「腐女子を犯すスレ」でのヲタ&腐女子馬鹿ップルの続き。  
この馬鹿どものその後の話です。  
 
<拓>  
「拓にお願いがある」  
一足先に弁当を食べ終えた弥生が、弁当箱を青いバンダナで包み終えると、傍らの俺に言った。  
梅雨明け間近な7月の晴れ間、校庭隅の涼しい木陰でのことだ。  
校内を行き交う半袖シャツ・ブラウス姿の生徒たちは、蒸し暑さに耐えながら、ひたすら夏休みを待ちわ  
びている。俺たちとてそうだ。  
「何だ藪から棒に」  
まだ弁当の箸を使っている俺は、飯粒をもぐもぐ噛みながら答えた。  
三つ編みグルグル眼鏡のほっそりした女生徒はブラウスの肩をすくめ、地味だが可愛いそばかす顔の頬を  
染めながらうつむき、こういった。  
「私のお尻を、アナルセックスできるように開発して欲しい」  
 
彼女の大真面目な表情とは裏腹な大いに狂ったフレーズに、俺は喰いかけのメシを吹き出した。  
 
俺と弥生が、恋人同士として「いきなり」付き合い始めたのは、5月の末のことだった。  
この女は同じクラスの文芸部員だが、とんでもない腐女子だ。  
度を超したやおい探求心を暴走させたあげく、「どうでもいい同級生のヲタ野郎」の俺を拘束して性的い  
たずらと脅迫の対象にするという、性別が逆なら間違いなく逮捕されるような犯罪行為を目論んだ――  
のだが、何の因果かその謀略が途中で頓挫する過程で、互いに情が移ってしまい、しまいにはあえなくお  
互いの処女と童貞を捧げ散らしあい――  
心底惚れあって、今に至る。  
 
真性ヲタの俺と弥生は似たもの同士だ。マジメに話してみるととても気が合ったし、話も合った。  
あれ以来数回、週末の土曜になると、彼女の自宅へ行き、青系統でコーディネイトされた彼女の部屋で、  
一緒に過ごすようになった。  
ヲタ会話を楽しみ、お茶を飲み、授業の課題を互いに突き合わせてみる。  
この前の1学期期末テストで、俺の苦手な国語の点を上げられたのも、彼女の「青い部屋」での指導のお  
かげだ。その代わり、彼女の苦手科目の数学を指導してやったから、お互い様ではある。  
この交際、周囲には秘密にしていたのだが……  
 
6月の雨の降る下校時、傘を持っていなかった弥生を一緒の傘に入れて駅まで歩いているところを、同級  
生たちに目撃されてしまい、更に放課後の校舎裏でこっそり二人きりキスしている所をクラスメイトの携  
帯カメラに偶然撮られてしまっては、もうおしまいだった。  
「ヲタと腐女子のお似合いカップル誕生!」「珍事だ珍事だ」「割れ鍋に綴じ蓋だ!」  
あっという間にいい笑い者になったが、さすがに二人のなれそめまでは、口が裂けても言えなかった。  
 
いろいろ周囲から言われても、お互い別れる気は毛頭ない。  
周囲に関係がばれてしまってからは、校内でも遠慮なく一緒に過ごすようになったが……男子たちの視線  
が痛いのは、我慢だ。  
話をしてみれば、彼女は物静かで頭が良く、しかも思慮のある、とても良い娘なのだ――  
基本的には、だが。  
 
この腐女子、ことがやおいの話になると目の色が変わり、周囲もはばからず大声で力説する。  
「カップリングには『絶対相性』がある!   
攻守を取り違えたカップリングを『バリエーション』で片付けるなんて、やおいの風上にも置けない!」  
立ち上げって拳を振り上げる貴様の主張は聞いておこう。  
だが、ここは昼休みの教室だぞ……  
男子どころか、女子たちの視線までもが痛い。ひたすら我慢だ。  
 
彼女は『素直クール』などといった定型フレーズで一口に定義できるような『都合のいい女』ではない。  
頭の回転が速くてすこぶる優秀、なのだがしかし、実はけっこう抜けていてかなり馬鹿な、困った女だ。  
そんな女に本気で惚れてしまった俺も、馬鹿だ。  
 
