えられないという程のことではない。  
我を忘れてセックスにのめり込むという様なこともなく、どちらかと言えば行為の最中もどこか醒めていた。  
好意を持っていた男と寝てもこうなのだから、嫌悪感しかない男たちにどうこうされようと、感じるはずがないと  
高をくくっていたのだ。  
 
「すばらしい」真鍋は満面に笑みをたたえ言った。  
「そう簡単に堕ちてもらっては興醒めですからね。せいぜい感じないで下さい。よろしくお願いしますよ」  
真鍋は響子の漆黒のジャケットに手をやると、ボタンを一つひとつ外していく。  
白いブラウスを押し上げる、豊かな胸のふくらみが、その存在をアピールするかのように彼らの眼前に現れた。  
 
「ジャケットの上からでもわかったが、でけぇ胸だな。Eか? Fカップくらいあるのか? 刑事さん」  
長内のいやらしげな問いに「答える必要はないわ」と言って、響子はさらに視線を厳しくして睨みつける。  
「まぁ、答えなくてもいずれわかることですがね」  
真鍋は言うと彼女の胸へと手やり、ブラウスごしに撫で擦り始めた。  
 
「柔らかくていいおっぱいですね。ふふ、直接触るともっといい感触なんでしょうね」  
真鍋は響子の羞恥を煽ろうとするかのように、いやらしく言葉を吐く。  
とは言えブラウスの上から、しかもその下にはまだブラジャーを着けた状態で、軽く撫でられているだけだ。  
嫌悪感はあれど、快感を覚えるようなことはない。  
「さて、それでは本格的に乳責めを開始しましょうか」  
真鍋はそう言うとブラウスのボタンをゆっくりと外し始めた。  
 
響子にとって胸を責められることは、ある意味望むところであった。なぜなら、おそらく自分の身体の中で、  
一番感度の悪い箇所だと思うからだ。  
今まで寝た男たちは、必ずと言っていいほどこの大きな胸を責めた。こってり揉みほぐされ、乳首を吸われ甘噛みをされた。  
中には三十分以上も胸だけを責め続けた男もいた。しかし、胸責めで濡れるというようなことは一度もなかった。  
 
(お生憎ね。そんなところをいくら責めても徒労に終わるだけよ)  
響子は鼻で笑った。いくら胸を責めても感じない自分を見て、いらつく男たちの姿を想像すると、  
大声を上げて笑いたくなってしまう。  
 
そんなことを考えている間に、とうとうボタンがすべて外されてしまう。ブラウスの打ち合わせを大きく開くと、  
純白のブラジャーが晒された。  
「白ですか、想像どおりですよ。さて夢にまで見た三神先輩の生乳とご対面といきましょう」  
真鍋は、先程彼に向かって突きつけられていたナイフを取り出すと、ブラジャーの中心部分にあてがう。  
すっと切り裂くと、支えを失ったカップの部分は、はらりと両側に開く。同時に吸い付きたくなるほど魅力的な水蜜桃が、  
男たちの目の前に零れ落ちた。  
 
「うおーーーーーっ!!!」  
 
突如として周りにいた男たちから歓声が上がった。ぎらぎらと目を輝かせ、響子の胸を凝視する。  
「凄い。想像以上ですよ」  
真鍋は本当に感激した様子でため息を吐きながら言った。さらに、響子の胸を批評するかのようにしゃべり続ける。  
「まったく文句のつけようがない、完璧な胸ですね。これだけ大きいのにまるで垂れた様子がない。  
形も素晴らしい。お椀型……いや、この大きさからすれば、丼型ですかね。ふふふ……  
それに、先端の乳輪の色も薄いピンクで理想的ですよ。乳首の大きさも丁度いい。最高級品です」  
 
「ふん。褒めてもらって光栄よ。なにも出ないけどね」  
響子は真鍋の顔を見ながら言う。  
「いえいえ、これだけのものを晒してもらえるだけで、充分ですよ」  
真鍋はそう言いながら、いやらしく響子の胸を見つめる。他の男たちも同様で、熱い視線が彼女の胸に集中していた。  
 
