○26  
 掃除ロッカー内には箒や塵取りに雑巾の他、この教室は畳張りだというのに、なぜかモップやワックス缶の類までもが収納されていた。  
 500ミリペットボトルへ小分けにされたワックスまである。蓋はついておらず、ワックスの独特のにおいを狭い空間に充満させている。  
 そして今の三人の体勢は、ひどく窮屈なものだった。まず真理がロッカーの向かって右側に立っており、吊された塵取りをよけるため、いくぶん中腰の前屈みという不自然な姿勢を強いられている。  
 千晶と明は彼女に向き合うかたちで、ワックス缶とそこに置いた靴などの上に腰を下ろしていた。今度は明が真ん中で、千晶の膝上に腰掛けるような格好になっている。  
 もちろん明らかな過密で、三人は互いに密着せずにはいられなかった。  
「うわ、キツっ……」  
「てめ、明、真ん中で場所取りすぎだこのヤロ……ッ、もうちょいそっち寄れよ!」  
「無茶言うな……こっちももういっぱいいっぱいなんだよ。そっち大丈夫か、千晶?」  
「う、うん。ボクは平気……」  
 息苦しく、暑い。  
 しかし明の背中には、千晶の乳房が二つ裸のまま、その厚みを半分ほどに潰しながら圧してきている。そのあまりに具体的で魅惑的な感触は、少年から理性を奪い去るに余りあるものだった。  
 今や二人を隔てる布地は、明の着ている汗に濡れたTシャツ一枚。桜色の尖端を囲う乳輪をぷつぷつと彩る突起のひとつひとつさえ、手に取るように分かりそうだった。  
 そして額と鼻の触れそうな目の前には、Dカップも狭しとばかりにグレーのスポーツブラジャーを張りつめさせた真理の巨乳が二つ上向きに、威風堂々と影を落としている。  
 汗で張り付いたスポブラの布地はくっきりと真理の乳房を象っていて、むしろ裸身よりなまめかしく、その美乳の頂点をいっそ極端に思えるほど浮き上がらせていた。  
 引き締まったウェストからそのバストだけを大胆に突出させながら、その挑戦的な砲弾型の尖った丸みでボディラインにくっきりと陰影を刻むだけの質量を前に、この鼻先が触れるか触れないかの至近距離。  
 そしてこのアングルで見上げる真理の乳房は、これまた格別の破壊力を内包していた。  
「おっ、おおおおお……っ。すっ、すげぇなこりゃあ、オイ……っ」  
 そして明はそんな真理の下で、幼馴染みの美少女たちの四つの巨乳に囲まれながら、はちきれそうなほど勃起しきってしまった己が逸物の存在を悟られまいと必死に腰を避け続けている。  
 少しでも気を抜けば、ワックス缶といくつかの下敷きで上げ底された明の股間は、ホットパンツを穿いた真理の股間と接触し、その勃起を知られてしまうだろう。  
 そうして真理からひたすら逃れようと、必死に腰の位置を探り続ける明をよそに、不安定な中腰を強いられ続けている真理が苛立たしげに言い放った。  
「…………。何だよ。先生、ぜんぜん来ねえじゃねえか……」  
「真理は本当にバカだね。まだ二、三分も経ってないだろうに、そんなにすぐに来るわけないじゃん」  
「ンだとおっ!?」  
「おい、お前ら頼む! 後でいくらでもやり合っていいから、今は、今だけは静かにしといてくれっ!」  
「…………。なあ、明」  
「あん……?」  
「つまりだ。バレないように、『静かに』……やりゃあ、文句はないわけだな?」  
「……はぁ? 真理、お前いったい何言って――」  
「んぐっ!?」  
 明のすぐ耳元で、千晶がくぐもった悲鳴を上げた。  
 何事かと見れば真理が長いその手を回して、千晶の乳房をつねり上げているのだった。  
「なっ――バカ真理、何考えてんだ!?」  
「うるさいよ明。このままこうやって、静かにやり合えばいいんでしょ? やってやろうじゃん――あんたの言う、『静かな』やり方でさぁ!」  
 グレーのスポブラの向こう側で、犬歯を見せて真理が笑う。真理はさらに右手を進めて明の背中と千晶の乳房の間へ無理矢理に潜り込ませた。  
 
 そのまま四指を乳肉へ食い込ませると、乳房全体を外へ外へと掻き出しはじめる。  
「ほら、出てきたぁ!」  
「ひううぅっ!!」  
 真理のサディスティックな嬌声とともに、明の背中へ押し潰されていた圧力から逃れ、千晶の左乳房がぼろんっ、と虚空へこぼれ落ちた。  
 その円く豊かな乳肉を、真理は下半球からすくい上げるように握り込む。  
「あっ!」  
 びくんっ、と千晶の背中が跳ねた。まだ明の背中から掻き出されていない右の乳房がいっそう強く押しつけられる。  
「あっ、ああぁ……っ、真理ぃ、やぁっ、やだぁ……っ、や、やめろぉ……っ!」  
「ヤだ!」  
 真理はしばらく、まろび出てきた千晶の左乳首を人差し指と中指の間で指の腹に握ったり、転がしたりして弄んでいた。  
 だが、やがて右の掌全体に千晶の左乳房の尖端付近を包み込むと、その乳首にあてがうのを、指の腹から爪へと変えた。  
 そして、よりにもよって中心を――乳首の尖端に刻まれたその線を狙って、情け容赦なく突き刺していく。  
「ひはあああぁぅっ! やぁ! やあああぁぁぁーーーっ!!」  
「お、おいバカ真理! やめろ、やめろよお前っ!!」  
「えー。なんで止めなきゃいけないのぉ? 私、あんたの言うこと守ってるじゃん。静かにしろーって。むしろ今、さっきからうるさく喚いてるのって千晶のほうじゃね?」  
「……く……くそぉ……こ、こんなとこじゃなきゃ、ボクが真理なんかに……真理なんかに……ぃ……」  
「あはっ。何が『真理なんかにぃ〜』だよ」  
「ひゃううーーーぅっっ!!」  
 真理の鋭い爪が千晶の可憐な桜色へ食い込み、突き刺しながら押し潰した。全体を変形させながら、乳房の奥へ埋め込まれていく。  
 総じて敏感な千晶の乳房の、さらにその最も繊細な場所を狙う無体な攻撃。  
 真理が握力を加えるたび電撃されたように切なげにあえいで身体を揺すり、千晶は必死に声を殺しながら泣きむせんだ。  
「あはは、千晶ダッセー。ちょっとツネられただけでさっきからなんかヘンな声出して、半泣きのクセしちゃってさー……。ほら千晶、さっさと負けを認めなよ!」  
「なっ、何をぉ……!」  
 千晶は必死にその手をたぐり返し、真理の乳房を狙って反撃しようとしている。しかし両者の位置関係から、千晶は真理の乳房をまともに狙うことが出来ていない。  
 間にいる明が邪魔になっているのだ。それに、よしんば明が中腰になって千晶に幾ばくかの行動の自由を与えたとしても、二人にはそもそもリーチの差がある。  
 機動力でリーチの差を詰めることの出来ないこのロッカーの中では、この射程距離の差がそのまま二人の戦力の絶対的な差となっているのだ。  
 上からの有利な姿勢で長い両腕を繰り出し、自在に千晶の乳房を弄べる真理。下からそれを迎え撃とうとしても、反撃の糸口を掴むことが出来ない千晶。  
「やめ、ろぉ……卑怯だぞ、真理ぃ……あふぅ……っ、こんなの……ああっ……こんなところで、こんなことで、ボクと、決着、なんてぇ……っ」  
「うわ、何その鼻声? やっぱ半泣きじゃん千晶。まあ、悪く思わないでよねー……こういう弱点責めって、決闘の立派なセンジュツってやつなわけだし。そうだよね、明ぁ?」  
 序盤に全体の流れを決定づけた『心理戦』のことをまだ根に持っているのか、真理は当てつけるように明へ言い放った。  
「……ひっ……あうっ、ふうううう……ぅっ、こんな……こんなぁ……っ……」  
「…………!」  
 ひどい熱を帯びた千晶の荒い息づかいが耳にかかり、必死に押し殺そうとしても漏れ出す悲鳴は切実さを増していく。  
 明の背中で潰れる千晶の右乳房は、その頂をむくむくと尖り勃たせて、けなげに逃れようとする千晶の足掻きにつられて動き回り、明の骨に押しつぶされている。  
「やだ……こんなの……こんなの、やだああっ……おかしくなっちゃう……そんなにオッパイいじめられたら……ボク、おかしくなっちゃうよぉ……っ!」  
 