週末の訪問のたび、俺たちは弥生の部屋にあるベッドでぎごちないセックスを繰り返し、だんだんに相手  
の身体と心とを、深く理解するようになった。  
初めての体験が極めてアブノーマルだったので、ひたすらノーマルな「基本的セックス」の研鑽に励み、  
世間並みの性的経験を積むことに専念した。  
最初のうちは処女喪失後の痛みが残っていた弥生も、幾度か事を繰り返すことで、徐々に落ち着いてきた  
らしい。丁寧な愛撫の後にゆっくりと挿入してやれば、お互いの身体を心地良く感じ、やがて充実感と共  
に絶頂に達することができるようになった。  
一緒に果てた後、彼女はキスを求めてくる。俺もそれに精一杯優しく応える。  
その瞬間の弥生が、たまらなく愛おしい。  
 
正常位と後背位、俺は弥生の顔を見ながら可愛いBカップを舌で吸うこともできる前者が好みだが、弥生  
は後ろからの方が気持ちいいらしい。  
深く入る上に、羞恥心を刺激されるから、のようだ。  
弥生を四つんばいにさせ、後ろから入っていこうと勃起の狙いを定めると、彼女の谷間で潤んだ泉の上に、  
 
男女関係なく備わっているお尻の穴が見える。  
可愛いすぼまりだが、「初めて」の時にはここに俺の中指が突っ込まれ、さんざんいじりまわされたのだ。  
それも彼女自身の願いで。  
その、女性器よりも遙かに狭そうな穴は、俺が潤んだ膣内に自分をのめり込ませていく時もひくひくと動  
いて見せて、弥生のあえぎと同様に俺の劣情を刺激するのだった。  
 
だから確かに彼女、尻の素質、はありそうだ。  
だがしかし、「開発して欲しい」と乞われるとまでは、俺も予想していなかった。  
 
<弥生>  
私の所属する文芸部に、部室はない。  
そのため、図書室と、隣接する司書室が実質的な活動場所だ。  
放課後、その図書室の大きな閲覧机の一つを占領した「同志」たちを前に、「プチ総括」を受けている。  
 
「同志」? そうですとも、彼女たちは同志。  
トンジ! カメラード! タワーリシチ! みんな私の仲間!  
文芸部は全員女子で構成され、その全てがやおい趣味の持ち主――  
そう、私たちはみな、腐・女・子、だ。  
 
ここでお断りしておくが、現代中国語の「同志」が意味する「ゲイ→百合」カップルはいない。  
あくまで男同士の「同志」を見て共にハァハァする仲間なので、お間違いなきよう。  
 
ところがだ。  
「ねー、弥生って太田拓と付き合ってるでしょ?」  
「何であんなヲタと?」  
その同志たちに、あまり聞かれたくないことを問いつめられているところだ。  
私と拓は成り行きで激しく惚れあってしまったわけだが、そのいきさつは余りに危険で話せない。  
「……いろいろ、あってね」  
「ふーん」  
何でよ、という疑問の表情が一堂にありありと浮かぶ。  
「けっこういい人なんだよ、彼って。無愛想だけど根は優しいし。  
理系の科目でわかんないとこ、いろいろ教えてくれるしさ。  
それにやおいも少しはわかるから、私のやおい話にも付き合ってくれるんだ」  
同志たちは『へえ、そうですか』と気のない顔をしているが、あんたたちの内心はわかってる。  
『やおい女に理解のあるカレシをゲットしたとは……何と運のいい奴!  
激しく恨疚悔しい(うらやまくやしい)!』  
えへん、どうだ参ったか!  
カラダを張った甲斐があったというものだ……と思っている場合ではない。  
同級生の2年生たち2人はジト眼で私を見ている。1年生の後輩たち3人は曖昧な笑みを浮かべている。  
これでは本当に総括されてしまいそうだぞ、私。  
 
