地下鉄の中は、少し混み合っていた。  
 車両には男性が多く、世間的には夏休みだというのに、朝10時の電車の中には、  
サラリーマンや学生様々な人種が入り混じっていた。  
 聡は、眉間にしわを寄せると、ふぅとため息をついた。  
(じいちゃんち、自転車で行けば良かったな…)  
 暑さに負けて電車にしたが、混雑は予想外だった。一学期終了間際からイライラ  
することが、多かったがそんな気持ちに拍車がかかる。  
 
「わっ、私あんまり、二人で話したりしたくないの。」  
 紗枝は小さな声で呟くと、ツインテールと大きすぎる胸を揺らして、逃げるように  
教室から出て行った。  
「なんなんだ、それはよぉ。」  
 一学期最後の日のことを思い出し、聡の胸はムカムカとざわついた。  
 おまけに、通知表の成績も散々だったために、母からゲーム機もとりあげられた。  
(じいちゃんにお願いして、なんとかしてもらえないかなぁ。)  
   
 あちこちから聞こえるヒソヒソ声が、聡の心を車内へと戻した。  
「やっぱ、あの子乗ってきてるな。」  
「でけー乳してるよな。幾つだろ。」  
「いっぱいモミモミされてるんだよ。」  
「小?中学生?男知らなきゃあんな乳してるわけねぇよ。」  
「おれもチュウチュウしてぇー」  
「さぁ。今日は誰が始めるかな?」  
「オレも参加しちゃおっかな」   
「犯罪だから、やめろって。見学見学。」  
 特に混みあった乗り口のコーナー付近で、男達が騒ぎ出す。  
(うるせーな大人は。……こいつらまさか、痴漢か?)  
 少し身体をずらすと、男達の影に紛れるように、細い少女の身体が見えた。  
 大きな、ドッチボール位はありそうな胸が、胸にアップリケのついたポロシャツを  
突き上げている。  
 何が始まるかと目を凝らしていると、背後から男の手が現れ少女の胸に触れた。  
 
(まじかよ!)  
 
 聡が息を飲むと、その間にも少女の身体に、色々な方向から手が忍び寄ってきた。  
 ポロシャツの上から大きな胸を包み込むように手が握りこんでいく。  
 横から伸びた指は胸の先を、弄ろうと指先を動かす。  
 もう片方の胸は下から持ち上げるように、揺らされている。  
 話し声は大きくなるが、だれも止めようとはしない。  
 徐々に大胆になる数本もの手は、やがてポロシャツのボタンをあけようとした。  
 少女が微かに身を震わせたのか、手の動きは一旦止まったかに思われたが、広げられ  
た襟元から、手が忍び込んでいった。  
 聡は、親友の勝也の家で見た、アダルトビデオさながらの光景に呆然と目を奪われた。  
(すげぇ!こんな事ってホントにあるんだ!)  
 
「…んっ。…―やぁ。」  
 
 少女の声らしき小さな哀願する声が聞こえたが、煽られたように男達の手の動きは、  
ますますひどくなった。  
 携帯電話を持ち出し、ポロシャツからもう少しで見えそうな、少女の胸を撮影するも  
のまでいる。  
 (ちょっ!止めさせた方がいいだろうけど、子どものオレがどうすりゃいいんだ…)  
 少女の頭がガクンと垂れて、震える。ふっと、あげたその顔は…  
 
「紗枝!!」  
 
 大きな聡の声に、車内のざわめきが静かになり、男達の手も止まった。  
 強引に人ごみの中に聡が突っ込んでいくと、涙を浮かべた同じ5年1組の西山紗枝が、  
そこにいた。  
 タイミングよく開いた扉に、紗枝の手をつかみ聡は二人で車内から逃げ出す。  
 無我夢中で走り、改札口をぬけると、そこは祖父の最寄駅だった。  
「た、……助かったぁ。」  
「……。」  
 蒼い顔をしたまま、紗枝は聡の手を握り返し、がたがたと震える。  
「じいちゃんち、ここからすぐだからさ。とりあえず、行こう!」  
「…ん。」  
 紗枝は搾り出すように声を出すと、聡に促されて歩き出した。  
 
