小学五年生の頃、俺はいわゆるバカガキだった。  
成績はいいが、悪さもする。まあ大人は利発だの何だの言ってくれたが、自分から見れば、やっぱりバカガキと言うのが正解だと思う。  
 
そんなあの頃、俺のクラスには巨乳の子がいた。デブでは無い。デブ特有のちょっと醜い巨乳では無い。  
むしろ、綺麗な形のいい半球型の白い、それも青い静脈の透けそうなくらい白い、それでいて先端が陥没もしていない、ある意味、大人でもちょっと見ないような綺麗なおっぱいの持ち主がいた。  
小学五年生の持ち物と考えれば、これはもうけしからん逸物だと思う、  
しかも親の方針なのか何なのか、常にノーブラなのも、けしからん。  
夏場はちょっと危険な香りで、ぷるんぷるん揺れさせてる、実にけしからん持ち物だ。  
 
はっきり言って、体育の授業の着替えの時なんて、男子全員、視姦状態。  
こういう胸ボン!腰キュッ!お尻ボン!な女子がいる可能性もあるのだから、ちゃんと男女別に着替えさせるべきだと思う。  
しかも、ノーブラなんてきつすぎるんだぜ?  
さすがにガン見してる奴はいなかっただろうが、チラ見してしまうのは男のサガだ、誰にも責められないだろう。  
つーか、女体の秘密が気になってしょうがない小学五年生なんだから責められても困るだけだ。まさしくバカガキ勢ぞろいって感じだ。  
その子の名前は高嶺 美沙(仮)と言うのだが、実は俺はたぶんクラスで一番そいつと仲がいい。  
今まで2年、4年、5年とこれまで3回同じクラスになったが、2年の時、こいつが虐められっ子になり掛けてたのに、  
助け舟を出すように、手を引いたのが俺だった、当時の俺はえらかった。  
そうこうするうちに、こいつは背がグングン伸び、俺の背を少し越え、そして胸が大きくなった。今から思えば、あれは殆ど凶器レベルだったと思う、だって明らかに挟めますってレベルなんだぜ。  
 
そんな仲良しこよしの俺達の何時もの帰り道、つっても一緒に帰るのは週に2回くらいだったけどね。  
美沙は俺にとんでもない事を言ってきやがった。  
 
「ねえ、キスしたことある?」  
 
普通なら、  
『甘酸っぱい年頃の少女のおねだり発言キターっっ!!』  
って喜ぶ所なのかもしれないが、  
当時の普通の小学五年生にはちょっと恥ずかしすぎる言葉だっただろう、  
しかも、当時の俺は普通ですらなかった。  
……思い起こせばまだ、幼稚園に通っていた頃、一つ年上のみっちゃん(ホントあだ名、本名不明)から似たような言葉を言われた。  
「ね、ちゅーした事、ある?」  
「??」  
「だからー、ちゅーよ、きっすのことー」  
わからない俺。  
「するねー?」  
俺の顔を両方から挟むようにして、みっちゃんは自分の顔を近づけてきた。何をされるのか「??」としか思えない俺の口に自分の口を押し付け、  
そしてそのまま思いっきり…吸われた……。泣きたい……。  
ぶっちゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!って効果音が本当に響くくらいに。鼻もふさがれ、大きく肺の空気すら吸いだされ、悶絶寸前の俺。  
その感触は甘美でも何でもなく、全くの不気味でおぞましくすらあった。  
想像して欲しい、唇のみならず、大きく口をぬるぬる、ぬめぬめとしたもので覆われ、  
その生暖かさのみが感覚の鋭い口周辺を這い回る。  
思わず、大きなナメクジとかナマコとか、そういう類を想像してしまう。  
もう噛まれるとか、食べられてしまうとかそういう想像すら沸き起こる。  
暴れまくって、ようやく逃れた俺は、泣きながら家までの道を全力で駆けていった。  
そうして「おやおやどうしたの」と台所で用事をしていた母親に声を掛けられ、  
「みっちゃんにぃ!くち吸われたぁっ!うわあぁぁぁん!」  
思いっ切り泣きわめく俺に背を向けた母親の背が震えていたのは……。お母様、あの時、笑いを堪えていませんでしたか?  
 
