○5  
 ぽつ、ぽつ、ぽつと、ひとつずつボタンを外していく衣擦れの音が、朝の空間にちいさく響く。  
 ごくり、と唾を飲み下す音が、喉の奥から妙に大きく聞こえてくる。  
 暴れるように早鐘を打ちはじめた心臓と、全身から急激に血液を掻き集めては堅く勃ち上がっていく股間の雄の存在が、少年の意識を一気に支配していく。  
 握りしめた掌の中にびっしりと汗を滴らせながら、黙りこくって立ちすくんでいるその少年の目の前で。  
 自室のベッドに腰掛けたままの少女は、うっすらと汗に濡れて肌に張りつくパジャマを胸から引き剥がしていく。その上半身を、薄布一枚に隠されていた白くすべやかな素肌を露わにしていく。  
 そして重たげに熟れた、特大のグレープフルーツ――あるいはメロンのような大きさで盛り上がる胸からの隆起をなぞって、べったりと吸い着いた布地がめくれる。乙女の柔肌からの別れを惜しむようにしながら、やがて完全に剥ぎ取られていく。  
 白く豊潤に実ったふたつの巨峰が外気にさらされ、ぷるんと小さく、しかし重たく張りつめながらも柔らかさに満ちて震え――それら左右の頂でそれぞれ独自にぷっくりと膨らむ、桜色の苺がツンと上向きに突き上げながら、自身の威容を誇示していた。  
 大の男の掌ですらとても包みきれないだけの威容を誇る双の巨乳が、いま少年の目の前へとまったく無防備に、突き出すように曝されている。  
 今まで繰り広げてきた数知れぬ喧嘩で、幼馴染みの少年をはじめとする仲間たちとのじゃれ合いの中で、常に強力な武器として振るわれてきたしなやかな両腕は今、そんな自らの乳房を守るという任務の一切を放棄していた。  
 それどころか今は無防備な双の肉塊を突き出し誇示するかのごとく、両腕はその下で組んでいる。  
 まるで目の前の相手に、その柔らかな果実を捧げようとするかのように。  
 左右を併せればゆうに一キログラムを超える、女性と母性の象徴たる巨乳。  
 カーテンを引いた朝の一室で、そんな存在の威容を見せつけながら、濡れた瞳で少女は呟く。  
「ねえ、だから。お願い」  
「お……おねがい……って――」  
「ボクのオッパイ、吸ってよ。明――」  
 
 
○6  
「…………」  
 灼けるように強い熱を伴って降り注ぐ陽光はもう、この朝からまともに空も見上げられないほどに眩しい。  
 ここ数日にわたって大地を焼いた暑熱もなお足りぬとばかり、またしても真夏日の到来を予感させる鮮烈な朝日の中、ランドセルを背負ったその少年は民家の玄関前に立ち尽くしている。  
 谷川家の呼び鈴を押しながら、八坂明は親友からの返事を待っていた。  
 ずっと近所に住んでいる物心ついた頃からの幼馴染みとして、いつの頃からか無二の相棒、親友として。数え切れないほどの遊びと冒険、喧嘩の数々をともにこなしてきた二人。  
 そんな二人は、朝の登校もいつも一緒だ。だいたいの時間は示し合わせているが、先に出た方が相手の家の前で待つ。それがいつもの二人の登校風景だった。  
 だが、この日。  
 二人で決めていた約束の時間をいくらか過ぎても、千晶は姿を現す気配がなかった。まだまだ朝のホームルームに遅刻するような時間ではないが、千晶が自分をこれほど待たせるなど、今までそうそうあった話ではなかった。  
「まさか、寝坊か?」  
 あり得ない話ではない。自らを取り巻く環境の激変に伴い、千晶はここ数日の間、心身ともいつにも増して激しい格闘の中にあった。  
 その疲れが一気に噴出して、今朝の身支度が遅れてしまったのだとしてもおかしくはなかった。  
 それでも確認したくて呼び鈴を押した明だったが、返事はない。しびれを切らしてもう一度押そうかと思ったとき、インターフォンの奥から少女の声が響いてきた。  
「あっ、明? いま行くから、ちょっと待ってて――あ、いいや。そのままうちに入ってきて!」  
「はぁ?」  
 もう学校の時間だぞ。朝っぱらからなに言ってるんだこいつ、と思いながらも、明は千晶に呼ばれるまま門を開け、玄関の前に上がった。すると間を置かずにぱたぱたと足音が響き、がらりと戸が開く。  
「おはよっ、明っ!」  
「お、おう……お、おはよ……?」  
 いつも通り快活に挨拶する千晶に応じようとして、明は途中で口ごもった。予想外の光景に直面して一瞬思考が停止し、そしてその空白ののち、口を開く。  
「……なんでお前、まだ着替えてないんだよ?」  
 明の抱いた疑問は、彼女の服装に関するものだった。  
 千晶はランドセルすら背負っていなかった。それどころかその服装はまだ、とてもそのまま通学できるようなものではない、寝起きのままのパジャマ姿だったからだった。  
 しかし、そんな150センチに満たない千晶の身長に合わせたサイズのパジャマであっても、やはりその胸は凶暴なまでの存在感でもって砲弾型の輪郭を大きく前へ押し出し、布地をきつく張り詰めさせて、ボタンに強烈な緊張を掛けている。  
 もしも今、千晶の巨乳に対して何らかの一撃が加えられでもすれば、パジャマのボタンを縫い止めている脆弱な糸などは、その内側に秘められた巨大な質量と弾力によって、いとも簡単にそのことごとくが弾け飛んでしまうだろう。  
 そしてあまつさえ左右の隆起の頂には、二つの巨大な乳房それ自体からさらに突き出すようにした親指の先ほどの突起のみならず、ぷっくりとした周りの乳暈の存在までもが、くっきりと盛り上がってしまっているのだった。  
(なんだこれ!? おいおい、つまり、今、こいつ……ノーブラ、ってことなのかよ!?)  
