夏の日差しが眩しいある晴れた日の午後。  
真理子はようやく慣れてきた道のりを急いでいた。  
ポプラ並木から漏れる日差しが強く、彼女は目元に手をかざしながら、見えてきた白壁の校舎に目を細めた。  
肩からかけたカバンが肩に食い込むのを感じて、真理子はそれを担ぎなおした。  
白いシャツに映える赤いカバンは、中のいくつかの本の形を浮き彫らせるほどに膨れていて、それを他人が見たなら、彼女が教師だとわかっていなければ、その異様なまでの数に、目を見張ることだろう。  
 
レンガ造りの門をくぐり、慣れた調子で声をかけてくる守衛に挨拶をし、白い校舎へと入った。  
上品な外観とは裏腹に、コンクリートで打ち付けられたやや冷たく無機質な感じのする校舎内は、ひんやりとした空気を保っていて、火照った身体に気持ちが良い。  
少し歩く速度を緩め、その空気を大きく吸い込んだ。  
テスト期間中だけあって、生徒の影は皆無だ。  
さすが進学校、テスト期間中は、部活動はどこも自粛しているらしい。  
いつもは騒々しいばかりの廊下も、今日は砂が落ちる音さえ聞こえそうなほど静まり返っていた。  
真理子は、再び足を速めて、職員室ではなく、資料室へと足を向けた。  
―――少しでも、こういうときに、やっておかなくっちゃね。  
次から教える予定の、新しい作品の検討と、その資料を、早く作り上げてしまいたかったのだ。  
テストを終えて、その後の消化的意味が強い授業を2週間も終えれば、待ちに待った夏休み、である。  
真理子にとっては、社会人になって初めての休息期間といっても過言ではなかった。  
 
この春から晴れて教師になった真理子だが、日々是勉強で、教師という自覚はない。  
何しろつい数ヶ月前まで自分も学生だったのだ、絶対的な経験不足ゆえ、毎日学ぶことは多くとも、自分が他人にきちんと教えることが出来ているという自信はない。  
テスト期間中で授業がないとはいえ、気持ちの上ではまったく余裕がなかった。  
古文という比較的女性が得意とする叙情的な分野を学んだ真理子であったが、学問にばかりのめりこんだためか、はたまた男性という分野が少々苦手だったためか、現在恋人はいない。  
憧れていた先輩と一時付き合ったことはあったが、1度セックスをして終わってしまった。  
要はやりにげ、というやつだろうか。  
真理子自身、それがショックで一時は男性不信にも陥ったが、それでもまあ、どうにか現在はやや苦手というぐらいにまで回復した。  
そもそも、学校には、生徒の半数以上男子がいるのである。  
苦手では済まされない。  
真理子はどうにか自分を誤魔化し、なだめて、鼓舞しつつ、生徒を男と意識しないそぶりを確立してきたのであった。  
 
少し狭めな資料室は、相変わらず本で埋まっていて、ひんやりした空気の中に、古い本独特の少しほこりくさいようなにおいが混じっている。  
でも、真理子はこのにおいが嫌いではない。かぎなれたにおいだ。  
安堵の表情を浮かべて、大きく息をつく。  
「さ、やりますか」  
真理子は重いカバンをテーブルの上にどさっと置くと、簡単なパイプ椅子に腰をかけた。  
 
どのくらいたっただろうか、まだ窓からの日差しが長くなってはいない頃、真理子はふと顔を上げた。  
足音がしたような気がした。  
耳を澄ませてみる。  
だが、何の音もしない。  
今日みたいなテストの谷間の週末に、学校へ来る奇特な生徒もいるわけがないし、教師もほとんど来てはいなさそうだった。  
ここへ来るまでに、誰にも会わなかったし、コの字型に建っている校舎で、この資料室と職員室はちょうど真向かいにあたる。  
つまり、一番遠い場所だ。  
玄関からも門からも遠いここに、同じ国語教師でさえも、そうそう来ない。  
―――気のせい、ね。  
真理子は再び手元の本に目を落としてページをめくった。  
すると。  
カラ…ッ。  
かすかに引き戸が開く音がして、真理子はびくっとして顔を上げた。  
肩ほどの高さがある本棚の向こうの入り口から、見たことのある顔がのぞいた。  
その彼が、かすかに笑みを見せた。  
真理子も思わず止めていた息をほぅっ、と吐くと、呟いた。  
「…赤坂くん」  
赤坂くん、と呼ばれた彼は、少し照れた微笑を浮かべながら、真理子に近づいてきた。  
 