上級生である3年生部員様たちの恋愛事情は、知らない。  
が、私を除いた2年生以下の部員全員、本人申告では、全員処女だ。  
年齢イコールカレシいない歴、バージンのくせにみな耳年増で、知識は無駄に豊富なのに、実践となると  
まるで経験無しの面々ばかりなのだ。  
彼女たちはみな、同性の私から見ても決してブスとは思えない。  
むしろ水準以上のルックスの持ち主たち、だとは思うのだが、惜しむらくは腐女子が発する特有のオーラ  
が、周囲の男性を遠ざけてしまうらしい。  
で、暇さえあれば「モテないなあ」「カッコいい男の子いない?」などとお茶をひいているのだった。  
私もしばらく前まではその一員だったが……  
その群れから唐突に脱出してしまったのが、「総括」の原因だ。  
 
「でさ、その……ヤったの? 彼と」  
同志の一人が、ちょっと不機嫌そうな顔だが好奇心を隠しきれぬ様子で、目をぎらりと光らせながら尋ね  
てくる。  
わあ、優越感あるなあ。確かにヤっちゃってるんだもんなあ……  
でもこいつらに正直に話したら何言われるかわかんないなあ……  
「まあ、それは……」  
ヤバいかなあ、と思いつつ、知らず知らずのうちにニヤニヤしながら『私の拓』のことを話そうとした時、  
周囲の同志たちに無言の緊張が走った。  
はっとして振り返ろうとしたら、先に後ろからハスキーな声がした。  
「藤吉さん、あまりのろけないように」  
振り返れば、果たして長身の女生徒が立っていた。  
「あっ、同志部長」  
――同志だけ余計だ。ここは共産圏か!  
 
カリスマのあるこの部長には、どうも逆らえない。  
私も女子の中ではちょっと上背のある方だが、部長は更に高い。170cmを優に超える身体と、豊かなバス  
トの持ち主で、切れ長の眼と肉感的な唇を持つショートカットのクールビューティだ。  
部員たちへの行き届いた気配りができる人柄の良さに加え、3年生トップの優等生でもある。  
そんな彼女が、腐女子集団を率いる女帝である。  
「みんな、ご苦労様」  
私も含めた部員たちは一斉に「お疲れ様です!」とあいさつした。  
部長はうなずき、それから私に目を向けた。  
「ところで藤吉さん、頼んであった件は?」  
「大丈夫です。それでしたら、今朝副部長にメールでお送りしました」  
副部長も3年生で、部誌編集関係の担当者だ。が、今日はなぜか学校を休んでいる――  
理由は大体想像がついた。  
部長は「ありがとう、助かる」と言ってから、ふと思い出したように言った。  
「そうそう、昨日、副部長が言ってたわよ。あなた、まだ自分の原稿提出してないんですって?  
漫研から『挿絵の手配があるから、早くして』ってせっつかれてるんだけど……あたしが作業をお願いし  
たのが悪かったかしら?」  
「いえご心配なく、部長のせいではないです……遅れてるのはわかってます。すいません」  
周囲の同志たちが意外そうな顔をした。  
「えーっ? 藤吉先輩って、原稿書くの早いですよね?」  
「どうしたん? スランプ?」  
一応、原稿はほとんど書けている。  
ボーイズラブのキモになる、クライマックスのベッドシーン描写を除いて、なのだが。  
 
我が校の漫研が夏コミに出るということで、私たちも記念にテキストコピー本を出して、委託しようとい  
うことになった。  
漫研も主力はやおい女子、男子ヲタたちもいるが隅っこで小さくなっている。友好関係にある文芸部との  
ジョイント体制は完璧だ。  
漫研は一応高校の公式な部活なので、18禁モノは大っぴらに扱えないのだが、それは漫画に限ったこと。  
預かりものの小説なら縛りは受けない。  
現役の高校生文学少女が性的描写のある小説を書いて芥川賞を貰うご時世だ。「ブンガク」という高尚な  
美名が付けば、大抵のことはまかり通ってしまう。  
挿絵は漫研の協力をもらうが、過激なシーンは直截的な描写を避けて描いてもらうように話を付けてある  
から、コミケスタッフに注意を受けることはないだろう。  
私たちはその編集打合せのために図書室に集まっていたのだが、部長を待つ間に私が危うく「総括」され  
かけたのだった。あー危なかった。  
 
