肌に圧力すら感じるほどの光の本流。
まるでその流れに押し流されるように、自分の中から力が外へと流出していく。
全身を包む脱力感。
あまりの光量に固く目を閉じていたフィオナは、その中でガラスが砕けるような音を聞いた。
やがて生まれた時と同様、唐突に光の爆発が収束し、ようやく目を開けた神官の少女は、自らの願いが無事神に届いたことを確認して胸をなでおろした。
広く薄暗い石室。
遺跡の最深部に存在するその部屋の中、その様子は彼女が目を閉じる前と後で1つの違いが生まれていた。
目の前で倒れていた男の姿が消えている。
冒険者としても、女としても、彼女にとってかけがえのないパートナー。
今回の冒険が終わったら冒険者を引退して家庭を持とうと約束までしていたのだ。
それほど、この遺跡で手に入った古代の文明の遺産は莫大なものだった。
まさに宝の山としかいいようがない手付かずの遺跡。
恐らく数日前にこの地方を襲った地震によって入り口が露出したのだろう。
彼女達がそれを発見したのは本当に偶然だった。
だがそれは幸運と呼ぶのは、いささか無理があるのかもしれない。
少なくとも、このような状況になってしまっては。
目の前、直前まで男が横たわっていた場所には、かなりの広さの血だまりができている。
そしてその向こう側で直立しているのは、山羊の頭部を持った悪魔だった。
(これだけの遺跡なんだもの。
守護者の存在を予想するべきだった)
そんな思いがフィオナの胸裏を埋め尽くす。
だが、それはあまりにも今更だった。
この部屋の唯一の出入り口は完全に封鎖され、加えて神の奇跡を行使するための力は既に底をついている。
こうなってしまえばいかに修練を積んだ神官といえども、ただの少女に過ぎなかった。
それがわかっているのだろう、対峙した悪魔の方も一旦攻撃の手を止めている。
手には血に濡れた禍々しい意匠の大剣。
彼女の仲間を切り裂いたそれを、まるで用済みとばかりに床に突き立てた。
「愚かだな」
文字通り地獄の底から響いてくるような重低音。
ひどく聞き取りづらい悪魔の声に、フィオナはわずかにその身を震わせた。
「あれだけの奇跡、死にぞこないの転送に使うとは全くもって愚かとしか言いようがない」
「……悪魔などにはわからないでしょうね」
幼い頃から神の教えに身を寄せていたため、フィオナは神官として同年代の少女の中では飛び抜けた実力を持っていた。
それでも、まだ20年にも満たない彼女の人生の中で、本物の悪魔と対峙することなど初めてだ。
ともすれば萎えそうになる気力を振り絞って、フィオナは悪魔に対して切り返す。
この程度のことで激昂して襲い掛かってきたりはしない。
むしろ興味を引いて会話を続けられるかもしれない。
そう判断して、あえて挑発的な口調で言い放った。
(今は1分1秒でも時間を稼がないと。
彼が助けに来てくれるまで……)
「けれど、私は間違ったとは思っていないわ」
途中で引き返さなかったことを悔いてはいても、男を転送するために最後の力を使ったことを、フィオナは欠片ほども後悔してはいなかった。
彼女が先ほど使った奇跡は、"願い"と呼ばれる極めて高位のもの。
この奇跡は"治癒"や"解毒"とは異なり、それそのものに具体的な効果が定まっていない。
その名前通り、その時点での行使者の願いを現実化させるものだ。
その奇跡に対し彼女が願ったのは、瀕死の重傷を負った男を今回の探索の際に拠点にしていた町の神殿へと転送することだった。
その選択を、悪魔は愚かだと断じている。
「あれだけの力をもってすれば、我を消滅させることは不可能でも、自らが助かるだけなら容易であっただろうにか?」
その言葉に、少女は内心で戦慄する。
"願い”の奇跡によって生み出される強制力は、極めて強力としかいいようがないもの。
それをもってしても消滅させられないとなれば、目の前の悪魔は今の彼女達では逆立ちしても勝てる相手ではなかったということだった。
そもそも"願い"すら、本来ならまだ彼女には到底行使できない奇跡だったのだ。
遺跡で見つけた強力な魔術補助具の力を借りて辛うじて成功したものの、かなり分の悪い賭けではあった。
(それでも、2人が助かる可能性はそれしかなかった)