 ぐっ、と明のうなじへ押しつけられた千晶の頬に、明は汗と異なるなにか――大粒の滴を感じて静かに、しかし力強くその拳を握りしめた。  
「……真理」  
「はぁ? 何? 明」  
 明の背中へいっそう強く押しつけられている、そこに残された千晶の右乳房。  
 そこに帯びた熱の強さ、いっそう大きく張りつめながら、堅く尖り立った乳首が伝えてくる息も絶え絶えの少女の鼓動がその瞬間、明の針を振り切った。  
「お前。俺の言うことを破ったな? 立会人として決闘のために俺が決めたルールを、お前はここで破ったな?」  
「はっ……ルールぅ? 今さらそんなの、どうでもいいでしょ。もう決着ついたんだし。そっからじゃ見えないかもしんないけど、千晶もう完璧に涙目なんですけどー。  
 ――負けたことをしっかり理解してもらったら、そうだ、後で私の靴でも舐めてもら――うっ!?」  
 左手で弱々しい千晶の反撃をあしらい、右手で千晶の左乳房を自由に責めなぶりながら、真理はびくん、とその身を震わせた。  
「はっ、……はあぁぁぁ!? ちょっ、明、お前このヤロ……いったい、一体ナニしてくれようってのよ!?」  
「決まってるだろ? 今から立会人として、ルール違反の馬鹿を……制裁するんだよ」  
「ひあっ!?」  
 言いながら腰を上げ、明は真理の背中へ両手を回す。同時に胸へも頭を突っ込んだ。そして手探りののち、明は真理の背中でスポーツブラジャーのホックを外す。  
 Dカップの巨乳それ自体の大きさによってしっかりと捉えられ、また汗で肌に張り付いてもいるスポブラは、それだけで真理の乳房から外れることはなかった。  
 しかし明は、その張りつめた二つの傲慢な肉塊の間へ顔を突っ込む。  
 そのまま左右の乳肉へ頬を擦り付けながら口元へ寄せると、はぷっ、とその内側に包まれている乳肉ごと、スポブラのカップを噛み、口に含んだ。  
「ひゃんっ!? なっ、なに! なにぃっ!?」  
「逃がすかよ――」  
 今までのサディスティックな口調が嘘のような、可愛らしい声を真理が上げる。  
 同時に身をよじって逃れようとした彼女にしっかり抱きついて逃亡を許さず、明はそのままくわえたスポブラを、真理の胸から一気に引きずり下ろして剥ぎ取った。  
「あああっ!!」  
「おおっ――」  
 そして明の目の前に、真理の乳房がふたつ同時に剥き出された。  
 さながら天を貫くロケットを思わせる、空を突き上げるような見事な形で、胸板から雄々しく盛り上がった二つの砲弾。  
 剥き下ろされたスポブラは空っぽのカップをそれぞれ下へ押しやられて潰され、飛び出してきた中身はそれに支えられるまでもなく上へ、外へと尖っていた。  
 これが日焼けした真理のものとはにわかに信じがたいほどに白く、左右ともオレンジほどの大きさがある。  
 先ほど真理の上段蹴りでTシャツとブラジャーを瞬時に『爆破』され、あえなく虚空へ放り出されてしまった千晶のGカップと同じだ。  
 日焼けした顔や四肢と比べれば真理の乳房は格段に白く、そして汗の滴をその左右両球の全体にまとっていた。  
 みっちりと詰まった母乳をここから吸い出せと言わんばかりの刻み目を明へ突きつけながら、その尖端の周りをぷっくりと盛り上がった赤い乳暈が取り巻いている。  
 真理の乳首は乳輪とともにそれだけで大粒の苺ほどの質量があり、その上向きの勢いとともに少女の巨乳へ鮮烈なアクセントを添えていた。  
 その乳房全体の感触は引き締まった真理の身体に似合って、みずみずしくもいくぶん堅さが強く、千晶のそれほどの柔らかさはない。  
 しかしそれだけに、その弾力と形の良さは圧巻だった。  
「やだあ! バカ、明てめえ、離れろ! 私のオッパイから、離れろよおっ!」  
 なんとか明から逃れようと必死に身をよじる真理の胸で、砲弾型の巨乳はぷるぷると震える。  
 その度にしごく形良くぷりぷりとした甘そうな大粒の苺はツンと上へ外へ、明へ向けて早く吸えよとでも挑発するかのように乱れ飛んで、その脂肪塊は圧倒的な存在感を誇示していた。  
 
「…………!!」  
 真理の背中を両腕で抱き止めたまま、明は発作的に、左のロケットにむしゃぶりついた。  
「あむんっ!!」  
 たまらず真理が虚空へ喘ぐ。明が思いきり口の奥まで頬張っても、真理の乳房にはその全体を口に含むことなど出来ないだけの大きさがあった。  
 初めて口にする、母親以外の異性の乳房。それも性格に難ありとはいえ、これだけの美少女の、かくも見事に実った巨乳。  
 明は夢中で真理の果実に吸いつき、舌を繰り出して乳肉の尖端付近から責めなぶって真理の乳首を、何度も何度も執拗にすくい上げた。  
「ひっ! ひゃうっ! ひゃあああぁっ、やめろっ、やめろおおおぉぉぉっ!」  
 鼻にかかった嬌声ともつかない悲鳴を上げて、真理が千晶の左乳房をなぶっていた手を明の頭に掛けて、少年を引き剥がそうとした。  
 しかしその乳首から真理の全身を駆け巡る電流が、彼女に反撃を許させない。  
「はあんっっっ!!」  
 咥内に真理の乳肉の半ばまでを捉えた明は、一気にそれを吸い込んで全体を変形させ、吸い上げられてくる乳の頂を舌先で縦横無尽に舐め回していた。  
 肌を伝ってくる真理の汗を口に含むや、明はそれを乳頭の刻み目から湧き出す母乳のように、ぢゅるると音を立てながら堪能する。  
 夢中で真理の乳房を貪っていた数十秒ののち、ぢゅぱっ、とようやく明が口を離す。明の唾液と真理の汗がつながり、唇と乳首の間で幾筋もの糸を引いて垂れ下がった。  
 息を切らし、目尻に薄く涙を浮かべながら、真理が熱に浮かんだ声で罵倒する。  
「て、てめぇ明、ナニ考えて……っ、わ、私のオッパイなんか吸ったって、なんにも……何にもぉ――ひゃんっ!!」  
 そして今度は、右の果実を明は襲う。  
 少女の汗の塩辛さは、たっぷりと満ちた乳蜜によって甘く張りつめているかに見えるその巨乳の味わいには似つかわしくない。  
 それでもれっきとして、この乱暴者の幼馴染みの乳房を口に含んで征服し、その乳首からしたたる少女の滴を啜り上げているという事実は、明を大いに満足させた。  
 しかし、ただ吸い上げるだけで乳首を責めることなしに、ちゅぽん、と明は口を離した。  
「ふぇ……?」  
 もう、終わりなの……?  
 そんな欲求不満の風にも見える、早くも熱に蕩けかかっているかのような真理の赤面に見下ろされながら、問いかける。  
「真理。おまえ――オッパイこんな風に吸われるの、初めてか?」  
「ふぇ……? は、はじめてって……はじめてって、ば、ばかぁ……こんなばかなこと、誰にもさせるわけ、ないだろうがぁ……!」  
「そっか」  
「んむうううっっ、あんっ!!」  
 答えを聞くや否や、明は再び真理の乳房を貪る。  
 やっぱり。  
 真理のオッパイ、俺が初めてなんだ。  
 雪の降り積もった早朝の朝、誰よりも早く外へ飛び出して、ゴム長靴であたり一面に足跡を刻む。まだ動き出していない町の中で、まっさらな雪の上に、自分だけを刻んでいく――。  
 熱のこもりきった空間の中で、なぜかそんな情景を脳裏に一瞬だけ浮かべて、明は再び真理の果実を頬張り、しゃぶる。休む間もなく舌先を繰り出し、ほどよく日に焼けた砲弾の赤い尖端を削り続けた。  
 そして、次の段階に移る。  
「んぷ」  
「!? やっ……や、やめろ……っ、馬鹿明、それは……それだけは、それだけはやめろぉ……やめてくれぇ……っ!!」  
「ひゃだね」  
「ひっ……!」  
 前歯の間に乳首を挟んで邪悪に口元を歪め、明は上目遣いに真理を見上げた。  
 ――噛みちぎられちゃう……!  
 もっとも敏感な部分を挟み込むように突き立てられた、明の堅い歯。  
 これから襲い来る痛みを思う恐怖、繊細な乳首を歯で噛まれたらどうなってしまうのかという不安、そして無意識に、訪れるであろう未知の快感を待ち受ける期待。  
 