部長の作品は既に完成しており、編集の都合上、私も目を通させてもらった。  
彼女はいつも達者な書き手だと思う。今回の最新作も、冗談ではなく大傑作だ。  
香港ノワール風のシビアな短編小説なのだが、男性的なハードボイルド文体で、二人のギャング――むろ  
ん美形同士だ――の命がけの性愛を、ドラマチックに、かつエロチシズムたっぷりに描き上げていた。  
読みながら私は興奮した――特に部長の得意とする射精シーン描写のリアルさは見事なもので、私は拓の  
ペニスを連想しつつ、密かに濡れてしまったほどだ。  
部長の玉稿を読んだ同志たちに、しばし沈黙してから「トイレ行ってきます」「あ、わたしも!」という  
のが出てきたのも無理はない。  
多分、それぞれ個室にこもって慰めたのだろう。気持ちはわかる。  
これは、筆力と部長の肩書きに照らして、巻頭掲載すべきだろう、と部員たちの意見は一致した。部長の  
人徳も一役買っていたのは言うまでもない。  
 
問題は、部長が昭和中期レベルにローテクなお方である事だ――  
この女性、ミシンとお裁縫は大得意、そろばんは日本商工会議所検定1級持ちだというが、パソコンの操  
作となるとさっぱりわからず、インターネットの利用法も知らない(以前、実際に部活の会計収支算定に  
そろばんをぱちぱちと弾いて素速く正確な数値を出していたのを見たが、それより表計算ソフトを使った  
方がよっぽど楽なんじゃないかと思った)。  
何しろ携帯のメールもまったく打てず、操作がよくわからないので、電話専用に老人用のらくらくホンを  
使っている、という究極メカ音痴なのだ。21世紀をどうやって生き抜いていくつもりだろうか……  
 
こういう人だから、小説も手書きだった……今時、部内でも400字詰め原稿用紙にHBの鉛筆で執筆し  
ているのはこのお方だけだ。  
「えっ、書くのが大変じゃないかって?  
あたしね、執筆と推敲はぜんぶ頭の中でやるから、原稿用紙には最後の清書だけすればいいの」  
その、強制収容所内のソルジェニーツィン並に突出した記憶力と思索力には大いに敬服しよう。  
だがその後の手間となると話は別だ。  
習字のたしなみを伺わせる綺麗な楷書の手書き原稿を提出されても、他の皆は全てパソコンのエディタで  
執筆したテキストデータを圧縮してメールで受け渡ししているのだから、編集の都合上、部長の小説も同  
様にデータに起こさねばならない。  
それで毎度毎度、部長の小説をタイプ起こしする役目は、私に回ってくる。  
私が今朝副部長にメールで送ったのも、先ほど話した部長の最新作のテキストデータ版だ。  
 
部長からすると『次期部長候補』で『いつも冷静』、タイピングにも慣れた藤吉弥生は、このテキストデ  
ータ化作業に最適任、ということになっているようだ。  
他の部員は、作業に取りかかっても圧倒的なエロティシズムと、自分とのあまりの筆力の差に愕然とし、  
自信喪失しながらベッドに倒れ込んでオナニーに走り、ついに作業放棄してしまうんだとか……  
きっと副部長も、朝一番に私のメールの中身を見て興奮してしまい、オナニーが止まらなくなったかどう  
かして、学校をサボってしまったんではないか、と思う。いや、絶対そうに違いない。  
 
かく言う私も、部長の作品の文字を追うごとに脳内を駆けめぐる絡みシーンの映像にハァハァしながら、  
歯を食いしばってキーボードを叩き続け、やっと作業を終えると、思い切り自分を慰める羽目になるのだ  
が……  
そしてひとり慰め終えた後の虚しさの中で、部長の素晴らしい才能に内心で嫉妬するのが、常だった。  
彼女の綴る物語と文章は、いつもやおいの枠を超えて素晴らしかったのだ。  
私は一人の書き手として、彼女の背中を見ながら、いつも尊敬混じりの歯がみを繰り返していた。  
 
