意地っ張りなストレート バージョン3T  
 
「泉お姉ちゃん・美咲お姉ちゃん。理奈さんと赤松君は屋上にいったってさ」  
アホ毛を垂らした末妹の今日子が私と美咲に教えてくれた。  
 
石引先輩からメールで野村さんがトップ4のリトル相手にパーフェクトピッチを決めたと連絡が来たのだった。  
前もって私から石引先輩にお願いをしていたのだけど  
 
ここまで凄いと私は…私達は感心するほかない。  
大泉先輩でさえパーフェクトピッチは難しいと、しかも決して相手は弱くなかったと  
石引先輩どころか神楽坂キャプテンらも野村さんの事を高く評価していた  
 
寧ろキャプテンらは外野の方などを酷評していたようだ。  
これほどだったら…私は…というより私達三姉妹は考えていた  
リリアム内ではスタメンな私達だが、5年6年の先輩方とは中々気軽に練習に付き合ってくれとは立場上言い難く  
 
石引先輩はまだ同じスタメンだけあってノックや守備に関してはいろいろとご享受してくれるが…  
と考えている私に二女の美咲が  
「でも…泉姉さん本当に大丈夫かな。せめて石引先輩に話を通していた方がいい様な」  
と心配していた  
 
確かに石引先輩のつてを使えば、野村さんとはもっと簡単に付き合ってもらえるだろうけど  
「石引先輩に変な気使いをさせても悪いわ。  
石引先輩…すごくいい人だから私達の為に頭を下げてもらったりとかで  
逆に石引先輩どころか野村さんにも迷惑がかかるかもしれないし…それだったら私達三人の責任で済ませた方がいい。  
もしもトラブルに成りそうなら前もって私が責任を取るから」  
と私が責任を取る覚悟を見せて美咲を説得する。  
 
そう……  
私達は学校においてピッチャーとの打撃練習ができない環境にある  
ポジション争いの激しいリリアムでは、直接意地悪をする様な方はいなくても  
手の内を読まれたりする可能性があるからだ。  
 
だから…野村さんらともしかしたら利害が一致するかもと考えて  
野村さんを探していたのだったが、今日子が探してくれて今から屋上へと向かう  
 
美咲は少し渋ったが私の言う事を聞いてくれて付いてきてくれる  
まあ少し迷いがあるのは、野村さんが石引先輩の幼馴染でその石引先輩に  
美咲が個人的に好意を持っているからだからね  
 
それに比べて今日子は最初から乗り気だった  
大泉先輩の事を慕っているのだが、全くタイプが違う野村さんの球を見たくてうずうずしているって感じだった  
 
そして野村さんと赤松君の居る屋上に向かいドアを開けると  
そこには楽しそうな表情でキャッチボールをしている野村さんと赤松君の姿があった。  
 
いきなりドアが開いたので二人とも驚いて私達を見るが、勿論言い出したのは私なので私から二人に対して  
「驚かせてすいません野村さん・そして赤松君。ちょっとお話があるのですが宜しいですか」  
と声をかけた。  
 
そうすると赤松君の方が  
「ラリナになんか用なのか??それだったら俺に前もって話を通してくれよ」  
と絡んでくる。  
 
まあ赤松君の言い分ももっともだが、とりあえず私から  
野村さんにピッチャーとして私達に指導をして欲しいと頼んでみるもまた赤松君から  
 
「それだったらリリアムの先輩とか……そうだ!あのおっちょこちょいな先輩とかにでも頼んでもらえばいいじゃん」  
と渋る表情で野村さんに対して手を引いてもらおうとしている、後は石引先輩と何かあったか知らないけど何か嫌がっているそぶりだ  
 
ただ野村さんはそんな赤松君を制して  
 
「成程ね……リリアムの先輩達に投げ込み練習を頼みにくい事と  
九条さんって人の剛速球対策で同じストレートが得意なあたしに協力して欲しいて事ね泉ちゃん  
それは優子と関係なしに……貴女達がリリアムの為になりたいって事」  
と私達の話を聞いてくれるようだ…しかもかなり的確に分かってくれている  
 
そして美咲も  
「お願いします野村さん!勿論私達だって学校で野村さんや赤松君の練習手伝いをします!!  
私も……泉姉さんも今日子ももっとソフトボールうまくなって……石引先輩達の助けになりたいんです」  
と必死で頼みこみ  
 
今日子も  
「私も…久美様とは違う野村さんの球で練習〜したいんです!!」  
と私達に合わせてくれる。  
 
野村さんは少し考えた様子で……  
「あたしとしてもあたしと赤松君だけじゃ限界があるから…  
貴女達の申し出はあたしや赤松君のプラスになるからいいけど…せめて優子にはちゃんとその事伝えてからね」  
と飲んでくれるが石引先輩にきっちり連絡しろと言われ、少し私達は戸惑うも。  
 
「こんな所にいたんだ泉ちゃん達に赤松君……そして理奈も」  
と聞き慣れた声が聞こえてその方向に振り向くと…石引先輩が来ていた。  
 
「石引先輩!」  
美咲が開口一番驚いた表情で石引先輩を見つめ  
 
野村さんも「優子!」と少しびっくりした表情になる  
石引先輩は今後の予定を先輩から貰って、それを私達に告げる為私達を探していたようだった。  
 
そして私から石引先輩に一通りの事を話して  
「出過ぎた行動だと思いますが……私は……私達はもっと強くなりたいんです!」  
と熱く伝える  
 
そんな私に石引先輩は優しく微笑み  
「泉ちゃん……そこまでリリアムの事  
分かった!先輩に対しては私の方から言っておくから…リリアムの練習に差し支えない様に  
勿論理奈や赤松君の負担にならない様にするんだったら私は練習を認めるわ」  
と賛成してくれるのだ。  
 
赤松君は仕方がないという表情で私達を見て、野村さんは石引先輩の様に優しい笑みを向けながら  
「それじゃあ。泉ちゃん・美咲ちゃん・今日子ちゃん。あたしでよかったら練習付き合ってあげるから」  
と約束をしてくれるのだった。  
 
そして私達はリリアムの正規練習に加えて、野村さんのピッチングなどを学ぶ事になる。  
勿論言うまでも無く私達三姉妹はリリアム所属。そしてリリアムのスタメンである事に心の底から栄誉を覚えており。  
 
美咲は石引先輩の為。今日子は大泉先輩の為。恋焦がれる感情もあり更に強くなりたいと常日頃から願っている。  
そして私も同じ穴のむじなで…リリアムの為に力を得たいのだが。それ以上に私には二つ目標があり  
一つはリリアムの頂点としてキャプテンを目指すという事。  
神楽坂キャプテンも鷲沢副キャプテンも早いうちから頭角を現していたのは有名だし  
どうせ強豪に入ったのだから一番を狙いたいという気持ちに嘘がつけないという事と  
 
そしてもう一つはあの人の為だ  
あの人から受けた昨日の肌のぬくもりが忘れられない……あの人の喜ぶ顔が見たい……あの人の役に立ちたい  
私の頭はあの人から昨日私にしてもらった行為が今も忘れられず…思い出すだけで胸の鼓動が速くなり…露骨にパンティがしめって来てしまう……  
 
(そう……私はあの人の力に…なりたいから)  
私はあの人の為にこれからも野望を燃やし、もっともっと強くなろうと練習をするのだった。 終  
 

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