いつものストレート バージョンK  
 
運命とは一つの選択肢で変わる。  
それは本当にふとした切欠でも変わるものだ。  
 
とある日。  
渡り廊下で三人の少年が話をしていた。  
 
それで話も終わったのか背の小さい少年の方から、年長者と思われる立派な体格の少年たちに対して  
「シバケンさん・ゴトーさん西小の件有難うございます。  
俺たち光陵の方でも抗争とかには気をつけて行動しますので…それでは失礼します」  
と一礼をして5年1組の教室に戻る。  
 
シバケンさんと呼んだ少年の名は土生翔平  
少年としては小柄な方だが、光陵リトルキャプテンという肩書を持つ熱血野球少年だ。  
 
今回西小のボスシバケンこと芝浦健太そして副リーダーゴトーこと後藤祐平の二人に対し話に来たのは  
東小と西小との抗争の件にメンバーが巻きこまれないよう  
シバケンら西小抗争主要メンバーを通じて東小の抗争関係者に対し  
光陵メンバーをターゲットに入れないと約束させる為だ。  
 
「土生翔平か…いい目をしてた奴だな」  
 
知恵者は知恵者を知る。  
その言葉通り土生の言葉逃さず聞いていたシバケンは誰に言うでもなく呟く  
 
ゴトーもそんな友の様子にただ頷く  
 
だがそんな中でシバケン・ゴトーにとって五月蠅い奴がやってきた。  
 
「シ…シバケンさ〜ん・ゴトーさ〜ん今土生が来ませんでしたか?」  
とその慌てたまま少年が二人に対して話しかけるも二人ともいつもの奴とばかりに  
冷ややかな表情のままシバケンの方からその少年に対して  
 
「またお前か司馬…お前の事を俺は一番弟子と認めた覚えはないぞ。  
さあさっさと帰れ!土生の事はもう構うなあいつは忙しくなるようだしよ」  
と追い返そうとするが引き下がらず。  
 
「土生の奴!シバケンさん達や沙織さん。他の6年の傘下に入っていないのに…  
なんかアイツ何時もすかしていて気に入らないんですよ。  
あいつが何を頼んだか知りませんけどあいつに関わんない方がいいですよ…じゃあ失礼します」  
と土生に対して敵愾心があるとはっきりシバケンらに司馬は伝え教室に戻る。  
 
そんな司馬の様子を二人で見ながら  
「アイツ…なんでそこまで土生に対抗意識を燃やすんだ?  
なんだか知らんがアイツ何時も土生に対してタイマン吹っかけてすぐに負けてるんだぜ?」  
とゴトーは訳が分からないとばかりに首をかしげた。  
 
シバケンはゴトーに対して  
「司馬んことだからまた土生に突っかかりそうだな…」  
と言いつつ思考を張り巡らしていた  
(さてどうするかな…)  
 
A 司馬に対してもう一度釘をさしておく  
B 司馬に対して監視をつけておく  
 
暴走ボート様本筋の流れではここでシバケンはAを選択し  
司馬一派に対して土生には危害を加えないよう後で釘を刺すのだが  
 
B 司馬に対して監視をつけておく  
を選択した場合はこうなるのでした。  
 
「一様俺の方であいつに釘を刺しとくが、しばらく監視もつけた方がよさそうだな」  
とシバケンの鶴の声。だがもちろんゴトーも  
 
「監視っつっても誰をつける?  
いくらなんでも俺やお前が司馬らについて回るのは…」  
自らで司馬らを抑えに入るのは容易いが、そうなると自分のシンパを抑えられないのかとシバケンの沽券にかかわる為NG  
 
ゴトーは次の手として  
「それだったら神楽坂にでも…司馬は神楽坂のファンもやってるから言う事を…」  
と6年でシバケンと双璧をなす少女神楽坂沙織にこの一件を任せてみようかと言いかけるが  
 
「て駄目だろうな…これも俺らが神楽坂に頼る事になるし、あいつが関わると余計話がめちゃくちゃになる可能性も…」  
と後先話の収拾がつかなくなる可能性もある上。これはこれで自分らのメンツが立たなくなる。  
 
シバケンは角刈りの頭をどっさり置きながら  
「どうしたもんかな〜」  
と考えていた…いざとなったら場を抑えられる人物で5年生となったら…  
 
 
そんなときふと少女が通りかかった。その少女はシバケンらに対して頭を下げながら  
「シバケンさん・ゴトーさんこんにちは。お姉さまを見なかったですか??」  
 
その少女は誰かを探していたようだった。  
少女の髪はツインテールの長髪。  
シバケンも彼女に対しては知っていたのだったが…  
 
「!!」  
とシバケンは閃いた…そしてその少女に対して  
 
「神楽坂は今トイレだぜ大泉。それと日曜日開いているか??」  
と話を切り出す。  
 
その少女…大泉と呼ばれた少女は狼狽しながらも  
「えええ!!シバケンさんもしかして…私にデートの申し込みですか??  
それだったら私にはお姉さまがいますからシバケンさんやゴトーさんでもちょっと…」  
とデートの誘いと誤解して断ろうとするが  
 
「いや全然そんな気ないから」とシバケンらはそっけなく言葉を返し、大泉の方は複雑な表情のまま  
「へ…じゃあ何のお話ですか?抗争の協力とかだったらもうお姉さまは関わるなって…」  
とシバケンが何の用だかわからないが抗争の件も大泉が誰よりも慕っているお姉さま  
神楽坂沙織の手前。抗争にも関わりたくないと表情が渋い顔になるが  
 
「いや抗争とも違う。  
大泉おまえ司馬と仲が良かったよな…俺たち今お前と同じクラスの奴に頼まれてな  
司馬があいつと諍いを起こさないよう暫くの間見張って欲しいんだが」  
と用件を切り出す。  
 
大泉は首をうんうんうなずきながら  
「お姉さまやリリアムに迷惑が掛らなければ別に私は大丈夫ですけど  
後でこっそりでもいいですから、お姉さまにお話しを通しておいてくれませんか  
私の方からも…お姉さまに話は付けておきますけど…  
と言うよりシバケンさんに頼みに行くってことは……  
私…ひとりだけ思い当たる奴を知っていますが念の為聞きます。誰ですか?」  
と二人に対して誰の警護だと尋ねる。  
 