とにかくいま私には、異性――私の拓――との日常的な性交渉という、インスピレーションとモチベーシ  
ョンの源がある。  
ゴム無しの射精は拓との初体験一度だけだが、あの強烈な感覚は生涯忘れようもない。  
ゴム越しなら、もう幾度も拓のほとばしりを受けている。  
彼の熱を感じながら受け止める脈動は、いつも愛おしく、生命力に溢れ、充実感を覚えさせてくれる。  
そうして男性の温かい肉体と交わることは、私の書く文章にもなにがしかのリアリティを強く与えてくれ  
ているようだ。  
 
それはいいとしよう。  
私が拓との交わりで得ているのは、「女としての」、「膣内での射精感覚」だ。  
それは、男性が同性の性器に後ろの門を貫かれ、締め上げた愛人の雁首から精液の噴流を注ぎ込まれる感  
覚とは、本質的に違う筈だ。  
 
腐女子たちがみずから半ば自嘲気味に語る「肛門であって肛門でない」男性器の挿入場所――  
その「やおい穴」は、実のところ、他ならぬ女性器そのものでしかない。  
私と同じ趣味を持つ女たちが男性同士の挿入シーンを文章に描く時、その多くは、自らの膣に男性器を受  
け入れるイメージを参考にしているに過ぎないのだ。  
そもそも女性器と違って、本物の直腸がセックスのために自然に濡れるわけがない。  
とはいえ、ボーイズラブの読者たちが求めているのは、リアリズムでなく、むしろファンタジーなのだと  
いうことは、十分わかってはいる。  
それでも私は読み手の心を掴みつつ、それらの様式美的「お約束」を何とか克服したい、と思っていた。  
私が背中を見ているあの女性を超えるためにも、自分のスタイルを確立したかった。  
 
私の今回の小説は男子校物で、「受け」の側の一人称で描かれている。  
当然、語り手は性器を挿入される側。  
反目しあっていた相手と実は惹かれあっていたことに気づき、愛し合い、そして抱かれる。  
設定こそありふれてはいるけれど、心理描写には徹底して気を使ったつもりだ。セリフも吟味した。  
自分なりにしっかりしたものを書いた、と自負している。  
特に、裸で抱き合って愛し合う感覚とその歓びは、拓との交わりも参考に、かなり克明に描けたと思う。  
 
だが、肝心の結合・射精シーンを幾度書き直してみても、どうも満足がいかないのだ。  
肛門括約筋で愛する者の肉体を締め上げ、直腸の奥深くまで射精のほとばしりを受け止めるまでの感覚が、  
 
思うように描けていない。  
これでは部長の素晴らしい射精描写に太刀打ちできない……  
私は悩んでいた。  
 
それが2日前のことだった。  
 
<拓>  
「……で、自分の身体で体験して、尻穴の感覚を掴んでみたい、と?」  
「そのとおり。頼むとしたら拓以外いないでしょ?」  
弥生の異様な説明を聞き終えた俺は、思った。  
『腐女子って、なんでここまで馬鹿になれるんだろう』  
 
弁当箱を膝に置き、俺は弥生に言った。  
「あのな弥生、男と女のカラダの違い、わかってるか?  
女には、男のケツの性感帯になる『前立腺』がないんだぞ。  
男並みに感じようとしても、限界があるのと違うか?」  
しかし、弥生はひるまない。  
眼鏡の向こうから、真剣な視線が俺に注がれる。  
「それはわかってる。どうしても足りない部分は、想像力フル回転で補う。  
それに私、潮吹きの盛んな体質らしいでしょ? あれって射精感覚の描写に応用できると思う」  
確かに、弥生は強い絶頂に達すると『潮吹き』を催す。かなり感じやすい身体のようだ。   
普段はクソ真面目そうな顔をしているが、やおい話をする時と、ベッドで二人になった時は、性的欲求の  
激しさを強烈に見せてくれる。  
そんな彼女は絶頂に達すると、Gスポットから盛んにしぶきを飛ばすのだ。  
 