赤坂 博人(ひろと)は、真理子のクラスの生徒である。  
まだ担任を持って数ヶ月なので、生徒全員をきちんと把握しているわけではないが、この赤坂博人はかなり見知った方だった。  
というのも、彼は名前の順で、出席番号が1番のため、何かと教師側から任されがちなのと、真理子にとってはコンプレックスに近い数学の成績が、学年でトップクラス、という理由ゆえだった。  
「先生、これってどういう意味ですか?」  
口下手が多い理系の生徒特有のややぶっきらぼうな口調と、照れ隠しのためか無表情に近い表情で、真理子に質問してくるその姿からは、頭脳明晰な学校期待の生徒の一人にはとても見えなかった。  
何度か質問してくることはあっても、特に雑談を交わすわけでもなく、質問を終えるとさっさと席に戻ってしまう彼に対して、真理子は、存在そのものは認識していても、特に何の関心も持っていなかった。  
あるとすれば、その優れた頭の中は、どんなふうに物事を捉えているのか、ということぐらいだったろうか。  
 
博人は少し微笑を浮かべて、本棚を回り、真理子のいるテーブルへと近づいてきた。  
「赤坂くん、どうしたの?こんな日に…忘れ物?」  
真理子は内心動揺していたが、それでも顔には出さないよう努めて平静を装い言った。  
博人は軽く首を振って、肩をすくめた。  
「いや。テスト、もうやることないから、暇でさ。だから、図書室に来てみたんだ。そしたら、先生が来るの、見えたから」  
博人が言うように、明日は彼の得意な数学のテストが2科目ある。  
やることがないという言い草は傲慢にも思えるが、彼が言うと、不思議とそうは聞こえない。  
今までの成績を知っているからだろうか。  
真理子は間近に来た彼の背の高さに少々驚き、その圧迫感を誤魔化すために、椅子から立ち上がった。  
「そ、そう。でも、何事も、油断は禁物よ。特に受験生のときは、準備しすぎて困ることはないわ」  
真理子が立ち上がったのと同時に、彼がまた一歩、足を進めて近づいた。  
真理子は少し背中をそらせると、さりげなく椅子を間に入れた。  
「な、なに?」  
「先生、何してるの?」  
動揺が態度に出そうになっている真理子とは反対に、博人はのんびりした口調でテーブルを覗き込む。  
「あ、ダメよ。テスト後にやる授業の資料なんだから」  
真理子は慌てて机の上の原稿用紙を裏返した。  
「へえ。ちょっと見せてよ」  
真理子の手元から、博人は紙を抜き取ろうとする。  
「ダメったら!あっ、ちょっと!」  
「いただき」  
博人は原稿の1枚を手にすると、すぐさま一歩下がった。  
「ふうん、今度は源氏物語、かぁ」  
「こら!返して!」  
慌てて椅子をよけて、博人に手を伸ばす。  
博人はにやにやしながら、紙を頭上高く持ち上げた。  
背の高い彼に腕を伸ばされてしまうと、真理子にはまったく届かない。  
「返しなさい、ほら!」  
思わず身体を寄せて手を伸ばしたとたん、真理子は彼の腕に強く腰を引き寄せられた。  
「あっ!」  
声を上げて博人の胸にぶつかるようにして抱き寄せられる。  
原稿用紙がはらり、と蝶のように舞った。  
「ちょ、ちょっと、なにする…!」  
「先生、いい匂いがするね」  
博人が低く囁いて、思わず真理子が顔を上げると、彼は今までみたこともない大人びた意地の悪い笑みを浮かべて、真理子を見下ろしていた。  
 