「ああまだ言ってなかったな。土生翔平って奴だ。  
何でも野球練習などで忙しくなるから抗争に巻き込まれないよう俺に頼みに来たんだ  
大泉…もしかして知っている奴なのかお前も」  
とシバケンはひょっとして知っている奴なのかという表情になるも大泉はにやりと笑いながら。  
 
「成程…とにかく光陵メンバー或いは土生と司馬達がケンカにならなければいいんですね。  
それからケンカにならなければ私の裁量で好きにしていいと…」  
と乱闘沙汰でなければ何をしてもいいのかとシバケンに尋ねる  
 
シバケンは大泉の様子から司馬とは違う理由で何か土生と因縁がありそうだと悟り。  
内心頼む相手を間違えてしまったと思いながらも今更後には引けず  
 
「勿論お前が司馬…或いは土生達と一緒に乱闘参加するというのも無しだ。  
そうなったら俺たちはお前と一緒に後で神楽坂に締め上げられるからな…それ以外だったら俺が責任を持つ」  
と明確に責任を持つと言い切るのだった。  
 
大泉はきっちりシバケンの言明した事を聞いて。  
「わかりましたシバケンさん。任せてください!」  
と何かうれしそうに返事をするのだった。  
 
そして運命は少し変わる事となる。  
 
 
いつものストレート バージョンK  
In いつものストレート第一〜二話  
 
日曜日  
今日沙織お姉さまは家の都合でご両親と御出掛  
勿論リリアムもまだまだ日曜練習は無い為。久々私だけの休みだ…  
こいつ等が一緒じゃ無ければね…一応司馬達の事は頼まれたとはいえ…  
 
「お前が俺たちに付き添うのは久々だな久美。  
3年の頃シバケンさんのグループにいた時は抗争の先兵としてお前さん良く暴れたもんだ」  
と司馬から昔の事を突かれた。  
 
私がリリアムに属する前。  
リトルとかには入れなかった暇つぶしで抗争にも加わってたもんだったな〜  
…最も沙織お姉さまと出会って以来、お姉さまやリリアムメンバーを巻きこまないよう抗争には加わっていないわけだけど。  
 
そんで司馬から今度は沙織お姉さまの事を聞かれるのだった、下心丸見えなのか少し声が上ずりながら  
「でさ…今度…沙織さんが写っているブロマイドの新作出たら教えてくれよ久美!  
500円くらいだったら俺たち皆のおこずかい合わせて買うからよ」  
と馴れなれしくも沙織さんと司馬はお姉さまを呼ぶのだった。  
 
まあ沙織お姉さまは西小女子で最も美しく、もっとも優雅と言えるお方だ  
司馬どころか司馬の取り巻きまでも沙織さん・沙織さんとざわめいている。  
 
そんな雑な男どもを見ながら私は  
「あんたも暇よね〜朝っぱらから日曜日で男のケツ追いかけて  
時間があればいつも土生に喧嘩売って…逆に負けちゃってるんだもん」  
半ばあきれ顔で不甲斐ない司馬に嫌みを言ってやったが、逆に司馬からも嫌みを言われ返す。  
 
「それはお前も同じだろうが久美  
何があったか知らんが土生から全く無視を受けているお前が言うなよ」  
 
(くそっ!)  
今思い出してもムカムカする!  
沙織お姉さまどころか鷲沢副キャプテンや凪のアホウ…そんでこの間の石引さんだって  
初見だったらリリアムのスターティングメンバー全員。私の球打てなかったのに…  
 
一年前光陵メンバーの…今は薄情にも巨神に移籍した連中だって私を甘く見たとはいえ全然私の球打てなかったのに…  
 
何回か土生に私の球をみられて、あんま得意じゃないストレートとはいえ…  
キャッチャーとしてお姉さまとは比較になんないほどへぼな土生に打ちこまれるなんて  
 
変化球では一矢報いたとはいえ…こっちも甘く見たとはいえ…これ以上ない屈辱だった。  
少なくてもこいつを思いっきり倒さないとお姉さまより土生の方が上という事になってしまう。  
 
「それはそれで私がけりをつけるんだからっ」  
とぶ―たれた表情のまま司馬らと同行を開始した。  
 
とりあえず土生の行きそうな所は…私なりに考えながら動いていたが  
司馬らは私たち東小と対立関係にある西小の境にある国境地帯に足を入れた  
 
「!!ちょっと司馬っ…ここは国境…んっ!!」  
西小の連中と遭遇したら話がややこしくなるのに…異議を申し立てようとしたら  
いきなり司馬に口を押さえられた。  
 
「ちょっと黙れ久美…あいつ……間違えない。西小の歩く魚雷!!」  
 
魚雷?こいつは何を言っているんだと思ったが…司馬や取り巻きも緊張しているので  
その方向を見てみると…確かに魚雷だった…  
 
(よりによって西小の雌ゴリラ…まずいな〜)  
私たち東小の間でも有名人な女だった。西小の副リーダー谷川千晶  
西小のリーダー八坂明とコンビでたびたびシバケンさんらと交戦しているのは  
抗争から身を引いた私でさえ知っているのだった。  
 
どうやらランニングをしているらしい  
いかにも運動中と言わんばかりに、長袖のパーカーを纏って走っていたのだ。  
それをシバケンさんに認められたくてしょうがない司馬が名を上げようと言うのは理解できるが…  
 
「付き合ってもらうぞ久美。皆魚雷を追うぞ!」  
と喧嘩メスゴリラ谷川千晶を追いかける…私は司馬らとはぐれる訳にもいかず仕方なく追いかけた。  
 
そしてしばらく走っていたが、司馬らが止まりごそごそ話していた。  
 
「魚雷はどこに行った!まだこのあたりに…」  
「奴をぶったおせば俺たちはシバケンさんの舎弟に迎えてくれるはず…え…あいつは!!」  
「ちょっと待て!アイツ…誰かと話しているぞ!」  
と何やら騒がしい…私もその方向を見てみると少し驚いた…だからつい  
 