 それらの感情が渾然一体となった真理の、今までにないほど強く女を、雌を感じさせる怯えた表情にたぎるような欲望を燃やして、明は真理の苺を噛み潰した。  
「あっ! あっ、ああっ、あああああああーーーっ!!」  
 あくまで勝ち気な真理自身を象徴するかのように、ロケット型の乳房の頂でさらにいっそう高みを目指すように堅く尖り立っていた真っ赤な乳頭。  
 その尖端が上下から明の前歯に挟み込まれて突き刺され、サファイアを思わせるその鮮やかな果肉が無残に変形していく。  
「いたいイタい痛いちくび痛いっ! 乳首嫌なのっ、先っぽ噛まれるの嫌ぁ! 痛い痛い痛い噛まないで明っ、ああっ、明ぁぁぁーーーっ!!」  
「静かにしろよ。声漏れるだろ――」  
 それでも必死に声を殺したであろう真理は、このロッカーに三人が入ってから、いちばん大きな声を上げてよがり狂った。  
 反応は声だけではない。明の歯に蹂躙されている赤い苺が、その堅さと大きさをむくむくと増して、中心の突起をさらに前へと押し出してきているのを、舌触りで明は知った。  
 ――真理のオッパイ、すんごい感度いい。千晶のオッパイに負けないぐらい敏感なんだ。  
 そんな彼女を『奏でる』楽しみを見いだしながら、そのとき自らの逸物が濡れた何かに触れて、明はようやくそれに気づいた。  
 掃除ロッカーに置かれたワックス缶やその他もろもろの上に腰掛ける千晶と、その千晶の上に座る明。明に向かい合って、不安定な中腰で立ち続けている真理。  
 そんな真理が乳房を執拗に責められたことで中腰の姿勢を崩されて、そのホットパンツの股間を、明の勃起しきった股間へあてがっていることに。  
 そして真理のホットパンツから何か、汗とは異なる透明の液体が漏れ出して、明のハーフパンツへと滴り落ちつつあることに。  
 明は自らの脈打つ鼓動を、そこから注がれる血液を受けて、己が男根が刃物にも似た鋭利さを備えていく動きを感じ取る。  
 真理、ひょっとして……『濡れてる』……?  
「…………」  
 ――それにこれって確か、俺たちの今の姿勢ってひょっとして……騎乗位、って奴なんだよな……?  
「ひっ。あう、ああぁ、あふうぅ……っ、やめろよ、やめろよ、あきら……明ぁ……っ」  
「…………」  
 自らの欲望を意識したのかあるいは完全な無意識か、真理はその股間を明へ向けて空中でグラインドさせるように繰り出し、擦り付けようとしているようだった。  
 あたかも、その奥にある自らの濡れそぼった洞窟へと、自らの持たない宝剣を迎え入れようとするかのように。  
 やっぱり、そうだ。  
 ――こいつも感じてる……真理も今、俺が欲しいんだ。俺のものを、こんなに欲しがってるんだ……。  
「へえ……。誘ってんのかよ……」  
 半ば熱に浮かされたようになりながら、もはやろくに抵抗の力も出せなくなって、ただ口先ばかりで弱々しく抗いつづける真理の背中から、明は右手を前へ戻す。  
 乳房を吸いなぶりながら、真理のバックルへ右手をやる。  
 ベルトとホックを簡単に外し、そのままジッパーを乱暴に左右へ開くと、スポブラとお揃いらしい、真理らしく色気のないスポーティなグレーの下着が露わになった。  
 全体に汗を含んで肌へ張り付いた下着の中で、特に股間の一カ所だけが明らかにぐっしょりと濡れて、無垢な縦筋の陰影をくっきりと浮き上がらせてしまっているのを、明は確かに目撃した。  
 これって、やっぱり……真理……『濡れてる』……のか……?  
 閉鎖空間に沸きあがる熱気、朦朧とするほどの暑さの中、ごくり、と明は唾を呑んだ。  
 今度は自分のハーフパンツのベルトとホックを、明はゆっくり外しはじめる。ハーフパンツを外し終えてトランクスを下ろすと、ただそれだけで、明の逸物は弾かれたように跳ね上がった。  
 そして、まるで最初から精密な照準をつけて狙い澄ましていたかのように、濡れた下着に浮かび上がる真理の縦筋へと、明の亀頭はそれだけで少女の秘所へと添えられる。  
 
 そこまで王手をかけられながら、明の腕の中で淫らに乱れる真理はそのたくらみに気づいてもいないようだった。  
「…………!!」  
 セックスできる。  
 真理を、犯せる。  
 色づいた胸に比べればいくぶん肉は薄いとはいえ、それでも同年代の女子たちよりは確実に発育している真理の尻肉が、外されたホットパンツが完全にずり落ちてしまうのを妨げている。  
 そのホットパンツと下着の両方へかけて、明は後ろから抱え込むように両手を回した。  
 鍛えられて引き締まった真理の尻肉を両手へ握り込むことで、明は真理の退路を断つ。同時に、下着の内側へ両親指を入れた。  
「あん……っ!?」  
 途切れることのない乳房への攻撃だけで頭をいっぱいにされてしまっていた真理が、それでも下着越しとはいえ少女の侵入口へと接触してきた何か、熱く堅いものの存在を感じて身をよじる。  
 仮借ない愛撫の熱を帯びてさらに大きく膨れ上がった自らの乳房と、明の身体が邪魔になって、真理はそれをその目に捉えることが出来ない。  
 しかし、真理は――その胸に実る女の果実を早熟させてしまった十一歳の雌は、明に焚きつけられた熱で淫らに昂ぶらされてしまっていた。  
 今や彼女は本能によって、自らの欠けた部分を埋め合わせる『何か』の存在を渇望している。  
 明の繰り出す野性的な激しい愛撫と凌辱で、すでにまともな意識など保てなくなってしまっている真理は、明のその欲望に満ちた動きに気づかない。  
「お前が……お前が全部悪いんだからな、真理……。お前があんなバカなことなんかしなけりゃ、俺だって、こんな……こんな……」  
 荒い息づかいの中、少女に対する最終攻撃手段の発動準備を完全に整えた凶悪な兵器の目の前で、その侵略経路がゆっくりと拓かれていく。  
 真理のショーツに尻から食い込んだ明の両親指が、真理の女の芯の部分を守る最後の砦の城門をゆっくり、ゆっくりとずり下ろしていく。  
 それが失われてしまえばもう、怒濤の奔流となって襲い来るであろう煮えたぎった少年の欲望を、少女の破瓜を阻止するものは、もう――  
 
○27  
「…………」  
 一階すべての掃討を終えた通子は、二階へ、多目的学習室へと足を踏み入れていた。  
 ここまで粛々と、そして整斉と捜索を続けてきたつもりだったが、それでも自分自身が雑音源となってしまっていたのは確かだ。  
 だから通子は、この第三校舎のどこかに隠れ潜んでいるはずの三人の悪童たちが発するであろうかすかな物音を、今まで拾い上げることが出来ていなかった。  
 しかし今、彼女の勘が――西小学校教諭として着任以来、休むことなく繰り返されてきた悪童たちとの戦いが磨いてきた彼女の勘が、この多目的学習室にこそ何かがあることを叫んでいた。  
 通子はまず、併設されている教育準備室から当たっていく。  
 本棚、ロッカー、段ボール箱、机の下。隠れられそうなすべての場所を、用心深く、一カ所一カ所を確実に暴いていく。  
 準備室の捜索を終えると、通子は畳張りのがらんとした広い教室に向き直った。  
 かすかに香る汗のにおい。畳に残る、乱暴に蹴散らされたであろうわずかな爪痕。  
 いずれも決定的な証拠ではない。だが通子の勘は断言している。  
 悪童どもはここだと。  
 秩序に反して危険な喧嘩を繰り返し、今は自分から息を潜めて逃れようとしている三人の児童はあの、残る掃除ロッカーに隠れていると。  
「…………」  
 深呼吸する。  
 練り上げてきた気の流れが、静かに腹へと溜まっていく。緊張とともに、教師の仮面をいっそう深く被りなおして、通子はゆっくりと、掃除ロッカーにその手を掛けた。  
 