 さすがにかっと顔面を熱くして、明は明後日に視線を逸らした。  
 しかし千晶は別段恥じらうでも悪びれるでもなく、いつもの無邪気で明るい笑顔で返してくる。  
「あー、この格好? これはねー……うん、後で説明するよ。別に、寝坊した訳じゃないんだよ? あのね、明。ちょっと、一つだけ頼みがあるんだ。すぐ終わるから、家に上がってくれない?」  
「家に上がるって……学校は?」  
「うん、もちろん学校も行くよっ。用事が終わったらすぐにね。だから、ホラ明っ。はやく早くっ」  
「えええ……っ?」  
 サンダル履きのまま玄関口から身を乗り出し、なかなか目も合わせようとしない明の手を取るようにして誘い込みに来る千晶に、明は戸惑いながらも歩み寄った。  
「うっ、うお……っ」  
 目を見張る明の眼前で、ブラジャーという檻に囚われていない千晶の乳房はつかの間の自由を楽しむかのように、奔放そのものに揺れ弾んだ。  
 汗で乳房にぴっちり張り付いたままのパジャマはごく頼りない薄布で、このまま千晶が揺らし続ければボタンが弾けなくとも、布地そのものが巨乳に引き裂かれてしまいそうだった。  
 
 素早く視線を巡らし、この無防備すぎる幼馴染みの姿態が衆人の環視に曝されてはいないかと、自らの体を障害物にしようとしながら警戒する。  
 そんな明が間合いに入ると、千晶はその手首をぎゅっと掴んで、自らの家へと力強く引っ張り上げた。  
「お、おい……っ!」  
「いいから、いいから!」  
 千晶は上がり口に足だけでサンダルを脱ぎ整えながら、なおも明を引きずり込もうと力を込める。そうしてパジャマの下に息づいて弾む重たげな乳房の量感も気にしないまま、軽やかな動きで進んでいく。  
「お……おじゃましまーす」  
 そして明は千晶に引っ張られながら、いつもの台詞を吐き出して、いつもの家に上がり込む。  
 それはどうと言うことのない、いつものありふれた光景に過ぎない。そのはずだった。  
 しかし、来訪を告げる明の呼び声に答えるものはない。目の前を進む千晶と自分を除いて、谷川家には誰の気配も感じられなかった。  
「なあ、千晶。そのー……おじさんは?」  
 勝手知ったる幼馴染み宅の廊下を、どこか落ち着かない心地で明は進む。  
「ん? お父さん? お父さんはいないよー。今日はもう行っちゃった」  
「そ……そっか。今、いないのか……おじさん」  
 千晶にとって共に暮らす、唯一の家族の不在。  
 ほんの数日前までなら気にも留めなかっただろう事実を知らされて、明の心臓はその鼓動を速める。  
 つまり。  
 今、この家の中に俺は、ノーブラでパジャマ姿の千晶と、二人っきり――  
「おいおい……朝っぱらから、俺は……いったいナニを考えてるんだ……?」  
 不意に朝一番から下腹に沸き上がる熱のたぎりを意識して、明は自分自身への不審をも交えた複雑な感情を抱く。  
「でも明、どうしてそんなこと聞くの?」  
「な……っ! い、いや、そのっ……ああ、もうっ! なんでもねえよ!」  
「?」  
 そんな明に大粒の瞳を瞬かせ、千晶は不思議そうに小首を傾げる。  
「まあいいや。来てよ」  
 言いながら、千晶は軽快に――しかし胸だけはひどく重たげに弾ませながら階段を上り、自らの部屋へと親友を招いた。そのままベッドへ腰を下ろすと、二つの乳房がパジャマの下でばいんと揺れる。  
「ほら! ランドセルも置いて」  
「いや、いいよ……どうせ、すぐ出るんだろ?」  
「いいからっ。置いてよ、ランドセルっ」  
 言いながらベッドマットを何度も叩く、妙に押しの強い千晶に何度も勧められて、やむなく明はランドセルを床に下ろす。仕方なしに辺りを眺めた。  
 部屋の模様に変わったところは特にない。本棚にひしめく図鑑や学習書に漫画や児童書の数々、サッカーボールにグラブといったスポーツ用品、そしてハンガーで吊られた衣服の数々。  
 相変わらずだった。少なくともごく最近、以前に訪れたときからの目立った変化は感じられない。  
 女の子らしいところのほとんど見られない、胸を除いた外見その通りのボーイッシュな少女である谷川千晶の部屋は、明が以前訪問した数日前から、これといって目立った変化を遂げてはいなかった。  
「ま、まあ、そうだよな。そんな簡単に、変わったりするわけ――」  
 そう小声で呟きかけて、明は座ろうとした場所にあった何かに気づく。何の気なしに手に取って、思わず吹き出しかけた。  
 特大のグレープフルーツがごろりと収まりそうな大きさのフルカップをふたつ繋いだ、白いフロントホックブラジャーが無造作に置かれていたからだった。  
「……う……っ……あっ、ああああああ……っ!?」  
 思わず取り乱しかけながらも努めて平静を装い、その持ち主の顔を見る。  
 しかし幼馴染みの親友に自分のブラジャーを見られ、手にまで取られた千晶は至って平静のまま、何事もなかったように話しはじめた。  
「それ、いつものG65ってサイズのやつだね。明にお風呂場でボクの裸を見られちゃった日に、お父さんとたくさん買ってきたやつ。今日もこれから、それを着けていくんだけど――」  
「だ、だけど……?」  
 
 言いながら、千晶は表情を曇らせる。  
「それ。なんだかちょっと、もう……キツくなってきちゃったような気がするんだ……」  
「へ。へえー……キツく、ねえ……って、お前。……それ買ってきたのって……まだ、ほんの三日前の話だったろ!?」  
「うん、そう……そうだよ。たったの……三日前なんだ。あのときはまだ、このサイズでもうしばらくは大丈夫かな、ちょっとくらいキツくっても、そのほうがあんまり揺れたりしないだろうし……って感じだったんだけど……。  
 今朝はもう、いっぱいに張っちゃって……正直、けっこうキツいんだ」  
 そして少し心配そうな顔で、明をじっと見つめる。  
「あのね。ボクのオッパイ、また、大きくなっちゃったみたいなんだ……」  
「ま、また……おお、きく……っ」  
 千晶に気取られぬよう、思わず明は生唾を飲んだ。  
 顔をつき合わせて話している幼馴染みのすぐ下にある、その巨大な肉塊と、布地を突き上げる突起に一瞬だけ視線を下ろし、すぐに引き剥がす。  
 まずい。明の股間はとうに危険水域を突破してしまっている。  
「うん。それで、ボク、困っちゃったから……もうすぐ、このサイズでお願いしてきたスポーツブラジャーだって届くのに。  
 ……このままもっと、今よりずっと大きくなられちゃったりしたら、今よりもっと邪魔になるし……この前せっかく頼んだスポーツブラジャーだって、いつまでも付けられないままになっちゃうよ……」  
「そ、そうか……確かに……それは、困ったな」  
 確かに千晶は三日前のあの日、自らの胸に急激に発育してしまったこの乳房の存在と向き合い、ともに生きていくことを決めた。  
 それまでのように無闇に胸を押し潰したりするのではなく、あくまで乳房をそのままに暮らすということであれば、まずはブラジャーで支持し、補正していくということになる。  
 だが千晶は西小学校が誇る悪童軍団の中核として、その日々を元気いっぱい悪戯や喧嘩に勤しんでいる少女だ。  
 そんな彼女にとって普通のブラジャーでは、激しい運動で生じる乳房の動揺を吸収しきれなかったり、些細な攻撃を受けただけでカップが乳房から脱落してしまったりと、決して満足の行くようなものではなかった。  
 それは彼女の相棒としてこの数日間、いくつもの修羅場を共にくぐってきた明もまた、肌で実感していることであった。  
「確かにそうだな……。まあ成長期だからこれから大きくなっていくのは仕方ないとしても、そんなに急に大きくなられたんじゃ、スポーツブラジャーの注文だって間に合わないしな……」  
「うん……」  
 幼馴染みの大親友に対して勃起してしまっているという後ろめたさを悟られないよう、さりげない風を装って座り方を少しずつ誤魔化しながら、明はいよいよ本題の方に切り込んだ。  
「そ、それで……お願いって、なんだよ。朝からそんな、急に……改まってさ」  
「うん。それはね――」  
 思いを決したように頷くと、千晶は自らの両手を、パジャマのボタンに掛けた。  
 
 
○7  
「……ちょ……ちょちょちょちょちょちょっ、おま……っ!? ま、待てよお前っ!? いきなり何しようとしてんだよっ!?」  
 蹴飛ばされでもしたかのように、いきなり壁際まで思い切り後ずさって、明は慌てふためいて半裸の千晶に聞いた。  
「?」  
 自らの手でその巨乳をさらけ出してのけた千晶は、明の反応をさも不思議そうにつぶらな瞳で見つめたまま、何事もなかったかのように再び言った。  
「だから。言ったでしょ? ボクは明に今ここで、ボクのオッパイを吸ってほしいの」  
「だからっ! なんでそうなるんだよっ!? まったく意味わかんねぇしっ!!」  
 自分の幼馴染みは急にオッパイが大きくなり過ぎたあまり、ついに頭がおかしくなってしまったのだろうか?  
