意地っ張りなストレート バージョンY  
 
さてと…約束通りに私はというよりも  
久美に沙織そして鷲沢副キャプテンの四人で今日春の大会を見に来たのだった。  
 
お目当ては当然光陵のエースの理奈!!  
今日はちょっと離れた町はずれにある市営球場で試合だ。  
 
それから第一試合で光陵と因縁のある巨神が出る様だった  
ただ私にとって巨神に対しては、直接的に思う所はなく  
土生らの因縁うんぬんよりも優勝候補筆頭としての巨神のプレーがどんなものか後学の意味も含まれているのだ。  
 
そしてこの間の事を鷲沢副キャプテンは気にしているのか、チケット代が安かったとはいえ  
「石引・大泉。チケット代は私が出すよ」と奢ってくれる。  
 
私としては理奈絡みでとっくに鷲沢副キャプテンは理奈や私に謝っているので、恐れ多かったのだが  
鷲沢副キャプテンの好意を変に断るのは返ってギクシャクすると思い  
 
「ありがとうございます!鷲沢副キャプテン!」とお礼をするも、久美は  
「へへへ…まいど副キャプテン」とあんまり尊敬の念を持っていない様子だ……  
もうあの一件の事で怒ってはいなさそうだけど……  
 
それを見かねた沙織は久美にひざかっくんをし、久美は無様にすっ転び  
「いたたた…何をなさるんですか沙織お姉さまぁ」  
と文句を言うも沙織は、鷲沢副キャプテンに頭を下げて  
 
「ごめんなさい鷲沢さん。久美が失礼を……」と謝りながら、右手で強引に久美の頭を下げさせている。  
 
鷲沢副キャプテンは  
「いや私は気にしてないよ」と気にしていない様子で沙織らの謝罪を受け入れるのだった。  
 
そして席に向かう間  
「あれは…リリアムキャプテン神楽坂沙織!」  
「そ…それにリリアム副キャプテンの鷲沢奈津までいるぞ!!」  
と改めて野球観戦に来るお客さんの為か、私たちリリアムの名前も相当知られているようで  
リリアムのキャプテン・副キャプテンのそろい踏みに皆携帯カメラを向ける。  
 
ただ私や久美はまだまだそこまで知られていない為か直接名前を言われる事はなかったがそれでも  
「あのツインテールの子生意気そうでかわいいな」とか  
「あのセミロングの女の子も可愛いし胸凄く大きいな」とか容姿に関して結構ほめてもらいそれはそれで嬉しいが、何時か実力で振り向かせたいなと思うのだった。  
 
わりと席が開いていたおかげで第一試合が始まる事には皆横並びの席で  
適当な飲み物を飲みながら、観戦をする事になる。  
 
「あの連中が巨神か…次の光陵の相手で……色々と因縁のある…」  
副キャプテンの表情が曇る、確かに光陵と巨神の因縁は私の知っている限り副キャプテンにも教えた為か…  
自分が思いを寄せていた理奈を間接的に傷つけたと言うのが不愉快なのだろう  
 
が…全く空気を読まない久美は  
「まあ光陵から巨神に移籍した連中は私に負けてるんですけどねHAHAHA」  
と高笑いだ  
 
そしてふと思い出したのか沙織がこんな事を言い出す  
「そういえば元々巨神が光陵のメンバーを引き抜いたのって…  
前巨神に在籍していた緒方かな子さんが負傷したすぐ後でしたよね」  
と緒方さんが光陵との試合で大怪我をし無情にも放逐されたと言う事  
そして緒方さんは巨神の復讐で光陵に代打として入団したって事を私も思いだしていた。  
 
そして第一試合 巨神VS太洋となるが  
「ありゃりゃ…こりゃだめだ。完全にピッチャーのまれてらぁ」  
との久美の言葉通り、巨神の猛攻で太洋のピッチャーが参ってしまい  
フォアボールをぼろぼろ出した揚句に駄目だしの満塁ホームランまで打たれてしまってコールド負け  
 
