鬼とチョコレート  
ウチの女将はバツ一子持ちでヘビ女  
妄想コラボSS前編  
エロ無し  
 
 
 
 
 
さて皆様、この村においでになる際は”陣甲斐…”もとい、”人外旅館”へぜひどうぞ。  
古びた旅館ではありますが、神も浸かる癒しの温泉と海の幸そして、女将となった妻と共に皆様  
のお越しをお待ちしております。  
 
『ウチの女将はバツ一子持ちでヘビ女』  
 
小鬼:和也〜旅行しようぜ。ほら、Gウィークに二人でさぁ。  
和也:角あるから無理。  
鬼:新幹線のドアに引っかからねぇよ、心配すんな。  
和:違う!喫茶店ならいざ知らず今は国中がテロ対策やら少年犯罪でうるせぇんだ。  
小鬼、警官に外せって言われたら――  
鬼:尋常に勝負?  
和:…もういい…じゃ、この一番安い旅館な。  
鬼:よっしゃ…ん〜何々…じん…がい…りょかんか。  
和:甲斐旅館だろ?『じん』なんてどこにも…  
鬼:いや、ここに『陣』て書いてある。  
和:はぁ?見えねぇぞ。  
 
『鬼とチョコレート』  
 
「ただいま〜」  
私の名前は甲斐 幸恵(ユキエ)。  
東京の寮生の学校に通っている花も恥じらう17歳。  
GWを利用して久しぶりに実家へ帰ってきた。  
…と言うのは立前で本音は、お兄ちゃんの奥さんを見に来たのだ。  
結婚式はそれこそささやかにウチの旅館で上げたらしく、その時学校の研修で  
海外に行っていた私には知ろう由もない。  
私の彼氏も「ユキが行くんなら俺も行く。御両親とお義兄さんに挨拶を――」とか言っていたが  
私のあんなボロ旅館を見せるわけにはいかないので何とか理由を付けて断念させた。  
「じんが…じゃなくて、甲斐旅館へようこそ♪御一名様ですか?」  
「…え…あ、あの…ここの家の者ですけど…」  
私を迎えたのはお父さんやお母さんではなく、小さな色白の少女だった。  
中居の着物を着ているからウチの従業員……ってそんなお金がウチにあるワケない。  
そんな事を考えていると、その少女は声を上げて言った。  
「えーと……あ!お兄ちゃ…お父さんが言っていた妹さんですね?」  
「は?お父さん?」  
その時、奥から半被を着たお兄ちゃんが出てきた。  
「おー、幸恵。久しぶりだな、おかえり。」  
「え…う、うん。ただいま」  
な、何か妙にたくましくなったというか、大人の顔つきになったお兄ちゃんに  
私は少し言葉に詰まった。  
「お父さん、このお姉さんが前に言っていた『幸恵』さん?」  
「そうだよ。琥珀(コハク)のお義姉さんだ。」  
 
妄想コラボSS『百鬼夜行』  
 
「何でバツ一で子持ちの奥さんなのよ!一体、どういう事!?  
聞いてないわよ、私は!!」  
 お茶の間で烈火の如く私は怒鳴り散らした。  
 
「いや…だってお前に言うにしたって…電話しても出ないし…  
親父から聞いたけど海外に行ってたんだって?」  
「そうよ。それにしたって…子持ちの女性と結婚なんて。  
ウチの旅館で養って行けるワケないじゃない!!」  
 そうだ。こんな日本海側のボロ旅館を経営していて養っていけるハズはない。  
「それは大丈夫なんだよな。」  
「何でよ!」  
「いや、結婚してからウチの旅館の客入り、  
予約制にしないといけないくらい増えてさ。」  
「…………は!?」  
 私はお兄ちゃんの持っている旅館経営の帳簿をひったくるようにして見開いた。  
黒字も黒字、黒黒黒字……この不況に一体、何で?  
「さすがヘビの皮を財布にならぬヘビを―――――――ゲフンゲフン  
それはそうと急に帰省なんてどうした?」  
 お茶を持ってきた琥珀ちゃんにお礼を言って、私は畳に両手をつき、深々とお辞儀をした。  
「御結婚、おめでとうございます。あと、これお祝いね」  
 そう言って御祝儀を渡す。  
「おっ、これは、これは…。ありがとうございます。」  
 お兄ちゃんもそれを受け取り、深々と頭を下げた。  
「このGW期間は4組しかお客様は来ないから。ゆっくりして行けよ。  
あとで珀(ハク)を紹介するから」  
 珀とは奥さんの名前なのだろう。そう思っていると、廊下の方から「お父さーん」と  
琥珀ちゃんの声が聞こえてきた。  
「おっと、お客様だ。じゃあな、あ、親父達は旅行に行ってていないから  
奥の部屋を好きに使ってくれ」  
「うん。わかった、ありがとう。」  
 そう言って私は笑顔で見送った。…ウチに来るお客…そうだ!  
どんなお客さんかちょっと見てみよう。  
 私はそう思ってお兄ちゃんの後を追った。  
 