○28  
 掃除ロッカー内で三人もの児童が密着しあう、そのあまりの狭さのために明は結局、真理のショーツを完全に脱がせることは出来なかった。  
 明はホットパンツもろともに真理の下着を腿のあたりまでずり下ろすだけにとどめたが、目的を達するにはこれで必要十分だった。  
 互いの距離と姿勢のために、真理のその女の部分を仔細に観察することはできない。だが、これで射線は拓かれた。  
 幼なじみの美少女たちの四つの巨乳に挟まれながら、なみなみと油を注がれて燃え上がった青い欲望。  
 今まさに初の実戦の機会を与えられて、濡れそぼった女の秘裂を前に極限まで堅く大きくいきり立った明の逸物は、すでに真理を有効射程距離内へと完全に捕捉している。  
 下着とホットパンツという真理の純潔を守るべき障害物は、既に進路上から完全に取り払われたのだ。  
 むしろ明の巨砲はその濡れたショーツの上に怒張した肉の砲身を乗り上げながら、突入の瞬間を今や遅しと待ち受けている。  
 明の執拗な愛撫に巨乳をいいように弄ばれた真理はもはや息も絶え絶えで、その女芯から交合の瞬間を待ち望む淫らな蜜を滴り落としながら、何の抵抗能力も持ち得ていない。  
 ただ一方的に明の欲望の熱によって冒されつづけてきた真理は、今これから自分の身に何が起ころうとしているのかさえ理解できてはいないのだった。  
 いくつかの偶然を契機に、少女の肉体を思うがままに責めなぶり続けたこの少年は、今や決して自らの意志では制御することも出来ない荒ぶる衝動に駆り立てられている。  
 そして八坂明はいよいよ勢いのままに、その初体験を果たそうとしていた。  
「行くぞ……真理……」  
「……ひゃだ……ひゃだああ……くるな、くるな明ぁ、こっちくるなあ……あっちいけぇ……あっち、いけえぇ……」  
 繋がるのはただ、上滑りする言葉ばかり。  
 欲情に盛り狂う飢えた一匹の雄として、美しくも無力な一匹の雌としての真理を狙う明。  
 幼なじみの喧嘩友達から今まで考えたこともなかった攻撃を受け、それと知らずに燃え上がらせられてしまった情欲の海に溺れながら、ただいやいやと幼女のように首を振るだけの真理。  
 犯すものと犯されるもの。その格差はあまりに明白で、そして一方的だった。ついに明の両手が、真理の裸の腰へと添えられる。  
 対面座位というその体位の名を、明はまだ知りもしなかった。  
 だがふつふつと沸き上がる雄の本能は、単なる偶然で導かれた今の二人の姿勢が、これから真理と合体するには最良のものであることを理解していた。  
 もう遮るものはなにもない。このままこの腰に掛けた両手で真理を一気に引き寄せれば、真理のおまんこを狙う俺のちんこは、一気に奥まで真理を刺し貫くだろう。  
 真理、処女かな……処女だろうな。さっき、今までおっぱい吸われたことなんか一度もないって言ってたし、エロいことなんか、普段からぜんぜん知らないし。  
 いま自分が何をされてるのか、俺にこれから何をされるのかさえも、ぜんぜん分かってないんだろうな……。  
 でも。  
「お前が、悪いんだからな……」  
 真理の処女を奪う。純潔を散らす。  
 もはや無抵抗に等しいその少女への、明らかに方向性を誤った過剰な暴力はこの場の異様な熱気と、横暴、凶暴、無謀だった彼女への懲罰という理由づけによって、強引に正当化されていた。  
 あられもない美少女の早熟な肢体をこうも無防備に見せつけられ、しかも普段あれほど凶暴な彼女を強引に屈服させられるのだ。  
 そうともなれば、とめどもなく湧きあがる少年の性欲を押しとどめるなど、もはやどうあっても不可能であるかに見えた。  
 そして遂に、肉槍の穂先が少女の股間を探り、自らの目指すべき秘裂を探り当てると、明はその入り口へとカリの尖端をあてがった。  
 後はただ腰を進め、真理を貫き通すのみ。  
 大きく深呼吸する。  
「行くぞ。……真理……!」  
 
「あき、ら……」  
 そのとき不意の呼び声とともに、もぞりと千晶が動いた。  
「っ!?」  
 いつの間にか前へ、明の胴へと回されていた千晶の両腕が、再び彼の背中で自らの乳房を押し潰しながら、少年の身体を抱き寄せる。  
 幼馴染みの少女の、不意によみがえってきた肉声と息吹、体温と鼓動が、明の意識を揺さぶるように引き戻した。  
「え、あれ……ち……千晶?」  
「明……明ぁ……」  
 ロッカーに飛び込んでから真理に受けたその巨乳への手荒な凌辱で黙り込み、戦闘能力を失っていたかにみえた千晶。  
 彼女はまだ火照りを鎮めきれない様子で、うわごとのように呼びかけてきた。  
 千晶はそうして三度相棒の名を呼んだ後、再び背中で押し黙る。  
 それきり何の行動も起こそうとせず、ただ分厚い乳房の肉を通して、早鐘を打つ鼓動ばかりを伝えてくるだけだ。  
 だがそれだけで、原始的な獣じみた熱に突き動かされていた明の意識に、一陣の風が吹き抜けていた。  
 本当に――本当に、セックスするのか。俺は、こいつと――真理と?  
 千晶の……目の前で?  
 だ、だけど……だけど俺は今、真理をシメなきゃいけない。  
 俺たち三人の約束を破って、ひどい裏切りで千晶を傷つけ、そんな方法で勝ち誇ろうとした真理を、このまま許すことなんかできない。  
 でも……これは何か、違わなくないか? 相手がいいよって言わないまま無理矢理セックスするのって、それって、レイプって言うんだよな。  
 真理は手の着けられない乱暴な奴で、何かあるとすぐキレて無茶苦茶大暴れして、弱い奴らも平気でイジメるような奴で。  
 でも最近は妙に大人っぽい色気が出てきて、胸がデカいのに変に無頓着で、昔から変なこだわりがたくさんあって、しょっちゅう喧嘩するのに、気づけばまた一緒に遊んでて……。  
 俺は、レイプするのか? 真理を。  
 だけど、こうやって火をつけられた俺のチンポはもう、どうにも収まらないんだ。  
 このまま真理とセックスして無茶苦茶に腰振って、千晶をひどい目に遭わせた真理をひいひい言わせて、俺自身もスッキリしたいんだ。  
 だけど、だけど、だけど……ああ、もう……分からなくなってきた。  
「ううううう……」  
 灼熱する獣欲と理性の狭間で苦しみ、瞑目した明はその目を開いた瞬間、自らの凶悪な巨砲に視線を止めた。  
 だけど……だけど考えてみりゃ、すごい威力だよな、コレって。  
 ギンギンに勃起して棍棒のように堅く反り返り、へそに着きそうなほど凶暴化してしまった自らの分身に目をやりながら、明は思う。  
 これを女のまんこに一番奥まで突っ込んで、そのまま気持ちよくなって中で射精するだけで、女は……中に精液出された女は、妊娠しちゃうんだよな。  
 アホ真理みたいな手のつけられない凶暴女も、委員長みたいな強くて凛とした女子も、作倉みたいに根暗な感じの爆乳女も、通子先生も、……それこそ、千晶だって、みんな。  
 俺がこのちんちんを入れて、何度も激しく腰を叩きつけてから一番奥に精液を出したら、女はみんな妊娠しちゃうんだ。  
 おなかが大きくなって、オッパイだって今よりもっと大きくなって、母乳さえ搾れば出せるようになるんだ。そして、赤ちゃんが産まれる。  
 そしたら……そしたら、どうなる?  
 
 我に返った明の脳裏を、瞬時に幻影の群れが駆け巡る。  
 それは少女の腰をひっ掴み、獣のように真理を犯し抜く明の姿。  
 明の男根になすすべもなく子宮まで貫き通されて喘ぎ、前後に腰ごと激しく叩きつけられて、Dカップのロケット型の巨乳が上下左右に弾け飛ぶ。  
『ううっ……、出るうっ……!』  
 激しいピストン運動の末、強烈な締め付けで絶頂に達した明にいちばん奥で鏃を止められ、なすすべもなく、何の容赦もない膣内射精を受ける真理。  
 十数秒間にもわたる濃密な、そして、大量の射精。  
『あっ……!? 何これ……私のお腹の中で何か……何か熱いのが、びゅくびゅくってぇ……何だよこれぇ!  
 明バカ、てめぇどけ! チンチン抜けよ! 中に出すなっ! やめろおっ、この熱くてどろどろしたの、私の中に出すなあああぁっっっ!!』  
 真理は自分の奥底で脈打つものと、その尖端から注ぎ込まれてくる熱いなにかを感じて明を払いのけようと必死に蹴飛ばす。  
 しかし射精の余韻に酔う明はそのまま渾身の力で真理にしがみついたまま耐え、ついに最後の一滴までを注ぎきった。  
『あっ、ああ! あああああっ、あああああああぁぁぁ〜〜〜っ!!』  
 何か破滅的な暴力を備えた怒濤の襲来を感じて、真理が稲妻に撃たれたように全身を反らせながら絶叫する。  
 しかし、時すでに遅し。土足で踏み荒らされた真理の秘所から引き抜かれる、十一歳の少女を蹂躙したことに誇らしく反り返ったままの男根。  
 なおもその切っ先から白濁液がしたたり落ちる中、ゴポッ、と重たい水音と湯気とが立ちあがる。  
『うっ……ううっ……ぐす……うっく……ひっく……ひっく……』  
 そして強引に押し開かれた真理の秘裂から、鮮血と愛液の入り混じった濃厚な精液が、どろりと溢れ出してはこぼれ落ちていく。  
 数ヶ月後。  
 ランドセルを背負い、今までなら絶対着ようとしなかっただろうフェミニンな白いワンピース――マタニティ向けのそれに身を包んで登校する真理の腹は、一抱えもあるほど大きくなっている。  
 その乳房もまた、今では千晶のそれにひけを取らないほどに大きい。  
『今日は皆さんに、とても大切なお話があります』  
 ざわめく教室。教壇に沈痛な面持ちで立つ通子先生。  
『お隣の四組の大西真理さんが、このクラスの八坂明くんの子どもを妊娠してしまいました。  
 大西さんは八坂くんの赤ちゃんを産むそうです。いろいろ大変なことばかりだと思いますが、皆で支えていってあげましょう』  
 そして、出産。  
 学校の休み時間。生まれてきた赤子は教室の片隅で、母乳に張りつめた真理のFカップにまで達したロケットオッパイを惜しみなく、夢中でちゅうちゅうと吸い続けている。  
 千晶がどこか寂しげな表情で、教室の反対側からその授乳風景を見つめている。  
 真理は生まれてきた新しい命をその腕の中で育みながら、市内全域の小学生たちを恐怖に陥れたあの『鬼マリ』へさらに磨きをかけた凶暴すぎる瞳で、床に土下座で平伏する明の頭を踏みつけていた。  
『これから一生責任取り続けろよな。お前は永遠に私とコイツの専用パシリだ。バッくれんじゃねーぞ、明』  
 