「アイツ…八坂明と…近くにいるのは土生だ!  
それから見慣れない女の子がいる…誰だあの子??」  
と見たままを言ってしまう。  
八坂明もメスゴリラ同様運動靴を履いてランニングをしに来たようだった…  
 
何やら土生と話している様だ…ここで八坂明に会ったらメスゴリラと呼び出してから徒党を組んでこっちに襲ってくる可能性がある為  
皆急いで物陰に隠れる…流石にここからじゃあんまり声は聞こえないな…  
ん…私は読唇術を使ってみた…  
 
「なに?驚いたような顔して」  
と見慣れぬ娘に対して八坂明が話しかけていた…別段に敵意はなさそうだ……。  
「い、いいええ!ど、どうぞランニングの続きを。」  
その少女は確実にビビっている様だ…さっさと八坂明に離れて欲しがっている。  
 
だが八坂明もその様子が気になるのか引き下がらず食い下がり。  
「どこへ行くんだい?」  
と少女に尋ねるも  
「ええ、っと、そのお…」  
と少女の言葉はたどたどしくどもりだし話になっていなかった。  
 
それを見かねたのか土生の方から八坂明に対して口を挟み  
「野球場ですよ。プロ野球を二人で見に行くんです」  
 
とはっきり言ったのを確認した。  
土生にしてはこの娘がこれ以上話を続けるとぼろが出ると思い、間に入ったんだなと思った。  
 
そんな会話を盗み聞き…いや盗み見か…そんな会話を聞いていたら司馬が話に割って  
「土生の近くにいる女何者だ?俺たち東小じゃ見ないぞ??というかあの胸の大きさはなんだよ?」  
と顔をしかめていたが私はうっとおしくなり  
「少し黙って司馬!集中できない!」と黙らせる。  
 
そんなやり取りをしている間に土生と八坂明は会話を続けており。  
 
「理奈の友達ですよ。これから一緒に野球を見に行くんです」  
と土生はよくもまあ八坂明相手にスムーズに話すも  
「そうか…でも君の姿は西小では見ないね…このあたりの小学校は西小しかないから  
消去法として住んでいる子はみんな西小に通うはずだよ。」  
と八坂明から当然の突っ込みを受ける。  
 
だが土生も八坂明相手に全く物おじせず  
「それがどうかしましたか?俺がこのあたりに住んでいないとでも?」  
と反論し八坂明の方も  
「…なるほどそういう事か。  
野球が好きってことは、多分君も野球をやっているのだろう。  
そして野球をやるためにたびたびここにきている…というのかな?」  
と探りを入れるが土生は  
「さあ?」  
と一言だけうまく返す。  
 
おろおろしている胸の大きな女の子を尻目に男二人で会話が進み。  
 
「そういえばシバケンから君達の事を聞いた気がする。  
東小からわざわざ何人かこのあたりまで足を運んで野球をしているやつがいるってな  
そして君がリーダー格なんだろ?」  
とシバケンさんからさっそく連絡を受けていたのか、八坂明は土生が野球をしていると知っているようだ。  
 
話が迅速に進んでいたのもあるが、近くの女の子の手前土生は  
 
「へえそんな話があるんですか。俺がリーダーだなんてどういう事なのか」  
ととぼけるポーズを見せるも八坂明ははっきりと土生らに対して  
 
「警戒しなくても大丈夫だ。  
君たちは西小と喧嘩するためじゃなく、野球をするために来ているのだから。  
安心してくれていい。君達はそういう事に巻き込まない様にするから」  
と抗争関係者では無いと認めて手出しはしないと約束する。  
 
そんな会話をしていたがちょうど『球場経由』と書かれているバスが停留所に止まり。  
土生は女の子に対して話しかけた。  
 
「…理奈?あのバスなのか?」  
と…その胸の大きな少女…理奈に対して聞いている。  
 
理奈という少女は取りつくろう様に  
「…あ…そうだよ土生君。バス乗ろう?」  
「ああ」  
と簡単な受け答えを交わし、バスに乗り込もうとするが八坂明から釘をさす様に  
土生達は声をかけられていた。  
 
少し脅すような表情の八坂明は  
「だけど個人的に東小に対して俺は敵意を持ってる。  
東小が西小のテリトリーで暴れたりすれば報復でシバケンとの約束を反故にして  
俺が襲わないと言った、その東小の野球少年と言えど遠慮なくボコボコにする事だってあり得るぞ土生君」  
 
八坂明の脅しか…或いは土生の腹をみる気だったか分からないが、明確な脅しに対して土生は答えず、理奈と一緒にバスに乗り込む。  
 
二人が乗りバスが発車したがその直後に土生は理奈の頭を軽くチョップしていた。  
 
流石にちょっと遠すぎて内容は分からないが、うっかり八坂明に対して土生と言ってしまい。  
苗字がばれてしまったことの報復だろう。  
 
そんなバスに乗った二人をあきらめて私は八坂明の方を確認する。  
バス停で八坂明は先程土生を脅したと思えないほどの笑みを浮かべバスを見送っていたが  
メスゴリラ谷川千晶と合流をしたようで二人で話し始める。  
 
「明〜やっと追いついたあ〜はぁ…ボクと一緒にランニングしようよ」  
メスゴリラの話から別行動だったらしい…八坂明はメスゴリラにあいさつをしながら  
「ん?千晶じゃん。今さっき面白い奴に会って話をしていたよ  
前千晶が俺に話してくれたピッチャーをしている胸の大きい女の子!  
その娘のチームメイトの奴が付き合いか恋愛という意味合いで付き合ってるの知らんが東小のやつでな?なかなか楽しかった」  
と土生を手放しでほめる。  
 
メスゴリラの方は少し驚いた表情で  
「えっ?…もしかしてシバケンが言っていた…光陵のメンバー??」  
と聞き返すも八坂明は  
 
「ああ、確かにシバケンから東小の野球少年の話は聞いていたが  
まさかうちの学校に通う巨乳の女の子と関係してたとはねえ…  
しかもあの女の子から俺の強さを聞いているだろうし、抗争とは関係なくても話ぐらいには上がるだろう。  
なのにあの飄々とした態度…只者では無いな。  
まあこの話はまた今度にしようぜ千晶…じゃあ行こう」  
と話をまとめ二人でランニングを再開し立ち去ろうとするが。  
 