 
 手を繋いだまま、顔も見ずに聡は紗枝に問いかけた。  
「いつも痴漢にあってたのか?」  
「……うん。」  
 紗枝はまだ、ショックから覚めないようで、元気が無かった。  
「―なんで時間変えて、他の電車に乗らなかったんだよ。」  
「か、変えたもん。でも、あの時間が塾に間に合うぎりぎりだったから。」  
 大人しい巨乳の少女は、男達の格好のターゲットだったのだろう。  
 聡はいくら胸が大きいとはいえ、見知った同級生の小学生が、あんなAVまがい  
の目に遭っていた事に、衝撃を受けた。  
(……可哀想だ)  
「早く助けてやれなくて、ごめんな。」  
「ううん。私嬉しかったの。…ありがとう。」  
 
―ぽつり。  
 
 夏の天気は変わりやすく、急に大きな雨粒が落ちてきた。徐々に数を増し。二人を  
どんどんと濡らしていく。  
「やべっ!!走るぞ!」  
「うん!」  
 雨の中を走りぬけ、やっと祖父の家に辿り着いた時には、二人してずぶ濡れだった。  
 インターフォンを何度押しても、祖父がすぐには出てこない。  
「じいちゃん、開けてよ!聡だよ!」  
 何の反応も無いので、仕方なく合鍵を隠してある植木鉢の下に手をやり、鍵をあけて、  
中に入った。  
「お〜い。いないの〜」  
 台所に入ると、壁のカレンダーには、今日の日付でデイケアでの慰安旅行と2泊3日  
の予定で書かれていた。  
「ちぇっ。なんだ旅行かぁ。」  
 振り返ると濡れねずみの紗枝が、小さく震えていた。  
 ぴったりとポロシャツが大きな胸にはりつき、寒さで過敏になっているのか、真ん中  
辺りが二つツンと突き出ている。  
 寒そうに両腕を抱えている為に、胸ボタンのあいたところから深い谷間がムニュウっと  
余計に強調され、黒い大きな目で聡を見上げる紗枝に、目が釘付けになった。  
「ふ、風呂貸してやるから。先に入って来いよ。」  
「先に聡くんが入って。」  
「いいから、震えてるだろ。とっとと入って出て来いって。」  
 紗枝の背中を押して、バスタオルを渡して、風呂場に押し込んだ。  
 すまなさそうに紗枝は軽く頭を下げ、いない祖父に小さな声で告げた。  
「ごめんさない。お風呂使わせて頂きます。」  
 
 
 紗枝は熱いシャワーを浴びて、ほっと人心地ついた。  
 身体をつたう湯に、先程の男達の熱い太い指先を思い出し、思わず身震いする。  
 風呂場にあったボディーシャンプーを使わせてもらって、念入りに身体を洗い、汗  
をかいた髪もシャンプーでついでに洗った。  
「……聡くんに、汚いって思われちゃったかな。」  
 紗枝はぽつんと呟くと、胸の中が真っ黒になったような気がした。  
 
 以前、同じ1組の女の子達に痴漢の事を相談したとき、  
「ほんとにヤだったら、言えるはずじゃね?巨乳自慢のつもり?」  
「あんたのせいで他の子が被害にあうんだよ。迷惑だよ、汚らしい。」  
 からかい口調で、そう言われた。  
 紗枝は、両親の方針でテレビもマンガもゲームも禁止な家で育った。  
 周りの会話についていけないし、読書しか許されない紗枝の話題は皆には面白くない。  
 おまけに、大きな胸は同性の間に過剰なセックスアピールを感じさせ、男子達に媚び  
ていると一方的に反感を買った。   
 そんな時に音楽の時間、音痴の特訓のため先生に残されていた聡と紗枝は知り合い、  
徐々に距離が縮まった。  
 紗枝の物知らずさに、最初聡は驚いたが、逆に面白がって色々と教えてくれた。  
 そっと、放課後にゲームやマンガやテレビの情報が聡から伝えられ、紗枝はそ  
れを楽しみにした。  
 紗枝から聡に、分からない勉強の事などを教えることもあった。初めて自分が  
必要とされているようで、紗枝はとても嬉しかった。でも…  
 少しは会話についていけるようになった紗枝に、クラスの女子が貸してくれた  
マンガは刺激の強いセックスについて書かれているものだった。  
 娯楽同様に性についてもタブーとされていた紗枝は、人一倍自分の大きな胸の  
こととあわせて、性に関して臆病になっていた。  
 その夜、夢の中で聡が出てきて、二人はキスをした。マンガをなぞるように、  
服を脱がされ胸をもまれセックスをした。  
 目が覚めてから恥ずかしくて顔が赤くなった。パンティもおもらしをしたよう  
に濡れて一層イケナイコトを考えて、聡を汚したようだと紗枝は悲しくなった。  
 その日から聡の顔を見るのが恥ずかしくて、上手く話せなくなり「話したくな  
い」と聡から逃げてしまった。  
「私……ごめんなさい。」  
長い間考え事をした為に、湯にあたりすぎ紗枝はゆっくりと意識を失った。  
 