「い……っ」  
 いや……いや、ダメだろ……ダメだろ、これ、絶対。話になんないだろ、こんなの……。  
 脳裏を瞬時に悪夢の走馬燈が駆け抜けていったあと、明はおびただしい冷や汗とともに、この現実へと帰還した。  
 途端に慌てふためいて右手を戻すや、今にも真理へ挿入されようとしていた男根を掴み、脇へ押さえつけようとした。  
「ぶっ!?」  
 だがその瞬間、今度は真理が明を抱きしめた。ぷっくりと赤く膨らんだ乳首が尖り勃ちながら、明の顔面をごりごりと擦りつける。  
 そして同時に、ショーツまで剥かれたままの無防備な股間を震わせ、雄を欲するかのように空中で腰の前後を繰り返した。  
 熱に浮かされたうわごとのように呟く。  
「やめるな……やめるなよぉ、あきら……あきらぁ……」  
「なっ、バカ! やめろ、放せってこの!」  
「あついの……からだがあつくて、へんなんだよぉ……へんなんだよ、おかしくなりそうなんだよ……だから、あきら……あきらぁ……っ」  
 そして真理が腰を上げると、拘束を解かれた明の男根が再び跳ね上がった。濡れそぼって雄の襲撃を待ち望みつづける、真理の秘裂をまっすぐ目指すかのように。  
「!!」  
 そして明をその四肢で捕らえた真理はゆっくりと、その腰を明めがけて下ろしてくる。  
 その進路上には当然、明の勃起したままの男根がある。  
 迫り来る真理の秘裂は、あたかも明の逸物をむさぼり喰おうとする怪物のようだった。  
「っ!! バカ! 真理! やめろ! 降りてくんな、こっち来んな! 危ない、本気で危ないんだからマジでやめろってこのバカ!! ぶふっ!?」  
 しかし慌てふためいて抵抗を試みる明を、真理はその胸へ抱き締めて黙らせる。  
 弾力の強い乳房はぐにゃりと潰れて明の顔面を被い、呼吸すら封じ込めようとするかのように密着してきた。  
 今になって、明はようやく理解する。自分だけでなく、真理もまた欲情しきっているという事実の意味を。  
 それが無意識にしろ、真理もまたセックスを欲している。  
 そして、真理の腕力はおそらく今でも明のそれを上回り、そしてこの掃除ロッカーには、逃げ場などどこにも無いということを。  
 ダメだ。もし真理とこのまま犯ったら――というか犯られたら――今すぐにでもイキそうな暴発寸前の俺のチンコじゃ絶対に、数十秒も耐えられない。  
 真理のこんだけ引き締まったあそこに捕まって、完全にエロエロバカになっちまってる今のこいつにハメられたら、そこで終わりだ。  
 こいつは確実に俺のチンコを味わおうとド派手に腰振って、上下にグラインドしまくってくる。最後はこいつを払いのけて外出し、なんてできるわけない。  
 イク瞬間には腰と腰とを思いっきり密着させられて、最後の一滴まで、俺の精液を真理のいちばん奥で搾り取られるに決まってる。  
 そうなったら。そうなったら、破滅だ。  
 真理は俺の子どもを妊娠。そこから先は一直線にあの走馬燈の悪夢そのものの世界が、手ぐすね引いて俺を待っている。  
 真理と結婚しろってのか? あの鬼マリと? そんなもの死刑に等しい。  
 嘘だ。嘘だ、こんなの。  
 だが現実には、明に弄ばれて燃え上がった真理は本能のままにその秘所を満たす雄を求めて、今も明の抵抗を少しずつ、しかし確実に押し切りながら腰ごと押し込んでくる。まるでギロチンだ。  
「あきらぁ……ちょうだい……」  
 おそらくは自分でも何を口にし、何を要求しているのかも理解できないまま、真理は耳元に甘い鼻声をささやき、明そのものをその身にねだった。  
 逃げ場のない千晶の膝上で全力で抵抗を試みる明を押し切り、真理の火照った身体が、じりじりと密着してくる。  
「!!」  
 そして遂に、反り返った明の逸物の切っ先が、いま再び真理の秘裂に捉えられた。  
 呑み込まれる。  
 真理に、チンポを、喰われる。  
「ほしいの……ほしいの、あきら。あきらぁ……!」  
 
○29  
「――藤原先生!」  
 不意に横から降りかかってきた、予想だにもしなかったその声が、通子の動きをその場で止めた。  
 教師としての自分に入りきっていた通子はそれでも無防備な揺らぎを見せはしなかったが、すっと目を細めて、闖入してきた少女を見つめる。  
「国東さん。どうしました。下で何かありましたか?」  
 言いながら、何かに気づいて通子は小さく眉根を上げた。  
 肩で激しく息を切らし、全力疾走の体でここまで駆け上がってきたに違いない学級委員長の少女は、常から彼女を成り立たせてきた知性と実直と従順のすべてを擲ってきたかのようだった。  
 今の国東真琴はこれまで通子が見たこともない激しい感情と、それに劣らぬほどに強い戸惑いを、その上気した頬と瞳にたたえていた。  
「せ、先生――」  
 それでも通子の冷徹な瞳に直面して、真琴がほんの一瞬だけ目を伏せるのを、この若い女教師は見逃さなかった。  
 しかし一拍の硬直の後、唾を飲み込み、意を決したように真琴は言った。  
「谷川さんと、大西さんが見つかりました。いま体育館裏で喧嘩してます。八坂くんもいます。すごい勢いで、私一人じゃ止められなくて――すぐに来てくださいっ!」  
 いつもの凛とした学級委員長の、歯切れ良いはきはきとした語調で出されたその通報を、通子は淡々と受け止めた。  
「……体育館裏、ですか。ずいぶん……突飛な話ですね」  
 自らが受け持つ児童らのうち、もっとも優秀な教え子の真意を推し量ろうとするように通子は両目を細め、真琴の瞳の奥を覗き込む。  
「さっき四年生の子が教えてくれたんです。岸くんの話は、第三校舎は囮だったんです! とにかく先生、早く来てくださいっ」  
 真琴は果敢に突進し、大胆にも通子の手を取った。そのまま体格に劣るこの担任教師を引きずってでも連れ去ろうとする。  
 だが、通子は動かなかった。  
 全身が鉄になったように、足が床に埋まってでもいるかのように。通子はその場をぴくりとも動かなかった。  
「…………!」  
 通子を連れ去ろうとしていた真琴のうなじを汗が伝い落ち、振り向かないまま、眼鏡越しに横目を向ける。  
「正直に答えてください」  
 そんな真琴へ、通子は落ち着き払って質問した。  
「国東さん。あなたは……谷川千晶さんのことを、どう思っていますか?」  
「谷川……さん、は……」  
 予期せぬ切り返しに、真琴は思わず口ごもった。しかしすぐに頭を切り替えると、きっぱりと断言する。  
「谷川さんは……私の同級生で、友達です。今の谷川さんは胸があんなに大きくなって、みんなの目を引くようになってしまったことに戸惑っていて……。  
 だから私は、同じ悩みを抱える女子として……何とかして、谷川さんの支えになってあげたいんです」  
「なるほど。……それだけですか?」  
「っ!」  
 真琴に掴まれていた、通子の手首が閃いた。  
 いっそ恐ろしいほどに鍛えられ、女子小学生の平均を大きく外れていたはずの真琴の握力をあっさりと振り切って、通子はその手に自由を取り戻していた。  
「なら分かりますね、国東さん。  
 本当に友達のことを思うなら、谷川さんに――彼女が心をひどく揺らして新しい扉の前で立ち尽くしている、この今という機会に、なにが本当に必要なのか」  
 真琴との視線を切り、掃除ロッカーへ向かって通子は歩いた。心なしか、何か物音が二人に聞こえたその閉鎖空間へ、通子はその手を掛ける。  
「例えそれが、今は痛みを伴うものになったとしても――」  
 