胸はちょっと貧しいが、身体は愛し合うことに貪欲――そんな自分を自覚し、時に恥辱感を抱きながらも  
俺を求めてくるこの娘が、俺は大好きだ。  
だが今回のように、突拍子もない頼み事をしてくるのには、さすがに参る。  
「射精も何も、おまえチンコないやんけ」  
突っ込みを入れると、そばかす顔の顔色が激情のあまり紅潮した。  
彼女はずいと立ち上がるや、拳を振りかざして絶叫したものだ。  
「大丈夫! 私は心でおちんちんを育むんだから!」  
 
校庭で近くにいた生徒たちが、その場に固まり、俺たちを凝視した。  
当然だろう。  
次の瞬間には全員が目を逸らし、ひそひそうわさ話をしながら遠ざかって行く。  
「腐女子って怖いねえ……」「イカレてるよ……」  
うむ、俺もこいつはイカレてると思う。  
だが放っておけない。札付きの腐女子といえども、俺の大切な女だ。  
「落ちつけ弥生!」  
慌てて立ち上がった俺は、彼女の両肩に手を置いて、座らせた。  
弥生は拳を固め、身震いしながらつぶやいた。  
「私は……部長を超えたい! やおいの道を究めたい!」  
そして俺を真正面から見詰めて、力説した。  
「あの部長の心には、立派なおちんちんがあるに違いない。私も心のおちんちんを育てたい!」  
眼鏡の下の両眼に、炎が見えた。  
馬鹿だ……馬鹿がいる……  
そこでふと我に返ったらしい腐女子は、俺に言った。  
「そうだ、拓に見て欲しいものがある。  
放課後、だいじょぶ?」  
 
その日の放課後――  
北校舎4階は各種の専門教室が並んでいるが、放課後ともなると施錠されて使われていない教室がほとん  
どだ。当然、この階のトイレ利用者もほとんどいない。  
周囲を見回し、人のいないことを確かめてから、女子トイレに滑り込む。  
メールの打合せどおり、弥生が待っていた。  
「じゃ、こっちへ」とだけ言って、弥生は一番手前のボックスに俺を引き込んだ。  
洋式トイレの内側で二人きり、ドアが施錠される。  
「どうするんだ?」  
小声で尋ねる。  
「もう、練習始めてるんだよね。見てくれる?」  
言うなりスカートの内に手を入れて、弥生はパンツを引き下ろした。  
 
こんな関係だから、パンツを脱ぐ弥生の姿は幾度も見ている。  
だが学校の、しかも狭いトイレで、となると初めてだ。  
彼女はそのまま壁に手を突いた。俺は無言で彼女の尻に掛かったスカートの裾をめくる。  
あまり肉は厚くない小さめの尻。いつもながらきれいだ。  
しかし、その尻たぶの窪みが股間に落ち込んだ位置……肛門の場所には、奇妙なものが見えた。  
「……これは……」  
「アナルプラグ。おととい通販で注文して、昨日着いたの。初めて付けてきてみた。  
慣らしてる途中だから、まだあんまり太くないけど」  
「じゃ、今日はずっと着けてたって事か?」  
「まずは拡張しないとね。ちょっときつかったけど、まあまあ慣れてきた」  
……なんか、あきれた。  
だが、幾度かの交わりで見慣れた可愛い割れ目の上に、赤い異物がちょこんと飛び出している様子は、何  
だかエロティックで、微笑ましい。  
俺の股間で分身が膨れ上がっている。  
「なあ、抜いてみていいか?」  
「えっ?」  
「尻の様子を見てみたい」  
 