たまたまこっちに向かい更に深く隠れた…その甲斐があり何とかばれなかったようだ  
そんな様子に当面の危険は去ったが、司馬らががやがや騒ぎになる。  
 
「今の話聞いたよな?  
あの胸のでかい奴魚雷の事を知っていたからやっぱ西小の奴だぜ!  
アイツと付き合っているのか土生の奴!畜生俺はまだ女の子と付き合った事は…  
げふんげふん!午後には戻るだろうから待ち構えるぜ!」  
と勝手に司馬が仕切り勝手に取り巻きが大騒ぎとなるが、私は内心あきれていた。  
「待て待て司馬。  
アンタシバケンさんや西小の連中が言っている事半分も理解してない」  
が一応喧嘩を止める約束だったので、仕方なく私が仲裁に入る。  
 
司馬は水を刺されたのかKYな奴だなという表情を浮かべ  
「どういう事だよ久美?」  
と聞き返すが私は話を続け  
 
「司馬。あんた誤解してる  
土生が西小の理奈とかいうのと付き合っているのは本当みたいだけど…  
土生とあの子野球やってるのよ?あんたは知らなかったみたいだけどね  
だから土生はシバケンさんに頼みに行ったのよ。  
体育会系に属している関係上。自分たちからケンカ売っていたらチーム自体に無用なトラブルを呼び込むから  
あんた等や西小連中のそうだな…鬼マリみたいな無駄に血の気が荒い奴から絡まれた場合を考えてね」  
と説明してやる。  
 
だが司馬は納得しきれないのか  
「じゃあこの俺の…俺たちのもやもやはどうなるんだ。やっぱり俺たちで土生の奴をしめて」  
と物騒な事を言い出したので  
 
「シバケンさん達に睨まれたいんだったら好きにすれば」  
と私は冷たく言ってやる  
 
その様子に司馬らは体を震わせながらも  
「じゃあなんか手は無いのかよ久美!  
あいつがシバケンさんと同じ体育会系っていうんだったら  
土生やあの女に手を出したら後で俺らの方がしめられる…だがあいつに一矢報いる手位はなんかあるだろうが」  
と困り顔で私に話しかける  
 
と私に話を振ってきたので  
「だから私が来たんじゃない。  
私も土生にはうらみがあるからね…今日リリアムには入れないから適当なバッティングセンターに予約入れておいて。  
土生を私が打ち取れば、恨みを晴らせる訳だし。  
それから土生が乗ってこなくてもあの理奈って娘…心当たりがあるのよ」  
と司馬らにお願いをするも、司馬は怪訝そうに  
 
「ちょっと待ってくれよ久美。  
土生の奴だったらなんだかんだ理由をつけて俺たちを避けるんじゃないのか?  
それにあのおっぱい娘に心当たりって…」  
と私に話を振るも私は  
 
「ああ土生だったらまず理由を付けて勝負は避けるだろうけど。あの子を出汁にすれば土生も乗らざる負えなくなるからね」  
とまさにことわざで言う大将を殴る前に馬を殴れ…だったかな?  
まあそれはどうでもいい、続けてその理奈とかいう少女に対して、私の第六感が正解と言っているので過程としてだが話を続け。  
 
「それからリリアムで最近沙織お姉さまのポジションのキャッチャーをやりたいって娘がいてね  
消去法で私達はあの理奈という女の子の事を良く知らない。  
だけどまず間違えなくあの子は最近光陵のメンバーになった…  
そして恐らく一番光陵が補強したいであろうピッチャーの選手だろうから…  
そんでその石引さんって娘がキャッチャー志望で十分有能な娘だけど  
どこか私やリリアム所属以外の子の球を想定している…点と点がつながるのよ。  
あの娘がピッチャーだったら」  
と論理的に司馬らにこたえるも司馬らは首を捻り  
 
「わりい久美…俺らそういうスポーツの事は良く分からないからお前の言いたい事はよく…」  
とあまり理解できてないようだが横から文字通りに口が挟まれた。  
 
「あの〜今日は。  
つまりこういう事ですか?土生さんと一緒にいた方がピッチャーと言うんだったら  
そのお…」  
横から変な女の子…かなり小柄な子だ。  
しかしお腹周りが華奢な分。意外と豊かな胸が目を引く…それから意外とみた感じ鍛えられている様な…  
だけど私も司馬らも知らない顔だ…仕方ないので私から  
「貴女誰?話に入るのはいいとして名前くらい名乗りなさいよ」  
と注意した途端その女の子は驚いた表情で  
 
「あわわ…すいません。  
私は瑞原勇気っていいます…ごめんなさい…西小の4年生です」  
とその女の子瑞原勇気という下級生がなぜだか私達の話に割ってきた。  
 
だがわりと話の的を得ている事を言っていたので私は勇気に対して  
「瑞原勇気ね…話を続けて」  
と淡々と話をするよう指示を出す。  
 
勇気はあまり人と話した事が無いのかもじもじしながらだが私の指示通りに話を進め。  
「はい…大泉さんでいいですよね  
大泉さんはあの人がピッチャーだったとしたらピッチャー同士勝負に乗ってくるかも  
と言いたいのですね」  
とそのものずばり話をまとめてくれた。  
 
司馬らはみんなハアという表情だったが何とか私の真意が伝わったようだ。  
「まあ土生を私が倒すのは基本だけど  
土生が選んだピッチャーに私が勝つ!そうすれば土生も私の挑戦から逃げられない…て事よ」  
と私はまとめ  
 
「じゃあ司馬。  
多分デーゲームなら5時半くらいに終わるだろうから6時20分辺りでバス駐車場に待ち合わせ  
そこで土生達が出てきた所で土生らを連れてバッティングセンターに行くわよ!  
じゃあ司馬あんたたち皆でダッシュ!!」  
 