「あ、予約した広瀬です。」  
「はい、広瀬 和也(カズヤ)様でございますね。どうぞ、こちらに」  
 私は玄関の広間にあるカウンターの奥から  
お客さんとお兄ちゃんを観察する事にした。  
玄関に来たのは大学生らしき若いカップル、男の人は何でもないけど……  
その隣にいる連れの女の人…正確にはその頭部。  
 染めたにしては妙に紅色の髪に、なんか突き出てる二本の…棒?  
都会でも見たことあるけど…何かのコスプレなんだろうか。  
「綺麗な旅館じゃねぇか…気に入ったぜ。風呂は混浴なのか?」  
「申し訳ありません。温泉は男湯、女湯と別れておりまして」  
お兄ちゃんが荷物を預かりながら答える。  
「そうか、わかった。じゃあ、俺は男湯で和也と一緒に入――ふがふが」  
「ああ、すいません。何でもありませんから」  
ハハハッと苦しい笑いをしながら、女の人の口を押さえつける男の人。  
「では、どうぞこちらに。お部屋にご案内致します。」  
 
次に来たのは、眼鏡を掛けた真面目そうな人に………な、何だ?  
やたら色白…いやなんかもう色白とかそういう領域を突破して青みがかった白に  
中国の…そう、あれだ『キョンシー』の装束を纏って、その帽子らしきモノに  
黄色いお札を貼った女の子が入ってきた。もうコスプレの域を超えているだろ…アレは。  
 妙に童顔で背が低いけど……おっぱいは大きい。な、何歳なんだ?あの女の子は。  
「予約した谷(たに)です。」  
「はい、谷 碧悟(ヘキゴ)様でございますね」  
平然と対応しているお兄ちゃん。さすがプロだ。するとお札を捲って女の人が言った。  
「道士(どうし)、お腹空いたよ〜早く給仕するネ」  
「はいはい。あ、気にしないで下さい、夕食も時間通りで構いませんから」  
そういって女の子に『どうぞ』とポッキーを差し出す青年。  
眼鏡の男の人はお兄ちゃんに向かって言った。  
「はい、それではお部屋にご案内します。」  
それでも動じないお兄ちゃん。ここはこういうお客さんが多いんだろうか?  
 
少し間をおいて来たのは、いかにもダンディな感じの男の人に着物を着た女の人。  
「こんにちわ、予約しとった小林です。」  
「はい、小林 孝(タカシ)様でございますね」  
 ダンディな男の人、関西弁だ。しかも何かフツーの名前だ。  
「主様(あるじさま)、はよ部屋行こ。私、もう我慢できへん」  
妙に色っぽい声の着物をきた女性、綺麗な人なのに。  
何か危険な感じがする。  
「よ、ヨーコ、ちょう(訳:少し)我慢せぇ。ああ、すんません、荷物は自分らで持って行きますから」  
「あん、あかん。出てまう…ん、んん…あはっ」  
そう言うとぴょこっと女の人の頭から狐色の耳が生えた…ように見えた。  
コイツもコスプレなのか!?何なんだこの旅館は!レイヤーの集会場なのか!?  
「アホッ、何してんねん。すんません。気にせんといて下さい」  
「はい、ではお部屋にご案内致します。」  
…お兄ちゃん、何で平然としていられるんですか?  
私、妹としてお兄ちゃんが心配になって来ました。  
 