それから一年とたたず、今度は知らないオッサンに唇をいきなり奪われたり(詳細は語らず、俺は過去、飲んでる時を含めて5度、男に唇を奪われている)、  
キスとかちゅーとかは、その当時の俺にとっては正直トラウマものの過去を刺激するキーワードだった。  
たぶん、顔が引きつっていたと思う。「ないよー。なんで?」なんでそんな事を聞くの?と言う意味だ。  
 
「ねえ、キスしよっか?」  
 
エーヤダー。  
 
断る俺と、しつこい美沙。  
俺のトラウマなんて語れるわけもない、ただ、やんわり断る方法のみを探してみる。  
そして、やむなく俺は交換条件を出してみる。  
うまくいけば、あっちから断ってくるはずだ。  
 
「じゃあ、おっぱい触らせてくれたらいいよ?」  
…当時を振り返っても俺、何考えてたんだかわかんない……、普通にエロガキだよ、これ。  
おっぱいへの憧れでまともな思考を失っていたとしか思えない、その程度だと信じていたい。  
そうだよね、当時の俺……?  
 
もじもじする美沙、結局、触らせてくれる事になった。  
まあ、子供のする事だからねえ?しょうがない。  
で、田舎道からちょっと逸れて、人気の無い場所に美沙を連れて行く俺。  
はっきり言って、思い切りドキドキはしているが、そう性的興奮とかはしていない、エロい事をしようとしてる意識が欠如しているのだ。  
単純な好奇心、未知の女体への憧れ、むしろ、俺、すげー事しようとしてる、みたいな感覚だ。  
 
草むらに巨乳同級生の体を横たえる。はっきり言ってやばすぎる。  
そのまま、赤い半袖のダンガリーシャツのボタンを上から外していく。  
この時のドキドキ感はちょっと筆舌に尽くしがたい。  
そうして現れる、美沙のプリン♪とした白いおっぱい。スクール水着の日焼けの対比で、より一層白く見える。  
思わず、「おおお!」なんて声を上げる俺、はっきり言って恥ずかしいやつだ。  
そのまま、ためらいもせずにおっぱいをむにっ!と掴む俺。  
 
「きゃああっ!!?」俺の人生初の生おっぱいの時の女性の声は『きゃああっ!!?』でした。  
 
……すっげー柔らかかった。  
むにむにむにっと揉む手が片手から両手になる。  
巨乳小学生のシャツの前をはだけ、嬉しそうにその白い、大きなおっぱいを揉む同級生のバカガキ、どう見ても問題おおありだろうと思うが、  
なにぶんこの年頃の少年は、どーぶつ同然なので目を伏せずに大きな心で許して頂きたい。  
 
最初、くすぐったがるだけだった美沙の息が、だんだんと荒くなってきやがった。  
「んっ…くっ……ふぅ……ふぅん……あぁ……」  
確かにその時の声は未だ微かに記憶に残っている。  
しかし、その時の俺は……女が胸を揉まれて『感じる』と言う知識が無い。  
と言うか正しい性に関する知識が大きく欠如してしまっていたんだよ。  
ぶっちゃけ、『おにんにん』の正しい使用法すら分からないくらいだったりする。  
なので、その時、密かにむくむくと起き上がろうとする股間を必死で抑えていたりする。  
 
だって、本気でおっきすると『イタ、イタ、イタ、イタタタタタ』なのである!  
 
美沙の顔を見ると、頬と言うか、顔全体が赤く染まって、目がとろんとしている  
知識の乏しい俺は、『恥ずかしいのかな?』くらいにしか思ってない。惜しい、半分近くは正解だろうが、半分は違うぞ!しっかりしろ!俺!  
「ね、キス……」  
おねだりモードの美沙に対し、俺は、俺は更にマズい事を企てていた…。  
この辺り、本当にバカだ、バカだと思う、典型的なバカガキだ。  
 
その時の俺の頭の中には、キス=口で吸う事であったのは間違いない。  
あまりに大きな勘違いだが、何せ、本当に知識が欠如しているのだ、そのくせ、女体への好奇心だけ一丁前に持ってたりする。  
イタズラ心と言うにはあまりに…バカである。  
よしっ!俺は心に決める。キスしてやろうじゃないか。吸ってやろうじゃないか。  
……赤ちゃんのようにっ!……いかん、本気で泣けてくる。  
 