 そんなことまで考えながら慌てる明に、千晶はあくまで冷静なまま言葉を続ける。  
「? ボクには、明に何が分かんないのかのほうが分かんないけど……。だから、ええと……普通さ。オッパイって、赤ちゃんにあげちゃうとしぼんじゃう……って言うよね?」  
「……へ……っ?」  
「あのね」  
 ぱちり、と目を瞬かせる明を前に、千晶は自らの乳房を左右ともに下から鷲掴んだ。  
 十一歳の少女の掌にはとても収まりきらないだけの巨大な乳肉が、十指の間へ握り潰されて絞り出されてくる。  
 その白乳の尖端から飛び出すように迫り出す大粒の苺は、いかにも巨乳の中核に相応しい独自の威容を誇ってぷっくりと膨らみ、その周りへ上品に広がる乳暈とともに、吸い付いてくる赤子の唇を待ち受けているかのようだった。  
「ボクのオッパイだって、今はミルクも出ないけど、ほんとは赤ちゃんにあげるためのものなんだもん。だからちゅーちゅー吸われたら、ボクのだってその分ちゃんと小さくなるはずだよ。  
 ……テレビとかでも、前に買い物に行ったスーパーでも、お母さんになった女の人がそういう風に言ってたもん。赤ちゃんにおっぱいあげたら、前より小さくなっちゃった、って――」  
「い、いや……いや、それは、おまえ……っ」  
 小学六年十一歳の、若さと呼ぶにもなお青くみずみずし過ぎる精気にあふれた乳房を誇示しながら、千晶はじいっと明の瞳を見つめてくる。  
「だから、お願い。明がボクのオッパイ吸ってくれたらきっと、もうこれ以上……ボクのオッパイ、大きくなってボクを困らせたりしないから」  
 ……どこから突っ込んでいいのか分からない。  
『ちがう、ちがうもん、やめて、やめてえぇ……ボクの、ボクのおっぱいお母さんのじゃないもん……ふくらんでても子どものだもん、どんなに揉んでも吸っても、お乳なんか、ミルクなんか一滴も出ないんだもん……だから作倉さん、やめてえぇ……』  
 東小学校の変態爆乳少女、佐倉歩美に監禁されて乳房にむしゃぶりつかれてしまった時、そう言って必死に抵抗していたのは、他ならぬ千晶自身だった。  
 いくら見栄えだけは群を抜いて、ほとんどの大人の女性たちより見事な巨乳を抱えていても、千晶は経産婦などではなく、妊娠したことすらもない。  
 そんな母乳も出せない千晶の乳房では、いくら吸いしゃぶってみたところで、千晶が望むような効果が得られる公算は限りなく低いだろう。明はそう思った。  
「い、いや……お前の気持ちと、言いたいことは分かったけどさ……おかしくねえか? その……なんで、そういうこと……俺に、頼むわけ……?」  
 すると千晶は、どこか一抹の冷たさを感じさせる視線を明に据えた。  
「…………。昨日さ。真理と決闘した特別教室の掃除ロッカーの中で、最後に――明、ボクのオッパイを吸ったよね? 先っぽ咥えて、ちゅう、ちゅう……って」  
「う……っ」  
 その通りだった。  
 昨日の決闘――千晶にとって宿命のライバル、大西真理と一戦交えることになった決闘。  
 執拗に千晶の喧嘩を阻止しようと図る担任教師・藤原通子から密かに逃れて、閉ざされた特別教室で激突した二人を、明は中立の立会人として見届けることになっていた。  
 その最終局面で介入してきた担任教師接近の報を受け、お互い半裸に剥かれた二人の巨乳美少女と共に、明は教室の掃除ロッカーに逃げ込んだ。  
 お互い声すら出せない状況のまま、しかし決闘の闘志は未だ胸にくすぶったままの真理は、ロッカー内の至近距離で明を間に挟んだまま、千晶の無防備な乳房を狙って責めなぶった。  
 互いの位置関係とリーチの違いから、一方的に真理に巨乳をもてあそばれた千晶。決闘という行為の枠を踏み越えたその暴挙に、明は真理を凌辱するかのように制裁した。  
 
「あのとき明、真理のオッパイも吸ってたよね。ボク後ろで見てたもん。真理のブラジャー脱がせて揉んで、その後ずうっとちゅぱちゅぱって、真理が半泣きで嫌がっても左右両方をずうーっと、なんだか、すっごくおいしそうにさ……。  
 それとも、明。真理のオッパイを吸うのはよくて、ボクのオッパイはイヤなの……?」  
「いっ、いやっ、そうじゃなくて! そもそも、そ、そっ……そんなの自分で出来るだろ!? お前のオッパイ、もう自分で吸えるぐらいデカいんだからさあ!」  
 予想を超える申し出を前に、苦し紛れに口から出任せのつもりで喚いた明。しかし千晶はそれを、真正面から真顔で受け止めてのけた。  
「うん。確かに、ボクも自分で吸えるんだけど……」  
「えっ?」  
 言いながら、千晶は右の乳房を右手一つで捧げ持つ。そのまま小さく俯くだけで、たわわに実った右の乳房を乳首だけでなくその周辺部まで含んでのけた。  
 千晶の乳房は丸く大きく、そして何より素晴らしい張りがある。これほどの質量があってもなお、決して長く延びてなどいないのだ。  
 それでも千晶はしごく簡単に、その唇へ自らの乳首を含むことが出来ていた。  
「んっ……ちゅぷ……ちゅぱ……っ」  
「…………」  
「んぷっ……ぷっ、はぁっ」  
 呆然と見つめる明の目の前で数秒間も吸いしゃぶったのち、千晶はようやく乳首を離した。  
 自らの唾液にまみれて妖しく濡れ光る、新鮮な桜色に輝く乳頭を明の方に向けながら、そこから唾液の糸を引いたままの唇で、どこか不満げに言葉を紡いでくる。  
「こんなふうに、ね……一応はボクも、自分で少しは吸えるの。でも自分でだと、ほんとにオッパイの先っぽとその周りを少しぐらいしか口に含めないし。オッパイ全体からちゃんと吸ってるって感じがあんまりしないから、そんなに効果なさそうで……」  
「…………」  
「……明……聞いてる……?」  
「……はっ? あっ、えっ……あっ、ああっ! き、聞いてる聞いてる!」  
 怪訝そうに千晶に聞かれて、思わず取り乱しながら明は喚いた。  
 目の前で自らの乳房を片手で持ち上げるだけで、簡単に唇に含んで吸えてしまうほどの大きさを見せつけられることで、明はその巨乳ぶりを否応なしに再認識させられていた。  