最後に来たのは親子連れ。中学生くらいの男の子に背の高い女の人。  
その女性……外国の人だろうか?  
褐色の肌に稟としたその瞳は同性としても何か格好いいと思う。  
「予約した黒井です」  
褐色の肌の女性が稟とした声で言った。  
「はい、黒井 竜(りゅう)様でございますね」  
「はい。荷物は全て、クロが持って行きますからお気遣い無く」  
クウ?あの背の低い男の子の事だろうけど…何かペットみたいな名前だな。  
つーか、子供に荷物って…いいのか母親として!?  
「失礼ですが……クロ様は――――」  
お兄ちゃんがニコニコしながら聞いた。  
暗に『貴女のお子様ですか?』と尋ねている口調だ。  
何かを感じ取ったのだろう、宿泊の名簿には何て書いてあったんだろう?  
「ペットです」  
ダメだ。こりゃ…  
 
何なんだろう、我が家『甲斐旅館』はどうかなってしまったんだろうか?  
お客さんの入浴時間を外して、先に温泉に浸かっている私はそんな事を思った。  
どうみても普通には見えない女性を連れた男性。  
 総じて最後のお客さん、黒井さん以外はまともに見える人達なのに…  
やはりどこかおかしいのだろうか?ものすんごいコスプレ好きとか超弩級の性癖を持って  
いるとか…そんなの関係ない…と言ってしまえばそれまでだが、何となく気になってしまう。  
 昔から変なお客さんは来ていたのは気になっていた。  
お父さんが言うには私達『甲斐家』には代々、この世にあらざる者、  
つまり人外の者達の姿を見る事ができる能力が備わっているとのこと。  
そんな古めかしい言い伝えの様なモノを私は信じる気はなかった。  
実際、都会にいっても人外とか幽霊とかそんな類のモノと一切関わりはなかった。  
 この前の研修旅行一つとってもそうだ。  
港に古めかしい格好した兵隊さん達が並んでいたりとか、  
波しぶきの間にお坊さんが見えたりとか、  
やけに色の薄くてボロボロの帆船が接近してきたり…  
等々、至極当たり前の事しかない。  
私の友人達は眼が悪いらしく『見えないよ』と言っていたが…  
彼氏には見えていたし、そんな人外とか幽霊とかこっちから願い下げだ。  
とそんな事を考えていると  
「おおおっ〜広いなぁー、和也の家とは大違いだぜ」  
この声はあの髪の赤い女性だ。何で入浴時間の一時間も前に来るんだ!?  
私は湯煙に隠れて岩場の後ろに身を潜めて、様子を伺った。  
「ん、俺が一番乗りか。へへ〜ん。」  
あの女性は頭の上の角みたいなのを付けたまま、温泉に浸かっている。  
筋金入りのコスプレイヤーらしい。が、はつらつとした表情に、意志の強そうな瞳。  
スレンダーな体型で特に腰のくびれがすごく綺麗だ。胸やお尻もなかなか。もったいない。  
するとまた戸が開き今度はあのキョンシーの格好をしていた女の子が入ってきた。  
……ぷるぷると歩くたびに弾む大きなおっぱい……羨ましい。ホントにアンタは何歳なの?  
「コラ、無礼ネ。皇族であるワタシが一番最初の湯に浸かる事は決まっているのに。」  
女の子は胸を張って、髪の赤い女性に抗議した。こ、皇族…マジで痛い子だ。  
二人とも綺麗なのに…本当にもったいない。  
「ああん?何だぁお子様が…ここは昔の唐土(もろこし)じゃねぇんだよ。時代に適応しろ適応」  
「フン、こんな小国の鬼が何をいうネ。ワタシは古の唐土帝国の皇女ネ、早く出るアルよろし!」  
女の子が赤い髪の女性に向かって毅然と言い放つ。何て痛い子なんでしょう。  
「………お前さ、唐土のいわゆる死体なんだろ?」  
「無粋な言い方ネ。『キョンシー』はただの死体じゃない、道士言ってたネ」  
「でも一回死んでるんだろ?」  
「む……そ、それはそうアルけど」  
「じゃあ、お前の連れはロリコンで屍姦好きなのか?」  
………は、はぁ!?鬼だ?道士だ?キョンシーだ?何なのこの人達は!?  
「なにィ!この下賤の鬼風情が!道士の悪口は許さないアル!!」  
まさに一触即発の時、再び戸が開いた。  
「騒々しいな、日本のオンセンとは騒ぐものなのか?」  
「コンコン、失礼するで。温泉ってココでええんやろ?」  
と入ってきたのは、問題有りの黒井さんに三人目のコスプレイヤーだった。  
 
後編に続く  
 

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