弥生が息を吐くのに合わせ、俺はシリコン製のその道具に指をかけ、ゆっくりと抜き出し始めた。  
肛門の周囲のしわが伸び、俺の中指よりはちょっと太い程度の、ルビー色をした透明のアナルプラグが姿  
を現した。  
「あんっ」という弥生の嬌声と同時に、ちゅぷっと音がした。  
プラグの細い尖端までが外に出てくる。  
塗り込まれていたとおぼしきローションが、糸を引く。俺はトイレットペーパーでその糸を断ち切った。  
肛門はちょっと開いていたが、すぐに収縮していった。弥生が軽く息を切らしている様子がわかった。  
手につまんだプラグを眺めた。  
そんなに長い物ではなく、側面から見ると中央部が太くなったダイヤ形をしている。  
表面はローションと、弥生自身の腸液らしい液体で濡れている。  
俺はそのプラグを注意深くトイレットペーパーでくるんで、ナプキン用ゴミ箱の蓋の上に置いた。  
「尻に指、入れるぞ」  
「いいけど、ゴムは? 指汚れるよ」  
「持ってる。大丈夫だ」  
 
俺は自分の右手の人差し指と中指を重ね、そこにゴムを被せた。  
それから、ゴムに包まれた指を自分の口に入れる。ラテックスの変な味がするが、毒ではないから大丈夫  
だろう。我ながら何をやっているのだ、という気はするが。  
プラグを抜かれて窄まった弥生の尻に、ゴム付きの指を当てる。  
ゆっくりと挿し入れて行く。温かい粘膜の感触が伝わってくる。  
が、どうも余裕が無さそうだ。  
「あ、ちょっとやめて。きつい」  
弥生自身が制止した。  
俺はちょっと考えて、言った。  
「俺のチンコが入るだけの拡張ができれば、それで十分だろう。  
けど、まだきつそうだな。無理はしない方がいい」  
それから、俺たちの初めての時を思い出して、意地悪に言ってみた。  
「でも感じることは感じるんだろ?」  
言うなり俺はゴムから人差し指を外し、中指のみにすると、改めて弥生の肛門にあてがった。  
中指1本ならプラグよりは細い。指は尻穴に吸い込まれるように潜って行く。  
「はぁぁぁぁぁ……」  
弥生の吐息は、明らかに快感を表すそれだった。  
ゆっくり、ゆっくりとストロークさせる。ローションと、ゴムの滑らかさによって、中指はスムーズに抽  
送できた。  
弥生の細い身体が、肛門の愛撫にわななくのが感じ取れた。  
肛門の直下に見える赤い蜜壺が、さっきより明らかに濡れそぼっている。  
俺は唾を呑んだ。  
弥生は振り返らず、小声で言った。  
「拓……いますぐ、したい。  
ゴム、まだあるんでしょ?」  
俺が言いたかったことを、彼女が先に言ってくれたのは、嬉しかった。  
 
弥生を壁に向かわせたまま、俺は既に臨戦態勢になっていた自分の分身を、ズボンの中から引き出す。  
新品のゴムを装着した硬直は、張り切った亀頭を先導に、濡れた谷間へと潜り込む。  
「あああああ……」  
二人揃って、吐息を漏らした。  
これが一つになれる瞬間の歓び、という奴だ。  
「拓ぅ、いい……」  
「俺もだ。奥まで、熱いぞ」  
お互い低い笑い声を交わした。彼女は後ろからされるのが好きだ。  
弥生の胸元に手を伸ばし、ブラウスのボタンを一つ外す。  
「ごめんよ」  
開いた胸元から、右手をブラジャーの下に差し入れ、胸をまさぐる。  
ゆっくりと腰を使いながら、小さく「うふふ……あはっ」と密やかな嬌声を上げる弥生に言ってやる。  
「おまえのむっつりスケベなところ、好きだぞ」  
「あっ、人のこと、言えないでしょ!」  
と、その時だった。  
足音が近付き、ドアのきしむ音がした。  
俺たちは動きを止め、息を詰めた。  
 
