「横綱」。それが妹の幼い頃からのあだ名だった。
女の子に対して付けるあだ名じゃないと言いたいところだが、どこから見ても朝青龍
…いや、身長と胴回りの比率から言えば、妹の方がアンコ型だ…
本人は「ガハハッハッ」などと笑っていたが、本当は自分の容姿を気にしている
ことを、俺だけは知っていた。
そして運命の夏がやってきた。夏休みに入るなり妹が消えたのだ。
「修行してきます。夏休み中には帰りますから、探さないでください」
とだけ書き残して。
俺は書き置きを無視して探した。当たり前だ。書き置きが妹の真意であるかどうかすら
判らないのだから。だが、全ての努力は徒労に終わった。
そして8月も半ばを過ぎたある夕暮れ。今日も妹の手がかりを得られず、空しく帰宅した
俺は、自宅の門前で一人の少女に出会った。
背丈は妹と同じくらいだが、胴回りは半分、いや1/4か?すらりとした体躯にツインテール。
白いワンピースにニーソックスがよく似合っている。
俺と少女は、門前で何も言わずに向かい合っていた。1分立ったか、あるいは1時間か。
今でもよく分からない時間が過ぎたあと、彼女は爆弾発言をぶちかました。
「ただいま、おにいちゃん。心配かけてごめんなさい」