「おっせえ」  
冬の寒空の下、さんざん僕と共に待たされた銀次君が駆け寄ってくる成君に文句を言い放つ、  
「わりぃわりぃ……」  
クリスマスのイルミネーションに飾られた街をこちらに向かって小走りで走りながら、成君は軽く手を合わせて僕らに謝るが、  
銀次君の口撃は続く、  
「大体、この年齢(とし)にもなって、わざわざ野郎の兄弟に郵便でクリスマスプレゼント贈るか?しかも、双子で……  
 はっきり言うが気色悪いぞ」  
銀次君……  
……僕も思ったけど、言えなかった事をあっさりと……  
「仕方ないだろ……母方のじいさんに引き取られた武とは、こんな時しか接点ねえんだし」  
と、成君は肩を落としため息をつき、  
「ほっといても向こうは、送ってくんだから……」  
と小さな声で呟く。  
嫌がっているような顔をしているが、多分嫌がってない。  
肉親の居ない僕にはちょっと羨ましい……  
銀次君にしたって家族はわけ有り、  
当然と言えば、当然だけど場の空気が明らかに重くなる。  
 
「今日のメインイベントはこれからなんだから、  
 もう暗くなっているんだから、急がないとっ!」  
その空気を吹き飛ばすために僕はわざと声を大きく張り上げる。  
まだ成君がリサイクルショップで男物の腕時計を買って、それを送っただけ、  
まだ全員、女性用のプレゼントを選ぶという今日の本来の目的が残っている。  
と、その僕の言葉を聞き、銀次君が  
「じゃっ、俺はこれ以上は用無いから」  
と、呟きこそこそと大きな体を丸めて逃げようとする。  
それを、成君が素早く腕を掴み止めると、  
「そうだっ!!  
 是が非でも、銀次にバースさんへのプレゼントを買わせて、年末の暇な時期、それをネタに銀次をからかわねばっ!!」  
と、拳を握り締め力説する。  
「俺は買わねえっつってるだろっ!!」  
腕を捕まれたまま、銀次君が必死で抵抗している。  
「どうでも良いから、早く行こうよ」  
押し問答になりそうな二人を僕は止め、そのまま先に歩き出す。  
……このまま、つき合ってたら小枝さんにプレゼントを買う時間が無くなるよ……  
 
その後、僕らは各々に予算と相談し、茶化し合いながらそれぞれに買い物を済ませた。  
最後まで銀次君は嫌がっていたが、  
それも照れているだけ、無理やり僕らが買わせたという免罪符が欲しいだけという事は解っているので、僕らもそれに乗って根気よく説得し、ようやく買い物を終え、紙袋を抱えて家に着く頃には、ただでさえ説得に時間を掛けた効率の悪い買い方すっかり暗くなってしまっていた。  
そして、家に着けば着いたで、小枝さんを当日、プレゼントで驚かす為に彼女から隠れるように明らかに女性物の店の紙袋を抱えたまま、自室に駆け込んだ。  
 
「……疲れた」  
と、僕は一人で呟き紙袋をベッドの傍らに置き、着替えもしないままベッドに倒れこむ。  
でも、これでクリスマスイブには小枝さんの笑顔が見られると思うと自然と顔が緩む、  
誰が見ているというわけでもないが、それが何だか気恥ずかしくて僕が布団を頭から被った。  
 
その時、  
コンコン  
とノックの音が扉から聞こえ、心臓が飛び出しそうな程に驚いた僕は飛び起きると、  
慌てて被っていた布団をベッドの傍らの紙袋に掛けて隠し、急いで扉を開けると、  
「正樹様、夕食の準備が出来ましたよ」  
といつもの笑顔で、小枝さんがそこに立っていた。  
僕は別にやましいわけでもないのに高鳴る心臓を抑え、なるべく平常を装い頷くと彼女と一緒に食堂に歩き出した。  
 