「ちゅうぅぅぅぅぅっ!」「ひゃうっ!」  
 
全くのバカガキである、バカと言うのは恐ろしいと言うが、全くその通りである。  
同級生の巨乳の先端に吸い付く。足掻いて暴れようとする美沙を、空いた手で完全に押さえ込み、自由を支配している。  
両手を頭の上で交差させ、それをまとめて片手でぐいっと握り締めている。  
しかも、意味が分かってないのが尚、恐ろしい。  
片手で揉みながら、片一方を吸う。あり得ない、我が身ながら考えたくない。  
赤ちゃんがそうするであろう様に、強弱を付け、吸い立てる。  
唇で完全に乳首を挟んで、短くちゅっちゅっと吸い立てる。  
 
 
もしもタイムマシンがあるなら、この時に戻って、  
 
 
……親指を立ててやりたい!『昔の俺、グッジョブ!!』と。  
いやまあ、それは嘘だが、吸い付いているのは嘘じゃあない。  
 
ちゅうちゅう音を立てながら吸い付いている、はっきり言って思い出すのも頭が痛い。  
何やってんだ俺……。  
そうして、一旦、口を離すと、もう一方の先端に吸い付く。  
 
「ちゅく、ちゅうううぅぅぅぅっ!」「んあぁぁ!あ…あぁん……」  
 
もしもこの時の美沙の声の意味を知ってたら、あんなに大胆に吸い付けなかっただろうと思う。  
単なるイタズラ心、好奇心。  
『俺って凄い!美沙のおっぱい吸ってるんだ!!』心の中で快哉を挙げる俺、凄いよ、別の意味で凄いよ。お前、何やってんだー!  
 
そんなこんなで30分くらい、美沙のおっぱいを弄んでいたと思う。  
俺が口を離すと、美沙はがっくり体の力を抜いた。はっきり言って、すっごいチャンスだったと思うが、当時の俺、致命的なくらい性の知識が足りてない。  
 
「じゃ、かえろっか♪」俺の口調は軽い、足どりも軽い、頭の中も軽すぎる!!  
美沙はその日はもう、おねだりしてこなかった、衝撃が大きかったのだろうか?  
生まれて初めてであろう、乳首を吸われる刺激が。いかん、書いててまた泣きたくなってきた。  
 
それから、十数回くらい、おっぱいを触らせてもらったと思う。  
別にしょっちゅう触っていたわけじゃないが、キスのおねだり=おっぱいおさわり、の図式が俺の中に既に出来上がっていたので、  
まあ、機会はあっち任せになってた。  
放課後の校舎、階段の裏(スペースがあった)でも揉んだ。  
体育館の裏でも揉んだ。  
通学路の脇の周りから見えない場所でも揉んだ。  
そのうちにエスカレートしてきて、ついにパンツまで脱がせた。触った。  
何をかとは聞かないで欲しい。  
 
今でもあの割れ目は瞼の裏に焼付いている……。  
 
微妙におっきした俺のおにんにんも触らせた(生じゃなくって服の上から)、  
……やっぱり皮が引っ張られて痛かったです……。  
だんだんと美沙はくすぐったがらなくなり、反応が良くなっていったと思う。  
まあ、当時の俺は反応とか言っても全然理解出来ないわけなんだが。  
しかし、そういう蜜月も長くは続かなかった…。  
俺が美沙を連れて、そういう『行為』に勤しんでいたのを、同級の悪ガキAとかBとかに、どうやら気付かれてしまったらしい。  
放課後、俺達クラスメートの中で少しだけ身長の高い美沙を連れて、いつものを存分に楽しんだあと、少しだけ服装の乱れた美沙を目撃されてしまったみたいだ。  
 
「お前、美沙と何してんの〜?」  
 
思わず引きつる俺!この頃からそうだったんだね、俺の保身癖。  
なんでもないと答えるも、多分、それはギクシャクしてて、丸分かりだったと思う。  
だって、みんなの憧れの『おっぱい』を独り占めだもんなー。(※別にみんなの共有財産ではない)  
 