と司馬らに対して私は人払いの様に国境地帯で適当なバッティングセンターを探させる為に走らせる。  
 
そして残った勇気は私に  
「あの〜もしも土生さんが大泉さんに勝っても……」  
と不謹慎な事を云うので少しにらんでやると  
 
「ご…ごめんなさいごめんなさい大泉さん!  
ただ負けた腹いせで土生さん達に突っかかったりとかは…」  
と怯えた様子だが妙に土生の味方をしようとする…まあ下級生相手に誤解されても仕方ないので  
 
「そんな事はしないわ。土生相手なら六分ほどあいつの方が有利…とはいえ私が勝つ  
勿論負けたらまた練習をし直すだけよ。私を見くびらないでよね勇気  
私は負けたからって勝負に背を向けて暴れる様な暴挙なんてしないし  
後は勿論土生の彼女みたいな理奈って娘に負けたとしても黙って見届けるだけ」  
とはっきり土生らには負けたとしても手を出さないと言い切る。  
 
というか拳という意味で手を出したら沙織お姉さまにどんな仕打ちを受けるか……  
 
そんな私の少しビビった表情を私は浮かべたがふと勇気の顔を見ると、勇気は少し落ち込んでいるようだ  
ん〜もしかして土生に惚れているのか??モテル奴だな〜〜土生の野郎は  
そんな事を考えながらも私は勇気に対して  
 
「ふ〜ん。勇気がなんで土生に興味あるのか知らないけど  
まあリリアム.1ピッチャーの私の球を見る価値はあるんじゃない?  
私が勝つにしても万が一土生が…或いは私に理奈って娘が勝つにしても…」  
と勇気に語るも私は勇気を観察していた  
 
勇気の体…まあ小柄なグラマーというのだったら、すぐ思い出せるのは珍しく東小なのに私に懐いてくる今日子。  
可愛いからついおつまみ程度に今日子を美味しく味わって、肌の味とか知っている訳だけど  
勇気も胸とか舐めたらおいしそうだ…結構可愛いし  
 
それはまあ置いておくとしても、やっぱり思いのほか筋肉がある  
ソフトボールとか野球とか球技は素人だろうけど…なんとなく迫力のあるオーラが出ているのを私は見逃す訳が無く切り出してみた。  
 
「勇気。あんたなんかスポーツやっていた?なんか普通の人とは違うって私わかるんだけど」と  
 
驚いた表情を浮かべる勇気だったが観念したという表情のまま  
「驚きました…大泉さん位までになってくるとわかるんですね  
私ちょっと前まで空手をやってたんです。段位は四段で…私とまともに勝負できる人がいなくなっちゃったんで辞めたんです」  
となんと勇気が空手の有段者だったと知る。  
 
道理でなんかぴりぴりしたものを覚えた訳だわ……  
そんな勇気の話は続き  
「それで…色々と話から土生さんの事を知って、光陵に入れてもらおうかなって今考えているんです。  
光陵だったら女の子だからって色眼鏡は無いって聞いてますし、監督の中井さんもそういうセクハラとは無縁な人って知ってます」  
と勇気は私に対して光陵に入ろうか考えていたと教えてくれた。  
 
まあ私も小倉監督や噂から聞いているけど両親蒸発しちゃった土生を引きとった人格者だからな中井監督は…小倉監督の先輩だって話だし  
 
ただそれなりの実力だけど私に敗れた負け犬四匹が巨神にスカウトされちゃって  
土生がそれを引きずってたまま空元気を出して試合をしていたっていうのは聞いていて痛かったな〜  
そこそこ使えるスピード馬鹿の橡浦にパワー馬鹿の山下・後は三下の雑魚ばっかじゃ話になんないってわかりそうなもんなのに  
 
でもまあ土生は6年になってもどこかネクラのままだけど  
相変わらず強豪リトルからスカウトが良く来るのは知ってるからな…  
ネクラだが優秀だと言う事だけは認めてあげるし、まず私の感が外れた事はないが  
理奈って子が石引さんほどの選手が気にするほどのピッチャーだったら…個人的にも惹かれている可能性だってある訳だし…  
 
とりあえず私自らが土生と理奈という子を突いてみるか…  
そして司馬から私の携帯にメールで「適当な予約が取れた」との文章が入っていた  
 
一応私も「あんがと」とメールで礼を述べながらも  
その球場場所を確認した後、司馬らと合流して適当につるんで遊んでいた  
 
そして運命の刻  
はしゃいでいる理奈って子と土生がバスから降りる所で  
私に司馬ら六人そして勇気の計八人で取り囲んだ。  
 
「まずいな……」  
土生が何か勘違いしているのか知らないが私達を警戒しているようだった。  
 
そんな何ともいけない空気を理奈って子も察したのか私達を見て理奈も警戒する。  
 
何とも言えないにらみ合いが続くが、司馬の方から  
「デートとは言いご身分じゃねぇ〜か土生さんよぉ」  
と露骨に敵愾心むき出しで絡んでくる  
 
そんな様子を見かねたのは理奈が  
「土生君っ」  
と心配そうな声を上げるも土生は大丈夫とばかりに理奈に微笑みながら  
 
「またお前か司馬。何の用だよ」  
とあしらうが司馬はしつこくからみ  
 
「お前さんの彼女かその理奈って女?  
凄くでかい牛みたいな胸につられて西小についたのかよ…え?土生さんよぉ」  
とあえて司馬は土生じゃなく理奈の方へ重点的に挑発をかける  
 
確かにこの胸は大きいな  
あからさまな挑発だったが、実際私もリリアムで一番胸の大きい石引さんですら凌駕するほどの胸をしげしげ見ていた。  
 
「……」  
土生は何も言わなかった……何も言わなかったが明らかに土生が不快になったのは私にもわかった  
ただ怒りを噛み殺した土生に対して、理奈の方には司馬程度の挑発で十分だったようだ  
 
「っ!!何よ貴方達!!  
土生君たちはあんたたちがなんなのか知らないけど私達はあんたらと関わってる時間も惜しいわ  
土生君。何だか知らないけど帰ろう」  
 
と怒り心頭で理奈が帰ろうとしたので、不用意にも司馬が土生に突っかかろうと距離を詰める。  
 
それを見た土生は理奈を庇おうと自分が前に立って標的をずらそうとするが  
その時私は理奈の行動から目を切らなかった為。理奈の方が硬球を投げるモーションに入って…投げた!  
 