もっとも巨神が凄かったのは打撃だけではなく、守備や投球もまったく太洋に付け入るすきを与えない試合運びなど、パーフェクトと言わざる負えなかった。  
流石ベスト4…それが巨神に対する率直な私の感想だった。  
 
けっして太洋も弱いチームではないが、結果巨神に対して二回コールド負けと言う結果に終わった通り。  
巨神の怪獣みたいな打線にただ蹂躙されるのみとしか言いようがなかった。  
 
「流石に強いですね巨神は」  
沙織もその力を認めるほどである。  
 
そして第二試合まで時間が出来たのでとりあえず私は  
「トイレ行ってきます!」  
とみんなに言ってトイレに向かう。  
 
トイレは結構込んでいて、待っていたがその時久美もやってきて  
「私もトイレいっておこうと思って」  
と久美もトイレに来たのだったが  
 
「どうよ俺達の力」と後ろから声をかけられる。  
ふと見てみるとさっき試合をしていた巨神の選手たちだった。  
 
で…彼らが話しかけたのは…久美の方だったが久美はつまらなそうに一瞥し  
「はいはい凄かったっすね」とあっさり袖にする…まあ久美だったら下手だったら素直に下手と言う人間だから  
褒めてはいるのだろうけど…そんな様子に気の短そうな人が  
 
「なんだよお前。一様俺達一年上だぜ??朝あった土生じゃないんだから」  
と久美に突っかかってくる。  
まあ彼らは土生とも知り合い…と言う事は光陵から巨神に移った人たちか…と私は思ったが、久美はそっけなく  
 
「ピッチャーがビビりじゃ話になんない」と一言いいトイレに向かい、私だけ残されたが  
ちょっとやばげな雰囲気だったので一応年長者な彼らに対して「失礼しました〜」と頭を下げてトイレに入るのだった。  
 
そしてトイレ奥で入った私は久美に対して  
「…あの人たちなんだね。光陵を抜けた人たちって」  
と確認し、久美は  
 
「そ。私に負けて巨神に移籍したの」  
とはっきりと言い張る…いくらなんでも久美に負けたから巨神に移籍した訳じゃないだろう  
と出かかりそうになるが私は必死で押し殺す。  
 
まあとりあえず私達は用を足し、席に戻ると30分後。第二試合光陵VS南海との試合が始まるというアナウンスが流れて、清掃中だった。  
 
そこで私達は巨神の選手たちとばったり会った事を話して  
「…デリカシーのない連中だね。そんな調子であの連中土生や野村理奈に接したのか??」  
と鷲沢副キャプテンが明らかに不快そうな表情で呟く。  
 
「確かに選手としては凄いですが…どこか高慢な所も感じました」  
と私は正直余り彼らに興味はないが、彼らの横柄な態度からそういう言葉が出てしまう  
 
でも沙織は  
「まあある程度傲慢じゃないとスポーツマンは成り立たない所はありますけどね……実際彼らは強い訳ですし」  
わりと彼らに同情的な事をいう。  
 
確かにそれも分かるんだけどな〜トップを張るっていうのは自分を安売りしないって一面もある訳だし。  
そういう考え方もあるんだなと考えていた私だったが沙織は続けて  
 
「ただ……自分に誇りを持ちすぎて高慢になったりするのだったらかなり話は違ってきます  
そして幾ら巨神球団サイドに嘘をつかれたからとはいえ、結局そのまま巨神に移籍する表裏比興な殿方は私の一番嫌いなタイプです。  
自分の意思で巨神に移りたいのなら、直接中井監督に頭を下げてからが筋なのにそれをしないというのはどうかと思いますけどね」  
と持ち上げて落とすというコントの様な落としっぷりで呆れたようにそう言うのだった。  
 
まさに正論。久美も副キャプテンもそして私も反論も何も言う事がなかったのだった。  
そしてブザーが鳴ったので見てみると、いよいよ第二試合  
光陵VS南海の試合が始まる様だ。  
 
