アゲハの夢 エピローグ
「本日来てもらってありがとうございます。では早速原稿を見せて頂きますね」
と男はまだまだ年若い女から原稿を受け取り、真剣な面持ちでそれを見ている。
その女も真剣な表情で男の反応をうかがっている。
5分達…女の方から
「どうでしょうか?」と感想を尋ねてみるも、男はまだ見いる様に見ている……が女の言葉に男は遅れて反応するように
「いいじゃないですか!!これだったら十分出版としてものになります」
と笑みを浮かべて男は女の原稿を褒めるのだった。
その女は張り詰めていた糸が切れたかのように椅子に座りこんで
「よかった〜これ以上の手直しとかできなかったから……担当さんのOKがもらえてありがたかったです」
と出版話がまとまった事に喜ぶのだった。
その女の担当と思われる男は
「では姫木さん…いやもう姫木先生ですね
この作品はいいですね…いわゆる近親もの…というジャンルになりますが…女の子の視点で書かれた作品と言うのはこの業界ではなかなかなかったんですよ。
少女マンガの世界だったら結構あるんでしょうけど、私らアダルト小説業界としては過激な描写とかふんだんに盛り込まれている所もなかなかいい!」
と姫木と呼んだ女に対して作品を褒めちぎっているも、どうやら男の話を聞く限り所謂アダルト出版社様小説の持ち込みであるようだ。
ジャンルとしては近親相姦。このご時世に冒険なのか中学生の妹と大学生の兄が主人公のポルノ小説だった。
今日姫木と言う女は前もって選考に受かり、今日担当の男に見てもらってOKかどうか聞きに来たのだった。
そして男は小説の世界からビジネスの話に戻り
「では姫木先生。この小説の出版マージンなどの話しに移りたいのですが」
と版権とかの話しに移行し、姫木も
「分かりました。では第二作とかの構想も考えてきてありますのでそれも聞きながら」
と次回作持ち込みなども考えてきているようだった。
そしてそれらの話も終わり担当は
「それじゃあお疲れさまでした。ではまた後日ご連絡しますので」
と深々と頭を下げて、姫木を見送るのだった。
姫木も担当に対し
「それじゃあ後日。仕事とか色々大変ですけどこちらこそ長い付き合いになれればと思います」と会釈を返しそのまま出版社を後にするのだった。
その後姫木は家に帰る為。電車に乗っていたが
遠目からちらちらと姫木に対しての視線が男性から注がれている
姫木は自分が見られても仕方が無いなと少し苦笑した
姫木のスタイルは流石に八等身のモデルの様に均整がとれている訳ではない
だが姫木の貌は並み以上……いやそれは姫木や姫木を見ている人に失礼だった。
貌は100人見て100人とも綺麗と言う様な…目の覚める様な美女であり
スーツから押し上げる豊かな胸の膨らみ、タイトスカートに押し込まれた肉付きのいい尻もやたらと視線を集めてしまうのだ。
だが姫木はそんな男の劣情にかまけた視線を気にせず、携帯電話を手に取って見ていた。
携帯には姫木以外何が書かれているか知っているものはおらず
姫木は先程の担当相手とは別ベクトルの真剣な表情で何かを読んでいたようだったが…ふと姫木は誰を見る訳でもなく
「お兄ちゃん」とだけ誰にも聞こえない様に…だが優しげな声で呟くのだったが…その意図を知っている人間はこの場に誰もいなかったのだ。
そしてバスなどを乗り継ぎ家に帰り…アパートのドアホンを押して
「ただいま」とだけ言い、相手にドアを開けてもらう。
開けたドアから姫木を待っていたのは……
この話は1年の内に蛹から蝶へと変わる様に
少女から女になるまでの一年間を書いた話である。