なんて速い球!!やっぱりエースか!!  
 
あいつあんな速い球…危ないじゃないの!  
とっさに持っていたソフトボールで理奈が司馬に向かって投げたボールを当てて弾こうとするも  
 
「弾かれた??」  
私の投げたボールが西小のストレートに打ち負け私の方に跳ね返った。  
だけど私の球もただ弾かれただけでなく、相手の球の勢いもある程度削ぎ・弾道も外した  
そのおかげで司馬の腹には当たった…が何とか急所に外れた…しかしそれでも響くのか膝をつきながらも司馬は  
 
「うぐッ!いてぇ…なんて玉投げやがったこの女!!」  
と減らず口を叩いていたが、もしも私がボールをあててなかったら即気絶もんだったな。  
 
司馬の一派はこれを見て、まとめて土生と理奈に殴りかかろうと近寄るも  
これ以上はシバケンさんに頼まれた手前止める必要があったので、颯爽と私は皆に向かって叫ぶのだった。  
 
「そこまでよ!司馬!土生!そこの理奈って娘  
ここはシバケンさんと沙織お姉さまの手前みんなそれ以上動かない!!」  
 
と私の掛け声で向かうタイミングを皆外して動かないが、みんな私の方を見てきた。  
そんな中小声が聞こえてきた…この声の主は…あえて気付かぬ振りをして小声を聞いていた  
私の耳はリリアム一の地獄耳との評判なのだ。  
 
(翔誰あの娘? 翔の事知っているみたいだけど…あいつらの仲間??  
私の直球にボールを当てるコントロールとか只者じゃないみたいだけど)  
 
……ん…翔???ほほ〜お?やっぱりこの理奈って娘土生に気があるのか  
相変わらずデバガメだけは止められない…そして私に聞こえないように土生がそっと西小の娘に  
(ああ…簡単に言うと腐れ縁だよ…いつも何時も五月蠅い奴  
さっきの司馬って連中は勝手にシバケンさんの舎弟だっていってるろくでなし集団だが…  
あいつは…大泉って女はソフトボールサークルリリアムのエースをやっている奴。  
なんで司馬と一緒か良く分らんが厄介な奴まで出てきやがった)  
 
と司馬らと私の関係説明となんで私らが一緒なのか理解に苦しむ様子だった。  
 
が…ここは私が仕切ろうと土生に対して指を刺して  
「さあ勝負よ!土生!!  
一年前のカリここできっちり付けてやるんだから!!」  
ここまできたら逃がすもんか!絶対に決着をつけてやる  
私は改めて土生を睨みながらも、横から理奈が私を責めるように  
 
「ちょっと貴女いきなり出てきて何なのよ!そこの司馬とかいう人の仲間なの?  
それに土生君に勝負って何のことよ!それになんで私の名前を知っているのよ!!」  
とカンカンに怒りながらも胸が激しく揺れる…この娘のバストは幾つだ??  
 
先程理奈が司馬に投げつけた玉はとんでもない速さだった…  
そして石引さんがキャッチャーにやたらとこだわる理由。お姉さまがらみでなければやっぱり私の見立て通り  
私は電光の様なひらめきを信じて、まずは西小の娘に名を尋ねてみる。  
「貴女名前は?たまたま理奈ってあなたの名前が聞こえたから便座状理奈って呼んだけど?」  
 
私がいきなり名前を尋ねたのか…理奈は何?という表情で私を見るも、正直あんまり私は気の長い方ではなく、その娘に対して  
「理奈??聞こえなかったの??  
私が今あなたのフルネームを聞いているからせめて自分で名前くらい言いなさいよ!」  
といらいらしながらその娘に対し詰め寄ってみる。  
 
その娘もいらっとして表情で  
「野村理奈よ!それと貴女こそ誰よ!」  
と私の名前を聞き返すがその前にど〜うしても確かめたい事を聞く  
 
「野村理奈…か。野村理奈…もう一つだけアンタに聞くわ…  
アンタ。私達の東日本最強ソフトボールサークルリリアム所属の石引優子さんとお知り合い?」  
と聞いてみるが、野村理奈は明らかに驚いた表情で  
 
「え…貴女優子の知り合いなの??」  
とビンゴ!と私は自分の勘の鋭さに惚れぼれしながらも、意外な関係に驚き少しムッとする  
 
勿論彼女野村理奈には直接罪は無い…石引さんにもだ  
ただ石引さんが無意識に私と野村理奈という少女を天秤にかけるのが気に入らないのだ  
沙織お姉さまなら絶対に私だけを見てくださるのに対して…  
 
だからこそキャッチャーとしての実力では石引さんの事を私も認めているが  
エースとしての本能と沙織お姉さまの愛ゆえに石引さんの申し出を受けたくなかったのだ。  
 
とそんな回想に、お姉さまの事を考えていた私に対して無粋にも野村理奈から  
「私は名乗ったわ!貴女こそなんなのよ  
しょ…土生君にやたらとけんか腰だったり、幼馴染の優子と知りあいだったり何なのよ!」  
と私の名を名乗れという。  
 
面倒だなあ〜でも野村理奈が名乗った以上私も名乗らないと失礼だしな〜〜仕方なく私も  
「私は東日本最強ソフトボールリトル、リリアムのエース大泉久美よ! 私の名前覚えておきなさい!!」  
と一応私からも名乗り返すのだった。  
 
で…野村理奈は納得いかない様子で私に食い下がる。  
「ああどうも大泉さん。  
それで土生君と優子と貴女は何の関係があるのよ」  
と今度は私と土生・石引さんとの因縁を聞きたがる  
あんたも間接的に当事者だろうがと思うも、何とかこらえてまずは土生に対してにらみながら  
 
「貴女に教える必要はないわ…と言いたいところだけど少し教えてあげる  
そこの土生と海よりも深かぁぁぁく!山よりも高かぁぁぁい!因縁があるから  
私の力で完膚なきまでに仕留めに来たとだけは言っておくわ」  
 