真理子は動揺し、困惑した。  
「は、離して…!」  
力いっぱい彼を押しのけようと腕を突っ張らせたが、びくともしない。  
強い彼の腕がますます真理子を締め上げ、彼女は一瞬息を止めた。  
「はっ、…!」  
抵抗が一瞬やんだ彼女とすぐさま体勢を入れ替えて、博人は真理子を壁に押し付けた。  
「先生、いっつもブラウス、白だよね。しかも、こういう堅苦しいやつで、開襟も着ないしさ。なんで?」  
混乱して動揺している真理子の手首を握って壁に押し付けると、博人は真理子の耳元に呟いた。  
その口調は、いつもの真面目で不器用そうな彼の口調ではない。軽々しく、女と話し慣れた声だ。  
真理子は混乱した。  
「ちょ、やだっ…!やめて!」  
彼の吐息が耳元に感じられて、真理子は真っ赤になって顔を振った。  
こんな間近で「男」を感じるのは、久方ぶりだった。  
いつもとまったく態度が違うとはいえ、相手は自分のクラスの生徒だ。  
まだまだ子供だと思っていた生徒から、一瞬でも「男」を感じた自分を真理子は恥じた。  
腕を外そうとするが、石で固められたように手首は動かない。  
真理子はその力の差に恐怖を覚えた。  
「やだ、離して!」  
顔を激しく振って抵抗する真理子をあざ笑うかのように、博人は楽々と彼女の膝の間に太ももを割り込ませると、足でタイトスカートを押し上げた。  
「やっ…!」  
思わず真理子が脚を閉じようとするが、思っていた以上にがっちりした彼の脚は、真理子の脚を跳ね返しそうなくらいに硬かった。  
真理子の脚の抵抗をものともせず、ますますスカートをめくり上げていく。  
「スカートも、きっちり膝丈でさー。もうちょっと色っぽいの、はけばいいのに」  
混乱しきっている真理子とは裏腹に、博人の口調はどこかからかい気味で、余裕があった。  
太ももあたりまでスカートが寄せ上げられ、太ももは彼の脚で開かれている。  
真理子は全身で抵抗した。  
「やだ、やめて、離しなさい!」  
「…分かったよ」  
博人は真理子の手を離した。  
脚を割り入れられた体勢でいきなり手を離されたため、上半身の支えをなくした真理子の身体が前にのめった。  
その動きを利用して、博人は真理子を床に押し倒した。  
 
「あっ!」  
声を上げた真理子の上に、博人はすばやく覆いかぶさった。  
「やめて!人を呼ぶわよ!」  
混乱しつつも精一杯威厳のある声を出そうと努力している真理子を見下ろしながら、博人は再び意地悪い笑みを浮かべた。  
「どうせ誰も来ないよ。こんな場所じゃね」  
そう呟くと、彼を押しやろうとする真理子の両手を捉えて片手で掴むと、頭上に持ち上げた。  
 
嫌がる真理子の華奢な腰の上に馬乗りになり、彼女の両手首を片手で押さえつつ、博人は真理子の白いブラウスの上から、盛り上がる乳房をいきなり掴んだ。  
「あっ!」  
真理子が思わず顔をそむけた。  
「いっつも思ってたんだけど、先生って、けっこう胸でかいよね」  
わしゃ、わしゃと衣擦れの音がして、博人の掌が大きく円を描く。  
真理子は掴まれた乳房の布越しに感じる彼の手の大きさと熱さ、指の強さに、恐怖を感じた。  
そして、指で押されている乳房の先端から、徐々に湧き上がる何だかわからない不穏な感覚にも。  
真理子が小さく叫んだ。  
「お願い、離して!もうやめて…!」  
「やっぱでかいよ。先生のおっぱい。すげー柔らかい」  
博人は片手に余る乳房に、満足そうなため声を漏らした。  
そして、揉むだけでは足りなくなったのか、ブラウスのボタンを乱暴に外し始めた。  
「だめ、だめ!」  
真理子は脚をばたつかせて抵抗するが、腰から上は押さえられているので、抵抗にはなっていない。  
彼の手があっさりブラウスを開け、白いブラをあらわにした。  
「やっぱり、白なんだ」  
納得した声で博人が呟き、乱暴にブラを押し上げた。  
「ああっダメっ!」  
真理子は手を伸ばそうとした。  
だが、やはり押さえられたままの手首は、動かなかった。  
あっさりと白いブラは彼女の喉元に寄せ上げられ、レースの白さに負けないくらいの白い乳房が柔らかく跳ねた。  
押し上げられたブラで真理子は一瞬視界をさえぎられ、すぐさま乳房の先端に熱い刺激を感じて、思わず声を上げた。  
「ああっ!」  
博人が乳首を吸っていた。  
口の中にそれを含んで、舌で嘗め回してくる。  
その状況、唾液の感触、口の中の熱さに、真理子は鳥肌を立てた。  
「や、やだ、いや、やめて!」  
切羽詰った声を上げる真理子に、博人は乳首を舐めながら、にやりとして囁いた。  
「先生、乳首、尖ってるよ。ほら」  
指先で軽くはじかれ、真理子は背中をびくん、とのけぞらせた。  
「はあっ…!」  
「こんなになってる。感じてるんでしょ?」  
さらに指でつままれて、真理子は頭の中に鋭い刺激が走り抜けていくのを感じた。  
「ああっ!」  
真理子は顔をそむけたまま、小さく叫んだ。  
「いや、やめて…やめて…!」  
博人は真理子の声など気にせずに、また乳首を口に含んだ。  
「あ、ああ…!」  
真理子はぎゅっと目を閉じて、悲鳴を上げた。彼の舌が、乳首だけでなく乳房全体にも這った。  
真理子の肌がざわめいた。  
しかし真理子は、気づいていなかった。  
自分の声が、ごくわずかではあるが、恐怖とは違う色を、徐々に含みつつあることに―――。  
 