彼を神殿に転送して治療を受けさせ、援軍を連れて助けに来てもらう。
彼女自身が逃げれば、どんなに急いで駆けつけても瀕死の重傷を負った男は間違いなく命を落としていたはずだった。
そして、彼女には助けが来るまで1人で生き延びるための、十分な勝算もある。
だから、これが最善の手。
そうフィオナは信じていた。
「まあいい、このようなことを如何に論じようとも、平行線の脱せまい」
そこで言葉を区切り、悪魔がゆらりと動き出そうとした。
「ようやく殺す気になった?」
その機先を制するように、フィオナは表面上だけでも強気を維持しながら悪魔に告げる。
彼女が生き延びるための、たった1つの駆け引き材料を。
「けれど、私を殺せばあなたも道連れにしてあげるわ」
さしもの悪魔もその言葉に再び動きを止め、彼女の続く言葉に耳を傾けようとしているようだ。
その事に、フィオナは軽い安堵を覚えた。
ただのはったりと鼻で笑われ、殺される可能性も間違いなくあった以上、この流れは悪くないもの。
そして、これは決して実のないはったりなどではなかった。
「私達はあなた達のような神の教えに背いた者に殺された時、その命と引き換えに一瞬だけではあるけれど神を降臨させることができるの」
その際に放たれる力は、先ほどの奇跡の比ではない。
いかに高位の悪魔とはいえ、さすがに抵抗できるはずがなかった。
「さあ、それでも殺せるかしら?」
もしこの相手が意思の疎通など不可能な低級悪魔だったならば、力を使い切ったフィオナは為す術もなく殺され、そしてその命と引き換えに相手を消滅させていただろう。
けれど、今目の前にいるのは人間と同じ、いやそれ以上の知性を持った上級の悪魔だ。
だからこそ、人間1人と相打ちなどという結果は受け入れられないはず。
これが、彼女がこの状況でも生き延びるための切り札だった。
自身の持つ最強のカードを示したフィオナ。
だがそれに対する悪魔の反応は、喉を詰まらせるような吐息を漏らすというものだった。
それを、この悪魔が笑っているのだとわかるまで、わずかな時間が必要だった。
「……? 信じていないのかしら?」
背中を伝い落ちていく冷たい汗を感じながら、フィオナは焦りの感情を必死に押し殺そうとした。
悪魔がこちらの言うことを信じない。
それは危険な展開だった。
証明しようにも、これに関しては死ぬより他に方法がない。
それでは意味がないのだ。
(神の僕としては失格かもしれないけれど、私はまだ死ぬわけにはいかない)
男の顔を思い浮かべながら、フィオナはそんなことを考えた。
「いや、信じるとも。
自らを信じるものを使い捨ててでも敵を打ち倒す。
いかにもあれの考えそうなことだ。
いや、たいした呪いだよ」
耳障りな笑い声を交えながら紡がれる神を冒涜する言葉に、フィオナは頭に血が上っていくのを感じていた。
先ほどは自分が信徒としては失格かもしれないとは考えたが、それでも彼女にとって神の存在が極めて大きなものであることに違いはない。
その言葉だけは聞き捨てならなかった。
「呪いなどではないわ。
神の教えに殉じた者の魂は、その御許へと招かれ永遠の安息を得るんだもの」
「ものは言いよう……いや、またしても平行線になるだけだな。
さて、そろそろ会話の時間は終わりにしよう。
心配せずとも、もとより殺すつもりなどない」
それだけ言い放ち、今度こそ悪魔が一歩を踏み出した。
その言葉を証明するように、大剣は床に突き立てたまま置き去りにして、フィオナにゆっくりと歩み寄ってくる。
その間、近づいてくる悪魔の股間で起こった変化に、少女は生理的な嫌悪感から全身の毛を逆立てた。
隆々と勃起する異形の男性器。
それは、悪魔がこれから何をしようとしているのかを何よりも雄弁と物語っていた。
とっさに後ろに下がろうとする足を叱咤して、何とかその場に踏みとどまると、それを見た悪魔が感嘆したような吐息を漏らす。
「ほう、これを見て動じぬとは大したものだ。
だが、一応動きは封じさせてもらうとしよう。
自ら命を絶たれたのでは興ざめだからな」
そんなことはしない。
教えによって禁じられている上、そもそも今のフィオナは男が助けに来るまで何をしてでも生き延びようと決意している。
だが、そう言い返すだけの時間の余裕はなかった。