そうして、俺はだんだんと『美沙のおっぱい遊び』を自粛するようになっていった。  
当然、美沙と放課後なんかに過ごす時間が少しずつ減っていった。酷いと思うかもしれないが、小学5年生なんてこんなもの、興味が持続しなければ、すぐに他の楽しみを探すのだ。  
 
それから、だんだんと美沙の俺に対する態度がかわっていった。  
なんて言うか、すごく絡むのだ。  
後ろから突っついてきたり、体育館用の上履きを隠されたり、当時の俺はその意味が分からず、思いっきり嫌がってました……。こんなの理由決ってるだろ?しっかりしろ俺。  
さらに大勢のいる場所で思いっきり引っ張られて転ばされたり。この時はかなりしつこく、結局、俺が半分キレて、逆に美沙を軽く押したら、そのままひっくり返るように倒れやがった。  
 
 
「××くんが、つきとばしたぁっ!」一瞬、きょとんとした顔をした後で、顔をくしゃくしゃにして大声で泣き喚く美沙。  
 
 
ちょ!お前、違うだろ、それ!大慌てな俺。  
そりゃ慌てるにきまっている。これ、最初から見てないと、どうみても俺が悪役だろう?  
この時、美沙はたぶん、俺が突き放したのにショックを受けたんだと思う、でないと次のシーンが理解できない。  
 
すぐに担任の先生が駆け寄ってきた。まずい!どうする俺!?顔色が自分でも青くなるのが分かる。  
『俺、別に悪い事してないのに怒られてしまう!』  
しかし俺から見るに、この常にトレーナーとか地味な格好で、顔も十人前と言うか、平凡極まりないこの先生は、美沙の側にしゃがむと、こう言った。  
 
「いい加減にしなさい!高嶺さんが悪いんでしょ!先生、最初からちゃんと見てたんだからね!」  
 
さすが、普段、常々から凛々しいと俺が思っていた美人先生である、全く持って公平で正しい判断を下す。  
まさしく大人のお手本、人間こうありたいものである。美人は一味違うと言うのは本当である。  
すると、ピタッ!!と音が聞こえるくらいに、一気に泣き止む美沙……。  
周りは嘘泣きだと断定していたが、俺には本気で泣いてたようにしか見えなかった。  
 
たぶん、大人だったらもっと何か感じる事があるんだと思う。でもその時の俺は、やっぱりガキだったから、そんな美沙に恐れも恨みも怒りも抱かず、  
単に、うっとうしいヤツとか、やな事をするヤツ、苦手なヤツ。  
みたいに感じていた。  
 
それからしばらく、俺と美沙の間に微妙な空気の膜みたいなものが出来て、それは体育の着替えの時間の出来事だった。  
上を相変わらずガバっ!と脱いで、さっさと着替えを済まそうとする美沙。  
そこに悪ガキAが、後ろからそっと忍び寄る。  
そうして、そうして衆人環視の中、俺以上に信じられない事をする。  
 
真後ろから、美沙の生おっぱいを、むんずと両手で掴みやがった!  
とたん、悲鳴を上げてしゃがみこむ美沙。  
当然だ、こんな場所でセクハラしやがった、とんでもない悪ガキだ!  
美沙は一瞬だけ、すがる様に俺を見たような気がするんだけど、俺はそんな美沙から視線を外した。  
そこに悪ガキBがすぐに駆け寄り、Aを引き離し、美沙とAの間に割り込む。  
Aに変な事をするなと凄んで見せている。  
さっさと着替えろ、見ててやると、美沙に着替えを促した直後、美沙がまたガバっ!と上を脱ごうとした時、  
Bは狼に変わる。正面から美沙のおっぱいをむにっ!と鷲掴み。  
……頭痛てえ、本当に頭が痛い。  
結局、しゃがみこんで泣き出した美沙に、女子数人が寄って、それに守られるように美沙は着替え終わった。  
その時、先生には言わない流れになっていたと思う。  
もしもここで先生に誰かが告げ口しててくれたら、まあ俺も問題になるかもしれないが、結局はそのほうが良かったはずだ。  
なのに、みんなこの件に関しては口をつぐんでしまった、これが良くなかった。  
 