どう言う事だという表情の野村理奈と困惑しているらしい土生が見つめ合っている。  
このままだとお姉さまより土生の方が優れているって事になるからな。  
 
んで今度は石引さんの方だったな  
「そんでアンタの幼馴染の石引優子さんは私たちリリアムのチームメンバーなのよ  
ここからは私の私情を挟むけど、貴女がいるから石引さんどこか煮え切らないのよね  
アンタの球は私からもみたとおり、男が気絶するぐらい極悪なもんだっていうのはよ〜く理解したけど」  
と蹲っている司馬を一瞥しながらも、野村理奈はストレートが滅茶苦茶早いという事だけは私ですら認めざる負えない  
ストレートよりも変化球を得意にする私にとっては、真逆の相手といえた。  
 
初見ならお姉さまでも打てるかどうか…  
まあとりあえず私は  
 
「兎に角!!土生!或いは野村理奈!!アンタでもいいから私と勝負をしろ!!!  
場所はとっくに司馬が取ってくれたわ!不戦敗なら司馬にお金を払って帰れ!!」  
と強引に…ひたすら前だけを見て私は勝負を挑む。  
 
痛みで目線が険しくなる司馬や私の勝負を飲むのか飲まないのか興味深々な司馬の取り巻き  
そして心配そうな勇気の視線が土生らに集まるが、土生ではなく理奈の方が私に対して  
 
「いいわ!!そんなに勝負がしたいって言うんだったら私が相手をしてあげる!!  
貴女の高慢な鼻……へし折ってやる!!!」  
と理奈の方が勝負に乗ってきた  
 
本当は土生と勝負をしたかったが…まあいいこの流れは私にとっては不利にならない  
土生は私の力を知っているのか理奈にアドバイスを小声で入れていた  
(理奈……ここまで言われたらもう無理だな  
だがあいつは決して口だけじゃないぞ……あの超強豪で有名なリリアムのエース  
俺らの壁巨神に匹敵するチーム規模でのエースだ。それぐらいの気持ちでやっていけ……理奈)  
と…まあ当然だわな、私に対する土生の分析は扱く当然の物だった。  
 
理奈も私の凄さをあの一球で察したか  
(分かってる翔……あの子性格はかなりきつそうだけどコントロールが半端じゃない)  
と引っ掛かる事を洩らすが、流石に私の事を侮る様子は微塵も見せていない。  
 
で話はまとまって司馬も動ける位に回復したので皆でバッティングセンターに向かい  
私と理奈でストラックアウトで勝負を付ける事にした  
 
その前に肩慣らしに90kmの球を二人で打つのだが…  
「……理奈…バッターとしての才能本当に無いのな」  
 
理奈は打撃においては土生が呆れるほど全く話にすらならなかった…  
ただ私服の為か理奈が様にならないフォームでバットを振る度大きい胸がブルンブルン揺れて眼福ではあったが……  
 
そして私は一応バットには当てたが…  
 
「大泉も打撃下手だな〜本当にあのリリアムのスタメンか??」  
と土生からあきれたような様子で言われる。  
わたしの結果は5球中4球とも外した上。一球はバントでただあてただけだった…ぐすん  
 
まあ私の役目はバッターでは無くてピッチャーだから気にしない気にしない  
沙織お姉さまたちに打撃は任せればいいんだし…  
そして本番!!  
 
「それじゃあ10球で全部の的を打ち抜いた方が勝ち  
的をお互い打ち抜いた場合は使ったボール個数の少ない方が勝ち!それでいいわね」  
と私が理奈を見てそう言い、理奈も  
 
「分かったわ大泉さん。  
私が勝ったら土生君に謝ってもらうわよ!!」  
 
と私に対して自分ではなく土生に謝れといい出す  
当然私は「なんでよ?」と理奈に対して返すが理奈は  
 
「あなたみたいな変な人に土生君を近寄らせたくないのよ!」  
と聞く耳を持たない、別に土生の事私はただ倒すべき敵って思っているだけで  
当然恋愛感情なんてないんだけどな〜以外と嫉妬深い奴ww  
 
で理奈の言うことばっかり聞くのも癪だったので私は  
「じゃあ私が勝ったら今度は土生と勝負させてよ!」  
と土生を見て理奈に勝負の約束を付けさせる  
 
理奈は土生の顔を見て迷ったそぶりを見せたが土生は  
「大泉。お前は去年そこまで俺に打ち込まれたの気に入らないのか  
いいだろう…理奈にお前が勝ったら今度は俺がお前と戦う!」  
と私の挑戦を受けるのだった。  
 
で勝負の順番はじゃんけんの結果  
「じゃあ私が最初で大泉さんが次ね!」  
 
という事で私が後攻になる  
 
早速野村理奈の投球を見る私達だが、やはりかなりの剛速球!  
リリアムでも私を含めたピッチャー陣でここまでの剛速球を投げられるピッチャーはいない  
ただ逆にいえばコントロールに少し難があるようで剛速球以外は投げられないようだ…  
まあここまでのストレートが使えるなら別段問題はないだろう。  
 
そして私服故胸が千切れそうな位に動く事もあり、何時しかギャラリーが理奈の周りに集まってきて。  
(あのかわいい女の子凄い胸だ…それにとんでもなくボールがはええ!)  
(体格から小学生か?どう言う娘なんだあの子は)  
ざわめきが大きくなった…おし!!  
 
結果と言えば10球中7球が的を打ち抜く記録だ…残っているのは二枠だけ  
最初はやじっていた司馬らも言葉なく理奈を見ているだけだった  
 
私も素直に理奈を凄いと思ったので  
「流石ね理奈…土生とつるむだけはあると言う事か……」  
と褒めてやるが私に褒められても嬉しくないとばかりに  
 
「…土生君が私のそばにいるからね。じゃあ次は大泉さんの番よ!」  
と煽ってくる  
 
上等……  
そう思った私はリリアムのエースとして理奈と土生…そしてギャラリーに聞こえる様に  
 
「前座ありがとうね理奈。  
これで私の凄さが余計に引き立つってものよ。さあこの私リリアムのエース大泉久美!! この私の投球を克目しなさい!!」  
と叫んでから私はマウンドに入る  
 
7.8球で終わらせれば負担も少ないか…そう考えながら私はまずは小手調べで8番を狙って…  
何時もどおりアンダースローで投げる!  
 