 なかなか紗枝が出てこないと思ったら、風呂場からゴン!という大きな音が聞こ  
えて聡は驚いた。  
 風呂場に走ると、全裸の紗枝が全身を紅く染めて、荒く息をつき床に倒れていた。  
呼吸するごとに二つの乳房が弾み、乱れた長い髪が濡れて光る身体に張り付き、思わ  
ず反応する股間に聡は戸惑った。  
 
「ぅ……んっ。痛ぁ」  
 紗枝が頭を軽く動かす。  
 聡ははっとして、紗枝を助け起こした。もちろんなるべく裸は見ないように、顔を  
背ける。  
 引きずるようにして、やっと和室まで連れて行き、布団をしき寝かせてやった。  
 なるべく熱を冷ますように、クーラーがない部屋の為、紗枝に扇風機をあてる。台  
所で水をくんできて飲ませると、やっと紗枝はしゃっきりしてきたようだった。  
「もぉさぁ、お前世話かけんなよ。」  
 股間の熱も治まったが、照れくささを消すように、紗枝を軽く責める。  
「あぁ、お前ほんとはオレと二人で話したくないんだよな。色々ごめん。」  
「わ、私……」  
「身体ヘンなところないか?ゴン!ってすげぇ音してたぞ。」  
「―…心臓がヘン。」  
「えっ!どんな風に?」  
「痛い。…触ってみて。」  
 紗枝が涙目で、聡を見上げる。聡はあの時の事を怒っているのだと思うと、紗枝の  
心臓がつぶれそうだった。  
「ちょっ、ちょっと、それは…」  
 聡もさすがに「うん!」と言えず、胸を触るのを躊躇ってしまう。  
 そんな聡の行動に、嫌われているから気遣ってもらえないのかと、紗枝はショック  
を受け、ポロリと涙をこぼして自暴自棄な行動に出た。  
 聡の手を強く掴み、自分の大きな胸に押し付ける。紗枝の心臓がドンドンと大きな  
音を立てて早いリズムを刻む。  
「う、わわわわわわ!」  
 一方聡は、紗枝の突然の暴挙に腰を抜かしながらも、初めて触れる異性の胸の感触に  
ドキマギしていた。  
(おっぱいって、柔らかいだけじゃなくて、なんかちょっと硬くて触り心地がいい。)  
 少し濡れた肌は湿って、聡の手のひらに吸い付くようだった。手を少し動かすとその  
刺激に紗枝のピンク色の乳首がツンと尖ってくる。  
「私の心臓、どんな感じ?」  
 涙ぐみながら紗枝が問いかけると、随分間の抜けた答えが返ってきた。  
「でかくて、気持ちいい。」  
「エッ?」  
「いやっ、すげぇ早い。病院行くか?」  
イヤイヤするように紗枝が首を振ると、身を起こして聡にギュッとしがみついてき  
た。  
「聡くんのこと、嫌いじゃないの。私、ヘンな事ばっかり考えちゃうから嫌われるっ  
て、思ったの。」  
 切羽詰った様子の紗枝に、聡はただ黙り込むしかない。  
「私エッチな事考えちゃったの。聡くんと…胸もエッチな事ばっかり考えるから、大  
きいんだ。」  
 
「お、オレはエッチなのは、そんなに悪くないと思うぞ。」  
「嘘!お母さんとか、みんな私の胸エッチだっていうもん!」  
「ほんと!うちの父さんエッチだから、人類はハンエイしたって言ったぞ。」  
「じゃあ、胸は……」  
 聡は、厳粛な表情で紗枝に父の言葉を伝えた。  
 
「男は、みんなオッパイが好きだ。」  
 
 紗枝の顔が真っ赤に染まる。俯きながら震えるように、聡に尋ねる。  
「……さ、聡くんは?」  
 聡は真っ直ぐに紗枝を見つめて、告げた。  
「もちろん、オレも大好きだ。…恥ずかしいから皆に言うな。」  
 
