裏山の神社の近く、小国民の義務とやらの勤労奉仕の柴刈りをさぼって、俺と賢太は街を一望できる高い杉に登って、ぼんやりと遠く尾ノ浜を眺めていた。  
 
「…しかしよぉ、いくら千紗でも、モンペ穿いたケツは色気ないよなぁ…」  
 
「でもな晃、あいつの乳、またデカくなっただろ? 六年生一番だな。ありゃ。」  
 
戦局の悪化もなんのその、相変わらずの猥談に花を咲かせていると、突如街のほうからけたたましいサイレンが鳴り響いた。空襲警報だ。  
真面目に作業していた同級生たちがオロオロと眼下を走り廻る。  
 
「バカが。目標は松原の造船所だろ。こんなとこへ爆弾落とすもんか。」  
 
しかし尾ノ浜の沖にその禍々しい姿を見せた爆撃機は市内上空を傲然と通過し、まっすぐこちらに向かって来る。  
 
「おい!! こっち来たぞ!!」  
 
賢太が叫んだ瞬間だった。  
巨大な黒い影が頭上を覆い隠し、思わず頭を覆ったとき、衝撃と振動が周囲の木々を震わせて俺たちは登っていた杉から転げ落ちた。  
幸いに二人とも灌木の中落ち、擦り傷だらけになりながらも無事だ。  
 
「畜生!! こんな山奥に爆弾落としやがって!!」  
悪態をつく俺に、賢太が呆然と囁く。  
 
「…おい晃、みんなは…」  
 
俺たちは慌てて周囲を駆け回ったが、静かな山の木々のなか、引率の先生も、同級生の気配もない。  
 
「先生!! タケ!! 千紗!!」  
 
ただ俺と賢太の叫びだけが木霊する。どうやら無事に下山したらしいが、神社の方角から上がる黒煙に近づくには勇気が要った。  
もし運悪く、たった一発落ちたらしい爆弾の下に千紗たちがいたら…  
 
この夏、兄貴が戦死した賢太が走り出す。賢太とはよく喧嘩するが、こんなとき頼りになる同級生はこいつくらいだろう。  
慣れた獣道を走って小さな神社に着くと、鳥居も本殿も無事だった。煙は本殿の裏から上がっている。確か小さな祠があった辺りだ。  
 
「罰当たりのアメ公め…」  
 
廻ってみると、祠のあった場所は無残にくすぶった木片が散らばり、焦げた匂いが立ち込めている。  
 
「…おい…晃…」  
 
重苦しい賢太の声。  
彼の足元、崩れた塀の下から華奢な手が力なく覗いていた。賢太の膝が小さく震えている。  
 
金縛りにあったように動けなかった。ヤエコか、トシエか、それとも…  
 
ようやく、まだ息がある可能性に思いあたり、俺と賢太が顔を見合わせて焦げた塀に手をかけた時、煤だらけの小さな手がぴくりと動いた。  
 
「わあっ!!」  
 
俺たちは、餓鬼大将の沽券に関わる情けない格好で尻餅をついた。  
 
「わ…」  
 
ゴソゴソと動く祠の残骸から、そのままの格好で後ずさる。  
 
 
「…ええい、この年の瀬になって、蛮夷に住まいを焼かれようとは…」  
 
ぶつぶつ不平を言いながら瓦礫の中からもうもうと埃を立てて立ち上がったのは…見慣れない女の子だった。  
とりあえず千紗たち同級生ではなかった事にほっとしながら、改めて彼女を見上げる。  
…へんてこな女の子だった。あちこち破れて煤に汚れた服は、まるで修身の教科書に出てくる『イザナギとイザナミ』だ。そして、人形のような白く綺麗な顔と黒髪。  
しかしなにより驚いたのは、破れた衣服から覗いている巨大なおっぱいだった。  
俺たちと同い年くらいに見えたが、恥ずかしげもなく突き出した乳房はとても千紗や…寺井先生の比ではない。超ド級だ。  
賢太と息を呑んで見つめていると、彼女は厳かな声で俺たちを見下ろして言った。  
 
「…これ童ども、とりあえず里へ案内せい。」  
 
ようやく我に帰った賢太が、まず彼女の高飛車な口調に噛みついた。  
 
「…お前、どこの学校だ? こんなとこで、何してんだよ!?」  
 
しかし彼女はさらに胸を偉そうに張り、俺たち二人の鼻先に凜とした乳首を突きつけて答えた。  
 
「…見れば判るであろう。この社に住まいなす神の一柱、ミクニヒメじゃ。安産授乳の神として、知られておる。」  
 
半信半疑で立ち上がった俺と賢太をニコニコ見つめる彼女は俺たちよりだいぶ背が低く、不釣り合いに大きな胸以外は全く普通の女の子に見えた。でも爆弾の直撃を受けて生きているところをみると、まあ神さまとはいかないまでも、狐か妖怪の類かも知れなかった。  
 