手首を掴んでいた彼の手が離れ、真理子はすぐさま彼の身体を押しやろうと彼の肩と喉元に手を突いた。  
だが、彼がよけるように背を反らせたため、真理子の手は押しやるまで出来ず、代わりに彼の手は真理子の下腹部へと移動した。  
博人の手が、むき出しになっている柔らかい生地を掴み、引きおろした。  
「やあ!」  
真理子は脚をばたつかせたが、博人はあっけなく下着を剥ぎ取り、彼女の大事な場所へ手を差し込んだ。  
「あ、ああっ!」  
真理子は思わず喉をのけぞらせた。  
恐怖に支配された中で、鋭く強い刺激が、腰から背中を通って、感じたこともない感覚を引き寄せる。  
「へえ」  
博人は声を上げた。  
「先生、濡れてるよ?これって、かなり感じてる証拠だよね。ほら」  
博人の手が動いたとたん、くちゅ、くちゅ、と濡れた音がした。  
「やだ、やめて!もうやめて…!」  
真理子は真っ赤になって首を激しく振り、太ももで彼の手を挟んだ。  
だが、真理子の手に挟まれたままでも、彼の指先は難なく襞を往復してきて、真理子は声を上げた。  
愛液が絡んだ彼の指先が滑らかに動くたびに、感じたことのない感覚が、そこから全身に広がる。  
かつて初めて抱かれたとき、ろくに愛撫もされずに挿入されたので、痛みだけしか感じ得ず、こんな感覚は知らなかった。  
こんな、身体の芯が熱くなるような感覚は―――。  
拒絶したいはずの心は未知の感覚に翻弄され、真理子は、自分が何を言って、何を感じているのか、何をされて、何をしたいのか、分からなくなってきた。  
「先生のここ、もう濡れ濡れ」  
博人が興奮しきった声で言いながら、愛液が溢れていることを真理子にもわからせるためか、わざと音をたてて指を動かす。  
自分のその状況に、真理子はショックを受けた。  
自分でも信じられないほど、濡れている。  
「も…もうやめて…!」  
「俺、先生と、一回でいいから、やってみたかったんだよね。先生が来たときから、ずっと」  
真理子の言葉を無視しながら、実感のこもった声で博人が言い、ぬめる襞を掻き分けながら、入り口を探した。  
「質問しにいったりさ、授業受けながらさ、先生のおっぱいとかさ、こことかさ、どんなだろうっていつも思ってたんだよね」  
「やだ、もういや、やめて…!!」  
真理子は涙を流しながら、叫んだ。  
「お願い、やめて…!」  
真理子はとにかく、この状況から逃げだしたくてたまらなかった。  
何もかもが不安だった。  
彼にされていることも恐いが、こんなことをされてすら濡れている自分がこれからどうなってしまうのか、予測不可能だった。  
 