「なっ!!」  
理奈の驚く声が聞こえる…勿論司馬らや勇気も…そしてギャラリー一同もびっくりしていた  
唯一土生だけは私ならこれ位やってのけるだろうと言う表情だったが。  
 
狙い通り8番を見事抜いた  
 
ギャラリーの声も徐々に  
(今度はなんだ?さっきの子よりか小さいけどあの子も立派な胸をぶるんって揺らして)  
(それにあんな綺麗に落ちるアンダースローなんて見た事ない…)  
私の方を見始めてざわついてきた  
 
私は当然とばかりに次の球を受け取って  
チェンジアップ!私は3番と6番を打ち抜こうと投げて…そして!  
 
「うそでしょ…こんなにきれいな変化球を投げるなんて」  
と今度は私の変化球に理奈が度肝を抜かれる番だった  
 
チェンジアップでの二枚抜きで更にギャラリーが集まってきて私は更に燃えてくる  
次は…シュートだ!!懲りずに二枚抜きを狙ってみたが流石に外れた…  
がきっちり9番は打ち抜く  
 
そしていつも投げているツーシームで1番と4番を今度こそ二枚抜きで打ち抜き  
ストレートで2番と5番を打ち抜こうと投げたがうっかりしていたと後悔する  
何と鉄作だった為。うまい具合にはじかれて、どちらも打ち抜けず外してしまった。  
 
が気を取り直して何時もの球で2番と5番をそれぞれ打ち抜き残りは7番と8番だけ  
残りの球は二球だが何とか理奈にはこの時点で勝てた…があえて土生を挑発する為  
私は一番得意とするカーブで投げた!!  
 
「7番と8番…カーブで二枚抜きなんて……」  
私の切れ味鋭いボールをただ茫然とした表情で見送る理奈だったが、土生だけは渋い顔になっていた。  
 
そしてその表情のまま  
「大泉……お前わざと……」と私に問い詰める  
 
やっぱりわかってくれたか…私の挑発を……そう思いながら私は土生に対して  
「流石ね土生。光陵に前いた……西村って人風に投げたんだけど♥」  
 
そう…私はいつものアンダースローではなくサイドスロー…要するに野球風に投げたのだ  
以前光陵にいた、私に負けた土生の先輩西村ってのが、切れ味鋭いカーブを使うと  
野球の掲示板で書かれていたので、土生に対しての当てつけでわざと投げてみせたのだ  
 
「……底意地の悪い奴だぜ……だが確かにお前の勝ちだ大泉  
約束だ今度お前と勝負をしてやる…悔しいがお前ほどの球を打ち崩せるのは現状で俺だけだからな…」  
と私に対して向き合ってくれるのだった!  
 
これで勝てば少なくても私の打撃カテゴリーでは  
沙織お姉さま(と鷲沢副キャプテン)≧土生≧石引さん・凪のアホウ≧  
の公式どおりになってリリアムのメンツが保たれる!  
 
でも相手が土生だったらもっとお姉さまと練習しなきゃ♥  
そう思っていた私だが、土生は駄賃とばかりに私の掌にバンとお金を渡して  
「釣りはいらねえ」といい理奈を連れて、バッティングセンターを後にするのだった。  
 
司馬はこの成り行きに小躍りしながら  
「やったな久美!!土生の野郎にひと泡吹かせたじゃねえか!ざあまみやがれっ!」  
と土生を罵る  
直接何もしてない奴が言うなよとあきれたが、予約を取ってくれたのは司馬なので  
「それじゃあ…これで釣りは来るでしょ」と土生からもらったお金を手渡し司馬は更に小躍りをしていたのだった。  
 
心配そうな様子で勇気は土生を追いかけようとするが、私が気を使って勇気を引きとめる  
「あ〜今反省会だろうから追いかけない方がいいわよ」と  
 
勇気も今は下手な慰めを言えばかえって、二人とも傷つくと悟ってくれたのか…私の言う事に従ってくれた。  
 
そして去った土生らの方向を見つめつつ  
「土生さん達…大丈夫でしょうか」と心配の言をするが  
 
私は勇気に対して  
「あの程度でへこたれてたら到底巨神どころかトップランクのリトルを倒すのは無理よ  
まあ私の実力はトップレベルとはいえね♥  
それにもっと強くなるだろうよ土生も理奈もね……勿論私はその二人を超える気満々だけどさ」  
 
と土生らがまだまだ伸びるだろうと認めながらも私はそれをさらに超えると言い切るのだ  
エースとして当然の義務  
 
そしてそんな私を勇気は尊敬に満ちた目を向けて  
 
「大泉さんありがとうございます。  
決めました!私……土生さんに…光陵のメンバーになって手伝います」と  
 
う〜ん  
正直私の見立てだったら土生並みに化けそうな勇気をリリアムに引き込みたかったのだが  
彼女にその気はなさそうだった…まあ野球やりたいのにソフトにと無理強いをするのも嫌だったので  
 
「ああそう。それじゃあ勇気がんばってみてね」  
と先輩らしく温かく勇気を応援する。  
 
その気持ちが通じたのか勇気も私を見て  
「はい!いずれは大泉さんみたいなピッチャー  
または大泉さんと真っ向勝負できるバッターになります!!」と頼もしい事を言ってくれて  
そのまま勇気もバッティングセンターを後にするのだった。  
 
そんな勇気を司馬は見つめ  
「なんだったんだろうアイツ…まあいいや……久美サンキュウな  
この礼は沙織さんとセットでお前のブロマイドを買って、夏からのリリアムが出る試合で思いっきり応援してやるから」  
とよっぽど私が土生の恋人理奈を打ち倒すのが嬉しい様でそんな約束を司馬はしてくれるのだった。  
 
そして適当にみんなで話して解散し、食事・風呂・そしてネット確認を済ませた後。私は寝るのだったが  
 
最後に西小に裏サイトがあるように、東小にも裏サイトがありさっそく司馬が私と理奈の勝負を報告し  
結構サイトがにぎわっていた事は多分忘れないだろう。  
 
次回の土生との勝負するのが楽しみなまま私は眠るのだった   
 
理ベンジ?  
 

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