 
「クリスマス……とは何でしょうか……」  
そう来たか。  
クリスマスイブ当日、  
夜を待ち切れずに朝食を食べ終わると、すぐに小枝さんに紙袋を差し出した僕に小枝さんがきょとんとした顔で聞き返してくる。  
あれから数日、プレゼントの事がばれないように最新の注意払って生活してた僕が馬鹿みたいじゃないか……  
そもそも、クリスマスを知らないんだから紙袋が見つかってもプレゼントに結び付かないじゃないか……  
 
「……どうかなさいましたか?」  
ここ数日の疲れがどっと出てうなだれる僕に心配そうに小枝さんが声を掛けてくれる。  
「…いや、別に良いいよ……」  
よく考えれば、僕自身おじいちゃんとクリスマスを祝った事ないんだし、  
そのおじいちゃんが小枝さんに基本的な知識を入れているんだから仕方ないよね。  
僕は気を取り直すと、  
「取り敢えず、それ開けてみてよ」  
僕は彼女に紙袋を押し付けるように渡すと開けるように促す。  
 
「洋服…」  
袋を開けた小枝さんが静かな驚きの声をあげる。  
「僕が選んだから、センスは悪いかも知れないけど……  
 その…出来れば着て欲しいなって……」  
その時、僕は心無しか嬉しそうな小枝さんの表情を直視出来ず、うつむいたまま、照れ隠しの言葉を詰まりながら呟いていた。  
 
「着てみてよ」  
照れ隠しにぶつぶつと独り言を呟いていた僕は、当然の欲求として、彼女がその服を着ているところが見たくなった。  
小枝は普段来ているメイド服を3着しか持ってない。  
…もっとも、それに関してはクリスマスでプレゼントを選ぶまで、全く失念してた僕が悪いのかも知れないけど……  
ともあれ、せっかくプレゼントしたんだし、着て欲しくなるのは人情だが、  
「これから午前中の内にお掃除や庭のお手入れをしたいので、せっかく頂いたのに汚してしまいます」  
と、あっさり断られてしまった……  
 
確かに、掃除や庭の手入れならほこりや土で汚れてまうから仕方ない。  
なら……僕は  
「じゃあ」  
と切り出し、  
「僕も手伝うから、午後から一緒に買い物につき合ってくれないかな?」  
と提案する。  
もっとも、この提案は殆どお願いだ。  
一刻も早く彼女が僕の選んだ服を身につけてくれるのが楽しみだというのもあるが、  
彼女へのプレゼントで頭がいっぱいで、うちにクリスマスという風習が今までなかった事を失念してた程に浮かれていた僕は、  
当然、クリスマスの準備、ケーキやツリーなどの準備をすっかり忘れていた。  
……本音は、実はこっちの準備を手伝って欲しいわけだ……  
 
それに、  
「買い物ってクリスマスの準備だから、買い物しながらクリスマスについて説明したいし」  
 
「…私に持たせてくだされれば」  
「それは駄目」  
僕は片手をケーキの箱に塞がれ、  
更に組み立てキットのクリスマスツリーを抱え難儀している僕を心配して、  
口から瓶が突き出たビニール袋を持った小枝さん片手で器用に鍵を取り出しながら玄関の鍵を開けかけてくれた言葉に即答する。  
……だって、せっかく小枝さんが普段と違う服を着ているのに荷物で隠れたらもったいない。  
 
腕時計は4時を少しまわったところ、  
僕たちは食事の後、掃除を二人で片付け……  
と言っても毎日、小枝さんがきちんと掃除しているため大した手間なく終わり、  
昼食を食べてすぐに二人で買い物をし、今帰宅したところだ。  
 