四つ並んだボックスのうち、一番離れたところまで歩き、ばたんと入る音、施錠する音。  
下着を下ろす衣擦れの後、水資源を無駄にする「音隠し」の水洗音が響いた。  
俺はすかさず、激しく身体を動かす。  
弥生が驚きながら、必死に声をこらえつつ感じているのがわかる。  
「んんーっ!むううーっっ!!」  
ほどなく、離れたボックスの水洗音は衰えてきた。俺は身体を止める。  
カラカラとペーパーを取る音、それでごそごそ紙を使う音がしてから、衣擦れの微かな音が聞こえた。パ  
ンツを引き上げているのだろう。  
生徒か教諭かはわからないが、彼女も自分が一連の排泄行為を行っている数メートル隣で、セックスして  
いる男女がいるとは、まさか気付くまい。  
再び水洗音。今度は排泄物を流す本番の水洗だ。  
俺もさっきより更に深く突いた。  
「んっ! んんん!!」  
弥生が声を殺して快感に耐えている。  
水音の減衰と共に俺は止まる。弥生は浅く息を吐いている。  
個室ドアの開く音と足音、洗面台を使う短い水音の後、戸口のきしみが響いた。  
人気が消え、低い換気扇の音だけが残った。  
 
肩越しに振り返った弥生は、顔を汗だくにしている。  
「た、拓……なんて危ないことするのよ!」  
「だっておまえ、感じてたろ? 女子トイレに俺を連れ込んだのはおまえだし。スリルがあった」  
笑って応えてから、絶頂の近さを予感しつつ、腰をたっぷりストロークさせる。  
俺の身体に慣れてきてくれた弥生の膣は、熱くとろけそうな感覚で俺を包み、軽く収縮する。  
「ひどいよぉ……あっ」  
ほどなく俺たちは、無言のままうめきを上げて、同時に達した。  
床に弥生の吹いた潮のしぶきが散る。  
 
めいめいに、濡れた部分をトイレットペーパーで拭った。  
使用済みのゴムとその包みを、弥生手持ちの生理用品用ビニール袋に片付ける。校内ではまずいから、後  
で公衆トイレの汚物箱にでも捨てさせよう。  
「弥生、プラグの件だけど」  
俺はズボンのファスナーを上げながら、便座に腰掛けた弥生に言った。  
「慌てない方がいい。夜、寝ている時だけ装着していても十分だと思う。  
拡張は必要だけど、四六時中装着していると、かえって緩みすぎて良くないんじゃないか?」  
「やっぱ、そうかな。一日中違和感が抜けなかったんだ。タンポンとは全然違うよね……」  
そりゃ当たり前だ、これは明らかに異物だ。  
「とりあえず挿れ直しておく。いいか?」  
弥生はうなずいて立ち上がり、またも壁に手を当てつつ、後ろ手でスカートをめくり上げる。  
プラグをペーパー包みの中から取り出して右手で持つと、俺は左手に取ったペーパーに唾液を垂らし、プ  
ラグをペーパーにこすりつけて唾液を表面に塗り広げた。  
「挿れるぞ」  
「うん」  
俺はプラグを弥生の小さなすぼまりにあてがった。  
大きく息を吸った弥生が、息を吐く。それにタイミングを合わせてプラグをぐいっと押す。  
「ひっ、あっ!」  
弥生の短く、愛らしい悲鳴。  
可愛い肛門が、瞬間的に赤いプラグを呑み込んだ。  
その瞬間、俺は明らかな嗜虐心を感じた。  
 
駅への帰り道を並んで歩く。  
ああ、青春。  
「締め切りまでは、2週間だったな?」  
「うん。漫研に頼む挿絵は、絡みシーンはあきらめて、それ以外のシーンにしてもらった。それで何とか  
時間は稼げたよ。  
できれば、あと10日ぐらいで……」  
「10日か……夏休みに入るな。だが時間がない」  
こうしている間も、弥生の肛門にはプラグがはまり、両脚の動きに圧迫されながら筋肉を緩める働きを続  
けているのだ。変態。  
俺は前を向いたまま、弥生に言った。  
「2、3日は、しばらく今のを装着して慣らしていくのがいい。今度の土曜、おまえんとこに行くだろ?  
それまでに、もうちょっと太いのを調達してくる」  
弥生がびくりとした。  
「わかった……お願い」  
そしてしばし無言で歩いたが、なぜかフフフ、と笑った。  
「楽しみにしてるから」  
 
妙にいやな予感がした。  
 

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