ハルカです。
最近。
えっちなアクシデントに遭遇する確率が、あがっている気がします。
ボクが欲求不満だからでしょうか。
ボクには変な能力があるらしい。
男のいない場所で、ボクがむらむらすると近くにいる女の子を発情させてしまう
能力。
もしその能力のせいならば、近頃は節操がなくなっている気がする。
可愛い女の子と2人きりになると、ほとんど確実にキスされてしまうし。
女の子たちのスカートの丈がやや短くなってたり、わざとらしくボタンを開けて
たり。たまに転んでちらりと見えたスカートの中はきわどい勝負下着だったり。
どう対処したらいいものか。
いや、ちょっとだけ嬉しいけど。
でもそれを表に出したら色々と終わってしまいそうな気がする。
というわけで、むらむらとしてしまったボク。
……ひかないでくださいよ?
夜中。
寮の個室。
半裸で抱きつかれたりキスされたり大事なところをさすられたり、かなりきわど
い挑発を受けた直後。
……そしてボクは女の子みたいですけどれっきとした男ですよ?
ええ、そうです。
ひとりえっちをしようかな、と。
それで。
ちょうどその、いたそうとしかけた現場を。
瀬羅先輩に見つかりました。
「……」
「……」
ぴきーん。
女子寮・ザ・ワールド。
1秒経過。
2秒経過。
3秒経過。
4秒経過。
5秒……、そして時は動き出す。
「うあああああああああああっ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんな
さいっ!」
涙目でズボンを履く、ボク。
先輩に、よりによって先輩に……。
あこがれていた人に見られてしまった。
ゆにヴぁーす。
うちゅうのちから、ゆにヴぁーす。赤い、赤い、太陽でつ。
うあああああああああああああああああああああああああああああああああ!
ゲシュタルト崩壊@ボクの脳内。
ちらりと先輩を見る。そもそも何でここに。鍵はかけたはずなのに。10時をま
わっている夜更けなのに。
あああ、恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい、もうお婿にいけない、ボ
クは汚れてしまった。
ああ、そうだ。
死のう。
なんて悟りを開いて先輩の顔をおそるおそる伺うと。
寝ていた。
立ったまま、寝ていた。完璧に目を閉じて、安らかな顔をしている。
ぅえー?
「せんぱい?」
とりあえず身だしなみを整えたボクは、ドアの前でつっ立ったままの先輩に近寄
る。肩に手を置き、ゆすってみた。
「んっ……」
ひく、と先輩の長いまつげが揺れる。黒い、鴉の羽よりも黒い髪がさらりと流れ
るように動き、ほのかにシャンプーの香りが漂う。
小さな桜色の唇から声が漏れると、ボクの心臓がとくんとときめくのが分かった
「寝ているんですか、先輩?」
「ん……え?」
ぱちくりと、目を開ける先輩。
「どうして、ハルカくんがここに?」
「それはこちらの台詞かと」
瞬きをして、おっとりと周囲を見回す先輩。
そんな何気ない動作すらお嬢様然とした気品がただようのは、育ちのためかそれ
とも産まれ持った気質なのだろうか。
「ハルカ君の部屋ね」
「はい」
「夢遊病みたいに、私がここに来たということかしら?」
翌日。
ボクの知らないところで女の子たちが集まって、真面目くさった顔でふざけた提
案が出されたらしい。
「最近、ハルカ君に無意識に夜這いをかける女子が増えています。そこで常時2名
以上の添い寝監視要員をつけようと考えています」
賛成多数。反対ゼロ、可決。
前々から、学園の女子たちの間で委員会ができていたそうな。
委員会名:可愛いハルカくんを保護観察する女子の会。
会則 :抜け駆け禁止、レイプにて童貞を奪った者は死刑。
ハルカをいじめて楽しむのはあり。ただし常識の範囲内にすること。
活動内容:男子生徒からのハルカの保護、ハルカの秘蔵写真のやりとりなど。
会長 :瀬羅先輩。
副会長 :薫ちゃんと天音ちゃん。
書記 :麗ちゃんほか3名。
会員 :49人(希望多数のため規制中)