悪魔の口が細かく動く。
けれどフィオナの耳には何の音も聞こえてこなかった。
悪魔独自の言語による魔術行使。
フィオナはそれに抵抗するため、精神を集中させねばならなかったからだ。
「……な!?」
結果から言えば、悪魔の魔術に抵抗しようとする彼女の意思は無駄なものだった。
悪魔の体から滲み出した魔力が向かったのは彼女自身ではなく、床に広がる血だまりだったのだ。
男の流した大量の血が突如沸き立ち、無数の鮮血色の触手が伸び上がる。
それらはフィオナの両腕を束縛し、一息にその体を引き上げていく。
同時に両足にもそれぞれ巻きついた触手によって開脚を強制され、ちょうど人の字に空中で磔にされてしまった。
純粋に物理的なその触手の行為に対し、フィオナに抵抗の余地はない。
愛する男の血液を拘束具に使う悪辣さに歯噛みする神官の少女。
そんな彼女にできる抵抗は、悪魔の爪によって一息に衣服の前部を引き裂かれても悲鳴を上げないことぐらいだった。
一見したところはただの布であっても、そこには幾重にも防護の魔術が込められている。
けれど、そんなものはこの悪魔の爪の前では何の役にも立たなかった。
憎むべき敵の目にその身を晒される恥辱。
少女は表情に出そうになる弱気を懸命に押し隠して、悪魔を睨みつけていた。
「ふむ、ますますもって大したものだ。
いや、存外犯されるのを期待していたのかもしれぬな」
「誰が、期待してなど……」
あまりにも侮辱的な悪魔の言葉に、羞恥心を凌駕するほどの憤りを覚える。
期待など断じてしていないが、それでも予想はしていたのだ。
悪魔が女に対してすることなど、殺すか犯す、そのどちらかしかない。
そしてその内の片方を封じたのは他でもない彼女。
となれば自らを待ち受ける運命など、容易に想像できるというものだった。
怖くないわけがない。
けれど、せめて情けない姿だけはみせまいと気を張っていたからこその、この反応だった。
先の一撃で衣服は完全に左右に分かたれている。
無造作に見えてその実極めて精密だった悪魔の一撃は胸を覆っていた下着も残さず引き裂いていたせいで、完全に2つの膨らみは暴かれてしまっていた。
まだ彼にも見せていない控えめな乳房。
せめてもの救いは、下腹部だけはまだ下着が無事だったおかげで、悪魔の視線から逃れられていることぐらいだった。
「まあ、どちらでも同じことだ。
すぐに自ら求めるようになる」
フィオナの睨みつけるような視線などそよ風程度にしか感じていないのか、あたかもそれが当然の未来であるかのように宣言する。
その言葉に彼女が反駁しようとした、その瞬間だった。
ブシュ、というガスが抜けるような小さな音が彼女の鼓膜を震わせる。
それが何なのかは理解できぬまま、それでも本能的に危険を察したフィオナは出しかけた言葉を飲み込んで息を止めた。
一拍遅れて、彼女の嗅覚をついぞ嗅いだことのない異臭が刺激してくる。
強いていうなら熟しすぎてドロドロに腐り落ちた果物の匂いを何十倍にも濃縮したような、そんな匂い。
(……これは、いったい?)
まともに吸っていたら胸が悪くなるどころではなく、本当に嘔吐していただろう。
「いい判断だ、と言いたいところだが、息を止めたところで無駄なことだ」
悪魔の言葉に不吉なものを感じながら、それでも口をきつく引き結び、少しでもその何かを吸い込まないように注意する。
だがそれが本当に無駄な足掻きであることを、続く言葉で思い知らされてしまった。
「これは皮膚から直接浸透し効果を発揮するものだからな。
効果は、身をもって知るがいい」
悪魔の口から、ちょうどフィオナを拘束している触手にも似た色合いとしなやかさを持つ舌が零れ落ちる。
自在に操作できるのだろう、到底口腔内に収まらない長さにまで伸張したそれが、無遠慮にフィオナの乳房に巻きついてきた。
「……は、く」
その感触に、喉まででかかった声を反射的に噛み殺した。
燃えるような熱とぬめり、そして強い弾力を持った悪魔の舌は、決して豊満とはいえない彼女の胸をむりやりくびり出す様にふもとを締め上げてくる。
ギュッ、ギュッと断続的に締め付けられる幼さの残る膨らみ。
その行為に当然最初は痛みしか感じなかった。
だというのに――。
(な、なんなの、これは……?)