響子は少し恥ずかしくなった。  
かつてここまでの視線を、裸の胸に浴びせられたことはない。行為をする場合も、ほとんどが暗がりだったし、  
当然相手はひとりだった。  
明るい場所。しかも、これだけの人数の男の前で肌を晒すなどというのは、後のも先にもこれが初めての経験だったのだ。  
 
ジュン……  
 
下半身に妖しい疼きを感じた。  
ごく僅かな──ほとんど取るに足らない程の僅かなものだった。  
下着を濡らす、という程のものでもない、本当にささやかなものだ。  
だが、響子の動揺を誘うには充分な疼きでもあった。  
絶対に感じるはずがないと思っていた彼女だけに、この僅かな身体の変調は全く予想外のことだったのだ。  
 
(う、うそ……そんなはずは……)  
まだ、胸を触られているわけでもない。ただ、肌を衆人環視に晒しているというだけのことである。  
こんなことで感じたりするはずがないではないか。  
(気のせいよ。ちょ、ちょっと異常な状況で動揺しているだけ……もう、大丈夫よ)  
響子は必死になって、冷静さを保とうとした。  
 
だが、僅かとは言え彼女が感じたことは揺るぎない事実だった。  
 
“アリの穿った穴からでも堤防は決壊することがある”  
 
それは絶対に破られるはずのない城壁が、もろく崩壊していく序曲でもあった。  
 
 
4  
 
ぎらぎらした男の視線──十六もの瞳が、ただ彼女の胸だけに集中している。  
気丈な響子も羞恥に耐えられなくなり、思わず目を伏せた。同時に全身を火照りのようなものが、包み込んでくる。  
(な、なにこれ……?)  
 
今まで感じたことのないものだった。男に愛撫されて得る快感とは全く違う別次元のもの。  
どちらかと言えば、初めて男性の前に身体を開いた時に感じたものと近いような気がした。  
しかし、それとも少し違う。なんだこの感覚は……  
 
「おや? 先輩らしくありませんね。顔を背けるなんて……恥ずかしいんですか?」  
恥ずかしい──確かにそのとおりだ。だが、だからと言って感じるはずなどない。  
「あれあれ? 触ってもいないのに乳首が立ってきましたよ。ふふふ、見られて感じるなんて、先輩変態ですか?」  
 
(違う、感じてなんかいない……なにかの間違いよ)  
響子は心の中で否定した。だが、事実彼女の乳首は痛いほどに充血し、ぷっくりと前に突き出している。  
感じているのは誰の目にも明らかだった。  
 
「ふふ、じゃあ、そろそろ生乳の感触を楽しませてもらいましょうか」  
真鍋はいやらしい手つきで、響子の乳房へと手を伸ばしてくる。  
「ひっ!」  
胸に手の感触を感じ、思わず上ずった声を上げる響子。脳天を電流のような快感が走りぬける。  
信じられないことだが、乳房全体が性感帯にでもなったような敏感さなのだ。  
 
「どうしました? 可愛らしい声をあげちゃって……くくく、まるで処女みたいですよ」  
そんな真鍋の言葉にも反論ができない。悔しげに唇を噛み締めるだけだ。  
真鍋の手が執拗に彼女の乳房を揉みしだいていく。下から上へゆっくりと……  
 
やがて、響子の口から「あふン……ああン……」という甘い吐息が洩れ始めた。  
乳房全体が桜色に染まり、膝がガクガクと震えだしている。  
「おいおい、刑事さん。偉そうに言ってたが、感じてるんじゃないのか?」  
「バ、バカな……そんなことあるわけ……あふっ……ンン……」  
長内の言葉を懸命に否定する響子。とは言え快感が全身を痺れさせているのは事実だ。  
股間からは信じられないことに、いやらしい蜜が溢れ出そうとしている。このままではショーツどころか  
スラックスをも濡らしかねない状態である。  
 
