あったらいやな結婚式
とある高校の体育館はざわめいている。
今朝、学校に登校したら、いきなり臨時の緊急朝礼を行うという。
「一体、何があったんだ?」
そして、今、全校生徒がこの体育館に集合した。
何が起こったのか、またこれから一体何が起こるのかはわからない。
生徒たちはお互いに顔を見合わせてざわついている。そんな中、ステージの脇に、先生の一人が立ち、マイクで話す。
「それではただいまより、緊急の全校朝礼を行います。気をつけ!礼!」
そして生徒全員が礼をすると、司会の先生は「着席!」と言った。
生徒全員が座り、教壇の上に校長先生が進み出る。
「それではただいまより、校長先生のお話があります。」
そして校長先生の話が始まった。
「えー、まずは3年2組の塚崎真央子さん、ご起立願います。」
「えっ?は、はい!」
いきなり名前を呼ばれて驚いている塚崎さん。
「前の方へ出てきてください。」
私、何かやったのだろうか?まるで身に覚えのない塚崎さんは、困惑しながら前に進み出た。
「次に、2年5組の安達太郎君。ご起立願います。」
「ええっ!?は、はい!」
安達君も困惑の表情で立ち上がった。塚崎さんと共に何かをやったとかいう記憶はない。
第一、塚崎さんとはほとんど面識もないし、塚崎さんにとっての安達君もそうである。廊下ですれ違う程度でしかない。
その二人がこうして前に呼び出される、その理由がわからない。
もっとも、塚崎さんはわりと美人で、美少女タイプ。対する安達君も、わりとイケメンなほうだ。
そして二人が前に進み出ると、校長先生ははっきりとした口調で全校生徒に告げた。
「それではただいまより、安達太郎、塚崎真央子、両名の結婚式を執り行います!」
「えええええっ!!!」
いきなりな宣言に、二人はもちろんのこと、他の生徒たちも皆、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして驚いた。
「せ、先生!私たち、何にも聞いてないわ!」
「当然です。これは、昨日の教育委員会で決定したことですから。それに、あなたたち二人には、拒否権はありません。」
「そ、そんな!俺には付き合ってる彼女が・・・」
「別れなさい。」
「そんな横暴な!」
「婚姻届も、既に受理されています。もう既に、あなたたちは法的にも道義的にも、れっきとした夫婦なのです。」
「そ、そんな!いつの間に!?」
そして安達君の前に同じクラスの大前由紀さんが立ち塞がった。彼女は校長先生を睨んで叫んだ。
「やだっ!やだもん!!!安達君は、私と付き合ってるんだからっ!!!」
「大前さん!わがままを言ってはいけません!!!」
「やだあっ!やだあああっ!!!」
すると校長先生の後ろから、屈強な若槻学園大学ラグビー部の皆さんが颯爽と登場して、大前さんを力づくで引き離した。
「いやあああああっ!!!」
「ごめんね。校長先生の命令だから。」
そして大前さんは舞台袖へと消えていった。すると校長先生は何事もなかったかのように淡々と喋り続けた。
「それでは改めて、安達太郎、塚崎真央子、両名の結婚式を執り行います!」
おしまい