そんな事があった頃、俺はさっさと美沙の次にクラス女子で仲の良い、どっちかと言うと正統派な美少女、清楚可憐な小寺 小百合ちゃん(仮)と仲良くしてたりする。  
ああ、別に男とも仲良くしてたが、それは話には全く絡んでこないので割愛してるだけだ、別にこの年で女好きやってるわけじゃない。  
……嫌いでもなかったけど。……ごめん、嘘書きました、わりと女の子と遊ぶの好きでした、謝ります、ごめんなさい。  
 
この小百合って子は四年生〜六年生までずっとクラスが一緒だった、四年の時のバレンタインでチョコくれたのは美沙とこの子だけだった様な気がする。  
たぶん、本当は普通に可愛くて、普通のルックスなんだと思うんだけど、俺の当時の視覚フィルターはここだけの話、結構いい加減だったりするのでご容赦願いたい。  
って事でこの正統派可憐美少女の小百合ちゃんなんだが、かなり内気なのか、お話をする男って俺の知る限りは俺だけだったので、美沙と距離を置いた分だけ、自然と距離が縮まっていった。  
 
その頃だったと思うんだが、男同士のバカガキ話ってのも当然あったりして、やっぱりやっぱり下ネタが大半だった様に思う。  
例えばこんな話――。  
【バカガキ豆知識】《おにんにん》が大きくなった時に痛むのは、皮が突っ張るから。皮を剥けば痛くなくなる!  
なるほど!とクラス男児の半数近くが試し始めたのはこの時期だったと思う。  
しかも一斉にってのがやっぱりバカだなぁとしみじみ思う。  
だって、剥いたところで使い道を知ってる奴なんて、悪ガキA、Bとか、極一部だけだったのに。  
 
そうしてある日の放課後、とんでもない自体が発生する。  
美沙が悪ガキAとB、そしてもう一人に連れられて俺のところにやってきた。  
Bともう一人が、美沙の両側の腕を掴んで挟み込んでる。  
何だろうと訝しんでる俺にAが言う  
「なあ、俺達も美沙と遊んでいいか?」  
 
別に俺がどうこう言うべき事じゃないと思ったんだが、一瞬沈黙してしまった。  
なんとBともう一人が美沙のフルタイムノーブラの胸を持ち上げるようにさすりやがった。  
Aは美沙のデニムスカートの中に手を突っ込んで太腿の内側を撫でてやがる。  
美沙は真っ赤に染まった顔を背けて、何やら言っているが、俺の耳にちゃんと届かないし、  
唇の動きで分かるほど、俺は成長していない。  
それでも「やめて」とか「助けて」みたいな簡単な言葉じゃあ無かっただろうと思う。さすがに簡単な言葉くらいは分かるだろうとの予想だけど。  
「べ、別に俺、関係ないから……」  
こう言ったのが正しかったのかどうかは分からない。  
もしかしたら別の事を言っていれば、別の展開があったのかもしれない、でも、小学五年のバカガキにそんな機転が利くはずもない。  
Aが「そっか」と言いながら、あまり見たくもないにやにや笑いを浮かべるのを背に、俺は立ち去った。  
 
美沙が嫌がってないように見えたのが、面白くなかったのかもしれない。  
さっさと立ち去りたかったのは、それに加えて……。  
 
すまんはっきり言ってこの時、少し《おにんにん》が大きくなってました。  
……嘘です、少しじゃなかったです、かなり目一杯でした。ああ、剥いておいてよかった……。  
って、大きくしてる場合じゃないのだが、当時の俺は異常な事態にもう、いっぱいいっぱいで、対応しきれなかったのが本当だ。  
あ、大きくしてたのが異常な事態では無いので念のため。異常に大きくしてしまっては居たのだが。あくまで美沙が囲まれてこんな状態なのが異常なので誤解なきようお願いした。  
 