「聡くんは、エッチな事考えちゃう私でも好き?」  
 
 勇気を振り絞って、紗枝は聡に問いかける。もう告白も同然だ。  
(でも……ダメって言われちゃうかな。)  
 部屋にしばらくの間、沈黙が落ちた。  
 
「おっオレは、お前と話ができなくて、寂しかった。オレがテストで悪い点取っても  
お前は皆と一緒に笑わなかった。オレの話を喜んで聞いてくれた。」  
 聡は一瞬口を閉じると、紗枝に力強く言った。  
 
「オレもお前が好きだと思う。エッチも有りだ。おっぱいの大きなお前が好きだ!」  
 
 聡も紗枝を力強く抱きしめると、巨乳がムニィと二人の間で柔らかくつぶれ、聡の  
胸を圧迫した。  
 聡の股間がまた硬くなり、紗枝のお腹の辺りを押す。  
「さ、聡くん。なんか硬いの当たってる…」  
「悪い。お前のおっぱいが…」  
「―好きなら、もっと触っていいよ。」  
 大胆に聡の手をとり、再び自分の胸に押し付ける。  
「…嫌われてなくて、良かった。」  
 紗枝にとって、大事な友達が、恋人になった瞬間だった。  
 
そっと、聡の手が紗枝の大きな胸に、触れてくる。  
 聡が胸を持ち上げるように、両手ですくい上げると、ポヨンと大きく弾む。  
「柔らかくて、気持ちいい。」  
 両手がゆっくりと紗枝の二つの小山をもみしだく。徐々に紗枝の息が弾み、中央で  
小さなピンクの乳首が固く尖ってくる。  
「なんか…ヘン。くすぐったいみたいな、気持ちいいみたいな。」  
「じゃあ、もっと触るぞ。」  
「んっ!」  
 人差し指と中指で、乳首を軽く摘んだ。空いてる指と手の平はつかんだ胸をモミモ  
ミとなでまわす。  
 ピンピンに固くなった乳首が、ささいな刺激なのに紗枝に快感を強く伝える。  
「へ、……ヘン。やぁヘンだよぉ。」  
 モジモジと身体を震わせる紗枝を、聡は仰向けに寝かせて、大きな胸にかぶりつき  
頬をよせた。  
「いい匂い。いっぱい嘗め回したい。」  
「お風呂入ったけど、恥ずかしいよぉ。」  
 チュパチュパと乳首に吸い付き、胸を揉むのを止めない。  
「やぁ、…聡くん、あ、んっ、赤ちゃんみたいだよ…はっ、んん!」  
「男はみんな赤ちゃんだって、お母さんは言ってたぞ。」  
「そ…うなっ、…の」  
 聡がしつこく吸ったり舐めたり弄るので、紗枝の胸がピンク色になり、乳首の色も  
濃くなった。  
 紗枝は胸の刺激だけで、触れてもいないのにアソコがとても濡れてしまい、恥ずか  
しくてたまらなくなる。  
「あっ、あの…お願いだから、下は見ないで。」  
「なんで、…うわっ!ビショビショだぁ。」  
 聡が強引に紗枝の両足を開くと、うっすらとした毛から奥にかけて、ベトベトに濡  
れて光っていた。  
「もぅ…見ないでって、あ!んっ!」  
 聡が固いモノを紗枝のアソコにあてがって、入れようとしている。  
 なかなか、固さはあっても濡れすぎてるからか、入り口の花びらが固いためか入ら  
ずに、いたずらにアソコに先端をグリグリと当てられた。  
 紗枝のクリトリスが徐々に固くなり、プツンと小さな豆のようになる。  
「やぁ、…やぁ!オシッコでちゃう…」  
 紗枝が聡のモノを止めさせようと強くつかむと、指が滑ったために何度か擦りあげ  
る形になり、あまりの刺激に聡は暴発させてしまった。  
 紗枝の胸の辺りまで、白い飛沫が飛んでくる。  
「あつい!」  
 勢いが強すぎた為に、お腹から胸にかけて、白い粘つく液体でデコレーションしたよ  
うだった。  
 