 同時にその下腹に帯びた熱はすでに焼けつくほどで、少しでも気を抜けば、友情も理性も吹き飛ばしてしまいかねないほどに過熱していることも認識している。  
「……だから、ボクは明にボクのオッパイを吸ってほしいの。もちろん明だけじゃなくて、自分でも吸ってみるけど……明に吸ってもらった方が自分で吸うより、きっと効果は大きいって思うから。…………。明……イヤなの?」  
「えっ? い、いや、ただ俺は、その――」  
「…………」  
 なおも狼狽して言葉を濁す明に、千晶はむっと眉をひそめてそっぽを向いた。どことなく投げやりに言葉を放つ。  
「……明がイヤなのなら、いいよ。……他の誰かに頼むから」  
「ほ、ほっ……他の誰かって、だっ、誰だよっ!?」  
 突拍子もない千晶の言葉に、明は思わず慌てふためいて詰め寄った。  
 まず最初に脳裏に浮かんだのが一昨日出会った東小学校の根暗な感じの爆乳少女、佐倉歩美だ。  
 ずっと前から千晶に片思いを寄せていたらしい彼女が自宅に誘い込んだ千晶を拘束し、明の眼前で千晶の巨乳を吸いなぶるなどした艶めかしい光景は、未だに明の脳裏から離れようとはしていなかった。  
 まさか、こいつ。あれで癖になってしまったのでは。  
「……だ、誰って、別に……他の誰かに、だよっ」  
 その明の剣幕が予想を超えたのか、いくぶん鼻白みながらも、千晶はあくまで強気に言い切った。  
「……どうなの……明。ボクのオッパイ……そんなに……イヤなの……?」  
「い、いや、その、おまえ……っ。イヤとかイヤじゃないとか……そういう問題じゃなくて、なぁ……っ」  
 そりゃあもちろん、吸えるもんなら吸い尽くせるまで吸いたいけれど……そういう問題じゃないだろうよ。  
 
 戸惑いながら下がる明に、あくまで千晶からの視線はまっすぐ瞳の奥へと突き刺さってくる。  
 そもそもこんな方法で、千晶が望むような効果――乳房の成長を遅らせる、もしくは小さくしてしまう、といった効果が得られるなどとは思えない。  
 閉ざされた部屋の中で膨れ上がっていく欲望に押しやられながら、それでも明の理性はそう叫んでいる。  
 千晶が何を思ってこんなことを言い出したにしろ、そのまま喜び勇んで千晶の乳房にむしゃぶりつくようなことは出来ない。  
 幼馴染みのいちばんの親友を、誰より大事な最高の相棒を、下半身の衝動のままに欲望で汚したりしたくない。例えどんなに気持ちよくても、それだけはダメだ。千晶を裏切りたくない。  
(でも……)  
 だが同時に、自分は、約束した。誓ったのだ。  
 今まで通り、一番そばについててやる、と。どんなときも、必ず、自分だけは千晶の味方になると。  
「…………」  
 もう一度、真正面から千晶の瞳を覗き込む。  
 親友の瞳はいっぱいの切実さを湛えて明を見つめながら、同時に、その片隅に不安の影を覗かせてもいた。  
 ――千晶はいま、俺の助けを必要としている。  
 ただ身勝手に、自分の、男の欲望の対象とするのではなく。  
(もし、それで……俺が千晶のオッパイを吸うことで……それだけで、千晶が安心できるって言うのなら、……俺は――)  
「わ……わかった」  
「!」  
「そ、そこまで言うなら……お前のオッパイ、とりあえず……吸ってやるよ。そのかわり……それで小さくならなくても、あとで文句言ったり、するなよな……」  
「…………! う、うんっ! じゃあ、明……おねがいっ!」  
 ぱあっと表情を華やがせ、心なしか頬に一筋の紅を射したようにも見えた千晶が両手を広げ、その乳房を押し出すようにして一気に明へ迫ってきた。  
「あ、ああ、……うわっぷ!?」  
 その千晶の表情に一瞬見とれた明の隙を突くように、千晶は明の頭を両腕で抱きしめ、その豊潤な乳肉の海へ、明の顔面を沈めるように抱き留めていた。  
「ぷ、ぷふう……っ!!」  
 明にとって、それは初めて味わう感触だった。  
 単に千晶の裸身だけなら、これまでの濃密な数日間で何度も目撃してきてはいた。掌に千晶の乳房を包み、溢れる乳肉を執拗なまでに揉みしだいたこともあったし、昨日に至ってはわずかな間とはいえ、乳首を口に含んでしゃぶり上げさえもした。  
 鉄壁の学級委員長、国東真琴が体育倉庫で見せたストリップショーと無防備な肢体。  
 監禁した明に逆襲され、明の手でIカップのブラジャーを引きちぎられたうえ裸身をベッドに組み敷かれ、ショーツの上に男根の切っ先を突きつけられて、処女まで貫き散らされようとしていた爆乳少女、佐倉歩美。  
 そして昨日、掃除ロッカー内で制裁として明にスポーツブラジャーを剥ぎ取られて凌辱され、あまつさえ処女喪失と膣内射精までを受けてしまう寸前だった暴君少女、大西真理。  
 千晶以外にもそんな巨乳少女たちと重ねてきた肌の温もり、はちきれそうな乳房の弾力と柔らかさを思い出しながら、しかしいま顔面で味わうそれらのどれとも違う千晶の乳房の感触に、ここまで耐え抜いてきた明の理性もついにふっつりと切れた。  
「ハムゥッ!」  
「あうッ!!」  
 猛り狂う雄の欲望のまま、明は千晶の左乳房に襲いかかった。  
 千晶の乳房はブラジャーや手の支えなどなくとも、自由なままでツンと上を向く若い弾力に満ちあふれている。  
 だから単に上からしゃぶりつくだけの動作で、明はその巨乳に見合う大きさの乳暈だけでなく、乳房全体の半分近くまでを一気に口へ含むことが出来た。  
 豊潤な白い乳肉、桜色の乳首と乳暈。甘い果実を思わせる彩りだが、感じる味わいはあくまで若干の塩辛さを帯びた少女の汗のそれだ。大きさや質感はともかくその味わいは、昨日むさぼり尽くした真理の乳房と大差ない。  
 しかし明はそれにも飽き足らず、さらなる乳肉を求めて両手を繰り出し、自らの口腔内へと左乳房の余りを押し込んでいく。  
 それでも千晶の乳房全体はとうてい含みきれなかったが、あっさりと奥まで届いた乳首の尖りが喉を刺すのを感じて、これが限界と明は悟った。  
 