そこから得られる感覚が、フィオナの中で急速にその姿を変貌させていく。
まだ固さの残る乳房の芯を解きほぐすような甘い痺れ。
初めての感覚に戸惑うフィオナに追い討ちをかけるように、胸の先端で火花が弾けた。
「……くぁあ!?」
「さすがに今回は抑え切れなかったな」
そもそも発声の仕組みが違うのか、舌を出したままでも悪魔の言葉は今まで通りだ。
だがその振動は確かに舌を伝わって、フィオナの心と体を揺さぶってくる。
「ひぅっぅ!?」
またしても胸の先端で目もくらむような激感が炸裂する。
意思とは無関係に喉が引き絞られ、自分でも情けなくなる声が出てしまう。
(な、なにが……)
せめてその激感の正体を探ろうと、視線を落としたフィオナが見たものは、赤黒い舌に巻きつかれた乳房の先端ではしたなく勃起する自らの乳首だった。
(そんな、どうして……)
悪魔の唾液を塗され、てらてらと濡れ光る敏感過ぎる小粒。
舌はその長さを生かしてふもとを絞り上げると同時に、その先端で乳首を押し潰すように刺激してくる。
「ふああっ!?」
またしても脳を焼き尽くすような感覚。
それは、紛れもない快感だった。
(さ、さっきのあれが……)
人を狂わせる魔毒。
悪魔がそういったものを使うことは文献では学んでいたが、ここまで劇的なものだとは思ってもみなかった。
堪えようとしても堪えきれるものではない。
「どうやら察しがついたようだな」
「ひぃああ!」
舌を押し付けられた状態で喋られるとたまらなかった。
細かい振動に乳房が溶かされているのかと錯覚するほどの愉悦が脳髄を駆け上がってくる。
「しゃ、しゃべら、あああ、いや、なにか、なにかくる!」
敵に懇願していることに気づいたのは口にしてしまった後だ。
だがそれを後悔する間もなく、何かが近づいてきていることを女の本能が感じ取っていた。
その一線を越えてはいけないと、圧倒的な快感に押し流されそうになりながらも理性が必死に警告している。
(だめ、耐えないと……でも……)
それはあまりにも強烈過ぎる感覚だった。
苦痛なら、それでも堪えられたのかもしれない。
けれど、身を蕩かす快楽の前に、心より先に体が屈しようとしているのをフィオナは自覚してしまった。
無尽蔵に肉悦を吐き出し続ける自らの体。
その手痛い裏切りに、心もまた急速に追い詰められつつある。
涙が溢れ、視界が霞む。
そこに映る口角を上げた悪魔の顔を見ても、敵愾心が湧いてこない。
いや、湧いてきても一瞬で吹き散らされてしまうのだ。
「……ぁ?」
と、不意にフィオナを翻弄していた肉悦が途切れ、わずかに正気を取り戻す。
その瞬間、自らの胸中を過ぎったものが安堵と落胆、どちらだったのか、今の彼女には確信がもてなかった。
そして、それは確かめる余裕もなく、次なる行為に曝される。
「そ、こはぁっ!?」
股間を守る下着の中に、ぬるりとした感触が忍び込んできたのだ。
いや、その我が物顔での進入は忍び込むなどという生易しいものではなかった。
少女にとって何よりも大切な秘唇を余さず舐めしゃぶり、それだけにはとどまらず、会陰部を通過して恥ずべき排泄口すらもぞろりと舐め上げてくる。
そこから生み出されるおぞましさに、沸騰しつつあった意識が急速に冷やされ我に返った。
どうやら下着のおかげで、そこだけは肉体を狂わせる毒から逃れることができていたらしい。
ぴたりと閉じ合わさった処女の秘唇を割り開くように押し付けられてくる悪魔の舌。
だがそれは――、
「ぬぅ――!?」
普通ならばありえない反発にあって押し返された。
ただ表面をなぞるだけならともかく、フィオナの意思に反して進入しようとすれば発動する結界。
それが、悪魔の毒と舌に曝される前は、犯される直前になってもフィオナが取り乱さずにすんだ理由の中で最も大きなものだった。
だがそのわずかな余裕も、魔舌による胸への愛撫を受けた今では極めて頼りないものへと変わってしまっている。
(快楽に流され、私の方が求めてしまえば効果はなくなってしまう……)
それは最初からわかっていたこの結界の欠点だった。
(でも、決してそんなことにはならないつもりだったのに……)
自信は既に揺らぎ始めている。
もしあのまま胸を責められ続け繰り返し絶頂を経験させられたら、果たして自分は最後まで抵抗し切れるのか。
未だ一度もそれを経験していないだけに不安だけがますます大きくなっていく。
けれど、フィオナの心配を杞憂だったといえなくもなかった。