そんな響子の状態を知ってか知らずか、真鍋は彼女の耳元でこう囁く。  
「ふふふ、せいぜい頑張ってください。しかし、いい揉み心地ですね。柔らかくて肌に張りがある。本当に芸術品ですよ」  
そう言いながら乳房を揉み嬲る手を、今度は乳首の方へと移動させ、硬くしこったそれを思い切り摘み上げた。  
「ひぎぃぃぃ!!」  
敏感になっていた乳首を乱暴に摘ままれ、響子は情けない悲鳴を上げる。  
 
「くくく、三神響子のこんな情けない悲鳴が聞けるなんて。生きててよかったです」  
「くっ……真鍋……覚えてらっしゃいよ」  
甘い官能に包まれながらもなんとか正気を保ち、気丈に裏切り者の部下を睨みつける響子。  
これ以上、こいつらに無様な姿を見せるわけにはいかない。耐えなければ……  
 
「いいですね、その顔、その目つき。それでこそ三神響子ですよ。ひひひ、そろそろ下の方も責めて差し上げますよ」  
真鍋はそう言うと、響子のスラックスへと手を掛けた。  
「ちょ、ま、待って! 何をするの!!」  
「どうしました? 何を焦ってるんですか。脱がせるに決まってるでしょう」  
 
ダメだ。響子は思った。  
すでに股間からは淫らな液が溢れ返り、ショーツを濡らしてしまっている。  
こんな状態を見られれば、感じているのが丸わかりだ。それだけは避けたい。  
だが、四肢を拘束されている状態では、いくら身体をくねらせ抗ってみたところで、無駄な抵抗である。  
 
スラックスは足首までおろされ、ブラジャーとお揃いの純白のショーツが男たちの前に晒された。  
「おやぁ〜」真鍋は淫猥な笑みを浮かべる。「ここんとこ凄く濡れてませんか?」  
そう言うと跪いた状態でクロッチの部分を凝視し、左手をそこへあてがっていく。  
 
「いや、やめ……」  
股間にあてがった指先を離し、ニヤリと笑う真鍋。  
今度はショーツの上からではなく、中へと侵入させ響子の秘裂を探り始めた。  
「はうっ……ダメ!!」  
女唇からはかなりの量の蜜が溢れている。しかも、こうして嬲られることによって、さらに大量に  
流れ出てくるようだった。  
 
「ひゃひゃひゃ。なんですか、ドロドロですよ」  
真鍋は濡れそぼった己の指先を響子の眼前に突き出し、嘲笑を浴びせる。そして、彼女左耳へ口をつけ、  
甘く囁くのだ。  
 
「いやらしい女ですね。先輩は、裸を見られて興奮してるんですよ。ふふ、そういうのをなんていうか知ってますか?  
露出狂っていうんですよ」  
「なにを……バカなこと……」  
「想像してごらんなさい。この恥ずかしい姿を写真に撮られて、ネットで晒されてるところを……  
写真が警視庁内にばら撒かれて、顔見知りの人間にまで見られることを……」  
「や、やめて……」  
 
「ほらほら、そう言ってる間にも、またいやらしい蜜が溢れてきてるじゃないですか」  
真鍋は再び左手を彼女の股間にしのばせた。秘裂をかき回しながら囁く。  
「おまえは変態なんだよ。恥ずかしい姿を見られて感じる露出狂のマゾなんだ」  
「そんな……そんなことない……」  
頭を振り必死になって否定する響子。しかし、息は乱れ身体の火照りは増すばかりである。  
 
「三神響子のマン毛を拝見といきましょう」  
真鍋はショーツに手を掛けると、ゆっくりとずり下げていった。  
「はうっン……ダメ……やめてぇ」  
一気に下げられれば逆に開き直ることもできたかもしれない。  
しかし、生殺しのようにゆっくりと下げられることによって、彼女の羞恥はさらに高まっていく。  
同時に興奮も高まり、脳みそが蕩けてしまいそうになるような快感が、全身を襲ってくる。  
 