学園の裏でそんな会があって、ボクのまわりで勝手に色々と決めていたことを知
ったのはずっと後のこと。
けれどそれから、ボクの周囲にはトイレとお風呂以外、いつも女の子がいること
になって。
生殺しのボクの欲求不満がとんでもない騒動を引き起こすんだけれども。
それはまた、次の話。
***
ハルカです。
最近。
どうにも。
えっちな騒動に巻き込まれています。
そしてその張本人がボクというジレンマ。……ああ。
可愛いとか女の子みたいとか、ホモ的な意味で犯したいとか揶揄されるボクの容
姿のためか。
ボクは女子に対して絶大な人気があります。
お昼にはいつものごとくクラスメイトの女子たちにからかわれ抱きつかれ、うれ
しいやら恥ずかしいやら下のボクのをおっきするのを必死に堪えたりしておりまし
た。
それが直接のきっかけになったのか、かなり欲求不満なボク。
『ボクが発情した時、ボク以外の男子のいないところで可愛い女の子を発情させて
しまう』
その能力が進化してしまったみたい。
口で言っても説明しづらいから、起こったことをありのままに話します。
今日の午後の授業。科目は国語。
眠気と前述の昼の生殺しに耐えつつ、真面目に黒板の板書きを移していた。
かりかり。
「はぅ」
「ぁ……んっ……」
かりかりかり。
「ぁふっ」
「ぅく…んんんっ」
かりかりかりかり。
「……ふあ、はっ、はふっ……」
「……はぁっ」
文字を間違えた。消しゴムでごしごし。
「〜〜〜〜〜(口元をおさえ、机につっぷす)」
「……っ!」
ボクがペンをとりノートに文字を走らせるたび、そこかしこから女子のなまめか
しい声が聞こえる。
ボクが消しゴムをとり、大きなストロークで指を動かして文字を消すと、必死に
声を殺し、机につっぷす女の子が何人か出る。
無意識に発散されるボクの性欲が、ボクの指の動きに連動して周囲の女の子を犯
していた。
動作を愛撫の刺激に変え、さらにその刺激を距離の離れた複数の女の子に発動してしまう能力。
しかも、この能力のすごいところは。
ボク以外の男子に気づかれたら、ぴたりとそれまで感じていたのが収まるということ。
その証拠に、女の子のあえぎ声も注意しなければ分からない程度。
消しゴムを動かした時の刺激も、声をなんとか我慢できる程度。
というより予め我慢できるかできないかの、微妙なラインの刺激を与え続けているみたいだった。
その教室はすでに、クラスメイトの男子は気づかない、ボクだけに分かる淫靡な空間と化している。
けれどもボクは、手を普段の通りに動かす。
自分の浅ましい劣情と、欲望におされて。
自分の手でもだえているクラスメイトたちの、なんて可愛いことだろう。
恥ずかしい目にあわせるのもボクの前だけならば、えっちな目にあっているクラスメイト達も許してくれる。
確信がある。
だって彼女たちは、夜、ボクの部屋に添い寝を来る子の中に入っている人だから。
最近、少しずつだけど実感しはじめていた。
ボクの性格が少し、変わってきていること。
このところ四六時中、学校の可愛い女の子や先輩やらが何人もボクの部屋に来て
添い寝してくれる。
ボクに不埒なことをする女子がいないかお互いに監視しているのだとか。
その気遣いはうれしいんだけれど、一緒のベッドに入るのはやりすぎだと思う。
女子の中には上の下着すら外したTシャツで眠る子もいて。
あまつさえ、ボクの匂いに当てられてオナニーする女の子すらいる始末で。
本当はそういう行為は一緒に寝ている別の女の子がたしなめるはずなのだけど、何故か熟睡していたり、一緒になってオナニーしたりボクの身体を舐めたり愛撫し
たり。
ううん……。
思い返してみて、これまで貞操を守っているのが不思議なくらいだ。
いや、その、手でするとか口でするとか、たまにそういうアクシデントはあるん
ですけれど。
けれどこのままでは、学園中の可愛い女の子や綺麗な女の子、みんなに手を出し
てしまいかねない。
そしてそれをちょっといいな、と思っているボクもいるわけで。
ああ……。
これからどうなってしまうんだろう?