「暑い……」
「おい、まだ五月だぞ」
「そんな事言っても、暑いものは暑いのよ……ああ、暑い……」
彼女は暑がりだ。異常な程に。
「そんなんで夏本番になったらどうするんだよ」
「こもる」
「……はい?」
「山に」
「……こもってどうにかなるもんなのか?」
「いつも使ってる氷室で、秋まで過ごすの」
そう、彼女は雪女なのだ。暑がりなのもむべなるかな。
「その間、俺はどうすりゃいいんだ?」
「当然一緒にこもる」
「おい」
「……のは無理よね?」
「無理だな」
「ああ、あなたの愛もその程度だったのね……」
「なんでやねん。……逆にお前が夏の間も頑張る、とかできないのか?」
「……」
「どうなんだ?」
「ああ、私の愛もその程度だったのね……」
「……おい」
「冗談。……まあ、仕方無いわよね」
「やっぱり、夏になったら溶けたりするのか?」
「……あんまり、夏の私をあなたに見てほしくないから」
「……そんな事言われると、逆に見たくなるんですけど」
「……ちんまくなるの」
「え?」
「今ボンキュッボンのナイスバデーじゃない?」
「自分で言うか」
「これがつるんすとーんぺたーんに」
「……」
「そんな私じゃ、あなたに愛してもらえる自信が……」
「えっと……むしろ好物?」
「へ?」
「むしろそうなったお前を愛でたい」
「……ろ、ロリコン?」
「ふっ、何言ってんだよ。お前だからさ」
「……急にカッコつけられても」
「ボンキュッボンなお前も大好きさ……だが」
「だが?」
「男は、好きな女の色々な顔を知りたいものなんだよ」
「……本当なのかなー」
「というわけで、今年の夏はこもらない方向で」
「あなたがそう言うなら……その方向で」
「では、今から暑さに耐える為の訓練を行う!」
「へ? へ?」
俺は戸惑う彼女を抱きしめた。彼女の身体はひんやり冷たい。
「ほら、エロい事したら身体が熱くなるだろ?」
「……したいならしたいって言えばいいのに」
図星。そうですよ、したいですよ。
「……駄目か?」
「……ううん……しよ?」
俺の腕の中の彼女の身体が、少しだけ温かくなったような気がした。
続かない。