その少し後だったと思う。  
相変わらず絡んでくる美沙が、ものの限度を越えてしまったのは。  
二階の教室から一階の視聴覚室、だったと思うんだけど、俺は目一杯に荷物を持って階段を下りていた。  
多分、教諭に言われて運んでいたんだと思う、少しうろ覚えで申し訳ない。  
その途中、踊り場の一階への階段のふち近くで、美沙が軽く、本当に軽くだったと思うんだが、タイミングの問題だったんだろうな。  
「わっ!」とか何とか、詳細は憶えてないが、俺は美沙に声を掛けられた、と言うか驚かそうとされた。  
ほんの少しの気の緩み、俺は足を踏み外してしまった。はっきり言って、小学五年でも、学校の階段の踊り場から下は結構な高さがあるのだ。  
俺はその場で転んでたら良かった、まだ良かったんだけど、何を思ったのやら、階段を数段越えて、何回か跳ぶように足を付いてしまったりする。  
わっわったっ!って感じで半分くらい勢いを思いっきり付けてしまった。で、結局バランスを崩して倒れる俺。  
間の悪い事に、その場、下に人がいたりする。たぶん一年生か二年生くらいの子供だ。  
 
大慌てで、体勢をどうとかより、荷物をあっちに投げ捨てるのには成功したんだけど、子供を、いや自分も子供なんだが、自分よりも小さな子供を下敷きにするのは無意識に避けて。  
そして俺、思いっきり変な姿勢で左手を付いてしまった。その時、どんな音がしたのか憶えてはいない。  
とんでも無い痛み。左手の人差し指から小指までをまとめて思い切り外側に向かって折れ曲がったようで。  
「うわ」とか「うぎゃ」とかそんな悲鳴を出した憶えがある。指四本同時脱臼は痛かったです。骨折してるところまでありました。  
 
痛みにのたうち引きつりながら、それでもようやく階段を見上げると美沙が思いっきりうろたえているのが見えた。  
瞬間、別に狙ってこうしたわけじゃないんだなぁって事だけは理解する、でもぜんぜん洒落になってない。  
 
ごめんねすら言わず、真っ青な顔でわなないている美沙を無視して、駆けつけた教諭に「足がもつれて落ちちゃった」と答えたと思う。  
その足で病院に連れていかれ、その日から美沙と目を合わす事すら、殆ど無くなった。  
 
左手は不自由ながらも、右手は全然無事、なので日常生活はさほど不自由しないのだが、俺を気遣ってか、内気なはずな小百合は、下校時によくかばん持ちをしてくれるようになった。  
登校時もかばん持ちしてくれれば嬉しいのだが、家の方向が全然反対方向なので、これは贅沢な願いなのだろう。  
毎日、毎日、俺の家まで送ってくれる小百合に嬉しく思いつつも数日を過ごした。  
 
この頃、たぶんこの頃だったと思う。俺は小百合を待ってた、何の用だったか忘れたが、少しだけ待っててと言われたのをおぼえている。  
悪ガキ2人組み(たまに3人だったけどこの時は確か2人)が体育館の横の使われていなかった倉庫(みたいなもの)から仲良く出てくるのを見かけたのは―。  
一人、どいつだったか忘れたが、自分の股間を押さえて腰を後ろに突き出し、内股でクネクネしてた。  
はっきり言って、見てて気色悪い仕草。なんか二人でお互いの顔を見ながらニヤニヤニタニタしながら立ち去っていく。  
内心、なんだよあれ、げーって思いつつも、その場にしばらくいると、倉庫の中から美沙が出てきた。  
 
なんかフラフラしてる様に見える。上のシャツも裾がはみ出して、乱れているように見える。  
見てる俺に気が付いたのか、気が付いていないのか、気が付いて気が付かない振りをしてるのか、美沙は俺に顔を向ける事なく、  
弱い足取りで消えていった……。  
 
これが何であったのかを知るのは、もっともっと後の話となる。  
 
その後、しばらくしてクリスマス会があった、美沙は来なかった。年を越した。初詣、一年前に始めて家族以外と来た。その時は美沙もいた。  
今年は変わりに小百合がいる。バレンタイン、今年も小百合はくれた、美沙は……たぶん、たぶんだけどくれたと思う。  
教室の机の中、差出人不明の手作りチョコ、ラッピングが去年美沙から貰ったのと同じやつだっし、たぶんそうだと思う。  
 