「……あ、はぁ……っ。すごい、すごいよ、明っ……ボクのオッパイ、半分ぐらい口に入れちゃった……。これなら、きっと……そう……そこから、ボクの……吸ってぇ……っ」  
 言われるまでもない。限界まで口に含んだ千晶の乳肉を締め付けるように、明は唇をきつく窄めた。  
 そのまま千晶の乳房から出るはずのない母乳を搾り出そうとするかのように、明は締め付けながら顎を引いていく。巨乳そのものから、その尖端の乳首へ向かって後退する。  
 ぷっくりと膨らんだ桜色の乳首と乳暈が、明の口腔に押し潰されて変形していく。後退し続ける明の顎から、ついに乳房全体が逃れられるかといった瞬間、明は再びかぶりついた。  
「痛ッ、んゥ……ッ! ふ、ああ……っ、噛んだりしたら、だめ、だよぉ……っ!」  
「あぷっ、ふあっ……ご、ごめんっ」  
 明の後頭部を抱く千晶の腕に、びくんと電撃されたような痺れが走って、明ははっと我に返った。  
 見れば乳暈よりほんの少しだけ外側の乳房、桜色と純白の境界線あたりに、上下に歯形が残っていた。思わず、ずいぶん強い力で噛んでしまっていたらしい。  
「うあ……ご、ごめん、千晶」  
「か、噛んじゃダメだからね……!? もう。昨日も明は真理の乳首噛んでたし、一昨日は佐倉さんもボクの乳首噛んできたし……どうしてみんな、オッパイ噛んだりしたがるのかなあ?  
 いい、明? オッパイは噛むものじゃなくて、吸うものなんだからねっ!?」  
「お……仰るとおりでございます……」  
 千晶の怒気に押されて、二つの巨乳を文字通りの眼前にしながら明は申し訳なさそうに縮こまる。その態度に溜飲を下げたのか、千晶は表情を和らげると、明を再びそっと抱き寄せた。  
「ん。分かればいいよ。……続き、吸って?」  
「お……おう」  
 今度は右乳房に視線を止める。その乳暈周辺をてらてらと濡れ光らせているのは、いま千晶が自分で口に含んだときの唾液だ。  
 これって、間接キスってことになるのか……?  
 普段はジュースやお茶を回し飲みしていても一度も考えたことのなかった単語が、なぜか今回だけは頭に出てきてうるさい蝿のように飛び回る。  
「明……?」  
 親友の躊躇を感じ取ったのか、どこか不安げな声で千晶が覗き込んでくる。  
 ――お前はいま、千晶のオッパイを口に含んで吸ったんだぞ。乳首に歯まで立てたんだ。ここまで来ておいて、間接キス程度で何を躊躇するところがあるのか。  
 ええい――ままよ。そもそも、こいつもその辺あんまり気にしてなさそうだしな。俺だけ神経質になってどうするんだ。  
 無言のままで自分を叱咤して思いきり、はぷっ、と明は千晶の右乳房を口に含んだ。みずみずしさに溢れた千晶の巨乳は、やはりわざわざ下から手で支えておくまでもなく、ただ顎を押しつけるだけで自ら腔内へ弾み込んでくる。  
「はう……っ!」  
 その頂にまつわりついていたはずの千晶の唾液はその汗に紛れてしまい、味わいの違いを感じとる間もなく、明の腔内に渦巻く唾液の海に消えた。  
 噛んじゃダメ、噛んじゃダメ。欲望に押し流されそうになっても、歯だけは絶対に立てないように……そう念じながら、千晶の巨乳を頬張っていく。  
 少しでも多くの乳肉を腔内に収めるため、乳首の尖端を喉奥の真ん中へ寄せようとする。しかし弾力の強い千晶の乳房は思うようには導かれず、左頬内側の粘膜をくすぐるように乳首がなぞった。  
「んうっ……ほのっ!」  
「ひゃんっ!?」  
 明は体そのものを左側へ振って、千晶の右乳房との位置関係を整えながら、明は舌を繰り出して舐めあげた。  
 ざらりとぬめった舌の感触が下半球から乳房を襲い、弾力に満ち溢れた乳肉の張りに食い込みながら乳暈へ至る。  
 乳房から一段高く盛り上がった乳暈の感触へ、明は咄嗟に舌を突き刺す。舌先はなお乳房を登りながら奥へ食い込み、もっとも突起した乳首の中心を、二センチほども乳房の奥へと押し込んだ。  
「んあ……っ、ふ、ふあああ……っ!」  
 集中的に乳首を狙った凶悪な責めに、千晶がびくびくと腕を震わせながら身をよじる。  
 敏感な部分を責めなぶられて、あられもない反応を示す美少女。昨日、あの掃除ロッカーの中で真理を相手に味わったその感触に、明はハーフパンツの中の逸物をいっそう凶暴に猛らせていく。  
 乳首の先端に刻まれた割れ目から母乳の井戸をほじくり出そうとするかのように、明は執拗に乳首へ向かって舌を繰り出し、乳頭もろとも乳房へ埋め込み、乳暈から乳首めがけてしゃぶり上げた。  
 
「あ、あんまり……舌で、さきっぽくすぐったり、……しないでぇ……っ。そんなことされると、ボク、くすぐったくってぇ……ヘンな感じに、なってきちゃうよぉ……っ!」  
「そんなこと言われてもな……」  
 たっぷりと楽しんだ乳首から唇と舌を離し、乳暈の中からぷっくりと起き上がってこようとしている乳首と、そこから自分の舌まで糸を引いている唾液の名残を見つめながら、明は口腔そのものではなく、言葉の力で千晶をなぶった。  
「おっぱい吸ってくれ、って言ってきたのは千晶のほうなんだぜ? おっぱい吸うのってどこからだと思ってるんだよ。乳首だろ? 乳首に触らずに、どうやっておっぱい吸えって言うんだよ」  
「た……確かに、そうかもしれないけどぉ……でもそんなふうに、意地悪されてると……ボク……ボクぅ……くすぐったくって……からだが、熱くて……へんに……なっちゃう……」  
「……ダメだ。お前のおっぱい、俺の好きなように吸わせろよな……」  
「ああ……そんなぁ……だめぇ……そんなの、ダメだよぉ……あきら……明ぁ……!」  
 欲望の熱に浮かされた明は、千晶を押しきって再び目の前の巨乳に没入する。千晶は最初のうちこそやめてと懇願し、腕力も使っての抵抗をも試みていたが、その力はごく弱いものでしかなく、とうてい明を引き剥がすことなど出来なかった。  
「んぷ……ちゅぷっ……ちゅぷ……ぷっ、はぁ……!」  
「あう……っ……あ、ああ……あはあ、ぁ……っ」  
 息継ぎのために乳首を離し、ちらと胸から見上げてみれば、乳房をその中核からいいように責め抜かれて、千晶はすでにその抵抗能力のほとんどを喪失してしまっているように見えた。  