「出来合いの料理は食べて欲しくないのですが」  
家に入り居間でツリーを組み立て始めた僕の耳にキッチンから、自分の持ったビニール袋からスーパーで買った出来合い鳥の腿肉などの料理を出し温め直す小枝さんの言葉が聞こえる。  
「仕方ないじゃないか、小枝さんは和食しか作れないんだから」  
その声に僕はツリーを組み立てる手を休めずに答え、  
「それより、着替えないでよ」  
と続ける。  
「どうしてですか?」  
レンジに料理を入れ、シャンペンの瓶とグラスを二つ持ってこちらに来た小枝さんが小首をかしげて質問する。  
僕は、小枝さんがテーブルに瓶をグラスを置いたのを確認してから、  
ツリーを組み立てる手を休めて、その問いに答えるために立ち上がる。  
 
「こうするからだよ」  
僕は小枝さんを後ろから抱きすくめて、彼女の耳を甘噛みする。  
「きゃっ…あん」  
小枝さんが驚いた声と続けて甘い声をあげる。  
「たまには、いつもと違う服でしようよ」  
 
抱きついた時は、ちょっとした悪戯で驚かすだけのつもりで、  
本番はちゃんと食事の後、雰囲気を作って……と僕は考えていたはずっだけど……  
小枝さんを後ろから抱き、  
彼女の香り、体温(というべきなのか解らないけど)、  
なにより、いつものメイド服よりも厚いセーターに彼女の柔らかい体を隔てられたもどかしさから来る焦燥感を感じた僕は、その行動を悪戯だけで済ませられなくなってしまった。  
……つまり  
「……したくなっちゃったんだけど……」  
僕は彼女の耳にわざと息を吹きかけながら呟く。  
「正樹様、駄目…ですよ…んっ  
 レンジに入れた料…理が冷めてし……あんっ」  
僕は僕の腕の中に抱きすくめられ耳への刺激に耐えながらの小枝さんの制止の言葉を僕は彼女の首筋へ舌を這わせて遮り、  
指でセーターの上から小枝さんの体をまさぐっていく。  
 
僕の手は肩口から二の腕、腕から脇腹を、  
セーターの堅さの下にある小枝さんの柔らかさを確認するためにやや強く撫で、小枝さんの息を序々に荒くしながら、  
「っん……」  
下がって行き。  
腰までたどり着いた僕の手は、厚めの生地で出来たスカートの上から彼女の腰の丸みを撫でて楽しむと、  
服の下から手をすべりこませ、彼女の形の良い釣鐘型の胸を、その手応えを楽しみながらブラジャーの上から揉む。  
 
僕が手の中で形を自在に変えながらも、どう形を変えてもその弾性で指を押し返す胸の感触を味わうように揉みしだくと、  
その先端が硬くなってくる。  
「はぁうん……正樹様…」  
それに伴い、小枝さんの体から力が抜け僕に甘えるように寄り掛かってくる。  
 
……しかし、小枝さんは少し重い。  
そして、情けないことに僕の腕力はそれを支えるには少し足りない。  
一歩、二歩と僕は後ずさり、  
そのまま、すとんとお尻から倒れてしまう。  
「あっ、正樹様っ!!済みませんっ!!」  
僕と一緒に倒れた事で、正気づいた小枝さんが腕で支え上体を支え、尻餅をついたままの僕の顔を覗き込み心配してくれる。  
けど、今はそれよりも、  
僕は、丁度目の前に来た小枝さんの唇に自分の唇を重ね、  
「きゃっ」  
驚き、目を丸くする小枝さんに、  
「服も違うんだし、今日はいつもと違って小枝さんの方が上でやってみようか?」  
と片手で軽く彼女の腕をひきながら提案すると、  
腕をひかれている方向、今の体制などから即座に意味を悟った小枝さんは、一瞬悩んだのか僕のひく力に抵抗し、その場に留まろうとしたが、  
すぐに、僕の導くままに僕に跨る形で多いがかぶさる姿勢となる。  
 
「失礼します」  
僕に跨り膝立になった小枝さんがぽつりと呟き、言われるでなくスカートを自分でまくり上げる。  
そのスカートをまくり上げたのが恥ずかしいのか、  
それとも、この姿勢では彼女の方から入れなければならいことが恥ずかしいのか、  
頬を朱に染めうつ向いてる。  
もっとも、うつ向いても下から見上げる僕には丸見えなんだけどね……  
 
