赤ずきんちゃん
真っ赤な可愛い頭巾を被った、可愛らしい女の子が野原を駆け出していきます。
片手にもったバスケットの中には、病気のおばあさんのお見舞いようのワインとパンが入っていました。
ちょっと重いその荷物を抱えながら、女の子はぱたぱたと白い足を動かして、野原を走りまわります。
「わたし、おばあさんのためにお花を摘んでいくの!」
にこにこと、誰に聞かれたわけでもないのに女の子は笑いながら言いました。
女の子はとっても綺麗で可愛い顔立ちをしていましたが、そのぶんあまり頭がよくありません。
さきほど出会った狼におしえられたことをすっかり信じて花を探して野をさまよいます。
「見つけたわ! 可愛いお花!」
白い花が一面に生い茂る場所を見つけた女の子――赤ずきんはにっこりと笑いました。
楽しそうにお花を一輪ずつ丁寧に摘んで、バスケットの中に入れていきます。
バスケットがいっぱいになったところで、赤ずきんは満足して立ち上がり、おばあさんの家へと向かいました。
てくてくと歩いて辿りついたおばあさんのお家は、こじんまりとして、けれどとても気持ちのいい、ていれの行き届いた可愛いお家です。
赤ずきんは、やさしくて可愛らしいおばあさんに会えるのが嬉しくて、にこにこと笑いながら戸を叩きます。
「おばあさん、お見舞いにきたよ!」
「ああ、お入り、赤ずきん。おばあさんは身体が弱っていて、おきあがることもできそうにないよ」
こたえたおばあさんの声は低くしゃがれていて、赤ずきんはびっくりしてしまいました。
まえまではそれはそれは可愛い声をしていたおばあさんが、こんなにひび割れた声をだすなんて!
よっぽど病気が悪いのかしら、と赤ずきんは心配になって家の中に駆け込みます。
「こんにちは、おばあさん」
ちっちゃなベッドには、おばあさんが丸くなっているらしく、布団はほっこりとふくらんでいました。
やっぱりとってもぐあいが悪いんだわ、と赤ずきんは悲しくなっておばあさんの傍に近寄ります。
「おばあさん、だいじょうぶ?」
「やさしい子だね、赤ずきん。大丈夫だよ」
そう答えるおばあさんの声はやっぱり低くしゃがれていて、ちっとも大丈夫そうではありません。
赤ずきんは不安になっておばあさんを覗き込もうとみをかがめ、そこで信じられないものを見ました。
「おばあさん! とってもお耳がおおきくなってるわ!」
「これはね、かわいい赤ずきんの声をよおく聞きたいからだよ」
おどろいてといかけた赤ずきんに、おばあさんはくつくつと喉を鳴らしてこたえます。
その言葉に、赤ずきんはそんなものかしら、となんとなく納得してしまいました。
可愛い子ほど、頭がよわいものです。
「おばあさんの手はずいぶんおおきいのね」
「そうとも。大きくなくては、かわいい赤ずきんをちゃんと抱きしめてあげられないからね」
ベッドからはみ出たおばあさんの手は、なんだか毛むくじゃらで、とてもおおきくて、赤ずきんはまたびっくりしてたずねます。
それにもくつくつと笑いながら、おばあさんはしゃがれ声で赤ずきんにこたえました。
そのやさしい言葉に、ふたたび納得した赤ずきんは、ベッドから顔を出したおばあさんを見て悲鳴のような声をあげます。
「おばあさん! おばあさんのお口はとってもおおきいわ!」
「これかい? これはね、かわいい赤ずきんをきもちよくさせてあげるために大きくなったんだよ」
おばあさんは言うがはやいか、ベッドの中から飛び出して赤ずきんの小さな身体を押さえつけます。
ベッドから飛び出してきたのは、だれあろう、赤ずきんに親切にお花畑の場所をおしえてくれた狼でした。
「狼さん! どうしておばあさんのふりなんかっ! あぁんっ!」
「おまえがあんまり可愛いから、食べてしまいたくなったのさ」
赤ずきんの服をはぎとった狼は、くつくつと喉を鳴らしながら、白いからだを長い舌で嘗め回しました。
ふさふさとした尻尾がゆれているのが、狼がご機嫌な証拠を示しています。
赤ずきんは、身体中を這いまわる長くざらざらとした感触に、未知の感覚を覚えて小さく喘ぎました。
「ああっ! やぁっ! 狼さん、どうしてこんなことをするの?」
「それはね、お前を気持ちよくしてあげたいからだよ」
きらきらと輝く目を、うっとりと細めて狼はさらさらとした肌触りの赤ずきんの身体に慎重に前脚を伸ばしていきます。
その様子を、狼さんはとっても器用だわ、と赤ずきんは感心して見守りました。
最初にのしかかられたときは怖かったけれど、いまはなんだか狼さんが可愛く思えてしまいます。
「狼さんは、やっぱりとってもやさしいし、親切なのね!」
「そうとも」
何をされるのか分かっていないらしい赤ずきんの、無邪気な言葉に狼は耳を伏せて頷きました。
この純真な女の子に、自分は何をしようとしているのだろう、と狼のなかで後悔が広がって行きます。
しかし獣の本能はおさえがたく、目の前の白くうつくしいからだを、征服しつくしたい欲望は膨らむばかりです。
「いい子だね、赤ずきん」