「どれどれ……成程……南海リトルはベスト4に入るほどのチームか」  
と今更ながら久美が携帯電話片手に唸っている。  
 
勿論私達はとっくに南海リトルがかなりの強豪と言うのは事前に調べていた。  
久美をほっぽいて私達は話し始める  
 
「どこまで理奈が相手の打線を抑えられるか……そして土生等がどこら辺まで打てるかですよね  
第一試合は温存か何か分かりませんけど土生も理奈もスタメンじゃなかったですし」  
と私が言えば鷲沢副キャプテンは  
 
「ああ……野村理奈の球だったら私や沙織でもそうそう打てないだろうから、打ちこまれる事はまず無いだろうね。  
ただ私は土生の実力を良く知らないんだ……強豪リトルからスカウトを受けているっていうのは一応知っているけど  
野村理奈の投球ばっかり見ていたから土生たちのプレーはそんな見ていなかったし」  
と何時ぞや見た限り理奈に関しては全く不安を覚えていないが、土生達に対してはどれだけできるか少し心配そうだ。  
 
そんな副キャプテンの言葉に沙織は  
「ある意味光陵の力量を見分けるには十分な相手と言えますからね南海は  
野村さんと土生君だけのワンマンチームなのか、あるいは一芸に秀でたチーム作りをしているのか」  
と言う  
 
確かに……ただ理奈と土生だけ凄くても巨神に勝てるとは全然思えない  
だからこそこの試合においては、他メンバーのレベルアップが絶対的に求められるのだ。  
そんな沙織の言葉に久美も乗り  
 
「まあ外野に関しては私達や巨神の連中と比較して言うと全く話になりません  
ただスピード馬鹿の橡浦・パワー馬鹿の山下の力は早々馬鹿にはできないと思います。  
過大評価かもしれませんが、打撃がそれなりに出来る保奈美と守備がそれなりに出来る凪と言えば分かりやすいですし……」  
と橡浦が村田さん・山下が芙蓉さんみたいな特性持ちみたいな事を言う久美だったが話は続いて。  
 
「そんでこの間司馬に愚痴を聞かされたんです。この間瑞原って4年がいきなり俺達を裏切ったとか何とか  
で…よくよく調べたらその子が光陵に入ってて……相手が弱かったとはいえ満塁ホームランを打っていたのは噂とかで聞きましたし  
そして先ほどお姉さまが仰っていた緒方さんっていう人もどういう理由かわかりませんが光陵に入ったという事もありましたし」  
と話をまとめた。  
 
確かに戦力としては新メンバーが入った事である程度充実してきたようだが……  
どうなるかはまだまだ未知数だろうなと私は思った。  
 
で…いよいよ試合が始まって理奈の投球!  
あっという間に三者凡退!鷲沢副キャプテンが言った通りに南海リトルのメンバーには悪いけど見る限り。理奈の球に全然対応が出来ておらず。  
理奈が大幅に崩れる様な事でもない限りまず打たれないだろう。  
 
で…裏に入るが、先程久美が言った橡浦が切り込み隊長として出撃する  
久美の言っていた限りでは光陵一の俊足と言う事だけど……打った!速いっっ  
二塁打の良い当たりを打った後は悠々と二塁に陣取っていた  
 
そして次は…あ……赤松君だ  
この子も足速いんだよな……となると1番2番は足を使って…3.土生4.山下5.瑞原の上位打線で点を取るという戦法か  
久美や沙織の話。そして土生等の話なら下位打線の四人ははっきり言って打点を取る活躍は見込めないだろう  
せいぜい相手ピッチャーを疲れさせる事が出来る位かな  
 
で赤松君はいきなり第一試合で見せたフェイクバントを使って成功したかに見えたが……  
さすが強豪。なんとかファーストの人が捕球し赤松君は懸命に走ったがアウト  
ただ送りバントとしてはきっちり橡浦が三塁に行ったので文句は無い。  
 
そして土生の番。それを見ながら久美は  
「出たよ土生。相手ピッチャーも結構やるから……参考にはなるかあいつを倒す為の」  
と土生に対してかなり真剣な表情で見ている。  
 