なぜなら、悪魔が次に狙いを定めたのは、早くも性感帯として開発されつつある胸ではなく、別の場所だったからだ。
下着が引き下ろされ、為す術もなく股間が露になる。
役目を終えたように口腔内に戻っていく悪魔の舌。
暴かれた股間を隠そうにも両腕は頭の上で拘束されたままで、足を閉じることすら不可能だった。
そして、その開脚を強いられた足が持ち上げられていく段になっても、少女はただ為すがままになるしかない。
腰を基点に上半身と下半身を2つに折りたたんだ体勢。
秘すべき股間を悪魔に突きつけるようなその姿勢に、さすがに顔が燃え上がりそうな羞恥を覚えた。
けれどその熱も、排泄口に焼けた火箸の如き熱を持った悪魔の性器を突きつけられると、まるでその熱の全てを吸い取られたように一瞬で冷えてしまう。
ここまでくれば、目の前の悪魔が何を考えているかは、さすがに性の知識に疎いフィオナでも容易に察しがついた。
「前が使えるようになるまで、こちらで楽しませてもらうとしよう」
(まさか、そんな……)
察しはついたが、到底信じることができない行為。
だが悪魔はそれをなんでもないことのように敢行してくる。
「さしもの神も、不浄の穴までは守ってくれぬとみえる」
勝ち誇ったような悪魔の言葉。
彼女の信奉する神を冒涜するそれに対する憤りすら、感じている余裕は今のフィオナにはなかった。
「あ、――ぐ、ぁぁ」
清楚にすぼまった蕾を、力任せに押し広げてくる悪魔のペニス。
それは全体のシルエットこそ人間に近いが、全体のサイズ、そして特にエラの張り方は段違いだった。
めりめりという音が聞こえそうなほどむりやりに、乙女の狭穴を蹂躙される。
そこに悦楽などは到底ない。
ただただ嫌悪感と息苦しさ、そして身を引き裂かれる激痛に、フィオナはそのおとがいを反らしながらも耐え続ける。
それでも、その行為は彼女にとって先ほどまでよりはまだましだったと言えなくもなかった。
(苦痛だったら、どんなに辛くとも耐えられる……)
そう、思った。
その浅はかな考えをあざ笑うかのように聞こえてきたのは、聞き覚えのある1つの音だ。
ガスが抜けるようなブシュ、という音に、フィオナの中を戦慄が駆け抜ける。
(そんな――そんな……)
その音の発生源は、あろうことか自分の中。
最初の時は気づかなかったが、処女すらもよがり狂わせる悪魔の毒の発生源がそれの持つ生殖器であることは、最早否定しようのない事実だった。
その後自分が晒した痴態に、目の前が絶望で暗くなる。
(あ、あんなものをお腹の中に吹き付けられたら……)
空中のように拡散することもなく、その全てが余すところなく粘膜から吸収されてしまう。
そこから生み出されるであろう肉悦に、フィオナは心の底から恐怖した。
けれど、その恐怖も長くは彼女の胸の内に留まれない。
「あ、あああ、あああああああ!?」
一度は侵攻を止めていた悪魔の一物が動きを再開した途端、頭を鈍器で殴られたような錯覚に陥った。
それがあまりにも強すぎる快楽によるものだと理解したのは数秒後。
そしてその考えもすぐさま肉悦に押し流されていく。
奥まで押し込まれると、口から内臓の全てが押し出されていくような気がした。
逆に入り口付近まで引かれると、内臓の全てを引きずり出されるようにフィオナは感じた。
交互に繰り返される、暴虐的な人外の責め。
その両方に、狂おしいほどの快楽が付随していた。
大きく張り出したエラで腸壁をこそがれると、どうしようもないほどの愉悦が全身を電流のように走り抜ける。
両手両足を触手に拘束され、腰の両脇を悪魔の手によって掴まれているフィオナの全身が、打ち上げられた魚のように激しく痙攣する。
半ば白目を剥き、開けっ放しになった口元から舌を突き出し快楽に喘ぐ。
とめどなく溢れ出した唾液は胸へと滴り落ち、先ほど丹念に塗りこまれた悪魔のそれと混ざり合って淫猥な湯気を立て始める。
薄い肉壁一枚隔てた膣内からは、通常ありえないほどの愛液が分泌され、そのとば口からブシュブシュとはしたない音を立てて排出されている。
床にできた液だまりから立ち上る濃密な牝の淫臭。
それがフィオナの燃え上がった性感に拍車をかける。
(こ、こわれる、このままじゃこわれ――)
目の奥ではひっきりなしに火花が散って、視界を白光が埋め尽くしていく。
「いや、いやいやいや、いやぁぁあぁぁああ!!」
そして視界の全てが白に埋まった瞬間、少女は始めての法悦に打ち上げられていた。