「…か、神さま?」  
 
「いかにも。」  
 
少し落ち着いた俺たちは、さりげなく近寄って魅力的な乳房をちらちらと観察した。  
何しろ堅物の上に滅法腕の立つ千紗のおっぱいは、俺たちの策略も虚しく当分拝めそうにない。この機会は逃せない…  
瑞々しく張りつめたこの神さま『ミクニヒメ』のおっぱいは本当に見事だった。麩のように真っ白なたわわな膨らみに、淡い桜色の突起。  
あんぐり口を開いて見つめる俺たちに気付き、彼女は自慢げに胸を揺する。  
俺は一計を案じて彼女に言ってみた。  
 
「…ジュニュウの神さまってことはよ、ナリは子供でも、ちゃんと出るモンは出る筈だよな!?」  
 
賢太がニヤリと笑って調子を合わせる。  
 
「晃の言う通りだ!! …飲んでみなきゃ信用出来ねぇな。」  
 
『ミクニヒメ』は別に動揺もせずにため息をついた。  
 
「…疑り深い童どもじゃ。まあよい、信用出来ぬと申すなら吸うてみよ。まだ乳恋しい年頃かのう…」  
 
彼女の言葉の終わりも待たず、俺と賢太は目の前のおっぱいに飛び付く。たちまち舌に溢れる甘く懐かしい味に、どうやら本当に神さまだ、  
と信じるが、押し寄せる昂まりにそんなことはどうでもよくなって、俺たちは夢中で柔らかい乳房を揉みしだき、堅く甘い先端をちゅうちゅうと吸った。  
 
「…こ、これ、少し…乱暴じゃ…」  
 
眉間に皺を寄せ、少し切なげに喘ぎはじめたミクニヒメは、千紗たちと変わらぬ少女の顔になった。興奮の絶頂で賢太と目配せして、彼女の軽い体を押し倒す。  
 
「な、何をするかっ!!  
天地の始まりより…」  
 
きいきいと抗議する彼女を抑えつけ、さらに勢いよくぶちゅうっ!!と乳首を吸い込み、空いている手を乱れた裾の中に忍ばせる。  
 
「…ば、罰を当てるぞっ!! あ、ああっ!!」  
 
どうせ明日空襲で死ぬかも知れない身だ。罰など怖くなかった。  
 
彼女の仄かに暖かい、いい香りのする母乳で顔をべとべとにしながら、賢太と争うように彼女の少し湿った太腿をこじ開けようとした。  
ようやく裾から侵入した俺の手が僅かに生えた柔らかい毛を探り当てたとき、ミクニヒメの両手もまた、瞬時に俺たちの一物を掴んでいた。  
 
「わあ…あ!!」  
 
「…子わっぱ風情が、姫を見くびるでない。ほれ…」  
 
「うわあ…あ!!」  
 
暴発寸前だったモノは、彼女の柔らかい手のなかで痺れたようにひときわ硬直すると、とめどなく激しい射精を続けた。  
 
「し、死ぬ…」  
 
目の眩むような絶頂感の連続で、断末魔のような痙攣を続ける俺たちに、ミクニヒメの乳首から飛ぶ甘い飛沫が降り注ぐ。  
 
「…姫の乳はすぐ精となって男子を奮い立たせる。覚悟は良かろうの?」  
 
彼女の形の良い唇がチラリと舌を覗かせてから、畏れ多くも賢太の再びいきり立ったモノをぬるりと咥えた…  
 
 
 
「…も、もう出ないよう…」  
 
瀕死の病人のように虚ろな瞳で、俺と賢太は微笑む姫を見上げていた。いつの間にか彼女の焼け焦げ、破れていた衣装が新品同様になっている。やっぱり神さまだったのだ…  
 
「…満足した顔じゃの。しかしこの国難の時局、男子たるものまだまだ逞しく生きねばならん。『産めよ殖やせよ』じゃ。」  
そう言ってミクニヒメは高らかに笑うと、ふらふらの俺たちに街まで案内するよう命じた。  
 
「…この国の神の一柱として、街へ降りてしばらく子を育くむ女の助けをするのもまたよい仕事じゃ…」  
 
疲れたという彼女を代わる代わるおんぶして、ようやく国民学校にたどり着いて振り向くと、いつの間にかミクニヒメは姿を消しており、そして代わりに、鬼のような顔をした千紗が校門の前で待っていた。  
 
「馬鹿!! ろくでなし!! 非国民!! 心配したんだから!!」  
 
べそをかきながら俺と賢太を散々殴った千紗は、さいごに俺たちをその大きな胸にぎゅっと抱きしめた。  
少し、涙が滲んだ。  
 
…神さまの「しばらく」がどれぐらいかは判らない。でも、たぶんミクニヒメはまだこの街にいて、千紗みたいな大きいおっぱいの小学生を見守ってるんだろうな、と、ときどき思う。  
 
 
END  
 
 
 

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