「…………!!」  
 その瞬間。  
 国東真琴の意識を、なにか熱く冷たいものが逆流した。  
「そんなの全然関係ないです!!」  
 閉め切られたままの窓ガラスが、掃除ロッカーの金属板が、藤原通子の瞳が震えた。  
 それは空気の固まりを弾丸にして、そのまま全方位へと叩きつけるような絶叫だった。  
「友達なんです! 谷川さんも、八坂くんも、二人とも私の大事な友達なんです! 大人になんてなれなくていい!  
 友達を裏切って、友達を引き裂いて大人になるなんて、私は絶対に、絶対に嫌ですっ!!」  
 鼓膜をつんざくような少女の叫びを、女教師はしばらくの間、ただ目を丸くして、身じろぎもせずに受け止めていた。  
 歯を食いしばって、眼鏡の奥で瞳を濡らして、煮えたぎる感情を必死に押さえ込みながらふうふうと肩で息を切らして、国東真琴は担任教師を凝視していた。  
 何の音もしない。  
「国東さん。あなたは――何を言っているんですか?」  
「八坂くんと谷川さんの二人を今、二人がこんな不安定な時期に攻めることで引き離させる。そんなことは絶対に許せない、と言っているんです!」  
「国東さん。私はそんな、別に……谷川さんを八坂君と、引き離そうとしてるわけじゃ――」  
「結果は同じです!」  
 真琴は畳みかける。  
「谷川さんだけを二人が今いる道から弾き飛ばして、八坂くんと違う道を行かせて、二人の間に隙間を作るなんて嫌です。  
 八坂くんが――バカでスケベで乱暴だけど、八坂くんが誰より一番谷川さんのことを分かって、助けて、信じて、支えになってあげられるのに。  
 私はあの二人が、あんなに仲のいい友達同士が引き裂かれるところを見るなんて絶対に嫌なんです!!」  
「…………。じゃあ、国東さん……。今の機会を逃して、谷川さんが更生しなくて……それで谷川さんがひどい目に遭うことになったら……そのときは、どうするつもりなの?」  
 火をつけられたような激しさで食いかかってくる真琴に、あくまで静かに通子は問い返す。  
 しかし真琴は、それも真正面から受け止めた。  
「そのときは。――そのときは私が、私が必ず二人を止めてみせます。  
 私は学級委員長で、あの二人より大人で、あの二人を信じている、友達なんですから。  
 だから私が、そんなことにはさせません。絶対に――絶対にこの私が二人を助けて、守ってみせます!」  
 言い切った真琴の啖呵が特別学習室の空気を震わせ、やがてその余韻も、しみ入るように消えていく。  
「…………」  
 掃除ロッカーに手を掛けたまま、通子は黙りこくって虚空を見やった。そうして十数秒の後、ぼそりと、誰へともなく呟く。  
「そうですか……。八坂君も、谷川さんも――私が思っていたよりずっと、友達に恵まれていたようですね」  
「…………、藤原先生……?」  
「――分かりました。体育館裏ですね?」  
 何事もなかったかのように、藤原通子はそう言った。  
「私はそちらに向かいますが、第三校舎の鍵がいつまでも職員室に戻らないのはよろしくありませんね。  
 では国東さんはこの鍵を持って、この第三校舎をしっかり戸締まりしてから、職員室へ持っていってください。いいですね?」  
「……え……あ……は、……はいっ!」  
 通子はポケットから鍵束を取り出し、押しつけるように真琴へ預けた。そのまま足早に特別学習室を出ると、廊下の向こうで階段を下る音を響かせていってしまう。  
 それだけだった。  
 そして、静寂が戻ってきた。  
 
 最初の数十秒を、真琴は完全に虚脱したままその場で過ごした。  
 自分が何をしたのか、何を言ったのか、そしてそれらに、藤原通子がどう答えたのか。  
 紛うことなき自らの意志によって為したそれらの顛末を、そのまま信じることも受け入れることも出来ずに、真琴はただその場で立ち尽くしていた。  
 ようやく呼吸が収まったころ、少女は汗を握り込んだままで痺れていた両拳をそっと開く。何か不思議なものでも見つけたかのように、その水滴をじっと見つめた。  
 ――ああ、そうか。  
 そして自嘲するように、真琴は笑う。汗の理由に気づいたからだった。  
 ――私、また嘘ついたんだ。  
 あんなに必死だったのに、あんなに思い詰めたような顔してたのに、あんなにさらっと真っ赤な嘘の出るような、あんな嘘つきの子だったんだ、私。  
 私が通子先生を止めようとしたのは、八坂くんと谷川さんに離れてほしくなかったのは、私がそれを望んでいたから。  
 私はあの二人の間に自分の割り込む隙間が欲しくて、そのために二人に離れてほしくてしょうがなかった。  
 そして私は、そんなことを望む私が許せなかったのだ。  
 とんでもない自分勝手。すべては私の保身のため。だからひどい嘘で自分を飾りたてながら自分の弱さと醜さを隠して、自分のちゃちな良心を必死に守った。  
 あの二人と近くで触れあうほど、私は自分の卑しさに気づかされる。それはひどい痛みと苦しみを私に焼きつける。  
 それなのに、私は近づかずにいられない。  
 私は、それを――私の暗がりを照らす、光の在りかを知ってしまったのだから。たとえその光が私を焼き尽くすとしても、それを求めずにはいられないのだから。  
 ひどい矛盾だ。  
 ふっと大きくため息一つ。  
 そして国東真琴はその表情に浮き上がってきた、その内面の薄闇を払い落とす。  
「――みんな。もういいよ」  
 言いながらロッカーを開く少女の顔と声色はもう、悪童たちの悪巧みを不承不承でこっそり内密に始末しようとする、渋面の学級委員長のそれに変わっている。  
 そう。今の私には、これしかない。  
 だけど、こんな私にもいつか、もっと自然に、八坂くんや谷川さんと触れあえるときが来るのかもしれない。  
 だから、そのときまでは――  
「おおわっぷうううぅっ!!」  
「っ!?」  
 扉を開いた瞬間、横倒しになって殺到してきたその三人から、国東真琴は反射的な動きで辛うじて逃れた。  
 三人の児童が畳に突き刺さる派手な音と、ぐえ、という蛙を潰したような間抜けな悲鳴が響きわたる。  
「な、ななななな、な、な、な……っ」  
 そして真琴はいっさいの言葉を失ったまま顔面を痙攣させ、金魚のように口をぱくぱく動かしながらその場で凍った。  
「うーっ、痛たたたたた……っ。あれ……通子先生、もう行っちゃったの……?」  
「ああもう、ホント糞暑いし、ゆだるし、狭くて変な姿勢で死にそうだったし……うええええっ、おまけになんだよ、このネバネバしてるのぉ!」  
 
「た、た、た、……助かったぁ……」  
 額を押さえて頭を振りながら、なんとか体を起こそうとする谷川千晶。蛇のように四肢をくねらせながら、畳の上に仰向けでのたうつ大西真理。なぜか真っ先に股間に手をやる八坂明。  
 二人の巨乳少女たちはいずれも上半身のTシャツとブラジャーを乱暴に剥かれた、あられもない半裸だった。  
 真理に至ってはホットパンツのベルトを外され、ショーツがきわどい位置までずり落ちてさえいる。  
 そして真理のその白く尖った砲弾型の乳房には歯形が残り、同時にそこから真理の顔面までにかけて白く粘ついたゲル状の濃厚な液体を、大量にぶっかけられているのだった。  
 