こう書き連ねておいて何だが、俺は当時バカガキだったので別にさほど感慨とかは無かった。  
それからホワイトデーがあって……また、俺のバカガキっぷりに磨きが掛かるわけだった。  
 
「ねね、小百合ちゃんー……」俺の問いかけに「なあにー?」「くっついてもいい?」何言ってんだこいつはー!  
ホワイトデーのお返し貰って上機嫌な小百合ちゃんに詰め寄る俺、あまり詳細に書きたく無いが、まああれだ。  
 
第二次おさわり戦争勃発、みたいな感じになってしまったわけだ。  
小百合はかなりくすぐったがりだった。  
と言うか刺激に単になれてないのだと思う。  
「変な事しないで」と弱弱しくも、くすぐったいのを堪えて訴えてくる小百合。  
うん、わかったと、変な事しないよと答える、全然わかってねえ俺。  
もう、どーにもならないバカガキだ。  
胸は小さいと言うよりも、無かったと書くのが正しいだろう。  
白いワンピースをへそくらいまでまくりあげる。  
それまでも小百合は結構、手足や背中を触れられるのを好む子だったと思う。  
やれ、腕を虫に刺されたと言っては吸わされる。足をぶつけちゃっと言っては摩らされる。  
何もなくとも、頭や背中をさすると上機嫌な子だった。  
そこらが、そこらが俺をその日、暴走に走らせたんだと思う。うん、そういう事にさせてくれ。  
 
抵抗をくぐり抜け、パンツを脱がすのに成功する俺。それまでに全身を触っていたので、たぶん、湿ると言うか潤う状態になっていたんだと思う。  
そして、俺はその時点で得ていた最大の知識の実践を試みた。  
小百合の両足の間に割り込むように体を滑り込ませる。  
「え?」と疑問を表情に浮かべる小百合に、大丈夫だと告げる俺。  
【バカガキ豆知識】男の「何もしない」と「大丈夫」は信用してはならないのである。  
 
そうして狙いを定める、割れ目の下いっぱいの方、さっき触って大体の位置は確かめた。  
俺は上体を小百合に預けつつ、『ソレ』を狙った場所にそっとあてがう。  
少し、引いて。  
 
一気に突入を試みた。そして突入成功した。  
『あったかい!すごい!』  
その一瞬あとで、耳を疑う声が聞こえた。  
「……っ!! いあぁっ!!!」一瞬硬直のあと、叫ぶように言った「いたい!いたい!いたい!」  
最初の「いあ」は嫌なのか、痛なのか分からない、どっちも正解だろう。  
びびった、思い切り驚いた。話が違うではないか。  
こんなに暴れるなんて!いったいどうなってるんだ!  
俺は片手で小百合の口を思わず押さえながら、静かにしてとお願いする。  
小百合は一生懸命に手を伸ばして、自分のあそこから俺を遠ざけようと、押しのけようとする。  
「ぬ、ぬくね?」そう言うと、俺はずるって感じで今しがたまで入っていた『ソレ』を抜き去った。  
小百合は目にいっぱいに涙を溜めながら、口を結んで俺を睨んでいる。  
慌ててパンツを履かせ、服を調えてやろうとするも、小百合は俺を振り払う。  
 
そして、俺はその時、さっきまで小百合に入っていた『ソレ』に少しだけ血が付いているのを確かめた。  
とんでもない事をしたような気がして(※気のせいではない)、罪悪感が目覚める。  
とりあえず、俺は『ソレ』、自分の『右手の人差し指』を服で拭いながら、後悔に似た思いで、体を起こす小百合を眺めていた。  
【バカガキ豆知識】女のあそこは指が入るらしいぞ!しかも入れられると気持ちいいんだってさ!!  
小百合はトイレの洗面で、パンツを洗っていたような気がする。血がついてしまったのだろう。  
「変な事しないって、言ったのに、言ったのにいぃっ……」  
顔を伏せ、洗面所に手を付いて、肩を震わせながら涙声で訴えられるが、今更、だ。なす術も何も思いつかない。  
 