だが、真理子の懇願を無視して、博人は目的の場所を見つけると、すぐさま中指を押し込んだ。  
「ああああっ!」  
真理子は大きく背中をのけぞらせた。  
あまりに大きな刺激が全身を貫いて、真理子は自分でも驚くほどに高い声を上げていた。  
「うわ、先生のここ、凄い」  
博人は指を出し入れしながら、興奮しきった声で呟いた。  
「すごい締まってる。俺、こんなの初めて」  
「あ、あ、あ…いや…!」  
彼の骨太の指が往復するたびに、自分の内側が擦られて、ずっと前に感じたきり忘れていた胎内のありかを伝える。  
真理子は長い黒髪を乱すごとくに首を振った。  
「いや、いや…!」  
「もしかして、すごい感じてるの?先生」  
「違う…!いや…!」  
指の抜き差しする速度をやや上げながら、博人は声を上げている真理子を見て、にやにや笑った。  
「先生ってさ、すごい真面目なのに、ここはものすごく淫乱なんだね」  
「いや、やめて…!」  
真理子は泣きながら博人の言葉に激しく首を振った。  
違う。私はそんなんじゃない。  
博人は声を低めて、真理子に言った。  
「先生さ、もっと自分に素直なった方がいいよ。先生のここは、正直にアレをぶち込まれたいって言ってる。その証拠に…」  
博人は真理子の中を出入りしていた指を引き抜くと、真理子の顔の前にかざした。  
「ほら、こんなに濡れてる。わかるだろ?」  
言いながら、真理子の頬に、びっしょりと濡れた指をこすりつける。  
「先生はね、したいんだよ。オレと」  
言い聞かせるように、ゆっくりと言う。  
その指からしたたるほどの愛液と女の匂いに、真理子は衝撃を覚え、そして意思と反して熱くなってきている身体の芯を拒否するかのように、激しく首を振った。  
「いやあっ!違う、違う!!」  
「先生もわからずやだね。じゃあわからせるしかないか」  
博人は呆れたように言うと、すばやくズボンのファスナーを下ろし、猛りきったものを引き出した。  
「これを入れても、先生がそう言えるか、見ものだよ。いっとくけど、俺、手加減しないからね」  
そう言い放つと、博人は真理子の中に、硬いそれを一気に押し込んだ。  
 
「あああああああっ!」  
真理子は大きく背中をのけぞらせ叫んだ。  
目の前に火花が散って、押し込まれたものに、下半身が裂かれそうな錯覚を覚えた。  
硬くて、太くて、大きい。  
真理子の中に隙間なく入っていて、肉壁も、肉底も、強烈に押している。  
息が詰まりそうな圧迫感に、真理子は呼吸を忘れた。  
「んっ…、先生、すご。きつ…」  
博人が掠れた声で呟いた。  
「先生のここ、すごいきついね…。もしかして、処女?」  
真理子は唇を噛み、呼吸を乱したまま涙を溜めた目で博人を睨んだ。だが、視線は弱かった。  
「なわけないか。でも、先生、真面目だから、あんまりしてないんでしょ」  
博人はゆっくりと腰を引いて、再び強く押し込んだ。  
「んあぁっ!」  
真理子は喉をのけぞらせ、ためらいもなく声を上げた。今度の声には、苦痛の影が少し減っていた。  
「なのに、こんな、濡れちゃうんだもんなぁ。先生、淫乱だね」  
ゆっくりと引き、だが押し込むときだけは強く、博人の腰が動く。  
真理子はその度に我慢出来ずに声を上げ、彼の腕にぎりっ、と爪を立てた。  
「あっ、あぁん、あんっ、ああっ…!」  
「俺の、けっこうデカイって評判なんだよ、先生」  
ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっと深く淫らな音を立てながら、博人が動きを強め、真理子の耳元で呟く。  
「気持ちいいでしょ、ほら」  
「あんっ、あっ、あっ、ああっ、あぁ、ああん、ああっ…!」  
締まろうとする膣を硬いペニスで無理矢理押し広げながら、博人は真理子の中を容赦なく往復した。  
隙間なく埋め込まれた真理子の中から、出入りするたびに熱い愛液が溢れる。  
博人はさらに腰を打ち込みながら、真理子に囁いた。  
「正直に言っちゃいなよ。先生。気持ちいいって」  
「あ、あ、あ、いやっ、あ…」  
「言えば、楽になるよ」  
「あっ、いや、あっ、あっ、あっ…!」  
真理子は、突かれるごとに急速に拡大する未知の感覚に、恐れを抱いた。  
自分の頭の中がだんだん白く染まり、全身から力が抜けていく。  
「いや、ああ、ああ、…!」  
真理子は押し流されそうになる意識を引き戻そうと、必死に叫んだ。  
 