 汗で濡れて光る大きな胸と白い液体。  
聡の身体の下で、紗枝が潤んだ瞳で睫を震わせた。  
「…ごめんね。」  
 なんだか、もっとエッチな事をして苛めてしまいたいような、気持ちにさせられる  
と、聡の股間が再び固くなった。  
「じゃぁ、じゃあさ…これ、おっぱいに挟んでこすってみてよ。」  
「な…そんな事して、気持ちいいの?」  
「前見たAVでおっぱい大きい女がしてた。良さそうだった。」  
 恥ずかしそうに紗枝は、頬を染めるとコクリと頷き、とりあえず胸に飛び散ったモ  
ノを拭こうとした。  
 慌てて聡は手を止めさせると、そのままでいいからとお願いした。  
「聡くんエッチだ。」  
「だから、汚いとか考えなくていいんだ。」  
「…うん。」  
 ニッコリと微笑むと、紗枝はおずおずとした手つきで、聡のモノを優しく胸に挟み  
込んだ。  
 紗枝の大きな胸が、聡を優しく包む。だが、優しすぎて今一つ物足りない。  
「あのさ、おっ、おっぱい自分で持ってギューって、挟んで揺らしてみて。」  
「もぅ…やだぁ。」  
 泣き言を言いながらも、紗枝は律儀に自分の胸を持ち、聡のモノを強く圧迫する。  
 そのまま、上下に聡の言ったままに、揺らすうちに、粘つく汁や固い聡のモノに、  
視覚で刺激を受けて、紗枝はたまらない気持ちになってきた。  
 聡も気持ちいいのか、時折軽くうめき、紗枝は自分の大きな胸がちょっとだけ、  
好きになった。  
「いい。紗枝すごく上手だよ。」  
「嬉しい、…もっと、もっと気持ちよくなって。」  
 胸の間からのぞく聡のモノがなんだか可愛くて、ペロリと舐めてしまいたくなって  
舌を伸ばした。  
 強く胸で擦り上げられ、先をチロチロと刺激されて、聡の二度目の暴発はすぐにやっ  
て来てしまった。  
「やっ!あぁぁ……。」  
 小さな悲鳴を上げた紗枝を、白い液体は汚し、ビュクビュクと胸にも再び降り注ぐ。  
「ひ、ひどい。顔にかけるなんて。」  
 さすがに紗枝も涙目で睨み付けるが、もとが優しい顔立ちのために迫力に欠けた。  
「……ごめん。もぅ、なんか、気持ちよくなりすぎて、止められなくて。」  
「―気持ち良かったんだ。―…じゃあ、許してあげる。」  
 聡が紗枝の顔を、テイッシュで優しく拭うと、仕方なさそうに紗枝は呟いた。  
 
 
 二人で交互にシャワーを浴びて汗を流すと、ガラス戸を開けて部屋に風を入れた。  
いつの間にか雨はやみ、地面が冷やされたためか、夕方の涼しい風が部屋を吹き抜け  
る。  
 冷凍庫に入っていたアイスキャンディーを二人で食べ、ぼんやりと外を眺めている  
と、紗枝がポツリと呟いた。  
「明日も、電車に乗るの、怖いな。」  
「……。」  
 そうだ。そもそも今日の発端の痴漢事件は、解決されていない。  
 聡は明日からの事を考えているうちに、いいアイデアが浮かんできた。  
「あのさ、オレ一学期成績悪すぎてゲーム、取り上げられたんだよ。」  
「うん?」  
 不思議そうに紗枝が小首をかしげる。  
「それでさぁ、お前の塾いい塾か?」  
 ピンときたのか、紗枝の顔が笑顔に変わっていく。  
「オレ、これから入れるかな。」  
「先生たちも、塾長も優しいし、途中からも入ってる子がいるから、大丈夫だよ。」  
 紗枝が弾んだ声で、聡に力強く告げる。  
「別にお前の為だけじゃないけど…、オレもバカばっかやってられないしな。」  
「一緒に行けると、嬉しいよ。」  
 聡の手を紗枝が、そっと握り締めて笑いかけた。  
「―まぁダメでも、明日からボディーガードしてやる。」  
「うん!ありがとう。」  
「…塾の帰りは、じいちゃんまだ留守だから、ここに来ないか?」  
「エッチ。」  
 紗枝が顔を紅くして、少し怒った振りをした。  
「ばか。エッチじゃないと人類はハンエイしないんだぞ。」  
 一瞬呆れたような顔をした紗枝が、大きな声で笑った。  
 聡は大きな笑い声と共に、ユサユサと揺れる巨乳を見て、あれは自分のものなので、  
絶対に守ってやろうと心に誓った。  
 
 
(おしまい)  
 

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