「うえっ、何、これぇ……にがっ!」  
 その液体の一部が口に入ったのか、真理はその生ぬるい感触に泣きそうな表情を作りながら、ぺっぺっ、と続けて吐き出した。  
「…………!!」  
 はちきれそうな乳房を無防備そのものに放り出した二人の美少女と、ゆうに数分以上も掃除ロッカー無いで密着していたその少年を、真琴は真っ白になりながら凝視する。  
 耳年増とも言われかねない年齢相応以上の性知識を備える真琴にしてみれば、真理がその乳房に浴びた白濁液と、今も必死にベルトの具合を直そうとしている少年との因果関係は、火を見るより明らかだった。  
「も、もぉ……何だよこの白いの……。臭いし、苦いし、ねばねばしてひっつくしぃ……!」  
「あ。それ、アレじゃないかな?」  
 だが少年をその射精へと導いた二人の少女はけろりとしたままで、やがて千晶がすっと近くに転がるペットボトルを指し示す。  
「床を光らせるワックスだよ。さっきごちゃごちゃ揉み合って、最後に出てくるときに倒れて派手にこぼれたんだ」  
「うげ、ワックスかよこれっ! きたねーっ。おい明、そこの雑巾貸してくれよ雑巾っ!!」  
「……そ、そうそう、ワックス、ワックス。いや、生乾きのワックスって臭いしネバネバするし最悪だよなー……さ、こいつでさっさと拭いちまえよ!」  
「わ、ワックスって……ワックスって、あれ……えっ……えええええええっ……!?」  
 そして取り残されたもう二人は彼女らの早合点を前に、片やままよと相乗りし、片やどうすることも出来ずにただ口ごもるのみ。  
 学級委員長の傍らでふらりと立ち上がった明のこめかみを、掃除ロッカーの余熱のためばかりではない汗が流れ落ちていく。  
 真理の腰が迫り、いよいよチンポ全体が丸ごと呑み込まれそうになったとき、どうにか凌がせてくれたのは真琴の最初の叫びだった。  
 頭を完全に熱気と情欲にやられていた真理はもちろん、明でさえ、すぐには真琴が何を言っているのかを理解することは出来なかった。  
 それでも、三人にとって最大の脅威――藤原通子がすぐそこまで迫っていることを知るには十分だった。  
 それに戸惑ったか、真理が押し進めてくる腰の勢いがわずかに弱まる。その間に明は少しばかりとはいえ真理を押し返し、姿勢を整えたのだ。  
 それでも真理の女芯で燃え続ける欲望の炎がある限り、単なる時間稼ぎでしかない。  
 明の男根を捉えてむさぼり喰い、強烈な締まりで最後の一滴まで十一歳の子種汁を吸い尽くそうとするだろう真理の膣から逃れることは、この狭すぎる空間では不可能だった。  
 だから明は最後に、両手を離して振り向いた。  
「ごめん、千晶っ!」  
「えっ――」  
 左手を伸ばすや真理の左乳房を下から支えて鷲掴み、そして右手で背後の、千晶の左乳房をぐにゅっと、あっさり掌に余るその巨乳を握り込む。  
 あむんっ、と明の耳元で千晶が鳴いた。  
 指に吸いついてくるみずみずしい柔乳を荒く激しく揉みしだきながら、敏感な桜色の乳首を人差し指と中指の間に挟み、爪を突き立て指先で擦り、あらゆる手段で責めなぶる。  
 左右の掌でそれぞれ趣を違える二人の美少女の巨乳を味わい、そして最後にはさらに身体をくねらせて千晶の張りつめた乳房を歪ませながら押し上げ、明ははじめて、千晶の乳首を口に含んだ。  
 もう完全に夢中で赤子のように明は吸いつき、口腔内でむにゅむにゅと変形する千晶のGカップの量感と弾力を味わいつくしながら、その想像を遙かに超越した絶佳の美味に明は達する。  
「ううっ!!」  
「あああっ、あうんっ!!」  
 その瞬間に熱く濃密な白濁液が直立したままの明の切っ先からほとばしり、その灼熱した白いマグマの噴火は真理の、胸から顔までを一気に汚した。  
 
 これだけの量が真理の膣内で爆ぜていたら、十中八九この十一歳の少女を妊娠させてしまっていただろうと確信できるだけの、それは十秒近くにわたって続いた、あまりに膨大な精液量。  
 明の逸物が真理から逃れていられるわずかな時間に先んじて射精することで、真理による逆レイプとその勢いでの膣内射精という破滅から、明はとっさに逃れたのだ。  
 真琴が掃除ロッカーを開けたのは、そのすぐ直後のことだった。  
「それにしても……」  
 言いながら、この決闘すべての起点となったトラブルメーカーの少女――大西真理は周りを見渡す。  
 相変わらず半裸のままの千晶と自分。今まで掃除ロッカーの中でオッパイを無茶苦茶に攻撃しまくってきたくせに、今はなぜだか異常に憔悴しきった様子の明。  
 そして顔面をひどくひきつらせ、青筋を震わせながら立ち続けている国東真琴。  
「…………」  
 もう一人の宿敵たる学級委員長からの異様な殺気を背中に感じながら、火照りきったままの汗だくの身体を抱えた真理は、その決闘の相手を――衣服を引き裂かれ、半裸のままの千晶をじっと見据える。  
 千晶もまた、その唇をすっと引き結んで、真理に向かって問いかけた。  
「真理。……どうする?」  
「…………。どうする、たって……なぁ……いや……その……なんつーか……もう……」  
 来るべき決闘へと向かって、破壊と征服の衝動を練り上げてきた数時間。開戦とともに死力を尽くしてぶつかり合った、息もつかせぬ打撃戦の数分間。  
 そして蒸し暑く狭苦しい掃除ロッカー内で、得体の知れぬ淫蕩の熱に溶かされつづけ、忘我の境地へ身も心も狂わせられた最後の数分。  
 それらの怒濤が今この瞬間にふっつりと途切れて、市内の児童に並ぶものなどないとまで言われた真理の闘争心を、ひどく有耶無耶なものにさせてしまっていた。  
「なんか、もう……ふん。今日のとこはまあ、どうでもいいよ……」  
 一見無気力な風にそう言い捨てて、真理は引きずり下ろされていたホットパンツとショーツ、それに巨乳の下へ追いやられていたスポブラの具合を直しはじめる。  
 そのうつむき加減の赤らんだ頬は、文字通りの処女地であった自らの肉体が明の手によって無意識のうちに開発された、十一歳の無垢な少女の戸惑いを映していた。  
「よ、よーし。千晶……お前はどうだ?」  
「……んあ……」  
 真琴の介入で一気に居づらくなった空気を叩き壊すように、ここで明が前へ出ながら千晶へ問いかけた。  
 千晶は数秒、呆けたように明の言葉を聞き流していた。  
 しかし、やがて幾たびかそのつぶらな瞳を瞬かせると、いつものように中性的な悪戯っぽい笑みをその口元へ浮かべて、さらりと答えた。  
「んー……。まあ、真理がそう言うなら、ボクも別にどっちだっていいなー。ふふ……。まあ今日のところは、この程度にしといてあげるよ!」  
「うるせえ、バーカ……」  
 悪態をつく真理も今までと違って、ここから食ってかかろうとするような勢いは見せない。  
 その瞳に揺れる戸惑いの色はまるで真理とは違う誰かのようで、明は思わず心臓に早鐘を打ち、唾を呑みながら目を逸らした。  
 そして穏やかに微笑む千晶と、互いに視線を交わす。  
 魅力的すぎる巨乳を隠そうともせず、ただ上向きに元気よく突き出させたままの胸のことも視界の外へと追いやって、明は千晶と見つめ合った。  
 諸々の照れくささと気恥ずかしさ、今なお冷めやらぬ性の余熱と、何より確かにいっそう深く、この決闘を通じて、二人の間に刻まれたもの。  
 数秒間の沈黙に目と目に乗せて、二人はそれらを確認しつづけていた。  
 
