「……」  
 
 さて、どうしたものだろう。  
 目の前の女性は、つい先日まで召使として仕えていたはずの人であり。  
 旦那様と文字通り骨肉の死闘を繰り広げ、奥方の調停でようやく決着をつけ、めでたく結ばれた愛しい人であり。  
 そして…………そして。  
 
「…あ、あまり…見ないで、くださる…?」  
 
 自問自答を繰り返す。確かこの愛しのお嬢様は、ようやく一緒に初夜を迎えたこのお嬢様は、小さい胸がコンプレックスだったはずだ。  
 だのに、それなのにだ。  
 上着の向こうにはあの可愛らしい膨らみが…などと思っていたのだが、まず見えたのは幾重にも巻かれた包帯の白であり、そしてぽかんとする自分の視線を受けつつ、この方は真赤になりながらしゅるしゅるとそれを紐解いていったのである。  
 
「…なあ、それ……」  
「し、仕方ないではありませんかっ…こうしないと、…その…」  
 
 その向こうから顔を出したのは、それはもうたわわに実った果実であったのである。  
 
「い、いやらしい目で…見られるんですもの……」  
 
 普段なかなか強気な口調を保つこのお嬢様、首筋まで朱に染めて視線をそらしている。  
 なるほど、さすがにこのサイズだと街行く男性の視線を集めること請け合いだ。もともとが人形のような顔立ちなだけあって、世のカップルの4割くらいを崩壊に追い込んでもさほど不思議ではないだろうその存在だが、これがおそらくもう2割ほど増えることだろう。  
 と、ちょっと気になって聞いてみる。すると、こう返ってきた。  
 
「俺はいいの?」  
「あ、貴方は別ですっ! …あ」  
 
 …嬉しいことを言ってくれる。  
 
「い、今のはその、こ、言葉のあ、あ、あ、あやというっ」  
「ま、大体そういう意味ってことでOK?」  
「う、ううっ…ばかぁ…」  
 
 
 とまれ、それはそれとしておっぱいだ。  
 そろそろと手を伸ばす。一応女性経験皆無という訳ではないので、逸る気持ちを抑える位には余裕があった。…正直に言うと、結構厳しいのだけれども。  
 
「…あ……ぁ………」  
「…まだ触ってもないんですけど」  
「っ、〜〜〜〜っ!」  
 
 手がゆっくり近づくのを見てなにやら声を出したお嬢様、そう指摘すると真っ赤になって恨めしそうにこちらを睨んでくる。  
 
「……」  
 
 何と言うか。あれだ。  
 男は皆すべからく、加虐と征服に多かれ少なかれ喜びを持つという、あれだ。好きな女の子ならなおさらである。小さな頃初恋の女の子に悪戯して困らせて、気を引こうとしたことは誰にでもあるだろう?  
 つまりだ。このお嬢様、見事に俺のハートにどストライクな仕草をしてくださったわけでして。  
 と言う訳でもう辛抱たまら無くなってきたわけだ。理性は残っているが、それも結構レッドゾーン。  
 
「ひゃっ!」  
 
 不意打ちを敢行。乳肉を堪能するよりも前に、先に桜色の突起を摘まんでやる。  
 胸の下から伸びていた手が急に進路を変えたためか、ぴくんと跳ね上がる顎の上、小さく開かれた口からは驚きの声も混じっていた。  
 
「くひゅっ…な、何…これっ…」  
「乳首ですが何か。…というか、自分で触ったこと、ないの?」  
「そ、そんな、自分でなんて、破廉恥な事っ」  
 
 (´・ω・)ん?  
 
「……ひょっとして、さ。お嬢、イッたこと、ない?」  
「いっ…た? 何処へですか?」  
 
 息が少々荒くなったお嬢様、呼吸のたびに上下する胸を前に、俺は自分の目が点になるのがはっきりわかった。  
 
「……一人でこういうこと、したことないのか?」  
「一人でって、そんな……ひあっ!」  
 
 たゆたゆと揺れるおっぱいに手をつけながら考える。ということはあれだ。その、自慰、したことないのか。  
 どういうことだ。初めてということは本人から聞いていた、ならば丸きり知識が無いということではあるまい。それともひょっとして、一人で気持ち良くなれるということだけ知らなかったりするのか。  
 
「きゃ…あっ……はぁ…!」  
 
 本当に豊かな果実、しかし感触はゴム毬みたいに弾力がある。押し込めば指は埋まり、力を抜くと押し返してくる。  
 力を入れるたびに快感の吐息が漏れ、引くとどこかほっとしたような、しかし切なそうな視線を混ぜて、自分の胸を揉む指を見つめてくるのだ。  
 