 頬を真っ赤に火照らせたまま、熱だけを宿したうつろな瞳で息も絶え絶えに喘ぐ千晶。  
 今まで一度も見たことのなかったその表情は、明の股間に宿る雄の根源から、これ以上ないほど強い衝動を生じさせてしまっていた。  
 あまりにも魅力的で、そして、あまりにも無防備な雌の姿。  
 昨日もそうだった。掃除ロッカーの中で、リーチの差と位置関係の問題から真理に一方的にその巨乳を餌食にされた千晶は、ひどく簡単にその戦闘能力を喪失し、なされるがままになってしまっていた。  
 ……今だったら、このまま……ほとんど無抵抗の千晶を、無理矢理ベッドに押し倒して……パジャマの下も、ショーツもぜんぶ脱がせて、そして、全身を押さえつけて、……千晶の、なかに、いちばん奥まで、俺のを……最後まで……  
「……!」  
 ――何を考えているんだ、俺は?  
 限界まで突っ走っていった妄想の中から明は、ふと自身の右手を千晶の背中から――その下半身のパジャマとショーツを脱がそうとするかのように、千晶の尻へと回してしまっている自分に気づいて立ち止まった。  
「……待てよ……おい……」  
 俺はいま、千晶に何をするつもりだった?  
 昨日の、掃除ロッカーの中の……真理を制裁したときと、同じか?  
 あのときと同じような、欲望にまみれた目で、俺はこいつのことを……千晶のことを見ようとしていたのか?  
 俺は……千晶をこんな風にしたくて、そういうことをしたくて、千晶の頼みを聞いたわけじゃなかったのに。  
 千晶だって、俺にこんな風にされたくて、そういうことをされたくて、俺に頼んだわけじゃないのに。   
 ただ純粋にこいつは、自分の胸のことが心配で。でも、それを相談できるような相手が思い付かなくて、それで一番身近な、いちばん信頼してる俺を頼って……。  
「…………」  
 なお股間に猛る熱の強さは、いっこうに引く気配がない。だが今の明はもう、単なるその欲情の熱の奴隷ではなかった。  
 いままで十一年間をともにしてきた、千晶の笑顔、ともに戦うなかで見せる横顔の凛々しさ、一緒に怒られたとき、喧嘩に負けたときの情けない泣き顔――不意に溢れてきたそんな思い出の洪水が、明から淫らな熱を洗い流していく。  
 こんなにデカくてきれいで、何よりエロいオッパイしてるけど、それをまったく無防備に、俺に見せたり触らせたり、吸わせたりまでするけれど……こいつは誰より大事な、俺の、親友なんだ。  
 だから、俺は――こんな方法で、こいつを傷つけたりしたくない。  
 
「……ほんっ、とうに……しょうがねえやつだなあ……」  
「ふっ……ふえぇ……っ?」  
 唇を離す。  
 目尻にうっすらと涙を浮かべ、紅潮しきった頬で千晶は明を恐る恐る見下ろしてくる。  
「しょうがねぇなあ……。千晶の泣き顔は、今までのでもうじゅうぶん見られたし。俺もずいぶんスッキリしたから、千晶の乳首をイジメてやるのは、まあこの辺りにしといてやるよ」  
「……あき……ら……?」  
「これ以上、千晶に泣かれたりしてもめんどくせーしさ。ここから先はお望み通りの通常運転にしといてやるから、感謝しろよな」  
「……なっ……! なに言ってるの、明っ! ボク絶対、少しも泣いてなんかないからねっ!!」  
「はいはい、わかったわかった。千晶は泣いてない泣いてないー」  
「何その適当な言い方!? バカにしてるのっ!?」  
「ぐえッ!?」  
 不意に強烈な力で抱き締められて、明は再び千晶の乳房に沈んだ。左右の乳首がごりごりと頬に擦りつけられる中で、柔らかさと弾力に満ちた乳肉が明の口腔めがけて雪崩れ込んでくる。  
 その圧倒的な質量は柔らかく変形しながらもっちりと明の顔面に張り付いて、鼻と口とを完全に塞いでしまう。十分な腕力と組み合わせられれば、巨乳というものは殺人の凶器になりうることを身をもって明は知った。  
 明は必死にもがいて抵抗したが千晶の力は先程までの弱さが嘘のように強く、さらに呼吸器を封じられた状態では明の力はどんどん弱まり、脱出の可能性は急激に消失していった。  
「ひ、ひふ。ひふ、ひふ、ひふ……!」  
「もう……っ! 本当に、もう……っ! 明はほんとに、本当にい……っ!」  
 巨乳に溺れながらベッドを叩いてギブアップを宣言する明が窒息しかけていることに、数秒遅れで怒り心頭の千晶は気づく。ようやく胸から解放してやると、ぷはあっ、とすごい勢いで明は酸素を貪った。  
「ぶっ、ぶっはぁああぁっ!! えほっ、えほ、えほっ!!」  
「……ふふん。なーんだ。明も泣いてるじゃん」  
 そっと右手をむせる明の目尻にやって、浮かんだ涙を千晶が拭う。半死半生の明は一拍遅れて反撃した。  
「な、な、泣いてるじゃん、じゃねえだろ! お前なあ、今マジ本気で俺のこと殺しに来ただろ! お前のオッパイに顔面埋めさせて、俺を溺死させるつもりだったよなぁ!?」  
「かんけーないですー。ふーんだ。今ので明だって泣いたもん。これでおあいこだよね!」  
「お、お前……ほんっとうに、お前、なぁ……っ」  
 おあいこ。これでいつも通り、貸し借りなしのいつもの二人。  
 ぺろっと舌を出しながら得意気に微笑む千晶にこめかみへ青筋を立てながら、しかし息を切らせる明は、今の自分がひどく安心していることに気づいていた。  
「……、マ……マジで、死ぬかと、思った……」  
「もう。明が変なことしたり、変なこと言ったりするからだよー。じゃあ明、今までのはこれでチャラだよ! ここからは真面目に、ちゃーんと普通にオッパイ吸ってね!」  
「真面目に……ちゃーんと普通に……ねぇ……」  
 今さら突っ込んでも遅いけど、改めて考えるとどんな状況だよ。  
 口許を凍った笑みでひくつかせながら、しかし明は目の前にそびえる天上の果実に視線を止める。  
 大きく、いやらしく、そして美しい。  
 これを目の前に差し出されても吸わずにいられる人間など、いったいこの世に存在しうるのだろうか?  