「……あ、う、……た……、た、谷川さん。と、とにかく、これっ!」  
「あっ。ありがと、国東さん!」  
 その沈黙の間にようやく硬直の解けた真琴が、慌てて自らのベストを脱いだ。明との間へ割って入るようにしながら千晶に渡す。  
 同時にようやく、彼女の説教エンジンが稼働を開始した。  
「まったくもう……っ! 二人とも素手だったんでしょう? いったいどんな喧嘩したら、Tシャツやブラジャーがそんな風に破けたりするの!?  
 どうやって下校するつもりだったの……少しは後先考えなさいよ。ほら谷川さん、汗とかのことなんか気にしなくていいから、とにかく早く着てっ!」  
「え? あ、うっ、うん」  
 すごい剣幕で迫る真琴に促されるまま、千晶は真琴のベストを着た。乳房は汗や唾液にまみれたままだったが、拭く物がない。  
 濡れそぼったままの巨乳はベストの布地に張り付き、パンパンにきつく張りつめさせた。かえって全裸よりもむしろ淫靡に、千晶の輪郭を描いてしまっていた。  
 未だに尖ったままの乳首が布地の上からでも、左右の突起がはっきり確認できるほどに強く自己主張している。  
 Tシャツや下着とは違ってちくちくと肌を刺す布地の粗さに千晶は片目を瞑ったが、それでもこれだけの巨乳が完全な無防備状態から脱したことに安堵したのか、ふうと大きく息をつく。  
 そして何気ないことのように、くすっと微笑みながら明に尋ねた。  
「そういえば……ねえ、明」  
「ん?」  
「ボクのオッパイと真理のオッパイ。明は両方とも、すごくおいしそうにちゅうちゅう吸ってたけど――どっちのオッパイがおいしかったの?」  
「!?」  
 突拍子もない質問に、明と真琴が二人まとめて凍りつく。無邪気に微笑みかける千晶に、自分も気づいたとばかりに真理が続いた。  
「あ、そうだ。お前しつこく人のオッパイチュッチュチュッチュと吸いまくってくれやがってよー……私のオッパイ、揉んでも何にも出やしないのに。  
 やっぱアレか。先っぽくわえて吸うと、私らのでもちょっとはミルク出たりするんか? んっ……ふう……っ」  
 腑に落ちない顔で言いながら、真理は何かを試すようにしてスポブラ越しに、官能の残り火がくすぶる自らの乳房を揉みしごく。  
 千晶も明に吸われた左乳を持ち上げ、もっちりと柔らかいものの、すこぶる張りがあるため伸びないそれを、なんとかベスト越しにでも自分で吸えないかと思案している。  
「いっ、いやそのっ! お、お前ら、その、それはだなっ!!」  
 二人の少女から注がれる興味津々の視線を前に、明は慌てふためいて狼狽える。だが彼がいま本当に恐れているのは、彼女たちではない。  
「へえ……そうだったんだ、八坂くん。谷川さんと大西さんの胸に掃除ロッカーの中で、そんなことしてたんだ――」  
「ちっ、ちがっ、ここここれはっ!?」  
 国東真琴は笑顔で額に青筋を立てながら摺り足で進み、音もなく、八坂明の胸元にその手を添えていた。  
「――八坂くん?」  
「へっ……?」  
 ぞわりと総毛立つ寒気を感じながら、その手と呼び声に応えようとしたとき。  
 世界が回る。  
 八坂明の視界を千晶の驚き顔と真理のふくれっ面が飛びすぎて、少年は学級委員長の少女の背中で、すでに360度の空中大回転を決めるところだった。  
「――最低」  
 明を一気に投げ飛ばす、真琴のその豪快な背負い投げの一撃が特別学習室の畳から、第三校舎全体を震わせるほどに響きわたった。  
 
○30  
「…………。おい……」  
「始まんねえなあ……?」  
 横穴公園。  
 野次馬児童の数はすでに百人近くに達し、決して大きくもないこの公園には異様な熱気が充満している。  
 しかし博打と物売りが横行し、非日常の祭りの空間となったこの公園で、未だに肝心の主役二人だけが登場しようとしていない。  
 そうして時計が五時を回る頃、いつまでも始まる気配すらないメインイベントに業を煮やした何人かが、公園のあちこちで喚きはじめた。  
「おい、どーなってんだよ! 谷川も鬼マリも全然出てくる気配ねぇじゃねーか!」  
「なあ、この情報ガセ? ひょっとしなくてもガセじゃねーのこれ?」  
「えっ……、いや、そのー……そう言われても、なぁ……」  
 それぞれのグループごとに情報源となった相手を問いつめる動きが起こり、そしてそれらの流れは急激に公園全体へと拡散し、加速していく。  
 それでも親しい仲間内ならば大した問題にも至らなかったが、グループ外からの情報で集まっていた連中はそうも行かなかった。  
「おい、どうなってんだよ! 話が違うじゃねーか!」  
 殺気立った連中が相手に責任を擦り付けはじめ、自らも徒労感に襲われつつある責められた方もカチンと来て、邪険に突っ返す。  
 そんな小競り合いが公園各所で繰り返され、急激に場の空気が悪化していく。気づけば暴動一歩手前だった。  
「そこまでよ!」  
「「「何っ!?」」」  
 だがそんな喧噪のさなか、一人の少女の声が横穴公園を貫いた!  
「真理ちゃんに託された横穴公園! ここの平和を乱す奴らはアホな先公が許しても、このあたしが許さないっ!!」  
「誰だアイツ?」  
「さあ……?」  
「うあ……あのバカ、亜沙美かよ!?」  
 横穴公園というその通称の由来ともなった、円筒形の遊具の真上へ威風堂々と立ち上がって叫ぶ少女に、野次馬どもの怪訝な視線が集中する。  
 なんだなんだと釣られるように人垣が動き、円筒と少女の周りを十重二十重に取り巻いていく。  
 その中には一昨日の公園戦争でこの横穴公園守備隊を独断で動かし、主戦場へ投入した板東宗介の姿もあった。  
「おおっ! キタキタキターッ!!」  
 彼女一人へ公園じゅうから一斉に注ぐその注目度に昂揚したのか、小振りながらも確かな存在を主張する乳房をジュニアブラに包んだ少女――亜沙美はさらにノリノリになっていく。  
 もう今にも踊り出さんばかりの彼女の横で、ようやく円筒上にその身を乗り上げた、広いデコに絆創膏を貼り付けた少女が必死に叫んだ。  
「亜沙美ちゃん頑張ってー!」  
「おうともよマユ! 横穴公園のカーディガン、亜沙美参上! そこの東小っ! おまえ一昨日の負けにも懲りず、この横穴公園を狙ってきたなっ!?」  
「えっ!? いっ、いや俺は別に――」  
 人垣の中から手近な東小児童を指さして叫び、亜沙美は勝ち誇った笑みを浮かべる。もう完全に勢いだけで叫んだ。  
「だが、そうはさせん! 横穴公園はあたしたち、真理党のものなのだ! 負け犬どもめ、横穴公園から去れいっ!!」  
「えっ!? ちょっ、ちょっとぉ!?」  
 言いながら亜沙美は横穴の上で助走し、その無様に狼狽える哀れな東小の男子めがけて、デニム地のスカートを翻すや空高く跳躍した。パンツ丸見え。  
「問答無用! 死ねえーーーっっ!!」  
「うっ、うおおおおおおーーーっ!!」  
 空中で足を繰り出して跳び蹴りの姿勢を作り、野次馬の中で逃げ場のない哀れな獲物を狙って邪悪に笑う。相手は既に半泣きだった。  
 
 だがその軌道上、両者の間へと果敢に立ちふさがる影があった!  
「あ、アホか亜沙美!! こんなとこで勝手に戦争なんざおっぱじめようとしてんじゃね――ぐぼおっ!?」  
「あ」  
 亜沙美の跳び蹴りは、割り込んできたバンの顔面をもろに直撃した。周りを盛大に巻き込みながら、数人まとめて転倒する。  
「ば、バン!」  
「バンがやられたっ」  
「バンがやられたぞっ」  
「おのれ東小めっ!」  
「ええ!? いや、俺ら全然関係ねーし!」  
 別に東小勢が何かやっていたわけでもなく、ただ純粋に亜沙美やバンら西小勢が勝手に自爆しただけだったが、この烏合の衆にとってはそんなことはどうでもよいのだった。  
 視線も満足に通らない人混みの中でたちまちデマが公園じゅうに飛び火、鬱屈した不満を爆発させて、公園戦争第二ラウンドの幕が開く。  
「死ねや東小ーーーっ!!」  
「バンの仇取ったるっ!!」  
「おおうっ、こうなりゃ来いやあ西小の雑魚どもっ!」  
「血ぃ見せたるわボケがーーーっ!!」  
「ええい、やめいっ! 本当にやめんか、お前らぁーーーっ!!」  
 もはや完全に収集不可能の混沌へ陥った横穴公園へ、今頃になって丸川教諭が突入するがもちろん誰も見てなどいない。  
「うわ……何だアレ?」  
「?」  
 下校途中に見かけたそのぐだぐだの大乱戦に、明が呆れた声を上げた。千晶も目を丸くしている。  
 上着は借り物のベストのままランドセルを背負った千晶は、フロントホックを応急修理したブラジャーを付けなおして、どうにか突起を隠していた。  
「ああ……そっか。岸のリークした偽情報か……。にしても、すんげえ勢いで引っかかってんなー……。ダボハゼ並みの知恵しかねえのかあいつら」  
「あ。明、あれ」  
 冷め切った口調で言い放つ明の傍らで、何かに気づいて千晶が指さす。  
 それは公園の向こう側からすごい勢いで突入してきた少女が、暴徒と化した数人の児童たちを出会い頭にたちまち制圧していく光景だった。  
「なんだかよく分からんが待たせたな亜沙美、マユ! おらぁバカども、私のシマでデカい顔して暴れてんじゃねぇ!」  
「真理ちゃん!」  
「真理ちゃん!」  
「ああ、あのアホ……あんだけ暴れてまだ懲りてなかったのか……」  
「明」  
「?」  
 顔をひきつらせて真理の暴れっぷりを傍観していた明に、千晶が力強く頷きかける。明は苦笑した。  
「――行くか。千晶」  
「うんっ!」  
 揃った動作で同時に黒と赤とのランドセルを下ろすと、荒れ狂う新たな戦場へ、二人は全速力で突入した。  
 
 

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