「ふぅっ……んん、……、あ、の…」  
「ん」  
「さ、さっ…きのも、………いっ、しょに」  
「…?」  
「でっ、ですから、そのっ……ち、ちくびもっ……」  
 
 …切なそうにそんなことを言うな。  
 たまらんではありませんか。  
 
「お嬢、ちょっとこっち」  
「何を…ゃっ、う、後ろからなんて…」  
「こっちの方が触りやすいし。…あと、ちょっと教えたるから。一人でするやり方」  
 
 弄ってやる以外の選択肢があろうか、いやあるまい。いじめ的な意味で。  
 胸の中にすっぽりと埋まる身体を抱きよせる。背面座位の格好になって、俺は後ろから手を伸ばした。  
 
 
 今は亡き親父殿、御袋様。  
 閻魔様の面接はうまく切り抜けられたでしょうか。まあ善良なあなた達のことだ、特にそこまで心配はしている  
訳ではありませんが念のため。  
 でも別に最後の審判を受けなくても、この世に天国はあったようです。最近それを知りました。  
 
「こう、ですか? …ふぁ…た、確かに、じん、じんって…」  
「む、やっぱりまだ胸の方がイイか。じゃ」  
「きゃっ! で、ですからそんな、いきなりっ…ぁ、ぁ…」  
 
 これを至福と言わずしてなんと言おうか。好きな人のたわわな果実を後ろから揉みつつ、気持ち良さに戸惑う彼  
女に保健体育の実習(性的な意味で)という、この誰もが羨むシチュエーションを!  
 
「お嬢。もっとこう、大きく揺らしてみ」  
「え…? …ひゃんっ! な、何、いまっ…んあ、ぁ、や、やだぁ…」  
 
 純粋無垢な愛しのお嬢様、なんだか疑問に思われているようだが、知識が無いためか割りと素直に言うことを聞  
いてくれる。実際気持ちいいのかもしれない、女の子座りになってしきりにシーツに腰を擦り付けていらっしゃる。  
 スカートを押さえているため両手は足の間に挟まれている。後ろからなのでよく顔が見えないのがあれだが、  
でも時折振り返って見せるその瞳は、未知の感覚への不安と期待に濡れていた。  
 気分は、そう。白雪姫に毒リンゴ持ってきた魔女に近いかもしれない。その毒は実をいうと、大変いやらしい  
ものであったりするのだが。  
 
「うぅ…何でこんなに、詳しいんですか…」  
 
 プライドの高いお嬢のことだ。完璧に主導権を奪われたのが悔しいのか、火照った顔に恨みの視線を乗せて振り  
返ってくる。  
 別に詳しくなどありません。あなたが知らなさすぎるだけなのです。  
 
「世間ではまあ、一応常識の範囲内。経験の差もあるけど」  
「…他の女の子で、練習したんでしょう」  
「まあ、うん…こ、こういうことするのは、お嬢が最後だから、許しておくれ」  
 
 そんなことを言うのは何とも照れ臭さのキワミだが、本心だしそこは甲斐性。言わねばなるまい。  
 
「わ、わかり…ました、仕方ありませんねっ」  
「ん…ん。追及がなくて安心」  
 
 うつ向く顔が真っ赤になるのが分かる。あっち向いてるお嬢も、声からして明らかに嬉し恥ずかしである。  
 
「…そ、れで、次は…?」  
 
 そこに気をよくしたのか、これまた素直に続きを聞いてくる。  
 気持ちよさへの期待、あと恥ずかしさ。そんな表情に頭が湯立ちそうになるのを、ケダモノになるのはまだ早い  
と必死で押さえ込む。  
 でももう少し触ったり揉んだりキスしたりしたいかな、ということで、とんとんと自分の太ももを叩き、俺は言った。  
 
「乗って」  
「え…は、はい…」  
「や、今度はこっち向いたまま」  
「こう、ですか…?」  
「そう。そのまま、動いてみ」  
 
 少し膝を立ててやる。  
 すると、そこにお嬢が跨がってきた。おずおずと、ゆっくり腰を下ろし、もうまるで意味を無くしたくしゃくし  
ゃのスカートの中、純白の清楚な下着が、黒い執事服の上に着陸する。  
 布越しに明らかに水気を帯びており、しかもそこだけ熱病に冒されたように熱い。その感覚に理性が焼ききられ  
そうになるのを必死に堪え、今はまだ保健体育せねばなるまいと言葉を紡ぐ。  
 
「は、はぁ…はっ……あ、は……い、いい、ですっ…!」  
「一人でしたくなったら、こういうふうに…って、聞いて…ないし」  
「あ、あっ…な、何、ですか? 何か、間違って…んぅっ」  
「や、大…丈夫。気に入ってくれて、何より」  
 
 すると、お嬢はゆっくり、そして小刻みに、しかし暫くすると慣れてきたのか少しずつ大きく、腰を揺らしはじ  
めた。四つん這いに近くなった下から、それでも垂れることのない若々しい胸を揉んで差し上げる。  
 …白状しよう。  
 可愛いです。めっちゃエロ可愛いです。  
 だって、考えてもみて欲しい。  
 俺の大好きなお嬢様が、俺におっぱい揉まれて感じてて、発情しきった表情でお尻を擦り付けて喘いでるんで  
すよ? しかも俺の足に。  
 