博人が真理子の脚を抱えてさらに深く進入し、子宮の入り口を強く突いた。  
「ああっ!」  
目の前にまた火花が散り、真理子は息を止めた。  
さっきとはまったく比べ物にならない、もっと激しく強い大きな刺激を受け、真理子の全身が震えた。  
再び動き出した彼のものが、ぐいぐいと奥深くをえぐり、脳天まで突き抜けそうな衝撃を与える。  
朦朧とした意識が、一気に別の何かに支配された。  
真理子の中で、何かが崩れた。  
彼の動きがどんどん激しくなり、真理子はあられもなく声を上げた。  
「ああ、ああ、ああんっ、ああっ、ああっ、ああぁ、ああん!」  
その声は、もうすでに真理子の理性から離れたものだった。  
甘く、高く、男をそそらせるに十分な雌の声。  
真理子の中が熱く震え、博人のものをしっかりとくわえこむ。  
経験が少ないはずなのに、男のものを絞り、こすり上げる繊細な襞の動きは、まるで娼婦のように滑らかで、上手い。  
熱く硬いペニスが一気に膨張して、博人は興奮しきってスピードを上げた。  
「ああっ、ああっ、ああっ、ああ、ああん、ああっ、ああ、ああっ、あぁ、ああっ…!」  
真理子の本能の声がひたすら、絶え間なく続き、白い腕と脚が揺られながら彷徨うように動いた。  
 
激しく動く博人の背中が一瞬ひきつり、彼が低く呻いた。  
「う、あ、っ…!」  
動きが突然止まり、背中が震える。  
彼の腰が、それまでの動きを微妙に反芻しながら前後し、そして何度目かの押し込みで止まった。  
博人は肺に残っていたわずかな空気を吐きだすと、思い切り息を吸い込み、ゆっくりとまた吐きながら真理子の上に顔を落とした。  
しばし彼はじっとしていたが、ゆるゆると顔を上げると、真理子の中に入り込んだまま、にやりとした。  
「先生」  
博人は少し身体を起こすと、真理子を見た。  
「すごい感じてたね。あんまりぎゅうぎゅう締め付けるから、俺もいつもより早くイかされちゃったよ」  
彼の背中と腰にしっかりと絡みついていた、汗ばんだ真理子の腕と脚を、博人は解いた。  
博人の言葉を聞いているのかいないのか、真理子は濡れた瞳で、天井をただ呆然と眺めている。  
博人は口元を歪めたまま、身体を引いた。  
真理子の中からとろり、と透明な粘液と混じった白い液体が溢れた。  
博人はテーブルの上のティッシュの箱を掴むと、それを丁寧にふき取った。  
「先生のここ、名器だね。すごい締まってて最高だよ」  
綺麗に拭き終わったそこは、襞も入り口も赤く腫れていて、今までの行為の激しさを物語っていた。  
「真理子先生」  
爪先でその襞を軽く撫でつつ、博人はご機嫌をとるような口調で軽く言った。  
「またしようね」  
「…!…」  
その言葉に、真理子がかすかに身体を震わせた。  
強引に押し広げられたゆえか、まだかすかに開いたままになっている小さな穴を撫でながら、博人は真理子の目を覗き込んだ。  
「先生が感じまくって、ここが濡れ濡れになってただなんて、俺、誰にも言わないからさ」  
「…!!…」  
真理子はとっさに身体を起こし、小さく叫んだ。  
「そんな…やめて…お願い…!」  
「じゃあ、また明日、ここでね」  
博人は立ち上がると、ズボンをはきなおし、衣服を整えた。  
「先生だって、あれだけ感じてたんだもん、嫌じゃないでしょ。俺とのセックス」  
あっさりと言い放ち、博人は悲壮な表情をしている真理子を見下ろした。  
「先生、真面目そうだけど、意外と淫乱体質だったんだね。驚いたよ。ま、その方が楽しいけどさ」  
瞳だけは濁った色を残したまま、元通り勉強が出来る真面目そうな生徒の顔に戻ってそう言うと、博人は廊下へと消えた。  
 
彼が出て行ってしばらくの後、真理子は白い乳房を腕で隠すようにして起き上がった。  
彼に言われたことが、ひどくショックだった。  
犯されたというのに、あんなに濡れた自分が信じられない。  
あんなに感じた自分が信じられない。  
しかも、自分のクラスの生徒に。  
『また明日、ここでね』  
彼の言葉が脳裏をよぎったとたん、鈍い痛みが続く胎内に、彼の硬くて大きいペニスの感触が蘇った。  
その感触に、一瞬身体の奥が熱くなったような気がした。  
真理子は慌てて散らばった服をかき集めると、急いで衣服を着け、湿った空気がこもる準備室を飛び出した。  
 
 
 

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