ついに響子の股間を隠していたショーツがひざ下まで下げられた。  
豊満なバストは晒され、下半身丸出しの状態である。しかもひざの途中で止まっているショーツが、  
さらにいやらしさを増していた。  
周りで彼女を見つめる男どもも興奮を隠せず、ハアハアと息を激しくしている。  
 
そんな男たちの視線を感じると、響子はよけいに羞恥を覚え身体が火照ってくるのだ。  
(もう……いや……助けて……)  
絶対に感じることはないと思っていた彼女だけに、ここまで己の牝の部分を見せつけられ、  
かなり気弱になっていた。  
 
 
5  
 
「長内さん、そろそろ出番ですよ。黄金の指先でこの変態女の胸を揉みまくってやってください。  
さあ、先輩。どこまで耐えられるか見ものですよ。くくく……」  
その言葉が終わるか終わらないうちに、背中の方から長内の両手がバストを包み込み、揉み嬲り始めた。  
 
「はあン……」  
響子は思わず甘い吐息を漏らしてしまう。  
確かに真鍋が“黄金の指先”と言ったとおり、長内の手の動きは今まで経験したどんな責めとも比べられない程、  
淫靡な快感を響子に与え始めていた。むろん、性感がここまで高まっているからこそなのだろうが、  
いくら堪えようとしても洩れる喘ぎを止めることが出来ないくらいだった。  
 
ダメ……感じてはダメ……でも……でも……  
全身から力が抜け、ただされるがままに身をまかせる響子。ついにはいやらしく腰をくねらせ始めてしまう。  
「ああン……いやぁ……も、もう、やめ……」  
 
「うひひひ、刑事さんよ。いいおっぱいじゃねぇか。掌に吸い付いてくる感じだぜ。ほら、気持ちいいだろうが、  
いいならいいではっきりそういいなよ」  
長内はそう耳元で囁いてくる。  
響子は思わず「いい……気持ちいい、堪らない……」と口にしてしまうところだった。  
だが、次の瞬間彼女は理性を取り戻した。自分を狙って撮影をしているビデオカメラの存在に気づいたからだ。  
 
「あふっ……なに……こんなところを撮らないでぇ」  
「ありゃりゃ、気づいちゃいましたか。まあいいじゃないですか、かの女傑“三神響子”がそのでかいおっぱいを  
揉みまくられて昇天する姿。きっと課の連中も見たいと思うんですよねぇ」  
「そ、そんなことをしたらあなただってただじゃすまないわよ。犯人の一味だって言ってるようなものじゃない!」  
 
「もちろん、僕の映っているところは編集しますよ。幸い僕と先輩がここにいることは誰も知らないことですからね。  
保安課宛に郵送しちゃいましょうか?」  
そんなことをされれば、顔見知りの連中にこの恥ずべき姿を晒すことになる。  
プライドの高い響子にとっては死にも勝る屈辱だ。  
 
「先輩のファンは多いですからね。コピーされて警視庁内の職員全員が見ることになるでしょうね。  
なんたって“三神響子”の本番ビデオですからね」  
「ほ、本番……って……」  
「なに言ってるんです。おっぱい揉まれて終わりのはずないでしょうが。これから、ここにいる全員の  
相手をしてもらいますよ」  
 
そんな……八人もの男に凌辱されるなんて……  
しかし、弱音を吐くと真鍋たちの思う壺だと考え、なんとか理性を保ちつつ精一杯の強がりを言う。  
「じょ、上等よ……でもあんたたちにわたしを満足させられるかしら……」  
「ひゃっひゃっひゃ。胸揉まれただけで感じまくってる女がよく言いますね。その減らず口が叩けなくなる程、  
目一杯可愛がって差し上げますよ」  
 