沙織は…  
「あの子ですか…土生君って」  
とどこか怒ったような表情だ…そんな表情でつぶやいていた。  
 
久美絡みでは直接土生と沙織は会った事無いし…なんかあったのかなと聞こうと思ったがまあいいやと思い黙って土生の打席を見る。  
その結果ピッチャーも善戦したが良い当たりを浴び、あっという間に一点が入った。  
 
ただ…山下と勇気ちゃんは流石に相手ピッチャーの奮闘で見事打ち取られてしまったが、貴重な一点が入った。  
 
その後も理奈の好投で全く南海リトルは全く付いていけず…ヒットすらも無理だった。  
だが対する光陵の方も下位打線は相手ピッチャーに打ち取られまくり…理奈も打者としては全くの論外だった。  
光陵の上位打線でも巨神ほど圧倒的な破壊力と言うにはどこか癖があり、相手を蹂躙するほどの爆発力は無かった。  
 
そんなこんなで理奈の好投は最終回まで続き…結果ノーヒットという快挙を成し遂げた  
凄い……相手は決して弱くなかったのに……確かに打撃こそ全く打てなかったが  
それでも最終回当たりではタイミングとかもあってきてファールの回数が増え、少しひやりとしたものだった。  
 
私達はそれを見ながら  
「やっぱり凄い……久美…鷲沢副キャプテン…沙織…みんなから見て理奈は…光陵は巨神に勝てると思う?」  
と沙織をつい呼び捨てで呼んじゃったよ〜と思いながらも正に矛盾という格言通りの状況に私はどうしても気になって聞いたのだった。  
 
久美は  
「8.2で巨神の勝ちかな。  
巨神だったら4回あたりでいい当たりを出してくるんじゃない?相手が野村理奈を見くびらない限りは  
まだまだ光陵は決定打に欠けているわ。純粋に力量差やメンバー数を考えても不利だろうし」  
と巨人が勝つだろうといい  
 
副キャプテンも  
「確かに大泉が言うとおりだな…よしんば野村理奈が巨神打線を封じこんだとしても  
土生達上位打線が相手ピッチャーを打ち崩せなかったら話にならない…1点2点を争うゲームになれば光陵にも勝機はあると思うけど」  
と巨神有利の下評判を否定せず、沙織も  
 
「外野の方が実力不足なのは見て分かりますからね  
エラーをしないというのは大前提ですけど…それ以上にある程度打てないと……」  
と光陵が不利だと言い切る。  
 
妥当な判断だろうなと私も納得せざる負えなかったが、それならばと  
「それじゃあ私達が光陵と試合してみるというのはどうでしょうか」  
と光陵のレベルアップを私達が手伝おうと提案するが三人とも  
 
「優子…それ私達の時間が無駄になるだけ。  
そりゃ私は土生を倒したいけど…はっきり言って現段階の光陵じゃ土生以外で私の球打てるのがいるとは思えない」  
と露骨になんでと言う表情で久美は嫌がり  
 
副キャプテンも  
「そもそもルールはどうするんだ石引?私達が野球やるのも変だし  
相手にソフトボールのルールに合わせてもらうのは……」  
と困った表情でそう告げ  
 
とどめに沙織も  
「少なくても全員強くないと張り合いが無さすぎますわ  
確かに野村さんの球だったら対九条さんレベルとして十分参考になるでしょうが」  
とにべもなく断るのだった。  
 
あ〜あ  
これは説得に時間がかかりそうだなと思いながらも、いったん私は引き下がる事にし各自解散して帰宅するのだったが……沙織の携帯から電話音が響き、沙織はその電話相手に対して  
「……はい……はいわかりました…それでは5時にお伺いします」  
と相変わらず優雅に電話をこなす。  
 
そして沙織は私たち皆に  
「久美…ごめんなさい。私用事が出来てしまいましたわ  
鷲沢さん・優子…すいませんが私はこれで…」  
都合を言って早く帰るのだった。  
 
その後私達も各自解散し。家に帰ってから一応泉ちゃんから結果を教えて欲しいと前もって頼まれていたので  
試合結果などをメールで報告して一通り済ませてからベットに入って眠る事にした    終  
 

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