白い太ももを左右におおきくひらかせ、狼はその間にかがみこんで、穢れない桃色をした秘裂に長い舌を這わせました。
なだめるように赤ずきんの頭に前脚をのせて、狼は陵辱をつづけます。
「やぁっ……んん! 狼さんっ! そんなとこっ……きたないから、だめぇっ!」
「汚くないよ、赤ずきん。とっても綺麗だ」
いやいやをするように首をふってむずがる赤ずきんを、狼は必死におさえて秘裂への愛撫をつづけました。
しだいに赤ずきんの白い頬はピンク色にそまり、呼吸は荒くなっていきます。
「おおかみさぁっ、ん! なんかへん、なんかへんなのぉっ!」
「大丈夫、変じゃないよ」
白いからだをくねらせて、赤ずきんは狼に舌足らずな声でうったえました。
その言葉を、狼はどこか嬉しそうに聞きながら、いっそう熱心にぺちゃぺちゃと音をたてて赤ずきんの秘部をすすりあげます。
「やぁぁぁっ! だめなのぉぉっ!」
いっそう高い鳴き声をあげて、赤ずきんは白いからだをぴくぴくと痙攣させました。
おおきくたかくあがった足が、空中をかき回すようにばたばたと動いて、弛緩します。
「気持ちよかったかい? 赤ずきん」
「……ふわふわして、ぐるぐるするのぉ……」
床に溢れた赤ずきんの蜜をなめあげながら、狼はたずねましたが、赤ずきんはすでにまともな答えをだせない状態でした。
くたりと力の抜けたからだを横たえて、赤ずきんはきらきらとした美しい青い目で狼を見つめます。
「狼さんのいってた、気持ちいいことってこれだったのね」
「そうとも。まだ続きがあるんだけど、今日はやめておこうか」
嬉しそうににっこりと笑った赤ずきんを、狼は気遣うように頭を前脚で撫でてこたえました。
ほんとうは、狼のほうも赤ずきんの可愛らしい媚態に欲望をおさえきれない状態でしたが、なんとか我慢して、笑います。
最後まで想いを遂げられたら、狩人に撃ち殺されても悔いはない、とすら思うのですが、この赤ずきんに嫌われてしまうのはいやでした。
ずっと前から影でこっそり見守っていた赤ずきんに、想いを募らせすぎてついこんな真似をしてしまいましたが、やっぱり狼は赤ずきんが大好きなのです。
大好きな女の子には、嫌われたくありません。
「わかったわ! ……ところで狼さん、おばあさんはどこにいるの?」
「おばあさんなら、もうすぐ帰ってくると思うよ」
赤ずきんの訪問をころっと忘れていたおばあさんは、近所の寄り合いでびりーずぶーときゃんぷに励んでいるころでしょう。
それももうじき終わって、帰ってくるだろう、と狼は検討をつけて立ちあがりました。
甲斐甲斐しく赤ずきんの身体をきれいにして、服を着せ終わると、狼はなごりおしそうに立ち去ろうとします。
「狼さん、帰ってしまうの?」
「そうだよ。ここにいたら、おばあさんをびっくりさせてしまうからね」
「そう。じゃあ、狼さん、こんどはいつ会えるの?」
寂しげに笑った狼が立ち去ろうとするのをひきとめて、赤ずきんはそのふさふさとした尻尾を握りしめました。
「赤ずきんが会いたいと思ったら、いつでも」
弱点の尻尾を握られていると、どうにも全身がむずがゆくて仕方ありません。
赤ずきんの白い指を引き剥がそうとかがみ込んだ狼に、赤ずきんはその大きな耳に口を寄せて囁きます。
「……そのときには、つづきをしてちょうだいね!」
にっこりと笑って、狼の頬に口づけを落とした赤ずきんは、照れたように頬をそめました。
なんとも可愛らしい姿に、一瞬見とれた狼は、その言葉を理解すると、嬉しそうに歯をむき出しにして笑います。
とちゅうで、こんな顔をしたら赤ずきんをおびえさせてしまう、と思い直した狼は、無理に笑いを引っ込めて赤ずきんのちっちゃな額に口づけました。
「約束だよ、赤ずきん」
「やくそくよ、狼さん」
額をよせあってくすくすと内緒ばなしのように言い合った一人と一匹は、近づいてくる足音に気付いてびくりとからだを震わせます。
「おばあさんがかえってきたわ」
「そうだね。赤ずきん、またね」
なごりおしそうに触れるだけの口づけをかわすと、狼は夕闇の迫る森へと駆け出していきました。
赤ずきんは、おもったよりもくすぐったく、とても嬉しいはじめてのキスにうっとりと頬をそめてそれを見送ります。
そうしている間に、お家のドアからおばあさんの声が聞えてきて、赤ずきんはそれにこたえるために駆け出しました。
(だれにも、だれにもないしょなの!
狼さんはとってもやさしくて、すてきなの!
しんせつだし、ものしりだし、それにとってもかわいいの!
しょげたお耳も、ぬれたおはなも、おおきなお口も、ふさふさの尻尾も、
わたしはみんな大好きなのよ!)
叫び出したい気持ちをこらえて、赤ずきんはおばあさんの元へ走りよります。
興奮にかすかに頬をあかくして、きらきらと濡れた目をした赤ずきんは、いつもよりずっと綺麗で、すてきな女の子でした。
教訓――好きな女の子には、とりあえずやさしくしときましょう。
暴走しても笑って許してくれるはずです。