真鍋は右手に真っ黒いバイブレーターを握りしめ、響子の傍らへと近づく。  
「言いましたよね、僕。そろそろ下の方も責めてあげますよって。ふふふ、胸は長内さんに任せて、  
僕はこっちを可愛がってあげましょう」  
「な……卑怯よ。道具を使うなんて……」  
「バカですか? スポーツやってるわけじゃあるまいし、卑怯もなにもありませんよ」  
バイブが響子の秘裂へと挿入される。充分過ぎるほど濡れていた彼女のその部分は、  
易々とその巨大な黒い塊をくわえ込んでいった。  
 
「はあああああンン……あン、あン……やめ……だめ……もう……あああンン」  
異常な程、敏感になった胸を揉み嬲られるだけでも堪えるのに必死だというのに、その上女の部分に  
これ程の刺激を与えられては、堪ったものではない。理性を保とうとするが、頭の中はしだいに真っ白になっていく。  
 
「どうした、どうした? 俺たちじゃ満足できないんじゃなかったのか?」  
長内は胸をこねくり回しながら言う。しかし、響子にはもうそんな言葉は届いていなかった。  
「はふぅ……もう、もう……」  
信じられない程の快感が全身を襲う。これが……これが本当のエクスタシーというものなのか。  
 
───が、その瞬間、すべての感触が消えた。  
胸を嬲る手の感触も、膣内を蠢くバイブの感触も……  
長内は胸を弄ぶのを止め、真鍋もバイブを引っこ抜いたのだ。  
 
「はひぃ……なんで……あふあン……」  
ここまで官能を高められているというのに、途中で止められてはまさに生殺しというものである。  
「ふふふ、先輩。そろそろ意地を張ってないで素直になったらどうです? イキたいんじゃないですか?」  
「はふっう……そ、そうよ、イキたい……イかせて……」  
 
もうどうでも良かった。とにかくこの身体の疼きを鎮めるためなら、恥も外聞もない。  
「この期に及んでまだ命令口調とはね……最初にいいましたよね。僕は三神響子がおねだりする  
言葉を聞きたいって」  
真鍋は残酷に微笑みながら響子の耳元で囁く。  
 
「い、言えばイかせてくれるの?」  
「もちろん、ちゃんと言えればイかせて差し上げますよ」  
無能とバカにしていた部下に、「イかせて欲しい」などとおねだりの言葉を発することは、僅かに残った  
彼女のプライドが許さなかった。  
 
しかし、今やそんなことを言っている状況ではない。こんな生殺しの状態では気が狂ってしまいそうな程なのだ。  
「お、お願いします……イかせて……イかせて下さい」  
それは響子の精一杯の服従の言葉だった。これ以上の言葉は思い浮かばなかった。  
 
「そうじゃないでしょ。『真鍋さま、いやらしい響子のオマンコを、ごりっぱなオチンコで貫いて下さい』  
ちゃんとこう言ってくれなきゃ」  
真鍋はそう言ってさらに響子を追い詰める。  
 
そんな……いくらなんでもそんな屈辱的な言葉を言えるはずがない。  
響子は唇を噛み締め、悔しげに真鍋の顔を睨みつけた。  
「なんだぁ、その目つきは!? イキたくねぇのか、こら!!」  
真鍋はそれまでのやや慇懃な態度から一変して、乱暴な言葉遣いで響子を怒鳴りつけた  
 
「ご、ごめんなさい……言います、言いますから……」  
響子は真鍋のあまりの豹変振りに思わずそう言った。  
「ま、真鍋さま……いやらしい響子のオ……オマンコを……ごりっぱなオチンコで……つ、貫いて下さい……」  
 
「ひひひ、ついに言っちまったなぁ、響子! お望みどおりズコズコに突きまくってやるよ!!」  
真鍋はそう言うとズボンを下げ、いきり立った剛直を取り出すのだった。  
 
 
 

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