僕は、その彼女の様子が可愛くてもう少しいじめてみたくなり、  
「少し胸をさわっただけで、もう濡れているね」  
と、指で下着の上から微かに湿った彼女のそこを指でなぞりながら、わざと彼女の耳に届くように声を出す。  
「だって……気持ち良かったんですから……」  
益々、顔を赤くした小枝さんは聞こえるか聞こえないかの小さな声で呟く。  
「胸、好きだもんね」  
調子に乗った僕はそう言いながら手を伸ばし、彼女の胸を服の上からさすってやる。  
 
「あっ…うん」  
インターバルが入ってしまったとはいえ、  
まだ、先ほどの愛撫の余韻を残す固い先端を転がすように刺激する僕の手の動きに小枝さんが再び、甘い声を漏らし始め、  
「…仕方ない…じゃ…ないですか……正樹様の手なのですから……」  
と喘ぎ声の間に苦しそうに言葉を紡ぐ。  
 
耳まで真っ赤にして、そう言ってくれる小枝さんに僕は感極まるものを感じ、  
小枝さんが可愛いからこのまま、もう少しいじめようかな?  
との思ってた考えも見事に吹き飛んでしまった。  
僕は彼女を引き寄せ、肩を抱き唇を重ねると片手でズボンのチャックをさげ僕自身を取り出し、彼女の下着を下ろそうと手をかけると、  
小枝さんは、スカートの端をくわえまくり上げたまま、  
自由になった手で自ら、下着を少し脱ぎ下ろすと僕のものに手を添え自らの大切なところに導いた。  
 
途中から、黙って見ていた僕は、柔らかな濡れたその部分に僕のものが包まれると、  
「うゎあ……小枝さん…」  
思わず、上擦った声を上げてしまった。  
いつもよりも、小枝さんの重さがかかっている為だろうかいつもよりも縦に押される圧迫感が強い。  
僕は、その圧迫感に耐えながら、  
「じゃあ…動こうか?」  
と、提案というより宣言をし、彼女の躯を肩と腰で固定して下から突き上げる。  
「くぅ…うぅん、小枝さん…ぅん」  
僕は自分の腰が固い床に当たるのも気にせずに動きを繰り返し、  
「あぁ…あんっ……正樹様っ」  
小枝さんも、僕の動きに併せ、応え、躯を上下に揺すってくれている。  
 
抜き差しされる彼女のなかで僕のものが一層、痛い程に膨らむのを感じる。  
そして、  
「小枝さん…愛…してます」  
「わ…私もですよ…正…あんっ…樹様ん」  
自然に、律動に押し流されるように感情が言葉として流れ出し、  
互いの躯を抱き締め合いながら、  
僕らは達した。  
 
 
ー・ー・ー・エピローグ・ー・ー・ー  
 
「……こんなはずでは」  
後ろにトホホと効果文字がにドーンと出て涙を流した人面像が出てきそうな言葉を呟くと、  
僕は目の前のケーキをつつきながらため息をついた。  
僕の向かいには小枝さんが『メイド服』姿で同じくケーキを食べ、座っている。  
夢中になってした行為で、達した僕は彼女に贈ったスカートを汚してしまい彼女はメイド服に着替えたわけだけど、  
全面的に僕が悪いとはいえ、せっかく洋服をプレゼントしたのに、いつものメイド服も小枝さんが戻ってしまうと少し寂しい。  
 
「どうかなさいましたか?」  
僕の顔を見てケーキを食べる手を止めた小枝さんが掛けてくれた言葉に、僕は  
「ん?いや別になんでもないよ」  
と笑顔で答え、ケーキを一口頬張り、決心した。  
明日はまた小枝さんの服を買ってきて贈ろうっ!!と  
そう思い付くと、  
逆に今度は頬が勝手に緩んでくるのを僕は必死で抑えると、残っているケーキの平らげた。  
 

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