「そんじゃあ、もっかい……いただきます」  
「んっ……、吸って……」  
 ちゅぱっ、とすでに明の唾液まみれになった乳房を口に含み、明はもうただ無心で千晶を吸った。  
 そこからは別段言葉を交わすでもなく、明は息継ぎのために乳首を解放し、代わって反対側の乳首に吸い付く。何度も乳首と乳暈を舌で責め抜きたい誘惑に駆られたが、明はそのすべてを飲み下し、優しく巨乳を吸い続けていた。  
 そんな風に、左右の乳房を何回も往復するうち、千晶の唇から笑みがこぼれた。  
「……うふふ……」  
「――?」  
 穏やかな微笑みとともに、髪を梳くように後頭部をそっと撫でられて、明は千晶の乳を吸いながら目だけで上向く。  
「えへへへへ。こういう風にしてると……なんだか明、ボクの赤ちゃんみたいだね」  
「ぶっ!!」  
 その言葉に、明は思わず乳房を吐き出し、抗議の意を込めてきつく千晶を見上げる。  
 
「おっ、お前なぁ! お前が吸ってくれ吸ってくれって頼むから、俺はお前のオッパイ吸ってやってんのに! いきなり何ヘンなこと言ってくれてんだよ!?」  
「あはははははは。ごめん、明。でも、こうやってしてると……なんだかボク、何て言うのかな……すっごく……安らぐんだ……」  
「安らぐ……?」  
「うん」  
 頷きながら千晶は再び明を抱き寄せ、乳房への吸いつきを催促する。  
「ん……っ、あのね……。ボクのオッパイはまだ、お母さんのミルク出ないけど……こうやって、明にちゅうちゅう吸ってもらってると……なんだか、すっごく安心するんだ。落ち着いてくるの」  
「…………」  
「公園とかで赤ちゃんにオッパイあげてるお母さんたちも、みんな優しそうな顔してるけど……きっとこうやってオッパイ吸われてると、だんだん今のボクみたいな気分になってくるのかなあって……。そう思うんだ……」  
「……そっか」  
 明は無言のまま、千晶の乳房を吸い続けた。  
 早くに母を失った千晶。  
 母性を知らないまま、明たち男子に混じって育ってきた彼女にとって、予想を遙かに超える急成長を見せた自らの乳房は、未知の母性を感じさせてくれる存在なのかもしれない。  
 ――もうしばらくは、千晶の赤ちゃんでいてやってもいいか。  
 明はそんなことを思いながら無心の赤子のように、一滴の母乳も産み出すことのない飾り物の乳房を吸い続けた。  
「ありがと。明……」  
 目を閉じて吸い付いてくる明になんとも言いようのない愛おしさを感じて、千晶は明の頭をそっと抱き寄せながら呟いた。  
「見た目だけの形と大きさだけじゃなくて。ボクのおっぱいも、ほんとにミルクが出たらいいのにな……」  
 
 
○8  
「すっごい……気持ちよかった……」  
 ベッドの上に半裸の上体を横たえたまま、疲れに脱力した――しかし夢見心地のような表情で千晶は言った。  
 明に何度となく激しく吸いしゃぶられた乳房は左右両方とも、明の唾液にまみれたまま、吸いなぶられた乳首からその前半部までを赤く腫らしている。  
 身体を起こしているときには、重力と張力との絶妙のせめぎ合いの中で芸術作品さながらの美形を誇示していた千晶の巨乳だったが、こうして横たわっているときにはさすがにそんな威容を保つことは出来ず、胸板の上にまんべんなく潰れて広がってしまっていた。  
 それでもなお、胸板の広さに対して圧倒的に大きい千晶の巨乳は、見事な小山をふたつ築き上げていることに変わりはなかった。  
(平常心、平常心、平常心……)  
 さながら情事のあとのような風情を漂わせながら、あられもない半裸の姿で横たわる千晶の隣で、明は膨れ上がりきった男根の熱を持て余しつつも、なんとか欲望の炎を鎮火させようと試みていた。  
 えっと……どうしよう。この状況では、抜いて処理するわけにもいかないし……。こういうときは、どうすれば……天井のシミとか数えていればいいんだっけ?  
 とにかく、まずい。何とかして頭と股間を切り替えなきゃ。今から通学だっていうのに、チンコをこんなギンギンの状態にしたままでいいわけないだろ。鎮めなきゃ。なんとかして、鎮めなきゃ……!  