「べ、つに、気に入って、なんかっ」  
「一人でしたかったら、枕とか使うといい。直接触るのは…おっぱいの方がよさそうだし」  
「ふやっ、で、ですから、いきなりは駄目と何度もっ」  
「お嬢、やーらかい。…ん」  
「なっ、そんな、赤ん坊みたいに…やぁっ、す、吸っちゃ…駄目ぇ…!」  
 
 俺、あとどれだけ我慢できるだろうか…  
 
 
「やっ、やぁ、やだ、な、何か、きてっ…は、はあぁ…ッ!!」  
 
 あ。  
 
「あーっ! あ、あ…っは、あ―――ッ!!」  
 
 そうこうしている間に、何やらお嬢が、その。  
 達してしまったらしいです。  
 
「…………う、」  
 
 うめくしか出来ない。  
 上り詰める直前にしがみついてきた手足が、びくり、びくりと震えて緊張と弛緩を伝える。  
 合わせてお嬢の小さな唇も、はっ、はっと熱い息を、声を漏らしている。  
 こんな力が何処にと思うほど強烈に挟み込まれた右足のズボンに、灼熱の液体が、おもらしをして  
しまったかのように染み広がる。しかし失禁した臭いは無く、つまり――  
 
「…お嬢、好きだ」  
「は…ん、…んん…っ…」  
 
 官能の証に、自分の体で感じてくれた事実に、もうたまらなく愛しさが込み上げてきて。  
 俺はまだ絶頂の余韻も冷め遣らぬ、震えるお嬢様の唇を奪った。  
 
「…ば、か」  
「ん」  
 
 唇を離したお嬢様の顔は、汗で髪が貼りついていた。  
 手で払ってやると、いつもの端正な顔が、紅潮した状態でそこにあった。目は潤み、唇は濡れ。  
 もう。  
 何とも、煽情的。  
 
「どう?」  
「…すご…かた、です」  
「ん、満足………でもない、けど」  
 
 股間を見る。執事服の向こう側、我が息子はもう元気を通り越してズボンの中で暴れまくっていた。  
 
「じゃ……じゃあ…」  
 
 ぽふ。そんな音を残して、胸元に自分の頭を預けて。  
 抱きしめてやると抱き返してきて、見つめると視線を返してきて。  
 …そしてお嬢様は、こう言った。  
 
「い、いっぱい、していいです…から…わたくしで、鎮めて下さい」  
 
 上目づかいに、林檎みたいに真っ赤っ赤に頬を染めて。  
 おずおずと、切れ切れに、ものっそい恥ずかしそうに。  
 
 …キタ。  
 
 これはキタ。  
 
 理性と欲望の、熾烈な戦い。最後まで決死の抵抗を続けていた理性軍の、全力で振られる白い旗を、  
見たような気がした。  
 
「わ、わ、わたくしは、しなくても構いませんのよ? で、でも、貴方が望むなら…ひゃんっ…な…何するのよぉっ……」  
 
 簡単に言えば、プッツン来てしまったのである。  
 
 
〜以下、音声のみでお楽しみ下さい〜  
 
 
「あーっ、あ、ああッ!!」  
「っあ…大丈夫か…?」  
「あ、あぁ、は…こ、こんなのっ、き、きもちいっ…は、あぁぁッ!!」  
「…痛くないの?」  
「はっ、はいっ、でも…中が、しびれて…あ、ぁ、ぁっ」  
「ん。動くよ」  
「動くって…ひゃ、ああっ! こ、こすれてッ、や、やあ、あんっ!!」  
 
 
「騎乗位、大丈夫? 気持ちいい?」  
「…おくに、当たって…んあっ、い、いやっ、腰、止まりませんっ…」  
「…壮観。おっぱい揺れてるし」  
「み、見ない、でっ…ばかぁっ……」  
「ん。ここ触って」  
「っ……きゃっ! い、ま、何か…」  
「乳首といいクリトリスといい、お嬢は出っ張ってるとこが弱いらしい。おっぱいも良さそうだけど」  
「そんな、ことっ」  
「お嬢、そんなに締めると直ぐ出る。……、まだ一回目だからいいけど」  
「やっ、やだ、おっぱいぎゅってしちゃやだぁ…!」  
 
 
「あーッ! あーッ! あーッ!」  
「ん…っく、出そう…」  
「あ、ああ! き、きもちい! あああきもちいっ!!」  
「お嬢…愛してる、っ…く!」  
「あッ、んああ! す、すきっ、すきっ! だいすきっ! あ、ああ、あああ……ッ!!」  
 
 
………。  
 
 
「…お嬢、初めてなのに…すごかった」  
「……るさい」  
「お嬢も、結構絶倫?」  
「う、うるさい、すけべ、けだものっ!!」  
 
 力が入らないらしく、枕でぽこぽこと叩いてくるお嬢様だった。  
 でも幸せ。そんな夜でした。  
 
了  
 

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