それからずっと謝り続けた。が、小百合は結局、俺を許さなかった。小学六年の小百合は前以上に内気で男の子と喋らない子になっていった。  
美沙の事は別に忘れてしまったわけじゃないが、そんな状態で、美沙とクラスが変わってしまったので、多少気になる程度で、ずうっと美沙の事は放置だった。  
 
そうして、六年の一学期が終わる前の変な時期、俺は美沙が転校していった事を知った。  
悪ガキどもが、その親達が呼び出され、結構大仰しい事になってた。ガキどもは学校に来ていながら、教室ではなく職員室横の大きな部屋(会議室だったかも?)に登校後、毎日そこで過ごす日々。  
悪ガキどもと美沙で、何かトラブルがあったらしいのは空気で悟ったが、それ以上は分からなかった。  
何があったのだろう?気にはなるが確かめようが無い。美沙はとっくに俺の知らない所に行ってしまった。  
悪ガキどもに聞く気にはならなかったし。想像は出来ても確かめるのが怖かったのもある。  
 
そうして、何故かあの廃屋、悪ガキどもとか、俺とかが4年生くらいまで使っていた秘密基地の周りに金網のフェンスが出来、立ち入り禁止になった。  
美沙とお別れ出来なかった事を少しだけ後悔しながらも、平穏に過ごした。  
小百合を泣かせてしまった事がとてもとても大きく感じられ、俺のバカガキのシーズンは終わりを告げようとしていた。  
女の子にひどい事をしちゃあいけない、泣かせちゃいけない、そういった当たり前の事を、俺は経験を通じてやっと悟った。  
 
それから中学に入り、俺は本当に人を、女の子を好きになる事を知るが、それはまた別のお話。  
小百合とは中学で一度も同じクラスにならなかった、稀に見る事もあったが、だんだんと明るくなっていったように思う。  
 
そうして、中学、高校、大学と進学し、俺は今あの廃屋、通称「秘密基地」の前にいる。  
ここに来た理由は一つ、たまたま実家に立ち寄った際に耳にした、母親の言葉。  
 
―○○○にある廃屋、ようやく取り壊しになるみたいよ。  
知ってる?あそこで昔、女の子が悪い子たちにいろいろ悪さをされちゃってて、  
大騒ぎになった事があるの?  
 
一瞬、いや、数瞬、動けなかった。  
色んな事は言い方っていうか、話す顔色でどういう意味かはわかる。  
俺は今もバカだが、バカガキじゃあない。それくらいは悟れる。  
帰り道、俺はまっすぐに自分の部屋に戻らずに、こっちへ寄り道してみた。  
 
周囲を確かめ、ひと気が無いのを確認し、俺の背より高い、グリーンの金網フェンスに手を掛け、一気に駆け上がるように飛び越す。  
着地後、もう一度ひと気が無いのを確かめてから、廃屋に入ってみた。  
 
カビ臭いのか泥臭いのか、変な匂い。昔はこんな匂いしたっけ?なんて思い起こそうとするけれど、よく分からない。  
そうして、奥に入り込んで、全体を見渡す。―こんなに狭かったっけ?  
そうして、奥にあるローソファ(の残骸)に目をやる。  
多分、多分だが、これが現場だ。ここ以外の部屋じゃ、昔から荒れ果てすぎていて、男の子でも寝転がるには抵抗がある。  
 
ふっと昔の美沙を思い出す。少しだけ元気に遊んでいた美沙と、俺の下で体を、肌を重ねるようにしていた美沙を。  
後悔は少なかったと思う。悔恨も少なかったと思う。ただ、色気も惚気も何も、ちっともちゃんと分かってない俺がいて、  
そういう事を知り始めていた美沙がいて、悪ガキがいて、止めれなかったのは10歳や11歳じゃしょうがないとも思う。  
 
別に俺がきっかけに成らなくっても結局同じような結果になったように思ってしまう。  
だって、美巨乳ノーブラたふんたふんだもんね……。  
悪ガキに目を付けられたら、どっちみち、だろうと思う。  
ただ、もしも当時の俺が人を好きになる事をちゃんと知ってたら、美沙とどうなってたのかな?とは思った。  
ちゃんと性知識を持っていたら、どうなってたのかな?とも思う。  
 
ああ、きっと……。  
 
終わり  
 

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