「ん、しょ……っ」  
 まだ気だるげな甘さを孕んだ息を吐きながら、千晶がゆっくり身を起こす。その胸板をふたつの巨乳が滑り落ちていき、途中で弾んで跳ね返ると均衡点に釣り合うと、そこであの美しく均整の取れた砲弾型を象った。  
「……これから、どうするんだ……?」  
「んっと……もっかいシャワー、浴びるつもり。今朝は明にオッパイ吸ってもらうつもりだったから、早めに起きて一回浴びてたんだけど……いっぱい吸われて、またべとべとになっちゃったから。学校行く前にもう一回浴びておこうかなって、最初から考えてたんだ」  
「……え? シャワーって……今から? それはいいけど……お前……」  
「?」  
 相変わらず、どこかとろんとした目のままの千晶に、明は壁時計を指し示す。  
「いや。途中で気づかなかった俺も悪いんだけどさ……もう、そんな時間じゃねえよ。今から全力ダッシュで、なんとか間に合うかどうかって時間なんだけど……」  
「あ……っ」  
 薄紅に色づいていた千晶の頬が、今度はさあっと青ざめていく。  
 大慌てで飛び出すように立ち上がると、周りに散った今日の着替えを集めはじめる。  
「わっ。わっ。わっわっわっわっ!!」  
「お、落ち着けバカ! 学校は別に逃げやしねーよ!」  
「でっ、でもでもでもでも! とにかく早く着替えないと、本当にボクら遅刻しちゃうっ!!」  
「わあバカ、お前パジャマ半脱ぎのままで動くなっ!!」  
「あっ――!」  
「あぶねっ!?」  
 パジャマの下を脱ぎ捨てながら畳んである着替えに向かおうとした千晶が、そのパジャマを脱ぎきれずに足首のところで引っ掛けてつまずく。  
 それを咄嗟に助けようとして飛び出した明は、自らの体もまたバランスを失い、崩れ落ちていこうとしている現実に気づいた。  
「はえっ?」  
 極限状況に面して色を失い、急減速した主観時間の中で、明は自らの足首に絡み付いている千晶のフロントホックブラジャーを目撃した。  
 ああ、さっきのアレ、いつの間にか床に落ちてたのか――呑気にそんなことを思う間もなく、今度はお互いに倒れ込んでいく千晶の身体が一気に迫る。回避不能。  
 激突。  
「あ痛てっ!」  
「あうっ!!」  
 二人の身体がぶつかり合い、互いが互いを巻き込み合いながら倒れていく。  
(なんだそりゃ!? 無駄骨かよ!)  
 だが、それでも千晶を守らねばという思いだけは達したのか、二人が倒れるときはどうやら明が下になりそうだった。受け身も取れる。  
 これなら行けるかと思いかけたそのとき、千晶が咄嗟に明のハーフパンツをむんずと掴んだ。しかし倒れ込みながらの強い力でハーフパンツはトランクスもろとも、いとも簡単にずり下ろされてしまう。  
「はえっ――!?」  
 危急に際してもなお熱量を失わずにいた逸物が、拘束具を失ってばいんと飛び出す。  
 そして二人は転倒した。  
 
「うげっ」  
「かは!」  
 幸い下になった明も頭は打たずに済み、受け身自体は成功して全身への打撃も最小限で済んだ。  
 だが次の瞬間、明は身を起こしながら目を見張る。そのまま硬直した。  
「い、た、た、た、た、た……。うう、明、ごめんね、ごめんね……大丈夫!?」  
「い……いや……俺の方は大丈夫……大丈夫は、大丈夫……なんだけど、よ……っ……」  
 千晶の下敷きになって言いながら、明は灼熱の中でその身を凍りつかせてしまっていた。  
 ちょうど明のへその上あたりで、千晶が心配そうな顔で明を覗き込んでいる。  
 明のハーフパンツを引きずり下ろした右手は今もそのままだった。  
 だから股間から半ば剥き出しにされてしまっている陰茎はいま、左右両方とも明の腰骨に当たって潰れた乳房の間に埋もれていた。  
 みっちりと詰まった乳肉が生む、吸い付くような圧力の中で、明の逸物は完全に捕獲されてしまっていた。  
 千晶のオッパイに……俺のチンコが食われちまってる……!  
「…………!」  
「ど、どうしたの明!? どこか悪いところでも打ったのっ!?」  
 驚愕に目を見開く明の表情を誤解し、思わず必死に身を乗り出してくる千晶。  
 当然ながらその動きは、彼女の巨乳も引きずってくる。  
 千晶の胸板と明の腰骨の間で、たっぷりと押し潰されている乳肉。そこから押し付けられた左右の乳首が裸のまま、明の腰骨から腹筋の外側を沿うようにしてなぞり挙げてくる。  
 そして何よりも男性自身をもってはじめて味わう、押し潰された千晶の乳房の間に張り詰める、逃げ場のないもっちりとした巨乳の圧力。  
 それがさらに千晶の身体ごとの前進でしごき上げられてしまえば、少年に耐えるすべなど、最初からありはしないのだった。  
「う、ううっ!」  
「明っ!?」  
 その瞬間、ついにこらえきれずに明は達した。  
 さんざ我慢を強いられてきた大量の精液が出口を求めて、千晶の乳房の合間を、陰茎内を突進していく。  
 そうして千晶の乳房の谷間を抜けた先、そこには当然――  
 やばい。このままじゃ俺の精液ぜんぶ、千晶の顔面にぶっかけちまう!  
 全身を支配しながら、股間へ向かって脊髄を衝撃波が一直線に駆け降りていく。強烈な射精の快感のなか、明は最後まで抗って右手を閃かせ――腰の横からトランクスを掴んで一気に跳ね上げ、その布地を陰茎の鈴口と千晶の顔の間に割り込ませた。  
「うっ、」  
 ――出る……っ!  
 今朝味わい尽くした千晶の乳房にたぎる万感の灼熱とともに、明の精液はほとばしった。  
 明の反応がコンマ一秒でも遅れていれば千晶の顔面にぶちまけられ、ボーイッシュなショートカットの美少女を汚し尽くしていたはずの精液はすんでのところで少年のトランクスに阻まれ、その布地へと白濁の奔流を叩きつけた。  
「お……っ、おっ、お、おお……っ……」  
「明!? ねえ明、大丈夫? 大丈夫っ!?」  
 その後数秒間に渡って続いたたっぷりの余韻の中で、明らかに異常な幼馴染みの挙動に恐怖した千晶は、がくがくと明の肩を揺り動かして確認した。  
「だっ……大丈夫、だって、言ってんだろうが……! 分かったからお前、手ぇ離せ……いつまで人の上に乗っかってるつもりなんだよ!」  
「あ……ご、ごめんっ」  
「俺の方は別に、どうでもいいから……とにかくお前は、まず第一に着替えとけ。それが第一、ほかは二の次。以上。いいなっ!?」  
「う……う、うんっ」  
「あと、俺は、と、ト、……トイレ借りるなっ!!」  
 我に帰るや唾液まみれの両乳房をタオルで拭き取り、そのままフロントホックブラジャーを二重に身に付けていく幼馴染みを尻目に、白濁液まみれになったまま今日一日は交換もできそうにないトランクスを少しでも拭き取るため、谷川家のトイレを目指して全速力で突進した。  
 
 

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